不当解雇で従業員から訴えられてしまい困っていませんか?
解雇のハードルが高いということは聞いたことがある方もいるでしょうが、実際に訴えられた経験のある会社は多くはないでしょう。
不当解雇を訴えられたら以下のような流れで進んでいきます。
流れ2:回答書を出す
流れ3:交渉
流れ4:労働審判
流れ5:訴訟
不当解雇で訴えられてしまった場合のリスクには、とくに大きなものを2つ挙げると、「辞めてもらうことができない(戻ってきてしまう)リスク」と「遡って賃金を支払うことになるリスク(バックペイ)」があります。
例えば、月額賃金25万円の従業員を解雇し、1年間その有効性を争った後に敗訴すると、労働者が会社に戻ってくるだけではなく、遡って300万円の賃金の支払いを命じられることがあります。
これに対して、不当解雇における退職前提の和解をする場合の相場は、賃金の3か月分~6か月分と言われています。
そのため、会社としては、不当解雇で訴えられてしまった場合には、見通しを検討したうえで、場合によっては早期に和解による解決を目指すことも視野に入れて対応していくことになります。
ただし、和解をする場合であっても、判決になった場合に解雇が認められる可能性がどの程度あるかということが、金額に大きく影響してきます。
従って、不当解雇で訴えられた場合には、解雇事由を具体的に整理したうえで客観的な証拠を収集していくことが重要となります。
今回は、不当解雇で訴えられた場合の流れを説明したうえで、どのように対処していけばいいのか、賠償金や弁護士費用の相場はどの程度なのかを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、不当解雇で訴えられた場合の悩みが解消するはずです。
目次
1章 不当解雇で訴えられたら?解決までの流れ
不当解雇で訴えられたら、通常、以下のような流れで進んでいきます。
流れ2:回答書を出す
流れ3:交渉
流れ4:労働審判
流れ5:訴訟
不当解雇の特色上、手続きが進んでいくにつれ、解決に要する費用も増加していってしまいます。
以下では、解決までの流れについて1つずつ説明していきます。
1-1 流れ1:通知書が届く
不当解雇で訴えられる場合には、まず労働者から通知書が届くことになります。
多いのは、解雇通知書を出した後に、労働者の代理人弁護士から、解雇の撤回と業務指示を求める内容証明郵便が届くケースです。
例えば、以下のような通知書が届きます。
1-2 流れ2:回答書を出す
これに対して、会社は、回答書を出すことになります。
回答書については、以下の3通りが考えられます。
“回答書のパターン3つ”
パターン1:撤回には一切応じられないとの回答
パターン2:退職を前提とした協議には応じるとの回答
パターン3:解雇を撤回するとの回答
1-3 流れ3:交渉
上記の通知書と回答書により、双方の意向が明確になってきますので、話し合いによる解決が可能かどうか交渉をします。
電話や書面、対面等の方法で協議を行いますが、事案ごとに適切な方法を検討します。
1-4 流れ4:労働審判
交渉による解決が難しい場合には、労働審判の申し立てがされることが多いです。
労働審判というのは、全3回の期日において、早期に調停による解決を目指す手続きです。平均的な審理期間は3か月程度です。
第1回期日において、事実関係のヒアリングが行われます。裁判所の心証を踏まえて、双方が合意に至れば、和解が成立します。
第1回期日で和解が成立することもありますし、第2回期日や第3回期日に持ち越しとなることもあります。
和解が成立しない場合には、裁判所が審判として一時的な判断を下します。審判には双方が異議を出すことができ、いずれかが異議を出した場合には訴訟に移行します。
1-5 流れ5:訴訟
訴訟は、判決に向けて、双方が主張立証していく手続きです。
通常、1か月ごとに交互に書面を提出していきます。
判決までの平均的な審理期間は1年と言われています。
2章 不当解雇で訴えられた場合の会社のリスク4つ|解雇のハードルは非常に高い
不当解雇を訴えられた場合には、会社にとって大きなリスクを抱えることになります。
不当解雇は、法律上、厳格な要件が定められており、非常に高いハードルがあるためです。
具体的には、不当解雇で訴えられた場合のリスクには以下のようなものがあります。
リスク2:遡って賃金を支払うことになる(バックペイ)
リスク3:慰謝料を支払うことになる
リスク4:残業代等の付随的な問題が顕在化する
2-1 辞めてもらうことができない(戻ってきてしまう)
不当解雇で訴えられた場合の会社のリスクの1つ目は、その従業員に辞めてもらうことができない(戻ってきてしまう)ことです。
なぜなら、解雇が無効であれば、労働者が退職する理由がなくなり、その労働者はまだその会社の従業員であることになるためです。
例えば、令和4年11月30日付けで解雇した場合において、令和5年4月25日に解雇が無効であるとされた場合には、令和4年11月30日以降もその会社の従業員であることになります。
令和4年11月30日から令和4年4月25日までの間の社会保険料の会社負担分についても負担しなければなりません。
2-2 遡って賃金を支払うことになる(バックペイ)
不当解雇で訴えられた場合の会社のリスクの2つ目は、遡って賃金を支払うことになること(バックペイ)です。
解雇が無効であるとされた場合には、解雇日以降、その従業員が働くことができなかったのは、会社側に原因があることになります。
そのため、解雇日以降、その従業員が働いていなかった期間の賃金を後から遡って支払わなければなりません。
例えば、月額賃金25万円の従業員を解雇し、1年間その有効性を争った後に敗訴すると、労働者が会社に戻ってくるだけではなく、遡って300万円の賃金の支払いを命じられることがあります。
そのため、不当解雇が訴えられた場合には、会社にとって、経済的にも大きなリスクを抱えることになるのです。
2-3 慰謝料を支払うことになる
不当解雇で訴えられた場合の会社のリスクの3つ目は、慰謝料の支払いを命じられることもあることです。
解雇が無効になり、遡って賃金が支払われるだけでは癒えない精神的苦痛が生じているとされる場合には、慰謝料の支払いを命じられることがあります。
とくに悪質な場合に限られますが、慰謝料が認められる場合の相場は50万円~100万円程度となります。
2-4 残業代等の付随的な問題が顕在化する
不当解雇で訴えられた場合の会社のリスクの4つ目は、残業代等の付随的な問題が顕在化することです。
労働者は不当解雇を訴える場合には、これまで就労期間中に減額された賃金や未払い残業代、ハラスメント慰謝料なども併せて請求してくることがよくあります。
とくに残業代については、今まで全く支払いを行っていなかったようなケースでは、数百万円の未払いが存在することもあり、解雇のバックペイも加わると、1000万円以上の支払いが命じられてしまうこともあります。
不当解雇を訴えられた場合には、上記のようなリスクに加えて、時間的・労力的な負担も大きいというデメリットがあります。
解雇事由については、基本的に、会社において主張立証する必要があります。
例えば、その従業員の能力が不足していたと説明するのであれば、何月何日のいかなる出来事をもとに、なぜ能力が不足していたというのか等を指摘する必要があります。
また、労働者側は、その出来事が事実とは異なるといってくることもありますので、解雇事由を立証するための客観的な証拠を収集しておく必要があります。
そうすると、不当解雇を訴えられた場合には、日々の業務改善指導の記録や面談の録音や記録、メールやチャットにおけるやり取りを集めていく必要があります。
また、客観的な証拠が少ない場合には、従業員に対して、ヒアリングを行い、それを陳述書という形にして、裁判所に提出できるようにします。
更に、労働者側の反論が事実と異なるかどうか、異なるのであればどこがなぜ異なるのかということを確認していく必要があります。
そのため、不当解雇を訴えられた場合には、時間的・労力的にも大きな負担が生じることになります。
3章 不当解雇で訴えられた場合の賠償金の相場|賃金の3か月分~6か月分
不当解雇で訴えられた場合の賠償金(解決金)の相場は、賃金の3か月分~6か月分と言われています。
解決金というのは、紛争を解決するために支払う金銭のことです。法的に支払い義務のあるものではありませんが、双方が合意することにより支払いが行われます。
例えば、不当解雇で訴えらえた場合には、退職してもらう代わりに、賃金の数か月分の支払いを行います。
他のバックペイの請求などは放棄してもらい、他に双方何らの請求権もないことを確認するので清算条項を入れます。
解決金の金額は、労働者が再就職するのに必要な期間や判決になった場合に支払うことになる賃金額等、労働者の復職の意思がどの程度追加等により決まることになります。
訴訟外の交渉、労働審判、訴訟と手続きが進んでいくにつれ、既に発生しているバックペイの金額が大きくなるため解決金の金額も大きくなる傾向にあります。
4章 不当解雇で訴えられた場合の弁護士費用の相場
不当解雇で訴えられた場合の弁護士費用の相場は、合計60万円~100万円程度です。
着手金 | 30万円~50万円 |
報酬金 | 30万円~50万円 |
着手金とは、弁護士に事件を依頼して、弁護士が実際に事件にとりかかるために必要となる費用です。
報酬金とは、弁護士に事件を依頼して、事件が実際に解決した場合に、その成功の程度に応じてかかる費用です。
5章 不当解雇で訴えられた場合の3つの対処法
不当解雇で訴えられた場合には、会社としては適切に対処していく必要があります。
何も対処しないでいると、解決に要する期間や労力が増加してしまうことになります。
具体的には、不当解雇で訴えられた場合の対処法としては、以下の3つがあります。
対処法2:訴訟外や労働審判における和解交渉
対処法3:解雇の撤回
それでは各対処法を順番に説明していきます。
5-1 対処法1:具体的事実の整理と客観的証拠の収集
不当解雇で訴えられた場合の対処法の1つ目は、具体的事実の整理と客観的証拠の収集です。
解雇の解決金額については、最終的な判決に至った場合の見通しに大きく左右されます。
そして、解雇が有効であるためには、客観的に合理的な理由が必要です。
客観的に合理的な理由が認められるには、抽象的に「期待していた能力に足りなかった」、「ミスが多かった」、「業務態度が悪かった」等の主張をするのでは足りません。
何月何日にどこでどのような業務をした際の出来事が解雇事由を基礎づけているのかを具体的に指摘する必要があります。
また、その出来事を証明するために業務指導記録やメール、チャット、成果物、面談の録音や記録、成績表等により立証していくことになります。
5-2 対処法2:訴訟外や労働審判における和解交渉
不当解雇で訴えられた場合の対処法の2つ目は、訴訟外や労働審判における和解交渉による解決を目指すことです。
なぜなら、解雇の見通し次第では、判決に至った場合には、従業員としての地位のみならず、数年分のバックペイが認容されてしまうリスクがあるためです。
早期に解決することにより、バックペイの金額が少ない段階で和解金額を交渉することができます。
そのため、解雇の有効性に関して判決に至った場合にはどのような判断になるのかという見通しを立てたうえで、和解交渉を行っていきます。
5-3 対処法3:解雇の撤回
不当解雇で訴えられた場合の対処法の3つ目は、解雇を撤回することです。
なぜなら、解雇を撤回した後は、労働者は業務を行わなければ、賃金を請求することができないためです。
つまり、労務の提供を受けていないのに、賃金だけを支払うという自体を回避することができます。
例えば、会社側が解雇を撤回したのに、労働者が業務指示に従わなかったり、出勤してこなかったりする場合には、その期間については会社のせいで働けなかったことにはなりませんので、解雇が無効とされた場合でも賃金の支払い義務が発生しないことがあります。
そのため、訴えられた場合に解雇が無効との判決がされる可能性が大きい場合には、解雇を撤回することも一つの方法です。
6章 不当解雇で訴えられた場合にはリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
問題社員の解雇は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
解雇問題は専門性の高い分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇を争われた場合の見通しを分析したうえで、事前に準備を行い、極力リスクを減らしたうえで、紛争が顕在化した場合には適切に対処していく必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨をはじめとした人事労務に力を入れており、圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
リバティ・ベル法律事務所は、全国対応・オンライン相談可能で、最短即日でこの分野に注力している弁護士と相談することが可能です。
相談料は1時間まで1万円(消費税別)となっておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
7章 まとめ
以上のとおり、今回は、不当解雇で訴えられた場合の流れを説明したうえで、どのように対処していけばいいのか、賠償金や弁護士費用の相場はどの程度なのかを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・不当解雇を訴えられたら以下のような流れで進んでいきます。
流れ1:通知書が届く
流れ2:回答書を出す
流れ3:交渉
流れ4:労働審判
流れ5:訴訟
・不当解雇で訴えられた場合のリスクには以下のようなものがあります。
リスク1:辞めてもらうことができない(戻ってきてしまう)
リスク2:遡って賃金を支払うことになる(バックペイ)
リスク3:慰謝料を支払うことになる
リスク4:残業代等の付随的な問題が顕在化する
・不当解雇で訴えられた場合の賠償金(解決金)の相場は、賃金の3か月分~6か月分と言われています。
・不当解雇で訴えられた場合の弁護士費用の相場は、合計60万円~100万円程度です。
・不当解雇で訴えられた場合の対処法としては、以下の3つがあります。
対処法1:具体的事実の整理と客観的証拠の収集
対処法2:訴訟外や労働審判における和解交渉
対処法3:解雇の撤回
この記事が不当解雇で訴えられて困っている企業の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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