更改契約書にどんな条項を定めたらいいのか知りたいと悩んでいませんか?
更改契約よりも、あまり目にしたことがないという方もいるのではないでしょうか。
更改契約書とは、旧債務と同一性のない新たな債務を成立させることで、旧債務を消滅させるとの合意を書面にしたものです。
更改契約のポイントは、プロ野球等で用いられる契約更改(従来の条件の再検討)とは異なり、従来の債務と同一性のない債務を成立させる点にあります。
更改契約には以下の3つの種類があり、それぞれ契約書で定めるべき内容も異なってきます(民法513条各号)。
・債権者の変更を行う場合
・債務者の変更を行う場合
そのため、更改契約を締結する場合、まずどの類型に当たるのかを判断することが重要になります。
しかし、契約内容を大きく変更することになるため、その分トラブルも発生しやすくなります。
実は、更改後の債務は同一性がなく、旧債務に付着していた保証債務が消滅し、新債務について保証を受けられなかったという事態もあり得るのです。
この記事をとおして、更改契約書における条項の適切な定めた方を知っていただければと思います。
今回は、更改契約書のひな形を紹介した上で、それぞれ入れておくべき重要な条項を解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、更改契約書に定めるべき条項の内容がよくわかるはずです。
目次
1章 更改契約書のひな形3つ
1-1 ひな形1:給付内容の重要な変更を行う場合
1-2 ひな形2:債権者の変更を行う場合
1-3 ひな形3:債務者の変更を行う場合
2章 更改契約書とは?
更改契約書とは、旧債務と同一性のない新たな債務を成立させることで、旧債務を消滅させるとの合意を書面にしたものです。
更改契約には以下の3つの種類があり、それぞれ契約書で定めるべき内容も異なってきます(民法513条各号)。
・債権者の変更を行う場合
・債務者の変更を行う場合
このように種類があるものの、民法には更改に近い効果を発生させるものがあります。
そのため、実際に更改契約という形で契約が締結されるのは少ない傾向があります。
3章 ひな形別!更改契約書に入れるべき条項
更改契約書に入れるべき条項は、その種類によって異なります。
更改契約書に入れるべき条項のひな形は以下の3つです。
ひな形2:債権者の変更を行う場合
ひな形3:債務者の変更を行う場合
それでは、各ひな形について順番に解説していきます。
3-1 ひな形1:給付内容の重要な変更を行う場合
更改契約書に入れるべき条項のひな形1つ目は、給付内容の重要な変更を行う場合です。
給付内容の重要な変更を行う場合、以下の2つの条項が重要になります。
条項2:更改
それでは、各条項について順番に解説していきます。
3-1-1 条項1:債務の確認
給付内容の重要な変更を行う場合に入れるべき条項の1つ目は、債務の確認です。
甲及び乙は、令和●年●月●日付の契約に基づき、乙が甲に対し、金●●円の債務(以下、「旧債務」という。)を負担していることを確認する。
更改契約が成立するには、旧債務が存在していることが必要となります。
そのため、当事者間で旧債務の存在を確認しておくことが、後のトラブルを防止することにも繋がります。
3-1-2 条項2:更改
給付内容の重要な変更を行う場合に入れるべき条項2つ目は、更改です。
甲及び乙は、令和●年●月●日、乙が甲に負担している旧債務を消滅させ、乙が甲に対し、新たに次のとおり●●債務を負担することを約した。
記
(1) 元本 金●●円
(2) 利息 年●●%
(3) 弁済期 令和●年●月●日
(4) 支払方法 …
更改契約の内容を明らかにするため、新たな債務の内容を記載する必要があります。
しかし、給付内容の重要な変更というのは曖昧な部分があり、後から更改ではなかったとされるケースも少なくありません。
例えば、100万円の代金債権について、利率の変更・利息の元本への組入れ・連帯債務者の加入等があっても、更改になるとは限らないのです(参照:大判明治40.12.4)。
他にも、裁判例は以下のような内容の変更について、更改にあたらないとしています。
・証書を書きかえ、弁済期を変更した場合
・賃金を給料制から歩合制にした場合
そのため、更改契約を締結する場合、新債務の目的が旧債務と同一性を有するのか慎重に判断することが重要です。
なお、具体的な履行方法や、協議条項や合意管轄条項等については、原契約(旧債務の契約)に規定されていることもあるため、「原契約の定めるところに従う」として簡潔に記載することもあります。
3-2 ひな形2:債権者の変更を行う場合
更改契約書に入れるべき条項のひな形2つ目は、債権者の変更を行う場合です。
債権者の変更を行う場合、以下の2つの条項が重要になります。
条項2:更改
それでは、各条項について順番に解説していきます。
3-2-1 条項1:債務の確認
債権者の変更を行う場合に入れるべき条項1つ目は、債務の確認です。
甲、乙及び丙は、令和●年●月●日付の契約に基づき、乙が甲に対し、金●●円の債務(以下、「旧債務」という。)を負担していることを確認する。
更改による債権者の変更は、債権者・新債権者・債務者の三者間でする必要があります(民法515条1項)。
そのため、債権者の変更では三者間で債務を確認することになります。
3-2-2 条項2:更改
債権者の変更を行う場合に入れるべき条項2つ目は、更改です。
甲、乙及び丙は、令和●年●月●日、乙が甲に負担している旧債務を消滅させ、乙が丙に対し、新たに次のとおり●●債務を負担することを約した。
記
(1) 元本 金●●円
(2) 利息 年●●%
(3) 弁済期 令和●年●月●日
(4) 支払方法 …
債権者の変更は三者間でするため、更改による旧債務の消滅と新債務の成立だけでなく、債務者が新債権者との関係で新債務を負うことまで記載する必要があります。
また、債権者の変更を第三者に対抗するには、確定日付のある証書によってする必要があるため注意が必要です(民法515条2項)。
3-3 ひな形3:債務者の変更を行う場合
更改契約書に入れるべき条項のひな形3つ目は、債務者の変更を行う場合です。
債務者の変更を行う場合、以下の2つの条項が重要になります。
条項2:更改
それでは、各条項について順番に解説していきます。
3-3-1 条項1:債務の確認
債務者の変更を行う場合に入れるべき条項1つ目は、債務の確認です。
甲、乙及び丙は、令和●年●月●日付の契約に基づき、乙が甲に対し、金●●円の債務(以下、「旧債務」という。)を負担していることを確認する。
甲及び丙は、令和●年●月●日付の契約に基づき、乙が甲に対し、金●●円の債務(以下、「旧債務」という。)を負担していることを確認する。
債務者の交替は、旧債務者の意思に反してすることができないとされていました。
しかし、民法改正により、更改による債務者の変更は債権者と新債務者との二者間でできることになりました(民法514条1項前段)。
ただし、二者間で債務者の変更をする場合、更改契約が効力を生じるのは債権者が旧債務者に通知した時点であることに注意が必要です(514条1項後段)。
3-3-2 条項2:更改
債務者の変更を行う場合に入れるべき条項2つ目は、更改です。
1 甲、乙及び丙は、令和●年●月●日、乙が甲に負担している旧債務を消滅させ、丙が甲に対し、新たに次のとおり●●債務を負担することを約した。
記
(1) 元本 金●●円
(2) 利息 年●●%
(3) 弁済期 令和●年●月●日
(4) 支払方法 …
2 第1項の更改の合意により、乙は原契約関係から脱退するものとする。
1~2 (略)
3 丁は、第1項により丙が負担する新たな債務について、原契約の定めるところに従い、丙と連帯して保証するものとする。
※丁=旧債務の保証人
債務者の変更では、旧債務の消滅と新債務の内容だけでなく、新債務を新債務者が負担することを定めることになります。
旧債務者の脱退については、契約の効果を明確にするために確認的に定めています。
なお、更改契約によって旧債務についての保証も共に消滅するため、新債務について債権者が保証を受けるには保証人の意思を確認し、その承諾を得る必要があります。
4章 更改契約書作成の注意点2つ
更改契約書を作成する場合には、注意していただきたい点があります。
更改契約書作成の注意点は以下の2つです。
注意点2:担保権の存在
それでは、各注意点について解説していきます。
4-1 注意点1:効力の発生時期
更改契約書作成の注意点1つ目は、効力の発生時期です。
更改契約では、更改の種類によって効力発生時期が変わってきます。
そのため、債務者の変更を行う場合には、旧債務者への通知を忘れないようにしましょう。
4-2 注意点2:担保権の存在
更改契約書作成の注意点2つ目は、担保権の存在です。
更改は、旧債務と新債務に同一性がないため、担保権の性質が働かず当然には新債務に担保権は移転しません。
しかし、質権と抵当権については、債権者は旧債務の目的の限度において新債務に移転することができます(518条1項)。
ただし、質権と抵当権を第三者が設定した場合、新債務に担保権を移転させるには第三者の承諾を得る必要があります(518条1項但書)。
そのため、新債務に質権と抵当権を移転させたい場合、担保権者を確認した上で、更改の相手方に意思表示をするなど適切な手続を踏むことが重要です(518条2項)。
5章 更改契約書と印紙税法の関係
更改契約書に必要な印紙税は、更改によって生じる新債務の性質によって変わります。
例えば、旧債務を金銭消費貸借契約の債務に変更する場合、「消費貸借に関する契約書」として第1号の3文書として課税文書に該当します。
この場合の印紙税額は、新債務の元本金額に応じて印紙を貼付けすることになります。
課税対象文書と具体的な印紙税額については、国税庁が一覧表を公開しています。
国税庁‐印紙税額一覧表(nta.go.jp)
6章 契約書の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
契約書の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
あなたの会社にあった契約書を作成するためには、その契約によって、どのような紛争が生じるリスクがあるのか、それをどのように予防していくのかということについて、専門的な知識や経験が必要となります。
リバティ・ベル法律事務所では、契約書の作成について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しており、貴社の契約書の作成を適切にサポートすることができます。
具体的には、リバティ・ベル法律事務所では、各種契約書の作成やレビュー、就業規則の作成等のサービスを提供しています。
→契約・取引に関するリバティ・ベル法律事務所のサポートの詳細はこちら (libertybell-law.com)
リバティ・ベル法律事務所では、各企業の取引の内容を丁寧にヒアリングさせていただいたうえで、契約書の1つ1つの規定の表現や言い回しについても、実情に即した内容になるようにこだわっています。
貴社と取引先の交渉力などに応じて、優先的に交渉していくべき条項はどこか、どのように交渉していくべきか等についても丁寧に助言いたします。
オンライン面談やお電話等を利用して遠方の方でもスピーディーな対応が可能です。
契約書に悩んでいる方は、リバティ・ベル法律事務所にお気軽にご相談ください。
7章 まとめ
以上のとおり、今回は、更改契約書のひな形を紹介した上で、それぞれ入れておくべき重要な条項を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・更改契約書とは、旧債務と同一性のない新たな債務を成立させることで、旧債務を消滅させるとの合意を書面にしたものです。
・更改契約書に入れるべき条項のひな形は以下の3つです。
ひな形1:給付内容の重要な変更を行う場合
ひな形2:債権者の変更を行う場合
ひな形3:債務者の変更を行う場合
・更改契約書作成の注意点2つ
注意点1:効力の発生時期
注意点2:担保権の存在
・更改契約書に必要な印紙税は、更改によって生じる新債務の性質によって変わります。
この記事が、更改契約書について知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
コメント