相殺契約書について知りたいと悩んでいませんか?
相殺という言葉は耳にすることもあるでしょうが、実際の契約書にどう落とし込むのが適切か知らない方も多いかと思います。
相殺契約書とは、相対立する債権債務を相殺する旨の当事者の合意を、書面の形式にしたものをいいます。
相殺契約は、相殺の内容を自由に決められることに利点があるとされています。
なぜなら、法定の相殺とは異なり、契約自由の原則が適用されるためです。
しかし、内容が自由であることから、契約書にはより正確性が求められます。
実は、契約書の記載が不明確な場合、いざ相殺しようという場面で具体的内容について争いになることも少なくないのです。
この記事を通して、相殺契約における適切な条項の定め方を知っていただければと思います。
今回は、相殺契約とは何かを説明した上で、相殺契約書作成の注意点について解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます
この記事を読めば、相殺契約書についてよくわかるはずです。
目次
1章 相殺契約書のひな型2つ【word形式・サンプル】
相殺契約書のひな型には以下の2つがあります。
ひな型2:相殺予約契約書
1-1 ひな型1:相殺契約書
1-2 ひな型2:相殺予約契約書
~相殺条項例~
第●条(相殺の合意)
甲又は乙は、相手方への書面による通知をもって、相手方に対して有する金銭債権と、相手方が有する金銭債務とを対等額で相殺することができる。
相殺契約は、独立した契約書ではなく、契約書における条項の1つとして定められることもあります。
例えば、請負契約の報酬と支給材との相殺や、代理店契約の料金と手数料等、相殺条項は幅広い契約で利用されています。
2章 相殺契約とは?相殺契約のメリット
相殺契約とは、相対立する債権債務を相殺する旨の当事者の合意をいいます。
法定の相殺とは異なり、相殺の内容を自由に定められることが相殺契約の利点です。
法定の相殺と相殺契約の具体的な違いは以下のとおりです。
3章 相殺契約書に入れるべき条項例3つ|レビューポイント
相殺契約書を有効に機能させるため、入れるべき条項があります。
相殺契約書に入れるべき条項例は、以下の2つです。
条項例2:相殺の合意
(条項例3:相殺予約)
それでは、各条項例について順番に解説していきます。
3-1 条項例1:債権の確認
相殺契約書に入れるべき条項例1つ目は、債権の確認です。
1 甲及び乙は、令和●年●月●日付の契約に基づき、甲が乙に対し、金●●円の債権を有していることを確認する。
2 甲及び乙は、令和●年●月●日付の契約に基づき、乙が甲に対し、金●●円の債権を有していることを確認する。
相殺をするには、相対立する同種の債権の存在が必要となるため、債権を確認する必要があります。
債権は、以下のような事項から確認を行うことがあります。
・契約締結日
・契約の種類(売買契約等)
・債務内容等
3-2 条項例2:相殺の合意
相殺契約書に入れるべき条項例2つ目は、相殺の合意です。
甲及び乙は、本日、前2条に記載する債権債務すべてを対等額で相殺した。
甲及び乙は、本日、前2条に記載する債権債務すべてを対等額で相殺した(元本充当)。
相殺契約の場合には、一方的な意思表示ではなく、当事者双方の合意によって相殺がされます。
そのため、当事者としては甲と乙の双方を記載することになります。
また、債権額に満たない相殺の場合には、特に合意がなければ、弁済の規定により法定充当(費用→利息→元本の順で充当)がされることになります。
この場合、元本が減らないと遅延損害金の額が大きくなりすぎてしまうため、修正例では債務者にとって利益となる元本充当を挙げています。
3-3 条項例3:相殺予約
相殺契約書に入れるべき条項例3つ目は、相殺予約です。
甲は、乙が甲に対して反対債権を有しているときは、いつでも当該反対債権と相殺することにより、両債権を対等額にて消滅させることができる。
1 乙が、次の各号の一に該当するときは、何らの通知催告を要せず、当然に期限の利益を喪失し、甲に対し、直ちに債務全額を弁済するものとする。
(1) 支払停止若しくは支払不能の状態に陥ったとき、又は手形若しくは小切手が不渡りとなったとき
(2) 第三者による差押え、仮差押え、仮処分若しくは競売の申立て、又は公租公課の滞納処分を受けたとき
(3) 破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始の申立てを受け、又は自ら申立てを行ったとき
(4) 解散、会社合併、会社分割、株式交換、事業譲渡又は組織変更をしたとき
(5) その他、債権の保全に必要な相当の事由が生じたとき
2 前項の場合において、甲は、乙が甲に対し反対債権を有しているときは、当該反対債権と相殺することにより、両債権を対等額にて消滅させることができる。
1 乙が、次の各号の一に該当するときは、何らの通知催告を要せず、当然に期限の利益を喪失し、甲に対し、直ちに債務全額を弁済するものとする。
(1)~(5)(略)
2 前項の場合において、乙が甲に対し反対債権を有しているときは、何ら通知を要することなく、当該反対債権と相殺されたものとする。
相殺予約契約とは、予約の時点ではその効力を生じず、一定事由の発生によって相殺の効力を生じさせるものをいいます。
一定事由の内容としては、予約完結権の行使によるものと、期限の利益喪失条項と同様に定めるものがあります。
また、相殺は債権回収の手段として利用されやすく、中には郵便等で相殺の意思表示をしている余裕がないこともあります。
この場合には、相殺の通知がなくとも相殺がされたものとして扱う旨を定めることがあります。
4章 相殺契約書における注意点2つ
相殺契約書を作成する際には、注意していただきたい点があります。
相殺契約書における注意点は以下の2つです。
注意点2:相殺の税務処理
それでは、各注意点について順番に解説していきます。
4-1 注意点1:合意内容を明確にする
相殺契約書における注意点1つ目は、合意内容を明確にすることです。
相殺契約は、法定の相殺とは異なり、契約自由の原則によりその内容を自由に定められます。
しかし、契約書に記載のない合意内容については、後に紛争になる可能性があります。
実務では、こうした記載漏れによって争いとなり、予期しない損害を被ることがあります。
特に、相殺契約において認められる、条件や期限、相殺禁止債権等に関する合意については契約書に記載しておくことが重要になります。
4-2 注意点2:相殺の税務処理
相殺契約書における注意点2つ目は、税務処理です。
相殺契約は、現金の動きがない取引ですが、税金が発生するので忘れないよう注意しましょう。
5章 相殺契約書に必要な印紙税
相殺契約の場合、双方が負担している債務の内容によって、課税文書にあたるか判断することになります。
例えば、工事請負契約に関する報酬債権と代金債権とを相殺する場合、「請負に関する契約書」として2号文書に該当します(※参考:国税庁‐印紙税額一覧表)。
6章 契約書作成の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
契約書作成の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
あなたの会社にあった契約書を作成するためには、その契約によって、どのような紛争が生じるリスクがあるのか、それをどのように予防していくのかということについて、専門的な知識や経験が必要となります。
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7章 まとめ
以上のとおり、今回は、相殺契約とは何かを説明した上で、相殺契約書作成の注意点について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・相殺契約とは、相対立する債権債務を相殺する旨の当事者の合意をいい、法定の相殺とは異なり、相殺の内容を自由に定められることが相殺契約の利点です。
・相殺契約書に入れるべき条項例は以下の3つです。
条項例1:債権の確認
条項例2:相殺の合意
(条項例3:相殺予約)
・相殺契約書における注意点は以下の2つです。
注意点1:合意内容を明確にする
注意点2:相殺の税務処理
・相殺契約書に必要な印紙税は、双方の債権債務の内容によって、課税文書にあたるか判断することになります。
この記事が、相殺契約書について知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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