売買契約書のひな形と11個のチェックリスト【簡単・無料テンプレート付き】を解説

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著者情報 弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属 
取扱分野は、人事労務、一般企業法務、紛争解決等。
WEBサイト制作等を行うリバティ・ベル株式会社の代表取締役も務める。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン[連載]不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日


売買契約書の作り方がわからないと悩みを抱えていませんか

売買契約は口頭でも締結することができるので、契約書を作成しないという会社もあるのではないでしょうか。

企業間で売買契約を締結する場合には、売買契約書を作成することが重要となります。

売買契約では代金の不払いや納期に遅れが生じるなど、トラブルが発生することもあります。

トラブルが発生した場合、口頭の約束だけでは解決の指針を立てることが難しく紛争が拡大してしまうこともあるでしょう。

売買契約書などの形として残るものがなければ、円満な解決を図ることが難しいこともあるのです。

そのため、企業間の売買契約では売買契約書を作成することが望ましいといえます。

また、2020年の債権法改正によって条項に入れるべき文言が変化しています。

条項の文言が不適切なまま契約書が完成してしまうと、条項の意思解釈に疑義を生じるおそれがあります。

売買契約におけるリスクを低減させるにも、条項の修正方法について理解しておく必要性が高いのです。

今回は、売買契約書のひな形をもとに作成方法や加筆・削除・修正の方法を解説していきます。

具体的には以下の流れで解説していきます。


この記事を読めば売買契約書の作成・レビュー方法がよくわかるはずです。

目次

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1章 売買契約書のひな形【簡単・無料テンプレート】|ダウンロード可能

売買契約書のひな形は以下のとおりです。

売買契約書ひな形
ひな形のダウンロードはこちら

 

売買契約書は、売買契約を締結する際における当事者間の合意を書面にしたものです。

売買契約は口頭でも締結することができますが、合意内容が明らかとなる書面があれば紛争の早期解決にも繋がります

そのため、売買契約を締結する場合、売買契約書を作成することが望ましい場合もあるのです。


2章 売買契約書の加筆・削除・修正方法を解説!

売買契約書の内容は、当事者に法的な拘束力をもたらすことから慎重に吟味する必要があります。

以下では、各条項の解説と修正方法について詳しく解説していきます。

第1条:基本合意
第2条:引渡し
第3条:代金の支払
第4条:所有権の移転
第5条:危険負担
第6条:契約不適合の責任
第7条:期限の利益の喪失
第8条:契約の解除
第9条:反社会的勢力の排除
第10条:協議事項
第11条:合意管轄

それでは順番に説明していきます。

2-1 第1条:基本合意

売買契約書の条項1つ目は、基本合意です。

第1条(基本合意)
甲と乙は、乙が甲に対し○○(以下本件商品という)を代金○○円にて売り渡し、甲がこれを買い受けることを合意する。

売買契約を締結するには、目的物と代金について合意があったことを明らかにする必要があります(民法555条)。

また、ひな形では商品や動産などの不特定物を前提に記載していますが、不動産などの特定物の場合には対象物を特定することができる程度に記載しなければなりません

例えば、不動産の場合には「別紙物件目録記載の土地」(以下本土地)、「別紙物件目録記載の建物」(以下本建物)といったように記載します。

別紙物件目録には、土地であれば所在・地番・地目・地積、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積を記載することになるので、この情報によって対象物を特定します。

具体的には以下のとおりになります。

【基本合意-不動産修正例】

 甲と乙は、乙が甲に対し別紙物件目録記載の土地(以下本土地という)を代金○○円にて売り渡し、甲がこれを買い受けることを合意する。

【別紙物件目録の内容】

所在 ○○区○○町○丁目
地番 ○○番○
種類 宅地
地積 ○○○○.○○平方メートル
所有者 ○○

※参考:物件目録の書き方 | 裁判所

2-2 第2条:引渡し

売買契約書の条項2つ目は、引渡しです。

第2条(引渡し)
1 乙は、甲に対し、令和○年○月○日、○○にて、本件商品を引き渡す。
2 甲又は乙は、相手方の承諾を得て、引渡日若しくは引渡し場所を変更することができる。ただし、変更により費用が増加した場合、増加分は変更を申し出た者の負担とする。

引渡日と引渡し場所を契約書に定めなくても、売買契約は有効に成立します

引渡しについて契約書に定めなかった場合、引渡日と引渡し場所は以下のようになります。

【引渡日】(民法412条)
・履行の請求を受けた時

【引渡場所】(民法484条、商法516条1項)
・不特定物‐債権者の現在の住所(商人間の場合は債権者の現在の営業所)
・特定物‐債権発生の時にその物が存在した場所(商人間の場合は行為の時にその物が存在した場所)

しかし、引渡しの内容はあらかじめ契約書に定めておいた方がいいでしょう。

当事者双方の都合を確認する必要があるうえ、債権者は履行の催告という手間が増えてしまうためです。

そのため、売買契約書には引渡日と引渡し場所について定めることが望ましいといえます。

第2項は引渡日などの変更を制限するためのものです。

実際の取引では、相手方の都合で引渡日と引渡し場所について変更が生じることもあります。

この場合に、無制限に変更されては困るので、変更には承諾を必要とする旨を定めておく必要があるのです。

また、相手方の都合によって費用が増加した場合、その費用は相手方が負担すべきことになります(485条但書)。

2-3 第3条:代金の支払

売買契約書の条項3つ目は、代金の支払です。

第3条(代金の支払)
1 甲は、乙に対し、令和○年○月○日までに、売買代金○○万円を乙の指定する口座に支払を行う。振込送金に関する費用は、甲の負担とする。
2 乙は、相手方に対して有する債権と、相手方に対して負担している債務とを、弁済期にあるか否かを問わず、いつでもこれを対等額で相殺することができる。
3 甲が代金の支払を怠ったときは、支払期日の翌日から完済に至るまで年○○%の割合による遅延損害金を乙に支払う。

第1項について、代金の支払は目的物の引渡しと同時にされるのが原則です(民法573条、574条)。

しかし、これらは任意規定であることから当事者間で異なる定めをすることもできます。

代金の支払について定める場合、以下の事項を定める必要があります。

・代金額
・支払方法
・支払期限
・支払場所

支払期限を定める場合、買主は期限の利益を得るために長く、売主は迅速な支払を受けるために短く設定するといいでしょう。

また、商人間における商品・物品売買契約の場合、買主に検査義務が課されます(商法526条)。

検査で不合格となった物の取扱いについて明らかにするために、検査と代金支払との関係を示すことが望ましいです。

【代金支払‐商品・物品売買契約修正例】(買主修正例)

1 甲は、乙に対し、令和○年○月○日までに、受入検査に合格した本件商品の代金を乙の指定する口座に支払を行う。振込送金に関する費用は、甲の負担とする。

第2項は、買主の支払能力に不安が生じた場合に備えて、弁済期を問わず売主の債権回収への期待を保護するものです。

しかし、債権回収への期待は債務者も同様に有することから、買主側からも相殺を可能とすることが考えられます。

【買主修正例】

2 甲または乙は、相手方に対して有する債権と、相手方に対して負担している債務とを、弁済期にあるか否かを問わず、いつでもこれを対等額で相殺することができる。

第3項について、代金の支払期限を徒過した場合、買主は利息支払義務を負います。

売主は支払期限徒過を防止するために高利率に、買主は突発的事象に備えて低利率にすることが考えられます。

【売主修正例】

3 甲が代金の支払を怠ったときは、支払期日の翌日から完済に至るまで年14.6%の割合による遅延損害金を乙に支払う。

【買主修正例】

3 甲が代金の支払を怠ったときは、支払期日の翌日から完済に至るまで年3%の割合による遅延損害金を乙に支払う。

2-4 第4条:所有権の移転

売買契約書の条項4つ目は、所有権の移転です。

第4条(所有権の移転)
1 本件商品の所有権は、特定物については売買契約が成立した時に、不特定物については商品が特定した時に、乙から甲に移転する。
2 代金の支払が完了するまで商品の所有権が移転しない旨の特約がある場合には、その特約による。

所有権の移転時期について、ひな形では民法と同じ時期を設定しています(民法176条、最判昭33.6.20、最判昭35.6.24)。

しかし、所有権の移転時期は当事者の合意によって任意の時点に設定することができます。

買主としては、所有権を取得すれば目的物を制約なしに処分できるようになるので、所有権の移転時期はできる限り早い時点に設定することが考えられます。

他方で、売主は代金の支払を受けるまでは所有権を残しておきたいので、所有権の移転時期を遅い時点に設定することが考えられます。

 

【買主修正例】

1 本件商品の所有権は、乙が甲に本件商品を引渡した時に、乙から甲に移転する。

1 本件商品の所有権は、甲による受入検査に合格した時に、乙から甲に移転する。

【売主修正例】

1 本件注文品の所有権は、甲が乙に対し代金を完済した時に、乙から甲に移転する。

2-5 第5条:危険負担

売買契約書の条項5つ目は、危険負担です。

第5条(危険負担)
甲乙双方の責めに帰すべき事由以外の事由による本件商品の滅失、損傷、変質その他の損害は、第2条の引渡し前までは乙の、引渡し後については甲の負担とする。

本条は、天災等によって目的物に損傷が生じてしまった場合、当事者のどちらが危険を負担すべきかを定めるものです。

予期しない事態について対応するための規定であり、トラブルを防ぐためにも重要な規定といえます。

民法は、引渡しの時点で危険が移転すると定めているので(民法567条1項)、引渡し時点よりも不利になっていないかをチェックすることになります。

売り主としては、早期に負担を免れたいので、代金支払い時に危険が移転すると定めることが考えられます。

【売主修正例】

 甲乙双方の責めに帰すべき事由以外の事由による本件商品の滅失、損傷、変質その他の損害は、代金がすべて支払われるまでは乙の、代金がすべて支払われた後は甲の負担とする

しかし、実際には代金の支払から引渡しまで時間が空くこともあり、買主が所有権を取得した後も危険を負担させるというのは、売主の負担が過度に大きくなってしまいます。

そこで、公平の観点から、危険の移転時期を所有権の移転時期と合わせることが考えられます

2-6 第6条:契約不適合の責任

売買契約書の条項6つ目は、契約不適合の責任です。

第6条(契約不適合の責任)
1 甲への引渡し完了後、本件商品に種類、品質又は数量に関しての本契約内容への不適合が発見された場合、甲は直ちにこれを乙に通知する。
2 前項の発見時期が第3項に定める保証期間内の場合、甲は乙に対し目的物の代金の減額、乙の負担による本件商品の修理、代品の納入を求めることができる。但し、当該契約不適合が甲の責に帰すべき事由によることが明らかである場合はこの限りでない。
3 保証期間とは、次の各号に明示した期間をいう。
(1)甲が仕様書等で定めた保証期間
(2)仕様書等に保証期間の定めのない場合は、本件商品の引渡し完了の時から1年
4 第2項による修理、代品納入を実施した場合は、前項に定める期間を再設定するものとし、当該代品の乙から甲への引渡しが完了した日をもって再設定の開始日とする。
5 第1項の発見時期が第3項に定める期間を経過した場合、乙は甲の指示に従って当該目的物を有償で修理するものとする。

契約不適合責任は、民法改正によって瑕疵担保責任に代わり新たに設けられた規定です(民法562条以下)。

しかし、条文の文言は買主に請求権を認めるのみで、売主の具体的な責任については規定していません。

そのため、買主は有事に備えて売主の責任を明らかにしておくことが望ましいです。

他方で、売主は商人間の売買のように検査義務が課される場合については、受入検査との関連性を要求して責任を限定することが考えられます

【売主修正例】

1 甲への引渡し完了後、本件商品に第○条の受入検査でも発見できない種類、品質又は数量に関しての本契約内容への不適合が発見された場合、甲は直ちにこれを乙に通知する。

2-7 第7条:期限の利益の喪失

売買契約書の条項7つ目は、期限の利益の喪失です。

第7条(期限の利益の喪失)
 当事者の一方が本契約に定める条項に違反した場合、相手方の書面による通知によって、相手方に対して負っている債務について期限の利益を喪失し、直ちに相手方に弁済しなければならない。

期限の利益とは、期限が到来するまでは支払わなくてもよいという債務者の利益をいいます。

例えば、甲乙が売買契約を締結し代金の支払を3か月後とした場合、この3ヶ月の期間が期限の利益にあたります。

しかし、急激に資産状態が悪化することもあり、期限の到来を待っていられないこともあります。

そのため、債権者は弁済が受けられないという事態を避けるために、期限の利益喪失条項を設けるのです。

また、状況によっては通知している余裕がないこともあり、通知を不要とすることも考えられます。

【買主、売主修正例】

当事者の一方が本契約に定める条項に違反した場合、相手方の書面による通知なくして、相手方に対して負っている債務について期限の利益を喪失し、直ちに相手方に弁済しなければならない。

2-8 第8条:契約の解除

売買契約書の条項8つ目は、契約の解除です。

第8条(契約の解除)
乙は、甲が次の各号のいずれか一つに該当する場合には、通知を要せず、直ちに本契約を解除することができる。なお、この解除は、解除した当事者による相手方に対する損害賠償の請求を妨げない。
(1) 本契約に違反したとき
(2) 監督官庁より営業の許可の取消し等の処分を受けたとき
(3) 支払停止もしくは支払不能の状態に陥ったとき
(4) 差押え、仮差押え、仮処分若しくは競売の申立てを受けたとき
(5) 破産手続、民事再生手続、会社更生手続、特別清算手続開始の申立てを受け、又は自ら申立てを行ったとき
(6) 事業の全部または重要な一部を譲渡、会社合併、分割または解散の決議をしたとき
(7) その他、前各号に準じる事由が生じたとき

契約の解除は、当事者を法的拘束から解放するためのものです。

これは、契約書に定めがない場合でも、民法の規定に従い解除することができます(民法541条、542条)。

しかし、民法の規定だけでは保護が不十分なこともあり、約定解除を規定することが一般的とされています。

約定解除では、トラブルを避けるためにも、解除事由を列挙して解除可能な場合を明確にし、当事者の予測可能性を担保する必要があります。

また、催告を要求しないことで、迅速に契約関係からの離脱を可能としています。

注意が必要なのは、条項が解除を認めている主体です。

一方のみが解除できるとなっている場合、各号の事由が生じても一方は約定解除をすることができません。

そのため、この場合には、双方が解除できるように修正することが考えられます。

【買主修正例】

 甲及び乙は、甲が次の各号のいずれか一つに該当する場合には、通知を要せず、直ちに本契約を解除することができる。なお、この解除は、解除した当事者による相手方に対する損害賠償の請求を妨げない。

2-9 第9条:反社会的勢力の排除

売買契約書の条項9つ目は、反社会的勢力の排除です。

第9条(反社会的勢力の排除)
1 甲および乙は、次の各号の事項を確約し、これに違反した場合、何らの催告を要さずに本契約を解除することができる。
(1) 暴力団、暴力団構成員、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと
(2) 役員(取締役、執行役、執行役員、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと
(3) 反社会的勢力に対して資金を提供し、又は便宜を供与しないこと
(4) 反社会的勢力と社会的に非難される関係を有していないこと
(5) その他、業務内容が公序良俗に違反すると認められるときる行為
2 前項の解除は、解除した当事者による相手方に対する損害賠償を妨げない。ただし、
解除された者は、相手方に対し一切の請求を行わない。

反社会的勢力の排除は、コンプライアンスを徹底する観点から必要な規定となります。

反社会的勢力の定義を明確にするため、まずは例示などによって具体的に列挙する必要があります。

会社においては、役員が反社会的勢力でないことの表明保証を求められることがあります。

表明保証とは、取引に際して一定事項が真実かつ正確であることを表明してその内容を担保することいいます。

しかし、大規模な会社の場合は全従業員について表明保証することが難しいこともあり、重要な役職の従業員に限定して表明保証を求めることが望ましいです。

また、反社条項では定義の他にも以下の内容を定めなければなりません。

・反社会的勢力に該当しないことの表明と確約
・反社会的勢力と密接な関連性を有していないこと
・暴力的な行為等をしないことの確約

反社条項における重要な点は、無催告解除を認めている点です。

相手方が反社会的勢力であることが判明した場合、自社が反社会的勢力に協力しないよう直ちに契約関係から離脱する必要があるためです。

さらに、反社会的勢力からの損害賠償請求を禁止して、こちらの請求を可能とすることもポイントとなります。

2-10 第10条:協議事項

売買契約書の条項10つ目は、協議条項です。

第10条(協議事項)
 本契約に定めのない事項及び本契約の解釈につき相違のある事項については、甲及び乙は、信義誠実の精神に基づく協議の上、円満に解決するものとする。

協議条項は、当事者が紛争の解決方法を定めなかった事項について、抽象的に解決方法を規定するものです。

そのため、協議条項自体では具体的な拘束力がないので、紛争解決機能が果たせない場面もあるようです。

2-11 第11条:合意管轄

売買契約書の条項11つ目は、合意管轄です。

第11条(合意管轄)
 本契約に関連する訴訟については、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

合意管轄とは、トラブルの発生に備えて予め訴訟を提起する第1審の裁判所を書面で定めておくことをいいます。

費用と労力を軽減するために設けられるので、当事者双方に公平となるよう選ぶ必要があります。

専属的合意管轄を定める場合は「専属的」、付加的合意管轄を定める場合は「付加的」という文言を入れる必要があります

どちらか明らかでない場合は意思解釈となり、専属的合意管轄ではなく付加的合意管轄として解釈されるおそれがあるのです。

そのため、いずれの合意管轄であるかは明らかにしておくことが望ましいです。

合意管轄条項については以下の記事でより詳しく解説しています。

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3章 売買契約書とは?売買契約書の種類

売買契約書には様々な種類があります。

具体的には以下のようなものが挙げられます。


これらは同じ売買契約の枠組みに含まれていますが、種類によって定めるべき条項が異なってきます

そのため、先に紹介した売買契約書のひな形は、売買契約全体に共通するものを定めたにすぎず個別の契約に即して修正しなければなりません

ここでは、売買契約でよく用いられる以下のものについて解説していきます。

種類1:商品・物品売買契約書
種類2:不動産売買契約書(土地建物売買契約)
種類3:継続的な売買に関する取引基本契約書

それでは順番に説明していきます。

3-1 種類1:商品・物品売買契約書

売買契約書の種類1つ目は、商品・物品売買契約書です。

商品売買契約は機械部品の購入などの場合に用いられます。

以下では、商品売買契約書に入れることが考えられる条項について解説していきます。

条項1:受入検査
条項2:所有権の移転

それでは順番に説明していきます。

3-1-1 条項1:受入検査

商品売買契約書に入れることが考えられる条項1つ目は、受入検査です。

企業間や個人事業主間における売買契約では、商法526条の適用によって検査義務が課されることになります

そのため、商品売買契約では検査に関する規定を入れることが考えられます。

ただし、同条は任意規定であることから当事者間の合意により検査義務を修正・排除することも可能です。

具体的には、以下のように定めることが考えられます。

第○条(受入検査)
1 甲は、甲乙別途協議した検査基準に基づき、本件商品受領後○営業日以内に受入検査を行い、乙に対してその結果を通知する。
2 第1項の受入検査の結果、本件商品が不合格となったときは、甲はその旨を第1項の期間内に乙に通知するものとする。
3 第2項の通知を受けたときは、乙は、甲に対して乙の費用で直ちに代品の納品、本件商品の修理又は部品の交換を行う。
4 甲が、第1項の期間内に、第1項の通知を行わなかったときは、本件商品は検査に合格したものとみなす。

第1項の検査期間について、売主は商品の引渡し時期を早めるために短く、買主は商品の品質を確認するために長くするといいでしょう

第3項について、買主は不完全履行であれば完全な履行を求めることができるので、その旨を明らかにしたものです。

第4項は、法律関係を明確にするために通知がない場合について予め規定したものです。

3-1-2 条項2:所有権の移転

商品売買契約書に入れることが考えられる条項2つ目は、所有権の移転です。

第4条(所有権の移転)
1 本件商品の所有権は、特定物については売買契約が成立した時に、不特定物については商品が特定した時に、乙から甲に移転する。
2 代金の支払が完了するまで商品の所有権が移転しない旨の特約がある場合には、その特約による。

所有権の移転は、民法と同じ内容で売買契約書のひな形に組み込まれています。

しかし、これは任意規定なので修正することができます。

商品売買契約の場合、買主は制約なしに処分できるようになる所有権を早く得たいと考えます

一方で、売主は代金の担保のために、代金の支払を受けるまでは遅らせたいと考えるのが通常でしょう。

また、検査義務がある場合には、検査義務との関係性に加え検査に不合格となった商品の扱いを明らかにしておくことが望ましいです。

具体的には、以下のように修正することが考えられます。

【買主修正例】

1 本件商品の所有権は、乙が甲に本件商品を納入した時に乙から甲に移転する。ただし、乙が引き取った不合格品については、乙が引き取る旨の意思表示をした時に、甲から乙に移転する

 

【売主修正例】

1 本件注文品の所有権は、第5条の受入検査に合格した時に乙から甲に移転する。ただし、乙が引き取った不合格品については、乙が引き取る旨の意思表示をした時に、甲から乙に移転する。

1 本件注文品の所有権は、甲が乙に対し代金を完済した時に、乙から甲に移転する。ただし、乙が引き取った不合格品については、乙が引き取る旨の意思表示をした時に、甲から乙に移転する。

3-2 種類2:不動産売買契約書

売買契約書の種類2つ目は、不動産売買契約書です。

売買契約は意思の合致のみで成立しますが、取引対象が重要であることから不動産売買契約では書面を作成することが一般的とされています。

以下では、不動産売買契約書に入れることが考えられる条項について解説していきます。

条項1:境界の明示
条項2:実測による売買代金の修正
条項3:手付け
条項4:所有権移転登記
条項5:所有権の移転
条項6:担保権等の抹消
条項7:融資利用の特約
条項8:違約金
条項9:公租公課の負担

それでは順番に説明していきます。

3-2-1 条項1:境界の明示

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の1つ目は、境界の明示です。

境界を明示するには専門家に依頼するなど手続的な負担があるものの、当事者双方に利益をもたらします

売主は不動産を適正な価格で不動産を売却することができ、買主は不動産の正確な情報を知ることができるためです。

また、土地の境界が曖昧だと、購入後に買主と隣地所有者との間でトラブルが生じることもあります。

例えば、購入土地上に建物を新築する場合に建物が境界を越えてしまったり、隣人に土地の一部を占有されてしまうといったことが考えられます。

そのため、不動産売買契約では境界を明示することが望ましいといえます。

具体的には以下のように規定することが考えられます。

第○条(境界の明示)
1 乙は、甲に本件土地引渡しのときまでに隣地との境界線を明示する。
2 乙は、隣地所有者立会いのもと、本件土地の測量図を作成し、引渡しの時までに甲に交付する。確定測量図作成の費用は乙の負担とする。

しかし、隣地所有者が立会いを拒否したり現に境界に争いがある場合など、境界の明示が難しい場合もあります。

この場合、売主としては境界の明示を削除したり、隣地所有者との紛争について免責規定を置くことが考えられます

【売主修正例】

1 乙は、甲に本件土地の境界線を明示せずに引渡すものとする。
2 乙は、隣地との紛争について責任を一切負わず、甲は自己の責任と負担において解決するものとする

他方で、買主としては契約書を離れて、トラブルのリスクがあることを不動産の価格交渉に用いることが考えられます

3-2-2 条項2:実測による売買代金の修正

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の2つ目は、実測による売買代金の修正です。

土地売買契約の代金を確定する方法としては、公募売買(登記簿売買)と実測売買があります。

公募売買は登記簿上の表示面積を基準に代金を決定しますが、面積の調査時点から長期間経過していることもあり、実際の面積とは異なる場合があります。

これに対して実測売買は、売買契約前に調査することから面積が異なるといったことはありません。

そのため、正確性を追求したい場合には実測売買により代金の修正を規定することになるでしょう。

具体的には以下のように規定することが考えられます。

第○条(実測による売買代金の修正)
本件土地の売買は実測により、実測面積が公募面積と異なるときは、1平方メートル当たり○○万円の割合によって売買代金を修正する。

しかし、実測には費用と時間を要することから、実測する必要がない場合には公募売買が用いられます

例えば、実測する必要がない場合として、売買価格が低廉であったり登記簿の信頼性が高い場合が挙げられます。

具体的には、以下のように規定することが考えられます。

第○条(実測による売買代金の修正)
 本件土地の売買は公募により、実測面積と公募面積が異なる場合であっても、甲及び乙は売買代金の変更その他何らの請求もしない。

3-2-3 条項3:手付け

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の3つ目は、手付けです。

不動産売買契約においては手付金を交付することが一般的とされており、その効力を正しく理解しておく必要があります。

手付金は解約手付と推定され、相手方の履行着手前に限り、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金を倍返しすることで契約を解除することができます(大判昭和7.7.19、民法557条1項)。

また、支払われた手付金は当然には売買代金に充当されないので、充当させたい場合はこれを明らかにしておかなければなりません。

手付金の相場は売買代金の10~20%程度とされていますが、法律には上限を定める規定はありません。

具体的には以下のように規定することが考えられます。

第○条(手付)
1 甲は、乙に対して、本件契約締結と同時に手付金○○万円を支払うものとする。
2 第1項の手付金は、売買代金の支払の際に無利息で売買残代金の一部に充当する。
3 手付金は解約手付とし、相手方が本契約の履行に着手する前に限り、乙は甲に対して手付金の倍額を現実に提供することにより、甲はこれを放棄することにより、本契約を解除できる。

3-2-4 条項4:所有権の移転

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の4つ目は、所有権の移転です。

第4条(所有権の移転)
1 本件商品の所有権は、特定物については売買契約が成立した時に、不特定物については商品が特定した時に、乙から甲に移転する。
2 代金の支払が完了するまで商品の所有権が移転しない旨の特約がある場合には、その特約による。

不動産は特定物なので、法律の定めに従えば契約成立日に所有権が移転することになります。

しかし、不動産売買においては、決済日に所有権が移転することが一般的とされています。

不動産売買は重要な財産に関する取引であることから、契約日と決済日を分けて設定されることが多く、このような実務の形式に合わせるためです。

以下のように修正することが考えられます。

【所有権の移転-不動産売買対応版】

 本件不動産の所有権は、乙が甲から売買代金全額の支払を受けた時に移転する

3-2-5 条項5:所有権移転登記手続

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の5つ目は、所有権移転登記手続です。

不動産売買契約を締結した場合、所有権移転登記手続をすることになります。

移転登記をしないと対抗要件を具備できず、買主の法的地位が不安定となるためです(民法177条)。

例えば、買主が土地を購入したものの、買主が登記をする前に売主が他の第三者に同土地を売却し第三者が登記した場合、買主は第三者に土地の所有権を主張できなくなります。

そのため、迅速に所有権移転登記手続をするためにも、契約書で登記手続の内容を明らかにしておく必要があります。

具体的には以下のように規定することが考えられます。

第○条(所有権移転登記手続)
1 乙は、甲に対して、売買代金全額の支払いを受けるのと引換えに、甲の費用において本件土地の所有権移転登記手続を行う。ただし、所有権移転登記に先立ち本件土地の所有者名、所有者の住所等に変更登記が必要な場合は、乙が費用を負担する。
2 第1項の登記手続は、乙が甲に対して登記手続に必要な書類を交付することにより、又は第1項ただし書きについては必要な書類一式に加えて費用を交付することにより、これに代えることができる。

第1項については、売買契約が双務契約であることから同時履行の関係に立つことを明らかにし、利益を受ける買主側に手続の費用を負担させています。

第1項ただし書きは、売主側の事情により所有権移転登記ができない場合には、売主側の負担で所有権移転登記すべきことを定めたものです。

第2項は、買主側が手続を行うという実務上の対応に合わせて、必要な書類と費用の交付で足りるとするものです

3-2-6 条項6:担保権等の抹消

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の6つ目は、担保権等の抹消です。

不動産売買では、目的不動産に担保権が付されていることがあります。

この場合、担保権の存在について合意があれば問題ないですが、担保権のないことが契約の内容になっていた場合には権利に関する契約不適合となります(民法565条、562条、563条)。

担保権が付されていると、制約のない完全な所有権を取得することができず、買主が目的を達成できないためです。

そのため、後者の場合には目的不動産の担保権を抹消させるために、契約書の条項に定めておくことが考えられます

実際に発見することが難しい場合もあるので、具体的には特定せず包括的に規定することがポイントです。

具体的には以下のように規定することが考えられます。

第○条(担保権等の抹消)
乙は、甲に対して所有権移転登記手続を行うまでに、甲による本件土地の完全なる所有権行使を妨げる抵当権、質権、先取特権及び賃借権等の負担を除去しなければならない。

3-2-7 条項7:融資利用の特約

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の7つ目は、融資利用の特約です。

不動産売買契約では代金が高額になりやすく、買主が購入資金に充てるために融資を受けることが多いです。

しかし、中には融資の審査に通らないこともあり、買主の代金支払に不安が生じます

この場合、売主としては他の買主を探す方が合理的であり、解約できるようにしておくことが望ましいです。

他方で、買主としても融資を受けられなければ代金を支払えないので、解約の余地を残しておく必要があります。

双方の利益のために、融資を得られない場合には解約できる旨を合意し、これを明らかにしておくことが望ましいでしょう。

ただし、金融機関や融資予定日を定めていないと、売主に何度も融資利用を求められてしまい解約できないという事態が発生します。

そのため、金融機関と融資予定日を具体的に特定し、融資利用の特約が形骸化しないようにする必要があります

具体的には以下のように規定することが考えられます。

第○条(融資利用の特約)
1 甲は、本件土地購入のために融資金を利用する場合、本契約締結後速やかにその融資の申込手続をする。
2 第1項の申込みは、○○銀行○○支店に融資額○○万円の申込みをし、融資予定日は令和○年○月○日までとする。
3 乙は、甲が融資予定日までに融資を受けられない場合、本契約を解除することができる。
4 本条による解除の場合、○条(手付)と○条(解除)の規定は適用されない。

3-2-8 条項8:違約金

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の8つ目は、違約金です。

不動産売買では、売買代金の一定割合を違約金として定められることがあります。

違約金は損害賠償の予定として扱われ(民法420条)、損害賠償請求するには帰責性が必要となります。

また、違約金の相場は売買代金の20%程度とされていますが、以下のような制限があります


これを超える違約金の定めは超過部分が無効とされるので、どのような制限があるのかを正確に把握しておく必要があります。

具体的には以下のように規定することが考えられます。

第○条(違約金)
1 甲の責めに帰すべき事由により乙が解除した場合、甲は、乙に対して受領済みの金員に加えて違約金○○万円を支払う。
2 乙の責めに帰すべき事由により甲が解除した場合、乙は、甲に対して受領済みの金員から違約金○○万円を控除した残額を無利息で返還する。違約金の金額が、支払済みの金員を上回る場合、乙は、甲に対してその差額を支払う。

3-2-9 条項9:公租公課の負担

不動産売買契約書に入れることが考えられる条項の9つ目は、公租公課の負担です。

不動産には、固定資産税や都市計画税に加え、不動産取得税などがあります。

不動産取得税については、買主が当然に負担するものなので特に規定する必要はないでしょう。

また、公租公課は引渡完了日の前日までについては売主の負担とし、引渡完了日以降については買主の負担とすることが一般的です。

しかし、固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日に固定資産課税台帳の名義人(売主)が1年分を負担しなければなりません。

そのため、年度の途中で所有者に変更があった場合、買主は売主が負担した公租公課を精算する必要があります

この場合の精算方法は、日割計算によってされることが一般的です。

具体的には以下のように規定することが考えられます。

第○条(公租公課の負担)
 甲及び乙は、本件不動産から生じる収益又は賦課される固定資産税、都市計画税等の公租公課並びにガス、水道、電気料金及び各種負担金等の諸負担について、引渡完了日の前日までは乙の収益又は負担とし、引渡完了日以降は甲の収益又は負担とし、引渡完了日に精算する。

納付書送付前に引渡完了日が到来する場合、どの時点を基準に精算するかを当事者で協議しておく必要があります。

算定基準時としては以下のものが挙げられます。

・引渡完了日
・納付書送付時点で精算
・前年度の税額を基準に精算
・前年度の税額で仮精算して納付書送付時点で再精算
・公租公課の上昇が予測できる場合は前年度の税額に上昇率を乗じた金額により精算

3-3 種類3:継続的な売買に関する取引基本契約書

売買契約書の種類3つ目は、継続的な売買に関する取引基本契約書です。

取引基本契約書とは、同じ相手と反復して売買契約を締結する場合に、あらかじめ共通した内容を定めておくものをいいます。

取引基本契約書を作成するメリットは、取引コストの軽減と迅速な取引が可能となる点が挙げられます。

企業間において取引の大枠を作ることから、取引の度に同じ手続を繰り返さなくてもよくなるためです。

以上のことから、売買契約書と共通する部分がありますが、包括的な内容となることが多く売買契約書のひな形を流用することは難しいといえます。

取引基本契約書に入れる条項としては以下のもの考えられます。

条項1:基本合意
条項2:適用範囲
条項3:個別契約の成立
条項4:納品
条項5:受入検査
条項6:代金の支払
条項7:所有権の移転
条項8:危険負担
条項9:品質管理
条項10:立入検査
条項11:契約不適合の責任
条項12:製造物責任
条項13:支給材の取扱い
条項14:第三者の権利侵害
条項15:再委託
条項16:権利義務の譲渡禁止
条項17:不可抗力に基づく変更解約
条項18:秘密保持
条項19:有効期間
条項20:契約の解除
条項21:期限の利益の喪失
条項22:契約終了後の措置
条項23:損害賠償の範囲
条項24:反社会的勢力の排除
条項25:合意管轄
条項26:協議条項

以下の記事で各条項について詳しく解説しています。


4章 売買契約書作成の注意点3つ

売買契約書を作成する場合、トラブルを避けるためにも注意すべき事項があります。

ここでは、売買契約書の注意点について解説していきます。

注意点1:公平性を確保する
注意点2:条項を明確に定める
注意点3:改正内容に対応できるようにする


それでは順番に説明していきます。

4-1 注意点1:公平性を確保する

売買契約書作成の注意点1つ目は、公平性を確保することです。

売買契約では、相手方から送られてきた草案をチェックすることになります。

草案は作成者に有利な内容の条項が多く、見落としてしまうと不利益になることもあります。

そのため、売買契約書を作成する場合、不利益な内容を修正し公平性が確保できるようにすべきといえます。

4-2 注意点2:条項を明確に定める

売買契約書作成の注意点2つ目は、条項を明確に定めることです。

売買契約書における各条項は、あらかじめ当事者間におけるルールを定めておくものです。

しかし、ルールの内容が曖昧だと、当事者間で解釈に違いが生じることもあります。

解釈の相違はトラブルに発展するおそれがあり、できることなら避けたいものです。

そのため、トラブルを避けるためにも、売買契約書の各条項はできる限り明確に定めることが望ましいといえます。

4-3 注意点3:改正内容に対応できるようにする

売買契約書作成の注意点3つ目は、契約不適合責任や危険負担に対応できるようにすることです。

2020年の民法改正によって、契約不適合責任が新設され危険負担が削除されました。

契約不適合責任は、従来の瑕疵担保責任に対応するものですが、「隠れた瑕疵」ではなく「契約の内容に適合しない」という表現が用いられています。

契約時に買主が知っていた場合でも、不適合責任の追及ができて可能性があるのです。

そのため、改正法下では検査では発見できない不適合に限定しておく必要があります

危険負担では、改正前は特定物と不特定物で分けて規定し、債権者主義を採用していました。

しかし、債務者主義に統一され「当事者双方の責めに帰することができない事由」について、債権者は履行拒絶できるとしてシンプルな形式に変わりました。

履行拒絶できる場合、債権者は契約を解除することもできることから、改正後では確認的に解除できる旨を定めることが考えられます

以上より、契約不適合責任と危険負担については、改正内容に対応できるようにしておくことが望ましいです。

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5章 売買契約書に必要な印紙税を種類別に解説

必要な印紙税額は、作成しようとする売買契約書の種類によって異なってきます。

ここでは、売買契約書の種類ごとに必要となる印紙税額を解説していきます。

種類1:不動産売買契約書(1号文書)
種類2:取引基本契約書(7号文書)

それでは順番に説明していきます。

5-1 種類1:不動産売買契約書(1号文書)

印紙税が必要となる売買契約書の種類1つ目は、不動産売買契約書です。

不動産売買契約書は「不動産の譲渡に関する契約書」として、1号文書に該当します

1号文書に必要な印紙税額は以下のとおりです。

※参考:国税庁‐印紙税額一覧表

5-2 種類2:取引基本契約書(7号文書)

印紙税が必要となる売買契約書の種類2つ目は、取引基本契約書です。

継続的な取引を行う場合に作成する取引基本契約書は、7号文書にあたります。

7号文書の印紙税額は、記載の契約金額を問わず一律に4000円とされています(※参考:国税庁‐印紙税額一覧表)。

ただし、取引基本契約書の種類としてある業務委託契約書を作成する場合には、以下の例外を除いて2号文書として扱われることがあるので注意が必要です。

・2号文書のうち契約金額の記載がないもの
・営業車間において継続する複数の基本的な取引条件を定めたもの

2号文書の印紙税額は以下のとおりです。

※参考:請負に関する契約書|国税庁


6章 売買契約書に関するよくある質問5つ

ここでは、売買契約書に関するよくある質問について解説していきます。

質問1:売買契約書は絶対に作成しないといけないの?
質問2:契約内容を変更したいときはどうすればいいの?
質問3:印紙を貼り忘れたらどうなるの?
質問4:バックデートしたい場合はどうすればいいの?
質問5:契約書は何通作成すればいいの?

それでは順番に説明していきます。

6-1 質問1:売買契約書は絶対に作成しないといけないの?

売買契約書を作成しなくても、契約を締結することはできます

しかし、契約書は当事者間のルールを客観的に明らかにしておくもので、紛争解決の指針として機能します。

トラブルが生じた際におけるリスクを低減させることができるのです。

例えば、代金支払期日に決済が行われない場合、証拠がなければ支払期日がいつなのかを証明することは難しいといえます。

そのため、売買契約書がなくても契約を締結することはできますが、可能であればリスクを低減させるために売買契約書を作成することが望ましいです。

6―2 質問2:契約内容を変更したいときはどうすればいいの?

契約内容を変更するには、変更内容について双方の合意を得る必要があります

双方の合意を得るための手段として、「覚書」を取り交わすことが一般的とされています。

覚書の書式は以下のとおりです。

覚書【書式】
書式のダウンロードはこちら

 

この覚書は、契約内容の変更という法的拘束力をもっており、契約の締結と同じく慎重に行う必要があります

記載内容が不十分な場合、予期した効力を生じないこともあるので以下の点に注意して作成することが望ましいです。

・変更する契約/条項を特定する
・変更の効力発生日を明確にする
・印紙が必要な文書か確認する

6-3 質問3:印紙を貼り忘れたらどうなるの?

印紙を貼り忘れた場合、通常の3倍もの印紙税を支払うことになります(※参考:印紙を貼り付けなかった場合の過怠税|国税庁 )。

収入印紙を貼り忘れると、税務調査で印紙税の未納付が明らかとなります。

この場合、通常の印紙税に加えて、印紙税額の2倍に相当する金額との合計額を過怠税として徴収されます。

例えば、500万円を超え1000万円以下の不動産売買契約書を作成する場合、原則として1万円の印紙を貼り付けて消印をする必要があります。

これを怠ると、通常の1万円の他にその2倍の2万円を足して、合計3万円の過怠税が徴収されます。

ただし、貼り忘れた場合でも、自己申告した場合には悪質な場合を除いて1,1倍にまで過怠税が軽減されます

そのため、予期せぬ負担とならためにも、印紙の貼り忘れがないよう慎重に行うことが重要です。

6-4 質問4:バックデートしたい場合はどうすればいいの?

バックデートしたい場合、契約書の作成日を契約の効力を生じさせたい日に設定することになります

しかし、バックデートは実際の作成日とズレが生じるのでやめた方がいいでしょう。

契約書の作成日は、契約締結日と同じに設定することが一般的とされています

バックデートをする場合、契約書の作成日と契約締結日とにズレが生じ、第三者から本当の作成日を知ることができなくなるのです。

また、契約書に真実とは異なる記載があることにより、証拠としての信頼性に影響が生じることもあります。

そのため、バックデートはせずに、明文で契約書の締結日を遡らせる遡及適用を利用するようにしましょう

遡及適用の例文は以下のとおりです。

「本契約は、契約締結日にかかわらず、令和○年○月○日に遡って適用する」

6-5 質問5:契約書は何通作成すればいいの?

通常、当事者の数だけ作成して各1通ずつ保管することが多いです

他にも、印紙税を節約するために、買主が原本を保管して売主が写しを保管するということもあります

ただし、写しであっても以下の場合には印紙が必要となります。

・契約当事者の双方または一方の署名または押印があるもの
・正本等の相違ないこと、または写し・副本・謄本等であることについて契約当事者による証明があるもの
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7章 契約書の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ|サポート内容のご案内

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8章 まとめ

今回は、売買契約書のひな形について紹介したうえで条項の加筆・削除・修正方法について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・売買契約書のひな形と、加筆・削除・修正方法の解説。

・売買契約書とは?売買契約書の種類
種類1:商品・物品売買契約書
 条項1:受入検査
 条項2:所有権の移転
種類2:不動産売買契約書
 条項1:境界の明示
 条項2:実測による売買代金の修正
 条項3:手付け
 条項4:所有権移転登記
 条項5:所有権の移転
 条項6:担保権等の抹消
 条項7:融資利用の特約
 条項8:違約金
 条項9:公租公課の負担
種類3:継続的な売買に関する取引基本契約書

・売買契約書作成の注意点3つ
注意点1:公平性を確保する
注意点2:条項を明確に定める
注意点3:改正内容に対応できるようにする

・売買契約書に必要な印紙税は作成する売買契約書によって異なる。

・売買契約書に関するよくある質問は以下の5つです。
質問1:売買契約書を作成しなくても契約は成立するが作成した方が望ましい。
質問2:契約内容を変更したいときは覚書によって合意することが一般的。
質問3:印紙を貼り忘れたら過怠税を徴収される。
質問4:バックデートはせずに遡及適用を利用する。
質問5:契約書は各1通ずつ若しくは印紙税節約のためにコピーにする。

この記事が、売買契約書の作成方法について知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので是非読んでみて下さい。

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