不倫(不貞)は違法?罰則の有無と民事上の2つの法律(条文)を解説

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弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

不倫(不貞)は違法?罰則の有無と民事上の2つの法律(条文)を解説

不倫について、法律上どのようなルールが定められているのかを知りたいと悩んでいませんか?

「不倫は犯罪ではない」、「不倫を禁止した条文はない」、「不倫した者には慰謝料を請求できる」などの様々な情報に触れて、混乱してしまっている方もいるでしょう。

結論から言うと、不倫は刑事上の犯罪ではありませんが、民事上は不法行為として慰謝料の対象となり、更に離婚事由となることもあります

つまり、わかりやすくいうと、不倫は、刑事罰はないものの、民法では違法となるということです、

もっとも、法律上違法な不倫というのが何を指しているのか、「キス」や「手をつなぐ行為」は許されるのかなどの境界線を知らなければ、法律上の責任を正しく理解することはできません

実際、「肉体関係を1回もっただけであれば不倫とならない」などの誤解をしている方なども散見されます。

そのため、不倫について、法律上では、どのようなルールになっているのか、誰でもわかりやすいように説明したいと考え、この記事を執筆させていただきます

今回は、不倫ついて、刑事上の罰則の有無や民事上の2つの法律、違法となる境界線について解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、不倫について法律上どのようなルールになっているのかがよくわかるはずです。

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1章 不倫(不貞)は民事上の違法!刑事上の犯罪ではない

民事上の不倫と刑事上の不倫
不倫(不貞)は、民法上は不法行為として違法となり、慰謝料の対象となります

ただし、不倫(不貞)は、刑事上の犯罪ではないため、刑罰は課されません

よりわかりやすく言うと、日本では、自分自身で又は弁護士に依頼して、精神的苦痛について金銭を支払うように請求することができます。

もっとも、不倫(不貞)を警察に通報しても動いてもらうことはできず、逮捕してもらうこともできません。

歴史的な経過としては、明治時代から戦前にかけては刑法に姦通罪がありました。ただし、その内容は妻の不倫のみが処罰され、夫の不倫は処罰されないという不平等なものでした。そのため、戦後、男女平等の観点から、昭和22年(1947年)刑法改正により、姦通罪は削除されました。したがって、不倫(不貞)は、現在では、刑事上の犯罪ではありません。

慰謝料請求については、明治36年(1903年)10月1日の大審院判例により、夫が妻の不倫相手に対して夫権の侵害に基づく損害賠償を請求することが認められました。そして、明治40年(1907年)5月28日の大審院判例により、損害賠償の内容につき、「精神上被った苦痛の如き無形の損害」として、具体的に記載されるに至りました。更に、明治41年(1908年)3月30日の大審院判例により、損害賠償の内容につき、「慰謝料」という言葉が使われるに至りました。

その後、大正15年(1926年)7月20日の大審院判例により、妻が夫の不倫相手に対して慰謝料請求権を行使することが認められました

刑法の姦通罪が廃止された昭和22年(1947年)以降についても、裁判所は不倫を民事上の不法行為として慰謝料を肯定しています。

不倫と法律の歴史的な経過


2章 不倫(不貞)に関する法律上の規定は2つ

不倫に関する法律としては、民法に規定されている以下の2つの条文があります。

・民法709条:不法行為
・民法770条:裁判上の離婚

不法行為と裁判上の離婚

それでは、これらの2つの条文について順番に説明していきます。

2-1 民法709条:不法行為

不倫(不貞)に関する法律の1つ目は、不法行為です。

民法709条では、以下のように規定されています。

民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

不法行為とは、違法に他人の権利を侵害する行為をいいます。

一般的に、不倫(不貞)行為については、婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為と理解されているため、不法行為に該当します。

そして、不法行為を行った者は、これによって生じた損害を賠償する義務を負うことになります

不倫(不貞)の場合に想定される主な損害としては、精神的苦痛としての慰謝料となりますが、その他にも弁護士費用、探偵の調査費用なども損害として認められることがあります。

以上より、不倫(不貞)をした者は、民法709条に基づいて、慰謝料の支払い義務を負うことになるのです。

2-2 民法770条:裁判上の離婚

不倫(不貞)に関する法律の2つ目は、裁判上の離婚です。

民法770条では、以下のように規定されています。

民法770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

裁判上の離婚が認められるには、離婚事由が必要となります

そして、不倫(不貞)については、「配偶者に不貞な行為があったとき」として、1号に離婚事由として記載されているのです。

そのため、配偶者が不倫(不貞)をした場合には、配偶者が離婚を拒んでいる場合であっても、民法770条により一方的に離婚を求めることができます。

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3章 どこから違法?不倫(不貞)の法律上の定義

不貞のイメージ

不倫(不貞)行為とは、既婚者が他の者と肉体関係をもつことをいいます。

つまり、恋人がいる方が他の人と肉体関係をもったとしても、結婚していなければ、法的な意味における不倫(不貞)に該当するわけではありません。

また、既婚者であっても、他の人と肉体関係をもったとまではいえない場合には、不倫(不貞)に該当しない傾向にあります。

例えば、不倫(不貞)行為に該当しないケースの代表例を5つ挙げると以下のとおりです。

不倫に該当しないケース
該当しないケース1:食事をしていた
該当しないケース2:仲のいいLINEをしていた
該当しないケース3:手をつないで歩いていた
該当しないケース4:キスやハグをしていた
該当しないケース5:性的な意味で身体にさわる

これに対して、不倫(不貞)行為に該当するケースの代表例を5つ挙げると以下のとおりです。

不倫に該当するケース
該当するケース1:1回だけ肉体関係をもった
該当するケース2:異性とラブホテルに入り長時間出てこない
該当するケース3:異性と宿泊を伴う旅行に行った
該当するケース4:性交類似行為を行っている
該当するケース5:頻繁に風俗に通っている

不貞行為に該当しないケースと該当するケース

以上より、単なる浮気と法律上問題となる不倫(不貞)の範囲を整理すると以下のようになります。

浮気と不貞の違い

不倫(不貞)の定義については、以下の記事で詳しく解説しています。


4章 違法な不倫(不貞)の慰謝料相場は30万円~300万円

違法な不倫(不貞)の慰謝料の相場は、30万円~300万円程度となっております。

事案ごとに慰謝料の相場金額について、更に具体的に見ていくと以下の早見表のとおりの傾向となります。
浮気不倫(不貞)慰謝料早見表

別居に至らないケースでは30万~100万円程度、別居に至るケースでは50万~200万円程度、離婚に至るケースでは150万円~300万円程度となっています。

また、婚姻期間が長いほど慰謝料金額が高額化する傾向にあります。

その他、浮気の態様、幼い子どもの有無、浮気の期間や回数、反省の度合いなどの要素が加味されることになります。

不倫(不貞)慰謝料の相場金額については、以下の記事で詳しく解説しています。

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5章 違法な不倫(不貞)を立証するための19個の証拠

不倫(不貞)行為は、これが密室で行われることが多いため、どのようにして立証するかが重要となります。

例えば、違法な不倫(不貞)を立証するための証拠を厳選すると以下の19個があります。

浮気・不倫証拠一覧

どれか1つの証拠だけを集めるのではなく、可能な限り多くの証拠を集めるようにしましょう。

不倫(不貞)の証拠については、以下の記事で詳しく解説しています。


6章 不倫(不貞)に関する法律上の手続3つ

不倫(不貞)トラブルを解決するためには、法律上の手続きをとっていくこととなります。

例えば、不倫(不貞)トラブルを解決するための法律上の手続きとしては、以下の3つがあります。

手続1:示談
手続2:調停
手続3:訴訟

不倫の法律手続き

それでは、各ケースについて順番に説明していきます。

6-1 手続1:示談

手続1 示談

不倫(不貞)トラブルを解決するための法律上の手続きの1つ目は、示談です。

示談については、解決までの期間が短く、必要な労力は少ないため、いずれの場合においてもまず検討されるべき解決方法です

示談とは、裁判所を使わずに話し合いにより解決する手続きです。話し合いにより合意した内容については、通常、「示談書」という形で書面にしておきます。

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※適切な示談書については事案により異なりますので、適宜ご修正下さい。ひな形の利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねますので、自己責任でお願いいたします。

不倫(不貞)の示談書については、以下の記事で詳しく解説しています。

ただし、示談は、両当事者が合意しなければ成立しません。どちらか一方が慰謝料について適正金額から外れた金額での解決にしか応じないと言い張っている場合などには、示談による解決は困難です。

示談が難しい場合には、裁判所を使った手続きを検討することになります。

6-2 手続2:調停

手続2 調停

不倫(不貞)トラブルを解決するための法律上の手続きの2つ目は、調停です。

調停は、裁判所をとおして、話し合いによる解決を目指す手続きです。

調停員が当事者の間に入り、話しを聞いてくれるので、示談に比べると解決率が高いといえるでしょう。

ただし、1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになるので解決までの期間は、長期化します

また、調停についても、原則として、両当事者が合意しないと成立しないため、解決の可能性が高いとはいえません

そのため、不倫(不貞)トラブルについては、示談が難しい場合には、調停を経ずに、訴訟を提起するケースの方が圧倒的に多いように感じます

もっとも、離婚については、調停前置主義として、裁判の前に調停を経なければいけないルールがあります。

そのため、配偶者と離婚する場合で、かつ、配偶者に離婚の慰謝料を請求するケースについては、調停において慰謝料についても協議される傾向にあります

6-3 手続3:訴訟

手続3 訴訟

不倫(不貞)トラブルを解決するための法律上の手続きの3つ目は、訴訟です。

訴訟は、判決を求めて申し立てを行い裁判所による審理を経て解決するための手続きです。

訴訟についても、解決までの期間は長期化します。また、主張を整理したうえで、それを裏付ける証拠も提出しなくてはいけないため、必要な労力も大きいものです

しかし、両当事者が合意に至らない場合であっても、裁判所が一方的に判決をくだしますので、トラブルが解決する可能性は3つの手続きの中で最も高いといえます

そのため、示談が難しい場合には、訴訟により解決が図られることが多いのです。

不倫(不貞)訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。

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7章 不倫(不貞)に関連して違法となる3つの行為

不倫(不貞)のトラブルが発生すると、これに関連して、いくつかの違法行為が問題となるケースがあります。

その多くは、不倫(不貞)により感情的になってしまい、法的に逸脱した交渉や報復行為を行ってしまうものです。

例えば、不倫(不貞)に関連して違法となる行為としては、以下の3つがあります。

・脅迫行為
・暴力行為
・名誉毀損行為

不倫に関連して違法となる行為

それでは、各行為について順番に説明していきます。

7-1 脅迫行為

不倫(不貞)に関連して違法となる行為の1つ目は、脅迫行為です、

法的な権利の行使であっても、その行使の方法が相当性を逸脱する場合には、違法となり得ます。

例えば、「慰謝料を支払わないと痛い目を見ることになるぞ!」、「慰謝料を支払わないと会社や家族に言い触らすぞ!」などの発言については、脅迫行為として違法となる可能性があります

そのため、交渉をする際には、その発言についても十分に注意する必要があります。

不倫に対する制裁については以下の記事で詳しく解説しています。

7-2 暴力行為

不倫(不貞)に関連して違法となる行為の2つ目は、暴力行為です、

暴力行為については、不倫相手に対するものであっても、正当化されません。

例えば、不倫の現場に居合わせてしまったり、不倫相手の対応が不誠実なものであったりしても暴力行為を行ってしまうと、反撃を受けることになってしまいます

そのため、どれだけ不倫相手が許せない場合であっても、暴力行為は行わないように注意しましょう。

7-3 名誉毀損行為

不倫(不貞)に関連して違法となる行為の3つ目は、名誉毀損行為です、

配偶者の不倫相手の社会的評価を低下させるような行為をしてしまうと違法なものとして、反撃を受けてしまうことがあります。

典型的なものとしては、配偶者の不倫相手の会社に不倫の事実を公表する場合、不倫相手の配偶者に不倫の事実を公表する場合、SNSに不倫の事実を書き込む場合などです

これに対して、わざと社会的評価を低下させた場合だけではなく、不注意により社会的評価を低下させてしまった場合についても、違法なものとして反撃を受ける可能性があります。

例えば、不倫相手の住所がわからず、不倫相手が勤めている会社にFAXで慰謝料を請求する通知書を送ってしまうような場合などです。

この場合には、不倫相手の会社の人たちに不倫の事実が知れ渡ってしまう可能性が高く、名誉毀損として違法となってしまう可能性があります。


8章 不倫慰謝料の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ

不倫慰謝料の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。

不倫慰謝料については、交渉力や知識の格差が金額に大きく影響する分野です。

リバティ・ベル法律事務所は、不倫慰謝料問題や離婚問題に注力しており、この分野に圧倒的な知識とノウハウを持っています。

少数精鋭でご依頼を受けた一つ一つの案件について、不倫慰謝料問題に強い弁護士が丁寧に向き合っているところが弊所の強みです。

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9章 まとめ

以上のとおり、今回は、不倫ついて、刑事上の罰則の有無や民事上の2つの法律、違法となる境界線について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・不倫(不貞)は、民法上は不法行為として違法となり、慰謝料の対象となります。ただし、不倫(不貞)は、刑事上の犯罪ではないため、刑罰は課されません。

・不倫に関する法律としては、民法に規定されている以下の2つの条文があります。
民法709条:不法行為
民法770条:裁判上の離婚

・法的に違法とされる不倫(不貞)行為とは、既婚者が他の者と肉体関係をもつことをいいます。

・不倫(不貞)トラブルを解決するための法律上の手続きとしては、以下の3つがあります。
手続1:示談
手続2:調停
手続3:訴訟

不倫(不貞)に関連して違法となる行為としては、以下の3つがあります。
・脅迫行為
・暴力行為
・名誉毀損行為

この記事が不倫(不貞)についての法律上のルールを知りたいと考えている方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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