別居中の不倫(浮気)でも慰謝料請求される?認められにくいケース3つを解説

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弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

別居中の不倫(浮気)でも慰謝料請求される?認められにくいケース3つを解説

悩み

別居中の不倫(浮気)で慰謝料請求が認められるのか知りたいと悩んでいませんか

別居して交流の機会も少ないのに高額の慰謝料を請求されると納得できない方もいますよね。

別居中の不倫(浮気)で慰謝料請求することができるかは具体的な事情によって異なります

というのも、慰謝料請求は発生した損害を請求するものですが、既に夫婦関係が破綻している場合には損害が発生しておらず慰謝料請求することができなくなるためです。

別居する理由は様々ですが、別居の際に夫婦関係が破綻していることも多く慰謝料請求の可否を判断するには別居の実態が重要となってきます。

例えば以下のような場合には夫婦関係が破綻されていると判断されやすいです。

・長期間別居している
・離婚を前提に別居している
・別居中に交流が一切ない

他方で、夫婦関係の修復が見込める間やそもそも夫婦関係が破綻していない場合には、慰謝料請求が認められる可能性が高くなります

例えば、夫が妻の同意を得ず一方的に別居した場合、妻にはなお夫婦生活の平穏という法的利益があり、別居中に不倫をすればこの利益が侵害され慰謝料請求が認められやすくなります。

注意が必要なのは、別居中の不倫(浮気)だからといって慰謝料請求を無視してはいけないことです。

実は、慰謝料請求を無視すると裁判に発展しやすくなる他、慰謝料の増額事由にもなるので別居中だから慰謝料請求は認められないと高を括っていると悲惨な末路を辿るリスクが高くなるのです

この記事をとおして、別居中の不倫(浮気)と慰謝料請求の関係について知っていただければと思います。

今回は、別居中の不倫(浮気)で慰謝料請求することができるのかを説明したうえで、別居中の不倫で慰謝料請求された場合の対処法について解説していきます。

具体的には以下の流れで解説していきます。

この記事で分かること

この記事を読めば、別居中の不倫(浮気)と慰謝料請求の関係がよくわかるはずです。

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1章 別居中の不倫(浮気)でも慰謝料請求が認められることはある

別居中の不倫(浮気)であったとしても、慰謝料請求が認められることがあります

というのも、不倫によって婚姻生活の継続に深刻な悪影響を及ぼすことになるためです。

ただし、別居中における不倫の場合、通常の不倫とは異なり既に別居しており、夫婦間の交流の機会が少なくなっているという特殊性があります。

別居の特殊性

このような状況により、不倫に至る前からすでに夫婦関係が破綻していた場合には、慰謝料請求は認められないこととなります。

そのため、別居中の場合でも、不倫の慰謝料請求が認められる場合がありますが、不倫に至った時点で夫婦関係が破綻していないことを前提となります

~家庭内別居と慰謝料請求~

家庭内別居とは、同居している夫婦が実質的に別々の生活を送る状態を指します。

以下の場合には家庭内別居の状態にあると判断されやすいです。

・会話が一切ない
・生活習慣が切り離されている(洗濯や食事等が別個)
・性的関係の欠如

家庭内別居の場合も別居の場合と同様に、慰謝料請求が認められるかは夫婦関係が破綻していたか否かに焦点が当てられることになるでしょう

その結果、夫婦関係が破綻していなかったと判断されれば、慰謝料請求が認められることもあるのです。


2章 別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められにくいケース3つ

夫婦関係が破綻していたことを肯定する事情がある場合、慰謝料請求が認められにくくなります

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められにくいケースは以下のとおりです。

認められにくいケース1:長期間別居している
認められにくいケース2:離婚を前提に別居している
認められにくいケース3:別居中に交流が一切ない

それでは各ケースについて順番に解説していきます。

2-1 認められにくいケース1:長期間別居している

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められにくいケース1つ目は、長期間別居している場合です。

別居期間が長い場合、同居している場合と比較して夫婦間のコミュニケーションなど夫婦の繋がりが希薄になります。

別居が長引けばそれに伴い婚姻関係の継続への期待も弱くなり、夫婦関係の破綻を肯定する方向の事情となるのです。

判例は5年程度の別居期間で長期間の別居にあたると評価しています(東京地方裁判所23年6月30日)。

そのため、長期間の別居中における不倫には慰謝料請求が認められにくくなるのです。

2-2 認められにくいケース2:離婚を前提に別居している

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められにくいケース2つ目は、離婚を前提に別居している場合です。

離婚を前提に別居している場合としては以下のケースが挙げられます。

・離婚協議中の別居
・離婚調停中の別居
・離婚訴訟中の別居

離婚手続が進行している場合、夫婦に婚姻生活を継続させる意思があると言うことは難しくなってきます

そのため、既に夫婦関係が破綻していると判断されやすく、慰謝料請求は認められにくくなるのです。

2-3 認められにくいケース3:別居中に交流が一切ない

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められにくいケース3つ目は、別居中に交流が一切ない場合です。

夫婦間の交流は、夫婦の信頼関係の維持に重要な役割を果たし婚姻関係の継続させることにも繋がります

しかし、これが欠如するとお互いへの理解も薄れてしまい、別居の原因となった事情を解消することができず、婚姻を継続することが難しくなってしまうのです。

交流が一切なければ、双方が婚姻を継続する意思がないと判断されやすく、夫婦関係の破綻を肯定する事情の1つになることがあります。

別居中に交流が一切なければ慰謝料請求は認められにくくなるのです。

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3章 別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められやすいケース4つ

夫婦関係の破綻を否定する事情がある場合、慰謝料請求は認められやすくなります

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められやすいケースは以下のとおりです。

認められやすいケース1:別居してすぐに不倫している
認められやすいケース2:夫婦関係を継続するために別居している
認められやすいケース3:単身赴任や出張などやむを得ずに別居している
認められやすいケース4:一方的な方法により別居している

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められやすいケース4つ

それでは各ケースについて順番に解説していきます。

3-1 認められやすいケース1:別居してすぐに不倫している

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められやすいケース1つ目は、別居してすぐに不倫している場合です。

夫婦が別居する理由は様々ですが、たとえ深刻な事情があったとしても夫婦関係の修復が絶対に不可能とはいえません。

別居してすぐの不倫は、夫婦関係修復の機会を失わせるものであり、夫婦関係の破綻を否定する事情の1つとなります

別居してすぐに不倫をすれば、慰謝料請求が認められやすくなるのです。

3-2 認められやすいケース2:夫婦関係を継続するために別居している

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められやすいケース2つ目は、夫婦関係を継続するために別居している場合です。

近すぎる距離はかえって夫婦の関係を遠ざけることもあり、夫婦関係をやり直すために別居を選択するとこともあります。

この場合、夫婦の双方が関係を継続させることを前提として別居しており、夫婦関係の破綻を否定する事情となるのです。

夫婦関係を継続するための別居中に不倫をすれば、慰謝料請求が認められやすくなります。

例えば、夫婦関係を継続するための別居としては以下のものが考えられます。

・冷却期間
・子どもへの配慮
・夫婦カウンセラーの助言など…

3-3 認められやすいケース3:単身赴任や出張などやむを得ずに別居している

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められやすいケース3つ目は、単身赴任や出張などやむを得ずに別居している場合です。

夫婦が別居する原因として、仕事の都合上やむを得ず別居しなければならないことがあります。

例えば、単身赴任や出張であったり家から通うことが難しい場合には、別居を選択することもあるのです。

仕事の都合で別居する場合、夫婦は別居によって夫婦関係を終了させることは意図しておらず、夫婦関係を継続させることが前提となっています

仕事の都合などのようにやむを得ずに別居することは、夫婦関係の破綻を否定する事情の1つとなるのです。

やむを得ずにした別居中において不倫をすれば、慰謝料請求が認められやすくなるのです。

例えば、やむを得ずに別居するケースとしては以下のものが挙げられます。

・単身赴任
・出張
・両親の介護
・学校の都合
・里帰り出産など…

3-4 認められやすいケース4:一方的な方法により別居している

別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められやすいケース4つ目は、一方的な別居です。

一方的に別居する場合、別居を告げられる側は別居に同意しておらず、夫婦関係が継続することを期待しているのが通常です。

一方的な別居は夫婦関係の破綻を否定する事情の1つとなり、このような状況で不倫をすれば慰謝料請求が認められやすくなるでしょう。


4章 不倫(浮気)慰謝料請求の相場と別居の関係

不倫(浮気)の慰謝料相場は数十万円~300万円とされており、決して安い金額ではありません。

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※その他、妊娠中か否か、幼い子どもの有無、浮気の期間や回数、反省の度合い等が考慮されることになります。
※慰謝料金額は具体的事情により異なりますので、上記早見表はあくまでも参考としてお使いください。

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慰謝料の金額は精神的苦痛を金銭へと換算したものなので、苦痛の程度に応じた金額が認定されることになります。

不倫の結果、別居や離婚に至れば婚姻を継続しているケースと比較して大きな精神的苦痛を与えることになります。

そのため、不倫によって別居や離婚にまで至れば、この事実は慰謝料の増額事由として判断されることになるでしょう。

ただし、別居中の不倫については、既に別居しており不倫によって別居したとはいえず通常の別居に至ったケースとは異なります

この場合において別居の事実がどのように考慮されるかは個別の事案によって変わってきます。

例えば、仕事の都合等でやむを得ず別居していた場合に、不倫をしたことで同居を妨げていた事情が消滅した後にも別居が継続しているときは、慰謝料の増額事由として判断されるおそれがあります。

他方で、離婚を前提として別居していた場合には、不倫をしたとしても夫婦関係は既に破綻しており、不倫が夫婦関係に影響を与えることはなく慰謝料請求は認められにくくなるでしょう。

不倫の慰謝料相場については以下の記事で詳しく解説しています。

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5章 別居中に不倫(浮気)慰謝料請求された場合の対処法3つ

慰謝料の金額は請求に対する対応によっても変化することがあり、適切な対応をすることが慰謝料の金額を適正なものとすることにも繋がります

別居中に不倫(浮気)慰謝料請求された場合の対処法は以下のとおりです。

対処法1:慰謝料請求を無視しない
対処法2:夫婦関係が破綻していた証拠を集める
対処法3:弁護士に相談する

別居中に不倫(浮気)慰謝料請求された場合の対処法3つ

それでは各対処法について順番に解説していきます。

5-1 対処法1:慰謝料請求を無視しない

別居中に不倫(浮気)慰謝料請求された場合の対処法1つ目は、慰謝料請求を無視しないことです。

慰謝料を請求された場合、請求を無視することだけは絶対にしてはいけません

というのも、慰謝料請求を無視すると最悪の場合には大切な財産を差押えられてしまうなど、悲惨な末路を辿るリスクが高まってしまうためです。

慰謝料請求を無視することのリスクとしては以下のものが挙げられます。

・裁判となり強制執行されるリスク
・慰謝料が増額するリスク
・感情的対立が深まるリスク

別居している場合には既に婚姻関係が破綻していたということもあります。

しかし、争いとなった場合に最終的に判断するのは裁判官であり、婚姻関係が破綻していたと判断される保証はありません

そのため、無用なリスクを避けるためにも、慰謝料請求は無視せずに対処していくことが重要となります

慰謝料請求への対処手順については以下の記事で詳しく解説しています。

5-2 対処法2:夫婦関係が破綻していた証拠を集める

別居中に不倫(浮気)慰謝料請求された場合の対処法2つ目は、夫婦関係が破綻していた証拠を集めることです。

夫婦関係が破綻していた場合、慰謝料請求は認められなくなります

しかし、夫婦関係の破綻は慰謝料請求に対する反論であり、不倫をした側が証明しなければなりません

慰謝料請求に対処するためには、夫婦関係の破綻の証明に備えて証拠を集めておくことが重要となります。

夫婦関係が破綻していた証拠としては以下のものが挙げられます。

・別居の事実がわかるもの(住民票の転出入履歴、生活状況の写真、郵便物の受取記録等)
・連絡を取っていないことがわかるもの(電話、SNSの履歴等)
・家事や生活が独立しているものがわかるもの(生活の実態に関する写真等)
・家計が独立していることがわかるもの(通帳のコピーやレシート等)
・離婚について前向きに検討していることがわかるもの(録音等)
・家庭内暴力による怪我の診断書など…

5-3 対処法3:弁護士に相談する

別居中に不倫(浮気)慰謝料請求された場合の対処法3つ目は、弁護士に相談することです。

夫婦関係の破綻に関する証拠は様々なものがありますが、個別の事案によって有力な証拠は異なります

例えば、既に別居していた事案では不倫によって別居した通常の事案とは異なり、不倫と別居のどちらが先かがわかる証拠が重要になることもあります。

というのも、不倫によって夫婦関係が破綻したのか、既に夫婦関係が破綻していた中で不倫をしたのかでは慰謝料請求の結果がまったく違うものとなるためです。

しかし、具体的にどのような証拠が夫婦関係の破綻にとって重要な証拠となるかは、専門的な知識や経験がなければ判断が難しい部分もあるかと思います。

そのため、別居中の不倫で慰謝料請求をされたら弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士を選ぶポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。


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7章 まとめ

今回は、別居中の不倫(浮気)で慰謝料請求することができるのかを説明したうえで、別居中の不倫で慰謝料請求された場合の対処法について解説しました。

この記事の要点をまとめると、以下の通りです。

・別居中の不倫(浮気)でも慰謝料請求が認められることがある。

・別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められにくいケースは以下の3つです。
認められにくいケース1:長期間別居している
認められにくいケース2:離婚を前提に別居している
認められにくいケース3:別居中に交流が一切ない

・別居中の不倫(浮気)に慰謝料請求が認められやすいケースは以下の4つです。
認められやすいケース1:別居してすぐに不倫している
認められやすいケース2:夫婦関係を継続するために別居している
認められやすいケース3:単身赴任や出張などやむを得ずに別居している
認められやすいケース4:一方的な別居

・不倫(浮気)慰謝料請求の相場と別居の関係は、個別の事案によって異なるが、離婚にまで至れば増額事由となる。

・別居中に不倫(浮気)慰謝料請求された場合の対処法は以下の3つです。
対処法1:慰謝料請求を無視しない
対処法2:夫婦関係が破綻していた証拠を集める
対処法3:弁護士に相談する
この記事が、別居中の不倫(浮気)で慰謝料請求することができるのか知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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