キスは不倫にあたらない!?キスを理由とする慰謝料請求への対処法3つ

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弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日


キスが不倫にあたるのか知りたいと悩んでいませんか

法律における不倫の範囲がわからないと、どんな行為が慰謝料の対象になるのかわかりませんよね。

法律上は、不倫とは配偶者以外の者と肉体関係をもつことをいいます(最判昭48.11.15)。

そのため、キスだけでは肉体関係があったとはいえず、法律上の定義からは不倫にあたらないことになるでしょう。

しかし、キスだけでも慰謝料の請求が認められることがあります

キスだけでも夫婦関係に致命的な影響を与えることもあるためです。

また、慰謝料を請求された場合、交渉で話がまとまらなければ裁判になることもあります。

徒に紛争が拡大するのを防ぐためにも、慰謝料請求には慎重に対応しなければなりません。

慰謝料請求への対応で混乱しないためにも、キスと不倫の関係について一緒に確認していきましょう。

具体的には、以下のような流れで解説していきます。


この記事を読めば、キスと不倫についてよくわかるはずです。

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1章 キスは不倫にあたる?不倫の法的な扱い

不倫とは、配偶者以外の異性と肉体関係を結ぶことをいいます(※参考:最判昭48.11.15)。

そのため、キスしただけでは肉体関係があったとはいえず、法的な不倫にはあたりません。

しかし、肉体関係がなくても慰謝料請求が認められることはあります

慰謝料請求が守ろうとしている法益が婚姻関係の平和にあることから、キスだけで平和が崩れてしまうこともあるためです。

そのため、キスは法的な不倫にはあたりませんが、慰謝料請求が認められるおそれがあります。


2章 不倫の境界線はどこ?一般的なキスの捉え方

法的な不倫にあたらない場合でも、不倫の捉え方次第では紛争にまで発展するおそれがあります。

ここでは、一般人の不倫に対する認識から不倫の境界線を見ていきます。

一般人の不倫に対する認識は以下のとおりです。

※参考:不倫はどこから?「マイナビウーマン」

上記アンケートでは、手を繋ぐという肉体的接触を境に不倫だと認識する方の割合が増えています

特に、キスに関しては7割程度と大半の方が不倫にあたると捉えています。

実際の不倫トラブルでは、肉体関係を現認することは少なく何らかの親密な行為から疑いをもつようになります。

一般人が疑いをもちやすい行為、つまり身体的接触を伴う関係がある場合には不倫があったと認識されてしまうおそれがあるのです。

そのため、不倫トラブルを避けるには、キスはもちろんのこととして手を繋ぐなどの身体的接触をしないことが望ましいでしょう。

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3章 キスだけの不倫が急増中!?キスに潜むリスク2つ

最近では、肉体関係をもたずにキスだけで終わる関係が増えてきています。

しかし、キスが法的な不倫にあたらないとしても、キスをすることによるリスクが潜んでいます。

ここでは、キスに潜むリスクについて解説していきます。

リスク1:キスだけでも慰謝料が認めれられるおそれ
リスク2:エスカレートして肉体関係に至るおそれ


それでは各リスクについて順番に説明していきます。

3-1 リスク1:キスだけでも慰謝料が認めれられるおそれ

キスに潜むリスクの1つ目は、キスだけでも慰謝料が認められるおそれがあることです。

キスは法的な不倫にはあたりませんが、慰謝料請求が認められることはあります。

キスだけでも婚姻関係の平和という利益を侵害することができるためです。

例えば、プラトニックな交際関係を継続していたが、別居と離婚を求めてキスをした事案で判例は慰謝料請求を認めています(※参考:東京地判平20.12.5)。

そのため、キスだけの不倫には、慰謝料請求が認められるというリスクが潜んでいるといえます。

ただし、肉体関係がある場合と比べて慰謝料が低くなる傾向にあることから、対応を検討する際は相場を調べることも重要となるでしょう。

3-2 リスク2:エスカレートして肉体関係に至るおそれ

キスに潜むリスクの2つ目は、エスカレートして肉体関係に至るおそれがあることです。

プラトニックな関係を続けていても、時が経つにつれて刺激に慣れてしまいます。

刺激に慣れると、更なる刺激を求めて肉体関係にまでエスカレートしてしまうでしょう。

肉体関係をもってしまうと、法的な不倫にあたり慰謝料請求の対象となります

慰謝料金額の相場は10万~300万円とされており、特に離婚にまで至ると高額になってしまいます。


そのため、当初はキスだけのつもりであっても、最終的には肉体関係を持つに至り高額な慰謝料が発生するリスクが潜んでいます。

不倫慰謝料の相場については以下の記事で詳しく解説しています。


4章 キスを理由に慰謝料を認めた判例

ここでは、キスを理由に慰謝料を認めた判例について解説していきます。

判例1:慰謝料250万円を認めた判例(第1審)
判例2:慰謝料100万円を認めた判例(控訴審)

それでは各判例について順番に説明していきます。

4-1 判例1:慰謝料250万円を認めた判例(第1審)

原告が、被告と原告の配偶者がキスをしたことから、被告に対して慰謝料300万円を請求した事案について、

裁判所は、肉体関係はないものの、別居と離婚を要求し、キスをしたことによって婚姻関係が破綻したことを理由に慰謝料は250万円が妥当と判断しています。

判例は以下のように説明しています。

東京地判平成20年12月5日
「被告は、Aとの間で、婚姻を約束して交際し、Aに対し、原告との別居及び離婚を要求し、キスをしたことが認められ、これらの事実は、少なくとも、Aの離婚原因となる民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」の発生に加担したものということができ、原告に対する不法行為を構成するというべきである。」
「性的肉体的交渉自体が存在したとは断定できないこと…未だ離婚に至っていないこと、一方で…被告に積極性があると認めるに足りることを考慮して、慰謝料としては、250万円の限度で認めるのが相当である。」

4-2 判例2:慰謝料100万円を認めた判例(控訴審)

東京地裁20.12.5の事案の後に、和解が成立して財産分与による解決金800万円を支払ったものの、被告(控訴人)が判決に不服があるとして控訴を申立てた事案について、

裁判所は、解決金としての800万円には慰謝料が含まれているから、不倫による慰謝料は100万円が相当と判断しています。

判例は以下のように説明しています。

東京高判平成21年5月11日
「被控訴人は、控訴人の行為の結果としてAとの婚姻関係を解消せざるを得ない状況に追い込まれたもので、それにより精神的な苦痛を被ったものというべきであるが、Aから上記の財産的な給付を受けたことをも考慮すれば、これによる慰謝料としては100万円をもって相当というべきである。」
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5章 キスを理由に慰謝料請求された場合の対処法3つ

キスを理由に慰謝料請求された場合、早期解決のためにも適切な対処法を講じる必要があります。

ここでは、キスを理由に慰謝料請求された場合の対処法を解説していきます。

対処法1:慰謝料はすぐに支払わない
対処法2:キスしただけと説明する/回答書を出す
対処法3:弁護士に相談する


それでは各対処法について順番に説明していきます

5-1 対処法1:慰謝料はすぐに支払わない

キスを理由に慰謝料請求された場合の対処法1つ目は、慰謝料はすぐに支払わないことです。

慰謝料請求は相場よりも高い金額でされがちなので、適正な金額に近づくよう交渉する必要があります。

特に、キスだけの場合は慰謝料が低くなる傾向にあることから、減額交渉の必要性が高まります

しかし、求められた金額をそのまま支払ってしまうと、過大な出費となるほか任意に返還してもらうのは難しいでしょう。

適正な金額へと近づける機会を逃してしまうおそれがあるのです。

そのため、慰謝料の支払を求められてもすぐには支払わない方が良いといえます。

ただし、慰謝料請求を無視すると不利益になることがあるので、支払は留保しつつ請求に回答はしていくことが重要です。

5-2 対処法2:キスしただけと説明する/回答書を出す

キスを理由にする慰謝料請求された場合の対処法2つ目は、キスしただけと説明することです。

慰謝料請求をする場合、相手方はキスの他に肉体関係があったのではないか疑いをもっています

キスするほど親しいのなら肉体関係をもっていても不思議ではないためです。

この場合、まずは相手方にキスしただけと真摯に説明する必要があります。

事実に沿った説明をすることで、トラブルの拡大防止・早期解決を望めるためです。

例えば、キスしただけで肉体関係はもっていないと説明し、相手方が納得すれば紛争はそこで終結することもあります。

また、実際の慰謝料請求では、口頭の請求だけでなく書面で請求されることもあります。

書面での請求、内容証明郵便で送られてくることが多いので、こちらは相手方に回答書を出すことになるでしょう。

この場合、回答書の中で肉体関係をもっていないことを伝えていくことになります。

回答書の書き方については以下の記事で詳しく解説しています。

5-3 対処法3:弁護士に相談する

キスを理由にする慰謝料請求された場合の対処法3つ目は、弁護士に相談することです。

慰謝料請求への反論や減額交渉をするには、専門的な知識が必要となります。

対応を間違えたり不利な発言をすると取り返しがつかないこともあり、適切に対処しなければならないためです。

また、慰謝料請求の交渉では、直接の話し合いが適切でない場面もあります。

これは、不倫発覚直後の当事者は感情的になりがちで、紛争拡大のリスクが潜んでいるためです。

この場合、弁護士を代理人に立てて交渉を行う事が考えられます。

当事者同士の場合と比べて、第三者である弁護士の方が冷静になりやすく円滑な話し合いが期待できるためです。

そのため、キスを理由に慰謝料請求をされた場合、弁護士に相談することをおすすめします

弁護士を選ぶポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。


6章 慰謝料の減額交渉はリバティ・ベル法律事務所にお任せ

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7章 まとめ

今回は、キスと不倫について解説したうえで、キスを理由とする慰謝料請求について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・キスは法的な不倫にあたらないが、慰謝料請求の対象になりうる。

・一般的には身体的接触があれば不倫と判断されがちで、キスは7割程度が不倫にあたると感じている。

・キスだけの不倫が急増中!?キスに潜むリスクは以下の2つです。
リスク1:キスだけでも慰謝料が認めれられるおそれがある。
リスク2:エスカレートして肉体関係に至るおそれがある。

・キスを理由に250万円の慰謝料を認めた判例がある。

・キスを理由に慰謝料請求された場合の対処法は以下の3つです。
対処法1:慰謝料はすぐに支払わない
対処法2:キスしただけと説明する/回答書を出す
対処法3:弁護士に相談する

この記事が、キスが不倫にあたるのか知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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