医師との離婚の問題点3つ!適切に財産分与するための調査方法を解説

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弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

医師と離婚するべきか悩んでいませんか

離婚後も生計を立てていけるのか不安になりますよね

日本における医師の離婚率について明確に示されたものはありませんが、実際には「離婚しやすい」とのイメージを持たれています。

医師が離婚する理由は激務であるなど様々ですが、離婚においては次の3つの特徴があります。

・財産分与が高額になりやすい
・養育費が高額になりやすい
・慰謝料を請求できることがある

しかし、高額になりやすいといっても、適正な条件で離婚するためには事前の準備が不可欠です。

実は、財産分与の対象となるのは明らかになっている財産のみのため、徹底した財産調査が重要となるのです。

特に、医師は高収入であるため保有財産も多く、調査を怠ると適切に財産分与がされないおそれがあります。

そのため、適切な財産分与をするためには財産調査の方法を押さえておく必要があります。

この記事をとおして、適正な条件で離婚するための方法を知っていただければと思います。

今回は、医師との離婚における特徴を説明した上で、財産調査の方法について解説していきます。

具体的には以下の流れで解説していきます。


この記事を読めば、医師との離婚における財産分与についてよくわかるはずです。


1章 医師の離婚は多い?医師の離婚率

日本における医師の離婚率について、明確に示されたものはありません

しかし、実際には医師は離婚しやすいとのイメージを持たれています。

これは、医師は激務であり家庭との両立が難しく、一般の家庭と比較して離婚しやすい状況にあるためだと考えられます。


2章 医師の離婚率が高いとされる理由4つ

医師は離婚しやすい状況にあるため、離婚率が高いとされています。

医師の離婚率が高いとされる理由には、例えば以下の5つがあります。

・労働時間が長く家庭との両立が難しい
・経済的に自立している
・浮気、不倫
・価値観の違い
・モラハラ

3章 医師との離婚の特徴3つ

医師は高収入であり保有財産が多いことから、財産をどのように分配するかが問題になりやすいです

特に医師との離婚で問題になりやすいものとしては以下の3つがあります。

特徴1:財産分与が高額になりやすい
特徴2:養育費が高額になりやすい
特徴3:慰謝料を請求できることがある

それでは各特徴を順番に解説していきます。

3-1 特徴1:財産分与が高額になりやすい

医師との離婚における特徴1つ目は、財産分与が高額になりやすいことです。

財産分与の割合は、男女平等の観点から原則として2分の1とされています。

そのため、保有財産の多い医師の場合には、それだけ金額も大きくなりやすいのです。

しかし、以下の3つの場合には例外的に2分の1にならないことがあります

【財産分与における例外】財産分与における例外

特に、医師の場合には資格を有することが「特殊な才能」によるものとして、2分の1にならない可能性があるため注意が必要です

そのため、離婚する前にはどの財産が分与の対象となるのかについて、その割合とともに調べておくことが重要になります。

財産分与の割合については以下の記事で詳しく解説しています。

3-2 特徴2:養育費が高額になりやすい

医師との離婚における特徴2つ目は、養育費が高額になりやすいことです。

婚姻費用や養育費の費用の分担は法的な義務として定められています。

民法760条(婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
民法766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

例えば、以下のような費用が婚姻費用や養育費にあたります。

【婚姻費用と養育費】
婚姻費用と養育費
これらの金額については、公表されている算定票を用いて計算するのが通常です。

しかし、この算定票は年収が2000万円以下のケースを想定したものであり、医師等の高収入者の場合には高額になることがあります。

婚姻費用の計算方法と具体例については以下の記事で詳しく解説しています。

3-3 特徴3:慰謝料を請求できることがある

医師との離婚における特徴3つ目は、慰謝料を請求できる可能性があることです。

離婚をしても当然に慰謝料を請求できるわけではありません

なぜなら、慰謝料請求が認められるには不法行為があったといえる必要があるためです。

709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

例えば、以下の場合には離婚に伴う慰謝料請求が認められる可能性があります

・不倫があった場合
・生活費の不支給
・DVやモラハラ等

実際には、離婚とは別に訴訟を提起することで慰謝料を請求するケースが多いです

~財産分与後に慰謝料請求もできる?~

財産分与には慰謝料的要素が含まれるとしており、訴訟提起の他に財産分与として慰謝料を請求することもできます。

これらの手段は異なるものであるため、いずれを選択するかは自由とされています。

しかし、慰謝料の二重取りは認められないため、財産分与で慰謝料請求した場合には、「その額が精神的苦痛を慰謝するに足りない」場合に限り別途慰謝料請求が可能となります。


4章 医師との離婚を適正な条件にするための方法3つ

離婚で後悔しないためには事前の準備が重要となります。

医師との離婚を適正な条件にするための方法は以下の3つです。

方法1:財産調査を徹底する
方法2:調停を申し立てる
方法3:弁護士に離婚交渉を依頼する

それでは各方法について順番に説明していきます。

4-1 方法1:財産調査を徹底する

医師との離婚を適正な条件にするための方法1つ目は、財産調査を徹底することです。

財産分与の対象となるのは明らかになっている財産だけです。

つまり、財産調査を怠ると分与されない財産が出てしまうのです。

そのため、適正な条件で離婚するためには、財産調査を徹底することが重要となります。

4-2 方法2:調停を申し立てる

医師との離婚を適正な条件にするための方法2つ目は、調停を申し立てることです。

離婚調停とは、調停員のサポートを受けながら夫婦で離婚条件を話し合うものです。

夫婦での直接の話し合いが難しい場合でも、第三者である調停員を介して話し合うためスムーズな交渉が期待できます

特に、配偶者が不利な条件で押し切ろうとする場合には、夫婦間での合意は期待できないため調停を利用することが望ましいです。

そのため、医師と適正な条件で離婚するためには、調停を申し立てた方がいい場面もあります。

4-3 方法3:弁護士に離婚交渉を依頼する

医師との離婚を適正な条件にするための方法3つ目は、弁護士に離婚交渉を依頼することです。

離婚ではその後の生活を安定させるためにも、適正な条件にしておきたいところです。

特に、財産分与では財産調査が重要な意味を持ちますが、個人の調査には限界があります

例えば、配偶者がした契約内容については、個人情報保護法などによって開示してもらえないことがあるのです。

しかし、弁護士は「23条照会」によって個人での調査が難しい財産についても、調査を行うことができます

そのため、離婚交渉に不安を感じたら弁護士に相談してみるといいでしょう。


5章 離婚前に医師の財産を調査する方法8つ

後腐れのない解決を図るためには適切な財産調査が不可欠となります

離婚前に医師の財産を調査する方法としては、例えば以下の8つがあります。

方法1:通帳等の取引履歴
方法2:郵便物
方法3:不動産登記
方法4:インターネットの検索履歴
方法5:SNSの履歴
方法6:勤務先の求人情報
方法7:年金分割のための情報通知書
方法8:探偵や興信所に依頼する

離婚前に医師の財産を調査する方法8つ

それでは各方法について順番に解説していきます。

なお、本記事は各方法を簡単に説明したもので、画像付きの詳しい確認方法を知りたい方には以下の記事がおすすめです。

5-1 方法1:通帳等の取引履歴

離婚前に医師の財産を調査する方法1つ目は、通帳等の取引履歴です

財産調査を行う場合には、まず通帳等の取引履歴を確認することが重要です。

なぜなら、通帳は預金額だけでなく、取引履歴から他の財産の存在を効率的に把握できるためです

具体的には、以下の手順で確認するといいでしょう。

☑ 銀行名・支店名・口座種類・口座番号・口座名義を確認する
☑ 別居日の残高を確認する
☑ 婚姻日の残高を確認する
☑ 他に口座がないかを確認する
☑ 保険に入ってないかを確認する
☑ 使途不明の高額取引がないかを確認する

5-2 方法2:郵便物

離婚前に医師の財産を調査する方法2つ目は、郵便物です

郵便物を確認することで、その内容からどのような財産を持っているのか把握することができます

例えば、確認すべき郵便物としては以下の6つがあります。
【財産調査に使える郵便物】財産調査に使える郵便物

5-3 方法3:不動産登記

離婚前に医師の財産を調査する方法3つ目は、不動産登記です

所有している不動産の登記には、抵当権の記載がされていることもあります。

抵当権は融資の際に担保として設定されることが多く、融資者が銀行であればその銀行に預金口座を持っている可能性があります

そのため、不動産登記の確認をすれば預金口座の有無を把握しやすいです。

5-4 方法4:インターネットの検索履歴

離婚前に医師の財産を調査する方法4つ目は、インターネットの検索履歴です

インターネットの検索履歴は、その人の知りたいことが明らかとなります。

例えば、検索履歴に以下のキーワードがある場合には他に財産を有している可能性があります。

・「離婚 財産分与 貯金」
・「離婚 特有財産」
・「離婚 財産隠し 方法」

ただし、確認の方法次第では不正アクセスとなるおそれがあるため注意が必要です

違法な確認方法については以下の記事で詳しく解説しています。

5-5 方法5:SNSの履歴

離婚前に医師の財産を調査する方法5つ目は、SNSの履歴です

SNSの履歴には、財産の手がかりに繋がるものもあります。

例えば、以下のようなやり取りは財産の把握に繋がりやすいです。

・「●●銀行でお金をおろしてから帰る」
・「●●銀行にお金を振り込んで欲しい」
・「●●保険会社から郵便は届いているか」

5-6 方法6:勤務先の求人情報

離婚前に医師の財産を調査する方法6つ目は、勤務先の求人情報です

求人情報からは、大体の給与や退職金の有無を把握することができます

退職金は、結婚してから退職又は離婚するまでの間が財産分与の対象になります。

退職金は現実に支払われていなくても、支払の確実性がある場合には財産分与の対象となることがあります

例えば、支払の確実性がある場合として以下の3つのケースが挙げられます。

・就業規則に退職金の定めがある
・会社の規模が大きい
・定年までに転職する可能性がない

5-7 方法7:年金分割のための情報通知書

離婚前に医師の財産を調査する方法7つ目は、年金分割のための情報通知書です

婚姻中に収めた年金保険料がある場合には、年金分割という方法で分割の対象になることがあります。

分割された金額は年金を受け取る際に加算されるため、将来的に重要な財産となります

年金分割の具体的な方法については、法務省が公開しています。
法務省:年金分割 (moj.go.jp)

5-8 方法8:探偵や興信所に依頼する

離婚前に医師の財産を調査する方法8つ目は、探偵や興信所に依頼することです

個人での財産調査には限界があるため、探偵や興信所に依頼することが効果的な場面もあります。

例えば、医師等の高収入者で財産が豊富な場合には、探偵等への依頼を検討してみるのもいいでしょう。


6章 医師との離婚で財産調査をするための法的手続3つ

財産のある程度把握した後は、具体的な金額について調べることになります

具体的な金額を調査するための法的手続として以下の3つがあります。

手続1:求釈明
手続2:弁護士会照会
手続3:調査嘱託

医師との離婚で財産調査をするための法的手続3つ

それでは各手続について解説していきます。

6-1 手続1:求釈明

財産調査をするための法的手続1つ目は、求釈明です

求釈明とは、当事者が他方当事者に対し、質問への回答や証拠の提出を要請するものです

求釈明への対応は法的義務ではないため、回答を得られるかは相手方の対応次第になります。

求釈明の具体的な方法としては、「●●銀行●●視点の婚姻日から現在までの預金通帳を提出されたい。」のように要請することになります。

6-2 手続2:弁護士会照会

財産調査をするための法的手続2つ目は、弁護士会照会です

弁護士会照会制度は、弁護士会が官公庁や企業などの団体に対して必要事項を調査・照会する制度です

弁護士法23条の2(報告の請求)
1 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

弁護士会照会では、以下のような財産の調査をすることができます。

弁護士照会の調査対象

弁護士会照会は相手方に知られることはありませんが、手数料等として8000円~1万円程度必要になります

6-3 手続3:調査嘱託

財産調査をするための法的手続3つ目は、調査嘱託です

調査嘱託とは、裁判所が会社や銀行などの団体に対して調査を行うものです

例えば、裁判所が銀行に対して口座有無や取引情報の回答を求める場合がこれにあたります。

ただし、調査嘱託の結果は裁判所を通していることから、相手方にも知られることになります


7章 医師への財産分与請求はリバティ・ベル法律事務所にお任せ

財産分与請求の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください

財産分与請求については、財産調査のノウハウ、経験が獲得金額に大きな影響を与える分野です

リバティ・ベル法律事務所は、離婚問題に注力しており、財産分与請求について圧倒的な知識とノウハウを持っています

少数精鋭でご依頼を受けた一つ一つの案件について、離婚問題に強い弁護士が丁寧に向き合っているところが弊所の強みです。

財産分与請求については、ご依頼者様の負担を軽減するために初回相談無料にて対応しておりますのでお気軽にお問い合わせください。


8章 まとめ

今回は、医師との離婚の特徴を説明した上で、適切に財産分与するための調査方法について解説しました。

この記事に要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・日本における医師の離婚率について明確に示されたものはありませんが、一般の家庭と比較すると離婚しやすい状況あります。

・医師の離婚率が高いとされる理由には以下の5つがあります。
理由1:労働時間が長く家庭との両立が難しい
理由2:経済的に自立している
理由3:浮気、不倫
理由4:価値観の違い
理由5:モラハラ

・医師との離婚の特徴には以下の3つがあります。
特徴1:財産分与が高額になりやすい
特徴2:養育費が高額になりやすい
特徴3:慰謝料を請求できることがある

・医師との離婚を適正な条件にするための方法は以下の3つです。
方法1:財産調査を徹底する
方法2:調停を申し立てる
方法3:弁護士に離婚交渉を依頼する

・離婚前に医師の財産を調査する方法には以下の8つがあります。
方法1:通帳等の取引履歴
方法2:郵便物
方法3:不動産登記
方法4:インターネットの検索履歴
方法5:SNSの履歴
方法6:勤務先の求人情報
方法7:年金分割のための情報通知書
方法8:探偵や興信所に依頼する

・医師との離婚で財産調査をするための法的手続には以下の3つがあります。
手続1:求釈明
手続2:弁護士会照会
手続3:調査嘱託

この記事が医師と離婚すべきか悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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