不貞行為の慰謝料二重取りは許される?2つの例外と正しい示談の方法

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弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。

慰謝料の二重取りが許されるかどうか知りたいと悩んでいませんか?

不貞行為の相手が既に慰謝料を支払ったのに、自分にも高額の慰謝料を請求されてしまうと納得できませんよね。

結論としては、慰謝料の二重取りは裁判上は認められていません。

というのも、慰謝料は不貞行為の当事者が1つの債務を負担するので、どちらかが弁済すれば債務は消滅するためです。

例えば、不貞行為をした夫婦の一方が慰謝料の全額を支払っていた場合、不貞行為の相手は慰謝料を支払う必要はないのです。

実は、突然の慰謝料の請求に焦り、支払うの必要のない慰謝料を支払ってしまっている方も少なからずいます

この記事を読んで、慰謝料の二重取りについて知っていただければと思います。

今回は、不貞行為の慰謝料の二重取りが許されるのかについてわかりやすく解説していきます。

具体的には以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば慰謝料の二重取りについてよくわかるはずです。

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1章 不貞慰謝料の二重取りとは?

不貞慰謝料の二重取りとは、不貞行為によって生じた1つの債権を使って慰謝料を2回請求することをいいます。

例えば、不貞行為をされた妻が300万円の慰謝料を請求した場合に、夫から300万円の支払を受けた後に不貞相手からも300万円の支払を受けることは不貞慰謝料の二重取りにあたります。


2章 不貞慰謝料の二重取りは許されない|両方に請求は可能

不貞慰謝料の二重取りをすることは許されません

というのも、慰謝料は不貞行為の当事者が1つの債務を負担するので、どちらかが弁済すれば債務は消滅するためです。

しかし、どちらかから支払けるまでは、双方に対して慰謝料全額を請求することができます

例えば、妻が不貞行為をされた場合には、夫に対して300万円を請求していもいいですし、夫から支払を受けるまでは不貞相手に対して300万円を請求することもできるのです。

夫が妻に対して慰謝料を支払った後は、不貞相手に対して求償権を使い必要以上に支払った部分について請求することができます。

求償権については以下の記事で詳しく解説しています。

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3章 慰謝料の二重取りが許される例外2つ

慰謝料の二重取りは絶対に許されないものではなく、一定の場合には許されることがあります。

慰謝料の二重取りが許される場合として以下の例外が挙げられます。

例外1:支払われた慰謝料が一部のみの場合
例外2:任意の弁済がある場合

それでは各例外について順番に解説していきます。

3-1 例外1:支払われた慰謝料が一部のみの場合

慰謝料の二重取りが許される例外の1つ目は、支払われた慰謝料が一部のみの場合です。

支払われた慰謝料の金額が一部に過ぎない場合、支払われていない部分の慰謝料については消滅しません。

例えば、妻が夫に対して100万円の慰謝料を請求した場合、夫が支払ったのが50万円であれば、妻は不貞相手に対して残りの50万円を不貞相手に請求することができます。

そのため、支払われた慰謝料が一部のみの場合、慰謝料の二重取りが許されることがあります。

3-2 例外2:任意の弁済がある場合

慰謝料の二重取りが許される例外の2つ目は、任意の弁済がある場合です。

慰謝料の全額が支払われていたとしても、そのことを知りつつ更に慰謝料を支払うことは自由とされています

例えば、妻が夫に慰謝料を請求し夫が全額を支払った場合でも、不貞相手も慰謝料を支払うことはできるのです。

そのため、任意の弁済がある場合には、慰謝料の二重取りが許される場合があります。


4章 既に払われた不貞慰謝料を二重に請求された場合の対処法

既に払われた不貞慰謝料を二重に請求された場合の対処法は以下のとおりです。

方法1:慰謝料の振り込みをしない(明確に支払いを拒絶する)
方法2:慰謝料請求者と直接会うのは避ける
方法3:不貞行為については謝罪の意思を示す

それでは各方法について順番に説明していきます。

4-1 方法1:慰謝料の振り込みをしない(明確に支払を拒絶する)

不貞慰謝料を二重に請求された場合の対処法の1つ目は、慰謝料の振り込みをしないことです

慰謝料の二重取りにあたる場合であっても、払ったお金を返してもらうことは難しいです。

例えば、二重取りにあたるとされた場合でも、相手方は任意に支払ったとして振り込みは有効であるとして争いになる可能性があります。

そのため、慰謝料の二重取りのケースでは、振り込みをする前に本当に支払いに応じる必要があるのか、弁護士に相談することをおすすめします。

4-2 方法2:慰謝料請求者と直接会うのは避ける

不貞慰謝料を二重に請求された場合の対処法の2つ目は、慰謝料請求者と直接会うのは避けることです。

なぜなら、慰謝料請求者と直接会ってしまうと、その場で請求者に有利な合意書を渡されて、これにサインするまでは帰さないなどと言われることがあるためです。

例えば、謝罪のために相手方の家に行ったら、その場で書面にサインをさせられてしまい、書面には300万円の慰謝料を支払うと記載してあったということもあります。

書面にサインすると支払に同意したと争われる可能性があり、大きな負担になるおそれがあります。

そのため、慰謝料の二重取りのケースでは、慰謝料請求者と直接会うのは避けることが望ましいです。

4-3 方法3:不貞行為自体については謝罪の意思を示す

不貞慰謝料を二重に請求された場合の減額の方法の3つ目は、不貞行為については謝罪の意思を示すことです。

不倫をしてしまったこと自体については、あなたに落ち度があり真摯に対応するべきだからです。

ただし、謝罪することと慰謝料の支払いは別の問題なので、適正な金額を超える慰謝料の支払に応じる必要はありません。

他方の当事者から適正な慰謝料が支払われている場合には、毅然とした態度で支払を拒否しましょう

適切な謝罪の方法については以下の記事で詳しく解説しています。

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5章 不貞慰謝料を二重に請求されている場合の示談の方法

不貞慰謝料が不貞加害者の双方に対して二重に請求されている場合の示談は、不貞被害者と不貞加害者2人の三者間ですることが望ましいです。

というのも、示談を二人だけですると、示談の効力がもう一方の当事者に及ばなくなってしまうためです。

例えば、妻と夫の間だけで示談をし慰謝料を300万円支払うと合意しても、不貞相手に合意の効力は及びません。

妻が不貞相手に300万円で合意しようとしても、不貞相手は妻と夫による示談の影響を受けないので、慰謝料の金額が争いになるおそれがあります。。

このように、慰謝料の二重取りのケースでは、関係者全員が揃わなければ円満な解決をすることは難しくなるのです。

そのため、慰謝料の二重取りでは、示談は妻と夫だけでなく不貞相手も交えた三者間ですることが望ましいといえるでしょう。


6章 不貞慰謝料の二重取りリスクを回避するための3つの注意点

慰謝料の二重取りは許されませんが、実際には認識のズレなどから慰謝料を支払ってしまうこともあります。

慰謝料の二重取りを回避するための注意点は以下のとおりです。

注意点1:不貞相手に事前の通知を行う
注意点2:不貞相手に事後の通知を行う
注意点3:自分が弁済した証拠を残す

それでは各注意点について順番に解説していきます。

6-1 注意点1:不貞相手に事前の通知を行う

不貞慰謝料二重取りを回避するための注意点の1つ目は、不貞相手に事前の通知を行うことです。

なぜなら、不貞相手に事前の通知をすることで、慰謝料が既に支払われているのか確認できるうえ、不貞相手にも自分の弁済の有無を知らせることができるからです。

例えば、不貞相手が既に300万円を支払った後に、夫が事前の通知をして不貞相手に確認しなければ、二重に支払ってしまうリスクがあるのです。

そのため、不貞慰謝料を支払う際には、不貞相手に事前の通知をすることが望ましいです。

6-2 注意点2:不貞相手に事後の通知を行う

不貞慰謝料二重取りを回避するための注意点の2つ目は、不貞相手に事後の通知を行うことです。

なぜなら、支払った後に通知をすることで慰謝料の支払について知らせることができ、不貞相手が二重に弁済することを防ぐことができるからです。

そのため、不貞慰謝料を支払った後は、不貞相手に事後の通知をすることが望ましいです。

6-3 注意点3:自分が弁済した証拠を残すこと

不貞慰謝料二重取りを回避するための注意点の3つ目は、自分が弁済した証拠を残すことです。

なぜなら、自分が慰謝料を支払った後に、重ねて不貞相手も慰謝料を支払った場合には、支払った一部について求償されてしまうリスクがあるためです。

既に慰謝料の支払いをしていた場合でも、その事実を立証することができなければ、求償請求が認められてしまう可能性があります。

そのため、不貞慰謝料を支払った後は、弁済した証拠を残すことが重要です。

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7章 慰謝料減額の交渉はリバティ・ベル法律事務所にお任せ

慰謝料の減額交渉については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。

慰謝料の減額交渉については、複数の事情がある中から適切に取捨選択をして主張していく必要があります。

また、慰謝料の減額交渉については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきます

リバティ・ベル法律事務所では、慰謝料の減額交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しておりますので、あなたの最善の解決をサポートします

リバティ・ベル法律事務所では、慰謝料の減額交渉に関して、「初回相談無料」を採用していますので、少ない負担で気軽にご相談できる環境を整えています。

慰謝料の減額交渉に悩んでいる方は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。


8章 まとめ

今回は、不貞慰謝料の二重取りできるかを見た後に、二重に請求された場合の対処法・正しい示談方法・二重取りを回避するための注意点について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ
・不貞慰謝料の二重取りとは、不貞行為によって生じた同一の慰謝料債権を用いて、複数回請求することをいいます。
・不貞慰謝料の二重取りをすることは許されません。ただし、いずれかから弁済を受けるまでは、双方に対して慰謝料全額を請求することができます。
・慰謝料の二重取りが許される例外は以下の2つです。
 例外1:支払われた慰謝料が一部のみの場合
 例外2:任意の弁済がある場合
・既に払われた不貞慰謝料を二重に請求された場合の対処法は以下の3つです。
方法1:慰謝料の振り込みをしない(明確に支払いを拒絶する)
方法2:慰謝料請求者と直接会うのは避ける
方法3:不貞行為については謝罪の意思を示す
・不貞慰謝料の二重取りリスクを回避するための注意点は以下の3つです。
注意点1:不貞相手に事前の通知を行う
注意点2:不貞相手に事後の通知を行う
注意点3:自分が弁済した証拠を残す

この記事が、不貞行為の慰謝料二重取りについて悩んでいる方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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