著作権譲渡契約書について知りたいと悩んでいませんか?
自社ブランドを維持向上させるためにも、著作権譲渡契約書の適切な定め方は押さえておきたいところです。
著作権譲渡契約書とは、著作物の著作権を譲渡するための契約書をいいます。
著作権は著作物を創作した人に帰属するとされており、これを譲渡することで譲受人が著作権者になります。
例えば、イラストレーターが制作したイラストや作曲家が創作した楽曲などは、著作物にあたり著作権を譲渡することができます。
しかし、著作者は様々な権利を有しており、中には著作者人格権のように譲渡できないものもあります。
実は、著作物を譲り受けても、著作者人格権が行使されてしまうと、著作物を自社に適した形へと変えられないといったこともあるのです。
この記事を通して、著作権譲渡契約書に定めるべき条項について知っていただければと思います。
今回は、著作権譲渡契約書とは何かを説明した上で、各条項のレビューポイントを解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、著作権譲渡契約書の作成方法がよくわかるはずです。
目次
1章 著作権譲渡契約書のテンプレート【無償・ひな形】
著作権譲渡契約書のテンプレートの |
2章 著作権譲渡契約書とは?
著作権譲渡契約書とは、著作物の著作権を譲渡するための契約書をいいます。
著作権には様々な権利が含まれており、例えば以下のような権利があります。
著作権譲渡契約では、これらの権利の全部ではなく、一部だけ譲渡するということもできます。
そのため、契約書がなければ当事者間でどのような権利を譲渡し、どのような取り決めをしたのかが不明確となってしまいます。
こうした事態を避けるため、契約書を作成し譲渡内容を明確にしておくことが重要になるのです。
3章 著作権譲渡契約書に入れておきたい条項10個|各レビューポイント
著作権譲渡契約では、権利関係が複雑になりやすいことから、契約書に入れておきたい条項がいくつかあります。
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項は以下の10個です。
条項2:譲渡代金
条項3:著作者人格権(※重要)
条項4:保証
条項5:著作権の登録
条項6:契約解除
条項7:損害賠償
条項8:反社会的勢力の排除
条項9:合意管轄
条項10:協議事項
それでは各条項について順番に解説していきます。
3-1 条項1:目的(※重要)
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項1個目は、目的です。
甲は、乙に対し、令和●年●月●日付で、甲の著作物(以下、「本著作物」という。)の著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含むがそれらに限られない。)を乙に譲渡し、乙はこれを譲り受けた。
目的条項では、当事者が著作権を譲渡するための契約であることを明らかにします。
具体的には、以下の事項を記載しておくことが望ましいです。
・譲受人が誰か
・譲渡される著作権の範囲(※重要)
・譲渡の日時
注意すべきは、著作権法27条(翻案権)と28条(二次著作物の利用権)の権利は、原則として譲渡者に権利が留保されることです(著作権法61条2項)。
つまり、翻案権と二次著作物の利用権を譲渡させるには、「著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)」といった趣旨の文言が必要になるのです。
3-2 条項2:譲渡代金
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項2個目は、譲渡代金です。
1 本著作物の譲渡代金は、●●円(税別)とする。
2 乙は、令和●年●月●日限り、甲の指定する口座に振り込み送金する方法により支払うものとする。なお、振り込み送金に関する費用は、乙の費用とする。
本著作物の譲渡代金は、無償とする。
著作権の譲渡が有償の場合、譲渡代金について定めることになります。
具体的には、以下の事項を記載しておくことが望ましいです。
・支払時期
・支払方法
・支払に必要な費用
他方で、譲渡が無償の場合には、無償であることを明らかにすることになります。
3-3 条項3:著作者人格権(※重要)
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項3個目は、著作者人格権です。
甲は、本著作物について著作者人格権を行使するときは、事前に乙の承諾を得なければならない。
甲は、本著作物について著作者人格権を行使しない。
著作者人格権とは、著作者の人格的利益を保護する権利をいいます。
著作者人格権は、以下のような権利を含みます。
著作者人格権は一身専属権とされており、他人に譲渡することができません(著作権法59条)。
しかし、譲渡人(著作者)が著作者人格権を行使できるとすると、譲受人は著作物の利用において不都合を被ることがあります。
例えば、著作物の提供に際して著作者の氏名を表示するよう求められたり、著作物の改変を制限されるおそれがあります。
そこで、譲受人は、譲渡人の著作者人格権の不行使を定め、著作物を柔軟に利用できるようにするのです。
3-4 条項4:保証
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項4個目は、保証です。
甲は、本著作物が第三者の著作権を侵害していないことを保証する。
著作物を安全に利用するためには、第三者の著作権を侵害していないことが重要になります。
なぜなら、第三者の著作権を侵害していると、著作物の利用停止を求められたり、損害賠償を請求されるおそれがあるためです。
そのため、第三者への権利侵害が生じないよう、また権利侵害が生じた場合の紛争拡大を防ぐため、第三者の著作権を侵害していないことの保証が必要になるのです。
3-5 条項5:著作権の登録
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項5個目は、著作権の登録です。
甲は、乙が本著作権の譲渡の登録をしようとする場合、これに協力する。ただし、登録の費用は、乙の負担とする。
著作権の登録は、第三者との関係で重要になります。
なぜなら、著作権の譲渡が登録されていなければ、同じく譲渡を受けた第三者に著作物を奪われてしまうためです(著作権法77条1号)。
しかし、著作権譲渡の登録をするためには、単独申請承諾書等の書類を提出する必要があり、譲渡人の協力が不可欠です。
そのため、譲受人は、登録手続を円滑に進めるためにも、譲渡人が登録手続に協力するよう定めましょう。
3-6 条項6:契約解除
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項6個目は、契約解除です。
1 甲及び乙は、相手方が次の各号の一に該当する場合、何らの通知又は催告をすることなく、直ちに本契約を解除することができる。
(1)本契約に定める条項に違反があったとき
(2)監督官庁より営業許可の取消し等の行政処分を受けたとき
(3)支払停止もしくは支払不能の状態に陥ったとき
(4)差押え、仮差押え、仮処分若しくは競売の申立て、公租公課の滞納処分、その他公権力による処分を受けたとき
(5)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算手続開始の申立てを受け、又は自ら申立てを行ったとき
(6)会社の解散、合併、分割、事業の全部若しくは重要な一部の譲渡の決議をしたとき
(7)その他、前各号に準じる事由が生じたとき
2 前項の規定により解除権を行使する者は、相手方の責めに帰すべき事由の有無を問わず、解除権を行使することができるものとする。
契約解除条項は、契約違反等があった場合に契約関係から速やかに離脱するための条項をいいます。
民法の規定で解除することもできますが、解除の理由に不明確な部分があるため、解除理由を明確にするため契約解除条項が定められやすいです。
契約解除条項では、以下の事項に着目して定めるといいでしょう。
・解除事由
・帰責性
契約解除条項におけるレビューポイントの内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
3-7 条項7:損害賠償
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項7個目は、損害賠償です。
甲及び乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えたときは、相手方に対し、その損害を賠償する責任を負う。
損害賠償条項とは、契約違反があった場合に備えて当事者が損害賠償の条件をあらかじめ定めておくものをいいます。
民法にも損害賠償の規定がありますが、当事者の合意によって自由に変更できるとされています。
そのため、契約に適した内容に変更するため、損害賠償条項が定められやすいです。
損害賠償条項では、以下の事項に着目して定めるといいでしょう。
・損害の範囲
・損害賠償の期間
損害賠償条項の具体的な修正例については、以下の記事で詳しく解説しています。
3-8 条項8:反社会的勢力の排除
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項8個目は、反社会的勢力の排除です。
1 甲および乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を表明し確約する。
(1) 次に掲げる事項に該当しないこと
イ 暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと
ロ 役員(取締役、執行役、執行役員、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと
(2) 反社会的勢力と社会的に非難される関係を有していないこと
(3) 不当な要求行為をしないこと
(4) その他、業務内容が公序良俗に違反すると認められるときる行為
2 甲及び乙は、相手方が前項に掲げる事項に違反した場合、何らの催告を要さずに本契約を解除することができる。
3 前項の解除は、解除した当事者による相手方に対する損害賠償を妨げない。ただし、解除された者は、相手方に対し一切の請求を行わない
反社条項とは、反社会的勢力を取引から排除するための規定をいいます。
反社条項の導入は義務ではありませんが、コンプライアンスを徹底する観点からは入れておくことが望ましいです。
反社条項では、以下の事項に着目して定めるといいでしょう。
・反社会的勢力と密接な関係を有する者の定義
・不当な要求の内容
・契約解除の可否
・損害賠償の可否
反社条項の具体的な修正内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
3-9 条項9:合意管轄
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項9個目は、合意管轄です。
本契約に関連する訴訟については、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
合意管轄とは、当事者が法定管轄とは異なる管轄の定めをする旨の合意をいいます。
合意管轄には、専属的合意管轄と付加的合意管轄がありますが、予測可能性を確保するために専属的合意管轄を定めることが多いです。
専属的合意管轄を定める場合、「専属的」という文言を入れることが重要になります。
合意管轄条項を定める際の注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
3-10 条項10:協議事項
著作権譲渡契約書に入れておきたい条項10個目は、協議条項です。
本契約に定めのない事項及び本契約の解釈につき相違のある事項については、甲及び乙は、信義誠実の精神に基づく協議の上、円満に解決するものとする。
協議条項とは、当事者が予期していない事項について抽象的に紛争解決方法を規定するものをいいます。
しかし、具体的な法的拘束力はなく、紛争解決の実効性に乏しい規定とされています。
協議条項を定める場合、以下の事項に注意するといいでしょう。
・トラブルが生じた場合に協議することは難しい
・英文契約書に入れる場合は慎重な判断が必要になる
協議条項については、以下の記事で詳しく解説しています。
4章 著作権譲渡契約書における注意点2つ
著作権譲渡契約書を入れる場合、トラブルを避けるために注意すべき点があります。
著作権譲渡契約書における注意点は以下の3つです。
注意点2:著作者人格権の不行使を定めているか
注意点3:譲渡されない権利がある
それでは各注意点について順番に解説していきます。
4-1 注意点1:譲渡対象が明確か
著作権譲渡契約書における注意点1つ目は、譲渡対象が明確かどうかです。
著作権は譲渡することができるとされています(著作権法61条1項)。
著作権には複数の権利が含まれていますが、権利によってはルールが異なるものもあります。
ルールが異なるものとしては、著作者人格権と、翻案権・二次著作物の利用権が挙げられます。
これらの権利については、たとえ譲渡の対象に「すべての著作権」「一切の権利」と規定されていても、譲渡の対象には含まれないのです。
ただし、翻案権と二次著作物の利用権は推定であるため、定めがなくても契約の目的等から譲渡の対象に含まれると判断されることもあります。
例えば、翻案権が譲渡の対象に含まれるかトラブルになった事案で、将来的に翻案されることが当然の前提になっていたとして、翻案権の譲渡を認めています(参考:知財高判平18.8.31)。
このようなトラブルを避けるためにも、譲渡の対象は明確にしておきましょう。
4-2 注意点2:著作者人格権の不行使を定めているか
著作権譲渡契約書における注意点2つ目は、著作者人格権の不行使を定めているかです。
著作権は自由に譲渡できますが、著作者人格権は譲渡できないとされています(著作権法59条)。
つまり、著作権が譲渡されたとしても、著作者は著作物について以下のような著作者人格権を行使することができるのです。
そのため、著作物について著作者人格権を行使されたくない場合には、著作者人格権が行使できない旨を定めておく必要があります。
5章 著作権譲渡契約書に必要な印紙税
著作権譲渡契約書は「無体財産権…の譲渡」(1号文書)に関する契約書にあたるため、譲渡の金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。
※出典:国税庁‐印紙税額一覧表
6章 著作権譲渡契約書作成の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
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7章 まとめ
以上のとおり、今回は、著作権譲渡契約書とは何かを説明した上で、各条項のレビューポイントを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・著作権譲渡契約書とは、著作物の著作権を譲渡するための契約書をいいます。
・著作権譲渡契約書に入れておきたい条項は以下の10個です。
条項1:目的
条項2:譲渡代金
条項3:著作者人格権
条項4:保証
条項5:著作権の登録
条項6:契約解除
条項7:損害賠償
条項8:反社会的勢力の排除
条項9:合意管轄
条項10協議事項
・著作権譲渡契約書における注意点は以下の2つです。
注意点1:譲渡対象が明確か
注意点2:著作者人格権の不行使を定めているか
・著作権譲渡契約書は「無体財産権…の譲渡」として1号文書に該当するため、収入印紙の貼付けが必要になります。
この記事が、著作権譲渡契約書について知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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