不倫トラブルについての示談書をどのように作ればいいのかがよくわからず悩んでいませんか?
日常生活の中で示談書を作る機会はありませんので、自分で作ろうとしても色々な不安がでてきますよね。
結論から言うと、不倫慰謝料の示談交渉については、示談書の作成も含めて弁護士に任せてしまうことがおすすめです。
示談書の条項1つ1つについて、知識やノウハウが必要となり、交渉すべきポイントも異なるため、専門性が高いからです。
しかし、弁護士に依頼すると費用倒れになってしまうなど、自分で示談書を作成せざるを得ない方もいるでしょう。
特に、この記事を読んでいる方の中には、まずは自分で示談書を作ることができないか関心を持っている方が多いかと思います。
実際、私が相談を受けている中でも、慰謝料の金額が少額であるため、示談書の内容に問題ないかだけチェックしてほしいという方もいらっしゃいます。
示談書の作成方法については特に隠すものでもありませんし、円満なトラブルの解決のために広く公開していくべきものだと思いますので、この記事で不倫の示談書を作るポイントを伝えていければと考え執筆させていただきます。
一般の方であっても、テンプレートなどを用いることで、大きなミスを防ぐことができますし、よく使われる典型的な条項であれば作れるようにはるはずです。
今回は、浮気・不倫の示談書を作成する方法について、誰でもわかるように詳しく解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば不倫慰謝料の示談書の作成方法がよくわかるはずです。
目次
1章 不倫の示談書とは|不倫慰謝料問題で示談書を作る3つの理由
不倫の示談書とは、トラブルについてどのように解決するかを決めた際に、約束した内容を記載しておく書面です。
示談自体は書面で行わなければならないという決まりはありませんので、口頭で示談した場合であっても法律上は有効です。
しかし、実際には、以下の3つの理由から示談書が作成されるのが通常です。
理由2:約束した内容を示談書で立証できる
理由3:紛争の拡大を予防できる
それぞれの理由について説明していきます。
1-1 理由1:合意の内容を明確にしておく
不倫の示談書を作る理由の1つ目は、合意の内容を明確にしておくためです。
いくらの慰謝料を支払うと合意したのか、いつまでに支払うと合意したのかなど、口頭のやり取りですと不明確になってしまいます。
書面にすることにより、合意内容が目に見えるようになりますので齟齬が生じにくくなります。
1-2 理由2:約束した内容を示談書で立証できる
不倫の示談書を作る理由の2つ目は、約束した内容を示談書で立証できるためです。
もしも、示談をした後に、約束が破られた場合には、裁判等を用いて解決していくことになります。
しかし、示談書がないと、本当に示談をしたのか、どのようなないようの示談をしたのか、立証することが非常に困難です。
これに対して、示談書があれば、合意した内容を簡単に立証することができますので、約束が破られた場合にも、対処しやすくなります。
1-3 理由3:紛争の拡大を予防できる
不倫の示談書を作る理由の3つ目は、紛争の拡大を予防できるためです。
示談書では、慰謝料の金額など以外にも、接触の禁止や口外の禁止、違約金などの合意をすることもできますので、紛争の拡大の要望にも役立ちます。
口頭でこれらの合意をすることも不可能とまでは言いませんが、細かい内容まで全て口約束で行うことは現実的ではないでしょう。
そのため、示談をする際には、紛争の拡大を予防するための約束などについても書面にしておいた方が良いのです。
2章 4つのステップでわかる!不倫慰謝料問題の示談書作成の流れ
不倫慰謝料問題の示談書を作成する流れは、通常、以下のとおりです。
ステップ2:示談書案の提示
ステップ3:示談書案の修正
ステップ4:署名押印
2-1 ステップ1:金額の交渉
不倫慰謝料問題の示談書を作成するステップ1は、解決金額の交渉です。
示談書を作成する前提として、不倫をした方が、不倫をされた人に対して、いくらの解決金又は慰謝料を支払うかということを決める必要があります。
金額が決まっていない段階で示談書を作成しても、示談が成立する可能性は低いので、まずは示談が可能かどうか話し合いを行うのです。
例えば、不倫をされた人が300万円の慰謝料を請求していて、不倫をした人が100万円しか支払わないと言っている段階では示談書が成立することは困難です。
そのため、まずは金額の交渉を行う必要があるのです。
2-2 ステップ2:示談書案の提示
不倫慰謝料問題の示談書を作成するステップ2は、示談書案の提示です。
不倫をした人が支払う金額が決まったら、示談書案を提示します。示談書の案文を作成して、メールや郵便、FAXなどで相手に示し確認することが多いでしょう。
ステップ1の段階では詰めきれていなかった条項も含めて、この段階で合意内容を具体的に議論していくことになります。
2-3 ステップ3:示談書案の修正
不倫慰謝料問題の示談書を作成するステップ3は、示談書案の修正です。
示談書案を提示された側において、そのままでは応じることができない条項などがある場合や追加、削除してほしい条項がある場合などには、これを修正することになります。
例えば、第5項については削除してほしい、第6項の文言については「●●●」とあるのを「▲▲▲」にしてほしいなどの回答をします。
特に修正事項がなければ、その旨回答します。
2-4 ステップ4:署名押印
不倫慰謝料問題の示談書を作成するステップ4は、署名押印です。
示談書の内容が決まったら、示談書を印刷して、署名押印を行います。
通常、示談書の末尾に、示談を行う者がそれぞれ署名を行い、署名の横に押印を行います。
署名押印の方法については、直接面前で行う方法の他にも、一方が先に署名押印をしたものを郵送して他方が署名押印をしたうえで返送するという方法もあります。
これまでに説明したのは、対等な立場で交渉を行いながら、示談書を作成する際の一般的な流れです。
当事者間の交渉力や知識に格差がある場合などには、上記のような流れにならない場合があります。
例えば、一方が作成してきた示談書を提示して、その場で署名押印するように迫るような場合です。
示談書の効力や合意の流れ、適正な慰謝料金額などがわからずに、その場で署名押印してしまう方がいます。
しかし、示談書を示されてその場で署名押印するというのは、非常に危険ですので十分に注意しましょう。
示談書に記載されている事項については、冷静な状態で、時間をかけて慎重にリスク分析を行うべき事項です。
一度、示談書に署名押印をしてしまうと、これを争う難易度は非常に高くなってしまいます。
3章 自分で作成!不倫慰謝料の示談書テンプレート【ひな形ダウンロード】
よくある不倫示談書のテンプレートとしては、以下のようなものとなります。
この示談書を基本として、事案に応じて、加筆、修正していくといいでしょう。
WORDファイルのひな形ダウンロードはこちら
PDFファイルのひな形ダウンロードはこちら
※適切な示談書については事案により異なりますので、適宜ご修正下さい。ひな形の利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねますので、自己責任でお願いいたします。
もっとも、ひな形を見るだけでは各条項の意味やどのように加筆、修正すればいいのかもわからないですよね。
この章では不倫示談書の各条項について、以下の順で解説していきます。
第2条:支払い義務の条項
第3条:支払い方法の条項
第4条:接触禁止条項
第5条:違約金条項
第6条:口外禁止条項
第7条:清算条項
追加1:求償権の放棄条項
追加2:遅延損害金条項
追加3:不倫を繰り返さない条項
3-1 第1条:謝罪の条項
謝罪条項について、不倫をした者が不倫をされた者に対して、謝罪の意思を示すものです。
特に法的効力があるわけではありませんが、「不貞関係にあったことを認め」などの記載がある場合には、不貞行為が存在したことの証拠にはなります。
不倫をした者が不貞行為の存在や態様を争っている場合や示談書に不貞行為と記載したくない場合には、「不適切な関係にあったことを認め」などの表現に修正することがあります。
3-2 第2条:支払い義務の条項
支払い義務の条項の議論のポイントは、「金額」と「支払名目」です。
金額については、本記事の5-3をご参照ください。
支払い名目については、「慰謝料」と「解決金」いずれかとなります。
不倫をした側が「解決金」との記載にすることを望むことが多く、不倫をされた側は名目にこだわらないことが多いので、「解決金」との名目にされる傾向にあります。
3-3 第3条:支払い方法の条項
2 乙が、前項の分割金の支払いを怠り、その額が●万円に達したときは、当然に同項の期限の利益を喪失する。
支払い方法の条項についての議論のポイントは、「一括払いか分割払いか」と「いつまでに支払うか」です。
不倫をされた人からすれば、一括払いをしてもらうことが望ましいですが、不倫をした人の資産状況によっては、分割払いとなってしまうこともあります。
分割払いとなるときには、途中で不払いとなるリスクがありますので、不払いが続いた場合には、期限を待たずに全額を請求できる条項を入れておくといいでしょう。
いつまでに支払うかについては、一括払いの場合には、示談書を締結した日から1か月程度が目安となります。
分割払いの場合には、毎月の支払いをとすることが多いですが、何年間にもわたるような長期分割については、避けた方がいいでしょう。
3-4 第4条:接触禁止条項
2 前項の接触は、現実の接触のみならず、電話、メール、郵便、ソーシャルネットワークサービスなどを用いた一切の方法による接触をいう。
接触禁止条項についての議論のポイントは、例外的に接触が許容される場合についてです。
例えば、同じ職場で働いているような方の場合には、「就業上必要不可欠な場合を除き」との記載をすることがあります。
また、不倫をした者が、偶然会ってしまった場合などにまで条項に違反したことになるのか不安であるとして修正を申し出ることがあります。
しかし、故意過失により接触したのでなければ、接触禁止条項に違反したとは言えないでしょうから、あえてそのような修正をすることについては認められないことが多いでしょう。
3-5 第5条:違約金条項
違約金条項についての議論のポイントは、「条項を入れるかどうか」と「金額」です。
不倫をされた者としては、条項を入れても守られなければ意味がないので、その実効性を確保するために、違約金の条項を入れたいと考えるでしょう。
不倫をした者としては、条項を破るつもりはないものの、言いがかりをつけられるなど、紛争が再燃してしまうのではないかと不安に感じ、条項を削除したいと考えるでしょう。
そのため、違約金条項については交渉力により示談書に記載されるかどうか異なります。
また、違約金の金額については、あまり高額すぎると公序良俗に反するものとして無効となる可能性があります。
他方で、違約金の金額が安すぎると、実効性を確保できません。
そのため、違約金の金額は、違反した内容ごとに妥当な金額にするべきでしょう。
例えば、接触禁止条項への違反については数十万円程度にしておくことが多いように感じます。
3-6 第6条:口外禁止条項
口外禁止条項については、入れておいた方がいいでしょう。
双方にとって利益のある条項ですので、そこまで議論の対象となることは少ないですが、SNSなどが普及している現代においては、インターネットへの書き込みなども含めて広く例示しておくといいでしょう
また、口外禁止義務を負うのが誰かということについては、念のため確認しましょう。
例えば、自分だけが口外禁止義務を負うような示談書となっていることがありますので、注意が必要です。
3-7 第7条:清算条項
清算条項を入れることで、示談書を作成した日までに生じた事項については、お互いに、合意書に記載したもの以外は請求することができなくなります。
紛争を解決したことを確認するものなので、示談書を作成する際には不可欠の条項です。
ただし、当事者間に不倫問題以外にもトラブルがあるような場合には、清算条項を入れてしまうと、不倫問題とは関係ない権利まで消滅してしまうリスクがあります。
そのため、不倫問題以外にもトラブルがあるような場合には、清算条項の中に「本件について」という文言を入れて、清算する範囲を制限します。
3-8 追加1:求償権の放棄条項
不倫をした者は、不倫慰謝料の責任について連帯して負担することになりますので、本来であれば慰謝料の支払いをした後に、もう一方の当事者に一部を求償することができます。
しかし、不倫をした者は、不倫をされた者から、求償権を行使しないように求められることがあります。
この場合には、求償権を放棄する代わりに不倫をされた者に対して支払う慰謝料の金額を減額するように交渉していくことになります。
求償権については以下の記事で詳しく解説しています。
3-9 追加2:遅延損害金条項
法定利率が年3%であり、利息制限法における遅延損害金の上限利率が年14.6%とされているため、年3%~年14.6%の間で交渉することが多いでしょう。
3-10 追加3:不倫を繰り返さない条項
第●条 丙は、甲に対して、丙が前条の規定に違反した場合には、その違約金として、金500万円を支払うことを約束する。
第●条 乙は、甲に対して、乙が前条の規定に違反した場合には、その違約金として、金500万円を支払うことを約束する。
接触を繰り返す場合と不倫を繰り返す場合で違約金の金額を区別するような場合には、接触禁止の他にも、不倫を繰り返さない条項を入れることもあります。
4章 特殊ケース|不倫慰謝料と複数人間での示談書テンプレート【ひな型ダウンロード】
第3章で紹介したテンプレートについては、「不倫をした人1人+不倫をされた人1人」の間で示談書を作成する典型的なケースでした。
しかし、実際には、不倫問題については3人以上がトラブルに関わることになりますので、三者間や四者間で示談書を作成しておくことが望ましい場合もあります。
そのため、第4章では以下の順により複数人間での示談書を作成する特殊ケースについて説明していきます。
・四者間での示談書|不倫した2人+被害者1人【W不倫のケース】
4-1 三者間での示談書|不倫した2人+被害者1人
不倫当事者間においての法律関係を清算することを明確化したい場合には、三者間での示談書とするケースもあります。
不倫当事者間において求償権を放棄するとの約束を合意することでより確実に求償権の行使を防げますし、他にも不倫当事者間における慰謝料請求やその他紛争を防止できます。
例えば、高額のデート代の負担が問題となるケースでは、後日その分担などが問題となることもありますが、このようなリスクも併せて解消できます。
4-2 四者間での示談書|不倫した2人+被害者2人【W不倫のケース】
ダブル(w)不倫のケース、つまり既婚者同士の不倫の場合には、一方の被害者の慰謝料請求の問題を解決しても、他方の被害者の慰謝料請求の問題は残ることになります。
夫婦間では財布は一体となっていることも多いので、不倫相手から慰謝料を獲得した後に、不倫相手の配偶者から慰謝料をされた場合には、獲得した慰謝料と同程度の金額が夫婦の財布から出ていってしまうリスクがあります。
このように、他方の被害者からの慰謝料請求の問題も一括で解決するために四者間で示談書を作成することがあります。
テンプレートの示談書は、「甲乙夫婦」対「丙丁夫婦」の法律関係を解決することを主眼に置いた示談書となっております。
上記示談書では、甲と乙、丙と丁の法律関係(家庭の中の法律関係)までは清算していないので、対外的な法律関係を清算した後に、必要があれば家庭内の法律関係の清算も行うことになります。
5章 有利な示談書を作る3つのコツ
有利な示談書を作るには、いくつかのコツがあります。
通常はたくさん示談書を作成する中で身についていくものですが、そのポイントを知ることで経験が少ない方でも格段に示談書の質を上げることができるはずです。
有利な示談書を作るコツのうち、わかりやすいものを3つ挙げると以下のとおりです。
コツ1:交渉可能な部分を知る
コツ2:条項ごとの交渉方法を知る
コツ3:相場観を知る
それでは順番に説明していきます。
5-1 コツ1:交渉可能な部分を知る
有利な示談書を作るコツの1つ目は、交渉可能な部分を知ることです。
示談書には交渉可能な部分と交渉できない部分があります。
具体的には、各条項のうち交渉可能な部分の例を挙げると以下のとおりです。
これらの部分について交渉をするかどうか検討するといいでしょう。
5-2 コツ2:条項ごとの交渉方法を知る
有利な示談書を作るコツの2つ目は、条項ごとの交渉方法を知ることです。
示談書の条項ごとに交渉方法が異なります。
また、1つ1つの条項について相談するのみではなく、別の条項同士が影響するような部分については、併せて交渉を行うこともあります。
例えば、「求償権の放棄」や「支払い方法[一括か分割か]」などについては、慰謝料の金額に影響を与えます。
例えば、不倫をされた者が違約金条項を入れたいとの申し出をした場合には、不倫をした者は例外が認められる場合を明確にするなどして、リスクをおさえたいと考えるでしょう。
5-3 コツ3:相場観を知る
有利な示談書を作るコツの3つ目は、相場観を知ることです。
各条項の数字が入るような部分については、おおよその相場観を掴んでおくことが大切です。
相場からかけ離れた提案をしても交渉になりませんので、相場をおさえたうえで交渉をしていくといいでしょう。
不倫の示談書の各条項の相場観を表にすると以下のとおりです。
不倫慰謝料の相場についてより詳しく表にする以下のとおりです。
不倫慰謝料の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
6章 サインしてしまったら撤回はできる?不倫の示談書が無効になる場合3つ
不倫示談書にサインしてしまったら、原則として、撤回することはできません。
ただし、撤回ができない場合であっても、その効力が無効になる場合があります。
具体的には、不倫の示談書が無効になる場合は以下の3つのケースです。
ケース2:騙された場合【詐欺】・勘違いによる場合【錯誤】
ケース3:本意ではなく、かつ、相手方もこれを知っていたか知り得た場合【心裡留保】
もっとも、上記3つのケースに該当することを立証するのは容易ではないため、安易にサインしないように十分に注意してください。
それでは、各ケースについて簡単に説明していきます。
6-1 ケース1:害悪を示されて脅された場合【強迫】
不倫の示談書が無効になる場合の1つ目は、害悪を示されて脅された場合において、後日、示談を取り消す意思を示した場合です。
民法は、強迫による意思表示について取り消しを認めているからです。
民法96条(詐欺又は強迫)
「…強迫による意思表示は、取り消すことができる。」
例えば、不倫をされた者が感情的になってしまい、示談書を作成するまで帰らせないという態度を取った場合や怒鳴りつける、暴力を振るうなどの態様をした場合などです。
不倫事件では、感情的になりやすいので、このような状況については、十分に注意する必要があります。
6-2 ケース2:騙された場合【詐欺】・勘違いによる場合【錯誤】
不倫の示談書が無効になる場合の2つ目は、騙された場合・勘違いによる場合において、後日、示談を取り消す意思を示した場合です。
民法は、錯誤や詐欺による意思表示を取り消すことができるとしているためです。
民法95条(錯誤)
「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」
一「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」
二「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」民法96条(詐欺又は強迫)
「詐欺…による意思表示は、取り消すことができる。」
例えば、不倫をされた者が、実際にはただの恋人関係にすぎないにもかかわらず、婚姻関係にあると虚偽を述べて、不倫をした者がそれを信じてしまったような場合です。
6-3 ケース3:本意ではなく、かつ、相手方もこれを知っていたか知り得た場合【心裡留保】
不倫の示談書が無効になる場合の3つ目は、本意ではなく、かつ、相手方もこれを知っていたか知り得た場合です。
民法は、心裡留保による意思表示は、相手方が真意でないことを知り又は知ることができたときは、無効としているためです。
心裡留保というのは、あなた自身が真実でないことを知ってした意思表示のことです。つまり、あなた自身が慰謝料を支払うつもりがないと考えているのに、慰謝料を支払うと述べることがこれにあたります。
民法93条(心裡留保)
1「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。」
例えば、ひとまずその場を逃れるために1500万円の慰謝料を支払うとの示談書にサインしてしまったような場合です。
1500万円も慰謝料は、通常は、不倫慰謝料の相場を大きく超えていますので、本心から支払う意思があったとは考えにくいですし、相手方もそれを知ることができたと言えるでしょう。
7章 不倫慰謝料の示談書を守らなかった場合の末路
不倫慰謝料の示談書を締結したのにこれを守らなかった者は、様々な不利益を受ける可能性があります。
守らなくても何らのペナルティがないのであれば、そのような示談書を作成する実益に乏しいので、示談書を作成する際には示談書が守られるように工夫して作成することになります。
不倫慰謝料の示談書を守らなかった場合の末路としては、例えば以下の3つがあります。
末路2:遅延損害金まで請求される
末路3:違約金を請求される
7-1 末路1:訴訟を提起されて最後は強制執行される
不倫慰謝料の示談書を守らなかった場合の末路の1つ目は、訴訟を提起されて最後は強制執行されることです。
示談書が守られなかったとしても、公正証書にしていない限りは、直ちに差し押さえなどの強制執行をすることはできません。
まずは訴訟を提起して判決を得る必要があります。つまり、裁判所のお墨付きがなければ強制執行をできないのです。
ただし、訴訟では示談書を証拠として提出することにより、示談が成立していることやその内容を立証できますので、一から不倫の事実を立証する必要はありません。
そのため、示談書が守られなかった場合には、示談書を証拠として提出されて敗訴することになり、その後、財産や給与を差し押さえられるなど強制的な措置を行われることになります。
7-2 末路2:遅延損害金まで請求される
不倫慰謝料の示談書を守らなかった場合の末路の2つ目は、遅延損害金まで請求されることです。
遅延損害金条項を示談書に入れていなくても法定利率(年3%[令和3年12月現在])により遅延損害金を請求されることになります。
また、遅延損害金条項を入れている場合には、それ以上の遅延損害金を請求される可能性がございます。
そのため、慰謝料や解決金については支払いが遅れれば遅れるほど、支払う金額が増えていくことになります。
7-3 末路3:違約金を請求される
不倫慰謝料の示談書を守らなかった場合の末路の3つ目は、違約金を請求されることです。
接触禁止条項や不倫を繰り返さない条項に違反した場合について、違約金の規程を設けていた場合には違約金を請求されることになります。
仮に違約金の条項を定めていなかったとしても、既に記載されている慰謝料とは別に、新たに慰謝料を請求される可能性もございます。
8章 不倫慰謝料の示談書によくある悩み13個
不倫慰謝料の示談書によくある悩みとしては、以下の13個があります。
Q2 押印する印鑑は三文判でもいい?
Q3 タイトルは合意書や覚書でもいい?
Q4 印刷する紙のサイズは?
Q5 何部作ればいい?
Q6 2枚以上になるときはどうすればいい?
Q7 記入する日付はいつにすればいい?
Q8 示談書に住所は記載しなければならない?
Q9 示談書に印紙は貼るべき?
Q10 示談書に効力がある期間は?(離婚後はどうなる?)
Q11 示談書は何年間とっておけばいいの?
Q12 公正証書にした方がいい?
Q13 不倫示談書は自分で作成しても効力はある?
それではこれらの悩みを1つずつ解消していきましょう。
1 示談書の案は誰が作るの?
つまり、どちらが作ってもいいのです。しかし、基本的に最初に提示された示談書の案をベースに加筆修正等を行いますので、細か言い回しなどは維持される部分が多くなります。
その意味において、自分の望む条項や文言を可能な限り反映させたい場合には、自分が先にベースとなる案を作成するのがよいでしょう。
2 押印する印鑑は三文判でもいい?
3 タイトルは合意書や覚書でもいい?
4 何部作ればいい?
例えば、二者間で示談する場合は二部、三者間で示談する場合は三部、四者間で示談する場合は四部となります。
なお、2部以上作るときには、文書の関連性を示すために、割印(2つ以上の文書にハンコをまたがるように押すもの)を押します。
5 2枚以上になるときはどうすればいい?
2枚以上になるときには、ホッチキスで留めたうえで、契印(両ページにまたがって押すもの)を押します。2枚1条の契約書が1つの連続した文書であることを示すためです。
これにより、文書を一部のみ抜き取ったり、後から差し替えたりすることを防止できます。
6 印刷する紙のサイズは?
ただし、2枚以上になると契印が必要となり煩雑なため、両面印刷にしたり、A3に2in1で印刷して半分に折ったりすることで1枚の紙に複数ページ記載することがあります。
7 記入する日付はいつにすればいい?
直接当事者が集まって署名押印する場合には、その日付を記入することが通常でしょう。
郵送などの場合には、多いのは、最後に署名押印をした人が、その日付を手書きで記入するパターンです。他にも、示談書の内容について双方が了解した日を不動文字で記入するパターンもあります。
8 示談書に住所は記載しなければならない?
ただし、慣例上住所を記載することが一般的です。もしも、示談書が守られなかった場合には、訴訟を提起することも検討する必要がありますが、その場合に相手方の住所がわからないと苦労することになりますので注意しましょう。
9 示談書に印紙は貼るべき?
10 示談書に効力がある期間は?(離婚後はどうなる?)
ただし、示談書から発生する金銭債権には5年の時効がありますので注意が必要です。
なお、離婚後については、接触禁止条項等の効力は及ばなくなります。離婚後の交友関係まで拘束することはできないためです。
11 示談書は何年間とっておけばいいの?
また、金銭の支払い以外にも、接触禁止や違約金などの条項が入っている場合には、金銭の支払いがされた後も示談書を用いる可能性はありますので、やはり数年間は保管しておくべきです。
12 公正証書にした方がいい?
なぜなら、公正証書にした上で、執行認諾文言を入れておくことにより、示談書が守られなかった場合に訴訟を経ずに、差し押さえを行うことができるためです。
ただし、公正証書にする場合には、①数万円程度の公証人費用がかかる、②直接公証役場に行く必要などがあるので相手方を説得するのに労力がかかるといったデメリットもあります。
13 不倫示談書は自分で作成しても効力はある?
9章 不倫慰謝料の示談交渉はリバティ・ベル法律事務所へ
不倫慰謝料の示談交渉は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
不倫慰謝料については、交渉力や知識の格差が金額に大きく影響する分野です。
リバティ・ベル法律事務所は、不倫慰謝料問題に注力しており、この分野に圧倒的な知識とノウハウを持っています。
少数精鋭でご依頼を受けた一つ一つの案件について、不倫慰謝料問題に強い弁護士が丁寧に向き合っているところが弊所の強みです。
不倫慰謝料については、ご依頼者様の負担を軽減するために初回相談無料にて対応しておりますのでお気軽にお問い合わせください。
10章 まとめ
以上のとおり、今回は、浮気・不倫の示談書を作成する方法について、誰でもわかるように詳しく解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・不倫の示談書とは、トラブルについてどのように解決するかを決めた際に、約束した内容を記載しておく書面です。
・不倫慰謝料問題の示談書を作成する流れは、通常、以下のとおりです。
ステップ1:金額の交渉
ステップ2:示談書案の提示
ステップ3:示談書案の修正
ステップ4:署名押印
・不倫示談書において最低限知っておいていただきたい基本的な条項は以下の7つです。
第1条:謝罪の条項
第2条:支払い義務の条項
第3条:支払い方法の条項
第4条:接触禁止条項
第5条:違約金条項
第6条:口外禁止条項
第7条:清算条項
・有利な示談書を作るコツのうち、わかりやすいものを3つ挙げると以下のとおりです。
コツ1:交渉可能な部分を知る
コツ2:条項ごとの交渉方法を知る
コツ3:相場観を知る
・不倫示談書にサインしてしまったら、原則として、撤回することはできません。ただし、例外的に以下の3つのケースでは不倫示談書は無効となります。
ケース1:害悪を示されて脅された場合【強迫】
ケース2:騙された場合【詐欺】・勘違いによる場合【錯誤】
ケース3:本意ではなく、かつ、相手方もこれを知っていたか知り得た場合【心裡留保】
この記事が不倫示談書の作り方がわからず悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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