不当解雇とは何か知りたいと悩んでいませんか?
企業が経営活動をしていれば、従業員を解雇しなければいけない場面に直面することもあるでしょう。
企業の経営者や人事担当者としては、可能な限り、不当解雇とは言われないように手を尽くしいたところです。
不当解雇とは、法律や就業規則等の条件を満たしていない解雇のことをいいます。
不当解雇には、無効な解雇と違法な解雇の2種類があります。
不当解雇とされてしまう条件としては、その多くが、客観的に合理性がなく社会通念上相当とはいえない解雇権の濫用と言われる場合です。
例えば、以下のようなケースでは、不当解雇となります。
ケース2:業務改善指導をしていない
ケース3:配置転換等の解雇回避の検討をしていない
不当解雇について特に重要な判例を5つだけ厳選すると以下のとおりです。
実は、不当解雇とは何かを十分に調べずに、行き当たりばったりで解雇をしてしまい大きなリスクを負うこととになってしまう企業が後をたちません。
この記事をとおして、少しでも、多くの企業経営者や人事担当者の方に、不当解雇がどのようなものかを知っていただければと思います。
今回は、不当解雇とは何か、正当な解雇との違いを説明したうえで、不当解雇となる条件や不当解雇となるケース3つを解説します。
具体的には、以下の流れで説明します。
この記事を読めば、不当解雇と言われないためにどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
1章 不当解雇とは?正当な解雇との違い
不当解雇とは、法律や就業規則等の条件を満たしていない解雇のことをいいます。
不当解雇の明確な定義が法律や判例で定義されたわけではありません。不当解雇というのは、社会一般において使われる言葉です。
例えば、企業が従業員に対して不当解雇を行うと、従業員から不当な解雇であると言われて、紛争化することになります。
不当解雇とは何かを十分に調べずに、行き当たりばったりで解雇をしてしまうと、不当解雇と言われてしまいがちです。
これに対して、正当な解雇というのは、法律や就業規則等の条件を満たしている解雇です。
解雇を行う前からしっかりと準備や段階を踏んでおくことで、正当な解雇となりやすくなります。
2章 不当解雇の種類2つ|不当解雇とされた場合の影響
不当解雇には、「無効な解雇」と「違法な解雇」の2種類があります。
違法な解雇とされるハードルは高く、無効な解雇であっても、違法とまで認定される解雇は一部です。
濫用として無効となるだけではなく、とくに悪質性の高い解雇が違法と認定される傾向にあります。
それでは、「無効な解雇」と「違法な解雇」について、それぞれ説明していきます。
2-1 種類1:無効な解雇→従業員の復職+バックペイ
無効な解雇とは、解雇の効力が生じたとは認められない解雇のことです。
客観的に合理性を欠き社会通念上相当とは言えず濫用となる場合には、解雇は無効になるとされています。
無効な解雇になった場合には、解雇の効力が認められないことになりますので、従業員は退職したことにはならず復職することになります。
また、解雇が無効になった場合は、従業員が解雇日以降に出勤できなかったのは企業側に原因があったことになります。
そのため、企業は、従業員から、解雇日から解決日までの賃金を支払うように請求されることになります。
2-2 種類2:違法な解雇→慰謝料等の損害賠償
違法な解雇とは、従業員の権利を侵害し不法行為となる解雇のことです。
濫用となるだけでは違法とはされず、とくに悪質性の高い解雇のみが違法とされます。
違法な解雇になった場合には、従業員から、慰謝料や弁護士費用等の損害賠償を請求されることになります。
違法な解雇と慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しています。
3章 不当解雇となる条件
不当解雇となる条件として多いのは、解雇権濫用として無効となる解雇です。
解雇権濫用となるのは、客観的に合理性がなく社会通念上相当性を欠く場合であり、労働契約法に規定されています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
具体的にどのような場合に解雇権濫用となるかについては、類型ごとに判例が蓄積されています。
例えば、人事異動の拒否を理由とする解雇の条件については、以下の記事で整理しています。
通勤手当の不正受給を理由とする解雇の条件については、以下の記事で整理しています。
無断欠勤による解雇の条件については、以下の記事で整理しています。
従業員による横領と解雇の条件については、以下の記事で整理しています。
4章 不当解雇となるケース3つ
不当解雇の基準は合理性や相当性といった抽象的なものであり、これだけでは不当解雇に該当するケースのイメージが付きにくくなっています。
この章では、不当解雇となるケースにつき、もう少し具体的なイメージをお伝えさせていただきます。
例えば、不当解雇となるケースを3つ挙げると以下のとおりです。
ケース2:業務改善指導をしていない
ケース3:配置転換等の解雇回避の検討をしていない
それでは、各ケースについて順番に説明していきます。
4-1 ケース1:根拠となる具体的な事実やエピソードがない
不当解雇となるケースの1つ目は、根拠となる具体的な事実やエピソードがない場合です。
解雇が正当とされるためには、客観的に合理的な理由が必要となります。
例えば、単に「パフォーマンスが不足している」、「コミュニケーションがとれない」などの評価のみを述べるのでは、客観的に合理的とは言えません。
企業としては、いかなるエピソードからそのように言えるかを具体的に指摘する必要があります。
そのため、根拠となる具体的な事実やエピソードがない場合には、不当解雇となりがちです。
4-2 ケース2:業務改善指導をしていない
不当解雇となるケースの2つ目は、業務改善指導をしていない場合です。
不当解雇が正当とされるには、業務改善指導を尽くしても、将来にわたり雇用を継続できないことが必要となります。
例えば、企業が何らの業務改善指導を尽くしていない場合には、指導を行えば雇用の継続が可能であったとの認定されることがあります。
そのため、業務改善指導をしていない場合には、不当解雇となりがちです。
4-3 ケース3:配置転換等の解雇回避の検討をしていない
不当解雇となるケースの3つ目は、配置転換等の解雇回避の検討をしていない場合です。
解雇は最終手段となりますので、解雇以外の方法で雇用を継続することができないかの検討を尽くす必要があります。
例えば、従業員から具体的に他の部署への異動にも応じる意思が示されているような場合には、これについてどのような検討をしたのかということを問われることになります。
そのため、配置転換等の解雇回避の検討をしていない場合には、不当解雇となりがちです。
5章 不当解雇に関する重要判例厳選5つ
不当解雇に関する判例については、これまでに膨大な量が蓄積されています。
これらの判例を分析していくことで、企業が解雇するうえで注意しなければいけない事項が見えてきます。
不当解雇に関する重要な判例を5つだけ厳選すると以下のとおりです。
それでは、これらの判例について、簡単に説明します。
5-1 解雇権濫用法理|日本食塩事件
この判例では、「客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がないかぎり、解雇権の濫用として無効である」と判示されました。
それ以降、判例において、客観理的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効になるとの法理が確立していくことになります。
その後、平成15年に労働基準法に解雇権濫用法理が明記され、現在ではこの規定は労働契約法に移されました。
5-2 懲戒解雇の場合における懲戒の事由と種別|フジ興産事件
この判例では、懲戒をするには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておき、これを労働者に周知させる手続きを取ることが必要とされました。
懲戒解雇に関する重要な判例です。
5-3 勤務成績不良を理由とする解雇|ブルームバーグ・エル・ピー事件
この判例では、成績不良を理由とする解雇について、労働者に求められている職務能力を検討した上で、①職務能力の低下が労働契約の継続を期待することができない程に重大なものか、②会社が労働者に改善矯正を促し、努力反省の機会を与えたのに改善がされなかったか否か、③今後の指導による改善可能性の見込みの有無等の事情を総合考慮して、正当性を判断するとされました。
成績不良やパフォーマンス不足の解雇に関する重要な判例です。
5-4 会社の経営不振を理由とする解雇|大村野上事件
この判例は、会社の経営不振を理由とする解雇につき、人員削減の必要性、解雇回避努力人選の合理性、手続きの相当性といった基準により、濫用となるかを判断しました。
整理解雇やリストラに関する重要な判例です。
5-5 試用期間満了による本採用拒否|三菱樹脂事件
この判例は、試用期間満了を理由とする本採用拒否につき、雇い入れ後における解雇にあたるとしたうえで、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合に、引き続き雇用しておくことが、客観的に相当であると認められる場合に許容されるとしました。
ただし、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められて然るべきとされました。
試用期間満了による本採用拒否に関する重要な判例です。
6章 不当解雇に関するよくある疑問5つ
不当解雇につきよくある疑問としては、以下の5つがあります。
Q2:突然の解雇は違法となる?
Q3:試用期間中の解雇も不当となる?
Q4:退職届を出してもらっても不当解雇となる?
Q5:不当解雇をしてしまった場合には撤回できる?
それでは、これらの疑問を順番に解消していきます。
6-1 Q1:不当解雇で訴えられたらどうなる?
不当解雇で訴えられたら、以下のような流れで進んでいくことになります。
流れ2:回答書を出す
流れ3:交渉
流れ4:労働審判
流れ5:訴訟
不当解雇で訴えられた場合の対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
6-2 Q2:突然の解雇は違法となる?
突然の解雇については、以下のような場合には違法となることがあります。
ケース2:業務改善の機会を与えないケース
ケース3:配置転換等の解雇回避措置を取らないケース
ケース4:懲戒解雇で弁明の機会の付与等を欠くケース
6-3 Q3:試用期間中の解雇も不当となる?
試用期間中の解雇も、不当になることがあります。
試用期間中と言っても、既に雇用した後であるため、解雇権濫用法理が適用されるためです。
ただし、通常の解雇よりも広い範囲で解雇事由が認められて然るべきとされています。
6-4 Q4:退職届を出してもらっても不当解雇となる?
従業員から退職届が提出されたことにより退職処理をした場合には、不当解雇とはなりません。
解雇とは、労働者の同意なく、一方的に退職させた場合のことをいうためです。労働者が自分の意志に基づいて辞めた場合には、解雇権濫用法理は適用されません。
6-5 Q5:不当解雇をしてしまった場合には撤回できる?
企業は、一方的に解雇を撤回することはできず、撤回には従業員の同意が必要とされています。
ただし、従業員が解雇を争ってきている場合には、撤回を行うことにより、バックペイを回避できたり、慰謝料が否定される方向の事情となったりするメリットがあります。
解雇の撤回については、以下の記事で詳しく解説しています。
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、不当解雇とは何か、正当な解雇との違いを説明したうえで、不当解雇となる条件や不当解雇となるケース3つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・不当解雇とは、法律や就業規則等の条件を満たしていない解雇のことをいいます。
・不当解雇には、「無効な解雇」と「違法な解雇」の2種類があります。
・不当解雇となる条件として多いのは、解雇権濫用として無効となる解雇です。
・不当解雇となるケースを3つ挙げると以下のとおりです。
ケース1:根拠となる具体的な事実やエピソードがない
ケース2:業務改善指導をしていない
ケース3:配置転換等の解雇回避の検討をしていない
この記事が不当解雇とはどのようなものか知りたいと考えている、企業の経営者や人事担当者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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