離婚の財産分与は通帳開示が重要!隠し財産や開示拒否への対処法2つ

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弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

離婚の財産分与は通帳開示が重要!隠し財産や開示拒否への対処法2つ

離婚の財産分与で通帳開示のためにどう行動すべきか悩んでいませんか

通帳の開示を拒否されてしまうと、不利な条件で財産分与することにならないか不安になりますよね。

離婚の財産分与では、適切に共有財産を分け合うためにも通帳開示が重要となります

通帳開示の対象となるのは共有財産の範囲のみであり、必要以上の開示は求められません。

しかし、通帳内の預貯金を移動させることは容易であり、別名義の口座に移すなど預貯金が隠されてしまうこともあります

実は、隠された預貯金に気づかないまま財産分与してしまい、後からトラブルになるケースが後を絶たないのです。

そのため、通帳の開示に不安を感じたらなるべく早く弁護士に相談するなど、適切な行動を取ることが大切です

この記事で、通帳開示で不利にならないための知識を知っていただければと思います。

今回は、離婚財産分与における通帳開示の必要性について説明した上で、分与の対象となる預貯金や財産隠しと開示拒否への対処法について解説していきます。

具体的には、以下の流れで解説していきます。

この記事を読めば、通帳開示のためにどう行動すべきかよくわかるはずです。

目次

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1章 離婚の財産分与では通帳開示の必要性が高い

離婚の財産分与では、通帳開示の必要性が高いとされています

夫婦が離婚する場合、共有財産は原則として2分の1の割合で分け合うことになります。

通帳内の預貯金も例外ではなく、共有財産にあたる部分は分け合わなければいけません。

しかし、何の調査もなく全ての財産を把握することは困難であり、通帳開示等の調査手続を通じて配偶者が有している財産を知る必要があります

実際、通帳開示を通じて隠し口座が明らかとなり、多額の預貯金が存在したというケースは少なくありません。

そのため、財産分与で適正に共有財産を分け合うためには、通帳開示が重要となるのです


2章 離婚で財産分与の対象となる通帳の預貯金3つ

離婚で財産分与によって分けられるのは、夫婦の共有財産です

共有財産とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産をいい、通帳内の預貯金もこれに含まれることがあります。

例えば、離婚で財産分与の対象となる通帳の預貯金は以下の3つです。

預貯金1:結婚生活で貯めた預貯金
預貯金2:単に名義を変更したにすぎない預貯金
預貯金3:共有財産から第三者の通帳に入れていた預貯金

離婚で財産分与の対象となる通帳の預貯金3つ

それでは、順番に説明していきます。

2-1 預貯金1:結婚生活で貯めた預貯金

離婚で財産分与の対象となる通帳の預貯金1つ目は、結婚生活で貯めた預貯金です

結婚生活で貯めた預貯金は、まさに夫婦が婚姻期間中に築いた財産であり、共有財産として財産分与の対象になります。

2-2 預貯金2:単に名義を変更したにすぎない預貯金

離婚で財産分与の対象となる通帳の預貯金2つ目は、単に名義を変更したにすぎない預貯金です

なぜなら、通帳の名義が本人から変わっていたとしても、夫婦の共有財産であることに変わらないためです

例えば、名義が旧姓や子どもになっていたとしても、通帳内の共有財産は分け合う必要があるのです。

そのため、単に名義を変更したにすぎない場合でも、財産分与の対象になることがあります。

これは、夫婦の共有財産を旧姓名義・子ども名義の口座に入れていた場合も同様です。

2-3 預貯金3:共有財産から第三者の通帳に入れていた預貯金

離婚で財産分与の対象となる通帳の預貯金3つ目は、共有財産から第三者の通帳に入れていた預貯金です

なぜなら、共有財産から第三者の通帳に移されているにすぎず、その性質に変化はないためです。

例えば、配偶者が共有財産としてのへそくりを、実母名義の通帳に入れていたとしても財産分与の対象になることがあるのです。

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3章 離婚で財産分与の対象にならない通帳の預貯金2つ

通帳開示請求で開示できる範囲は婚姻時・別居時・離婚時の預貯金であり、財産分与の対象とならない部分については開示できません

具体的には、特有財産のように夫婦が協力して築いたとはいえない財産が財産分与の対象から外されます。

離婚で財産分与の対象にならない通帳の預貯金としては、例えば以下の3つがあります。

預貯金1;婚姻前から有していた預貯金
預貯金2:親から相続した/贈与を受けた預貯金

離婚で財産分与の対象にならない通帳の預貯金2つ

それでは、順番に説明していきます。

3-1 預貯金1:婚姻前から有していた預貯金

離婚で財産分与の対象にならない通帳の預貯金1つ目は、婚姻前から有していた預貯金です

婚姻前から有していた預貯金については、夫婦が協力して築いた財産とはいえないため、財産分与の対象にはなりません。

しかし、婚姻期間が長いと婚姻前後の預貯金が混ざってしまい、財産分与の対象にされてしまうことがあります

そのため、財産分与の対象から外したいときは、婚姻前後で通帳を分けるなど混ざらないよう工夫することになります。

3-2 預貯金2:親から相続した/贈与を受けた預貯金

離婚で財産分与の対象にならない通帳の預貯金2つ目は、親から相続した/贈与を受けた預貯金です

親から相続した場合や贈与を受けた預貯金については、夫婦の協力とは別に得た財産であり、財産分与の対象になりません。

ただし、夫婦の共同生活のために贈与をされたなど、共有財産として見るべき事情があるときは財産分与の対象になることがあります

例えば、夫婦の生活を援助するために生活費を贈与していた場合には、共有財産として分与されることになるでしょう。


4章 離婚の財産分与で隠された通帳も開示したい|財産隠しの手口5つ

通帳開示請求は財産調査方法の1つですが、より多くの財産を把握するためには財産を隠す方法についても知っておく必要があります

具体的には、離婚の財産分与における財産隠しの手口は以下の5つです。

手口1:ネット銀行や地方銀行への預金
手口2:親族や子ども名義の口座への預金
手口3:貸金庫
手口4:タンス預金
手口5:浪費や借入金の返済

それでは、順番に説明していきます。

4-1 手口1:ネット銀行や地方銀行への預金

離婚財産分与における財産隠しの手口1つ目は、ネット銀行や地方銀行への預金です

ネット銀行や地方銀行のように、馴染みの薄い銀行の口座については見落としてしまうケースがよくあります。

しかし、これらの銀行でも調査方法は同じであるため、見落としのないようどのような銀行があるか押さえておくといいでしょう

銀行の種類については、以下の金融庁の資料が参考になります。
金融庁‐銀行免許一覧

4-2 手口2:親族や子ども名義の口座への預金

離婚財産分与における財産隠しの手口2つ目は、親族や子ども名義の口座への預金です

配偶者の親族や子どもが協力している場合、協力者の口座に預金が一時的に移されていることがあります。

しかし、単に共有財産を預けているにすぎず、移された預貯金も財産分与の対象となります

調査の方法としては、通帳の履歴を辿ることで親族や子ども名義の口座に高額の売り込みが行われていることを把握できます。

4-3 手口3:貸金庫

離婚財産分与における財産隠しの手口3つ目は、貸金庫です

貸金庫は、銀行から金庫を借り受けることができるサービスです。

貸金庫は通帳を持っている銀行から借りるのが通常であり、手数料として通帳の振込先欄に「貸金庫」と記載されていることがあります。

そのため、通帳を通じて貸金庫の存在を知ることができるのです。

4-4 手口4:タンス預金

離婚財産分与における財産隠しの手口4つ目は、タンス預金です

通帳に使途不明の高額の引き出しがある場合、自宅や棚のタンスに現金を隠している可能性があります。

4-5 手口5:浪費や借入金の返済

離婚財産分与における財産隠しの手口5つ目は、浪費や借入金の返済です

財産分与の前に預貯金を使ってしまうことがあります。

例えば、奨学金やローンの繰り上げ返済など、その使途は様々です。

浪費や借入金の返済は、通帳を確認することで確認することができます。

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5章 離婚の財産分与前に通帳を調査する方法6つ

通帳の預貯金を適正に分与するには、事前の調査が不可欠です

具体的には、離婚の財産分与前に通帳を調査する方法は以下の6つです。

方法1:銀行・支店名・口座種類・口座番号・口座名義を確認する
方法2:別居日の残高を確認する
方法3:婚姻日の残高を確認する
方法4:保険に入ってないか確認する
方法5:使途不明の高額取引がないか確認する
方法6:他に口座がないか確認する

それでは、順番に説明していきます。

5-1 方法1:銀行・支店名・口座種類・口座番号・口座名義を確認する

離婚の財産分与前に通帳を調査する方法1つ目は、銀行・支店名・口座種類・口座番号・口座名義を確認することです

なぜなら、財産分与では、どの口座に財産が入っているか主張しなければならないためです

通帳の表紙

5-2 方法2:別居日の残高を確認する

離婚の財産分与前に通帳を調査する方法2つ目は、別居日の残高を確認することです

なぜなら、財産分与では共有財産を分け合うため、別居日以降の財産は分与の対象にならないためです

通帳-別居日残高

別居日の残高を確認することで、財産額を明らかにすることができるのです。

5-3 方法3:婚姻日の残高を確認する

離婚の財産分与前に通帳を調査する方法3つ目は、婚姻日の残高を確認することです

なぜなら、婚姻までに得た財産は特有財産として財産分与の対象にならないためです

つまり、婚姻日の残高を確認することで、特有財産がどれくらいあるのか把握できるのです。

通帳-婚姻日残高

5-4 方法4:保険に入ってないか確認する

離婚の財産分与前に通帳を調査する方法4つ目は、保険に入ってないか確認することです

なぜなら、積立式保険に加入している場合、婚姻期間中の積み立てに対する解約返戻金が財産分与の対象となるためです

通帳-保険会社

5-5 方法5:使途不明の高額取引がないか確認する

離婚の財産分与前に通帳を調査する方法5つ目は、使途不明の高額取引がないか確認することです

なぜなら、別居日直前などに理由もなく高額の財産が持ち出されている場合、財産分与の対象になる可能性があるためです

通帳-高額の引き出し

5-6 方法6:他に口座がないか確認する

離婚の財産分与前に通帳を調査する方法6つ目は、他に口座がないか確認することです

銀行の口座は複数開設することもできるため、配偶者の通帳が1つとは限りません。

実際に他の口座があるか確認するときは、以下の手順で行うといいでしょう。

①振込元・振込先にあるべき名称があるか(勤務先により給料が振り込まれているか等)
②振込元・振込先に配偶者自身の名前があるか(他にも口座を持っている可能性がある)
③振替があるか(他にも口座を持っている可能性がある)

6章 離婚の財産分与で通帳開示を拒否された場合の対処法2つ

通帳の開示請求は任意に応じてもらえることもありますが、拒否されたり無視されてしまうことも少なくありません

正確に財産を分け合うためにも、拒否された場合の対処法は押さえておきたいところです。

具体的には、離婚の財産分与で通帳開示を拒否された場合の対処法は以下の2つです。

対処法1:弁護士会照会
対処法2:調査嘱託

それでは、順番に説明していきます。

6-1 対処法1:弁護士会照会

離婚の財産分与で通帳開示を拒否された場合の対処法1つ目は、弁護士会照会です

弁護士会照会とは、弁護士法23条の2に基づき、弁護士会が官公庁や企業などの団体に対して必要事項を調査・紹介する制度をいいます。

通帳も調査対象に含まれており、照会を受けた者は原則として回答しなければいけません

そのため、弁護士会照会により任意の開示が難しい通帳についても調査することが可能になります。

6-2 対処法2:調査嘱託

離婚の財産分与で通帳開示を拒否された場合の対処法2つ目は、調査嘱託です

調査嘱託とは、裁判所が会社や銀行などの団体に対して調査を行うものです。

弁護士会照会とは異なり、裁判所に申し立てた場合に行われ、裁判所からの嘱託であるため金融機関も回答に応じやすい傾向があります

なお、調査嘱託では、申立てる側が銀行名や支店名等を明らかにする必要があるため、事前に調査しておきましょう。

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7章 離婚の財産分与で通帳開示を弁護士に相談すべきケース3つ

通帳は任意の提出を求めることもできますが、調査が難しく弁護士に相談すべきケースもあります

具体的には、離婚の財産分与で通帳開示を弁護士に相談すべきケースは以下の3つです。

ケース1:通帳開示を拒否された場合
ケース2:通帳に使途不明金がある
ケース3:財産隠しの疑いがある場合

離婚の財産分与で通帳開示を弁護士に相談すべきケース3つ

それでは、順番に説明していきます。

7-1 ケース1:通帳開示を拒否された場合

離婚の財産分与で通帳開示を弁護士に相談すべきケース1つ目は、通帳開示を拒否された場合です

通帳の開示を拒否された場合、配偶者の任意の開示を期待することは難しいです。

しかし、財産分与を円滑に進行させるためにも、通帳は早い段階で開示しておきたところです

弁護士会照会などの法的手続によることが望ましく、弁護士に相談することで当事者による請求よりも応じてもらえる可能性が高まります。

そのため、通帳開示を拒否された場合には、なるべく早く弁護士に相談するといいでしょう。

7-2 ケース2:通帳に使途不明金がある

離婚の財産分与で通帳開示を弁護士に相談すべきケース2つ目は、通帳に使途不明金がある場合です

通帳に使途不明金がある場合には、財産分与に備えた行動を取っているケースが少なくありません。

例えば、タンス預金であれば発見可能性がありますが、浪費された場合にこれを取り戻すことはできません。

しかし、財産分与の割合は原則2分の1であるものの、財産を浪費した場合には割合が修正されることがあります。

そのため、使途不明金がある場合には、割合修正の主張を見据えた調査が必要となるため、弁護士に相談するといいでしょう

7-3 ケース3:財産隠しの疑いがある場合

離婚の財産分与で通帳開示を弁護士に相談すべきケース3つ目は、財産隠しの疑いがある場合です

配偶者が財産隠しは簡単に発見できることもあれば、巧妙に隠されていることもあります。

これらの財産を任意に開示してもらうことは難しく、法的手続を取る必要があります

そのため、財産隠しの疑いがあるときは弁護士に相談するといいでしょう。


8章 通帳開示請求を含む離婚の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ

通帳開示請求を含む離婚の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください

通帳開示請求については、財産調査のノウハウ、経験が獲得金額に大きな影響を与える分野です。

リバティ・ベル法律事務所は、離婚問題に注力しており、財産分与について圧倒的な知識とノウハウを持っています。

少数精鋭でご依頼を受けた一つ一つの案件について、離婚問題に強い弁護士が丁寧に向き合っているところが弊所の強みです

通帳開示請求を含む離婚の相談については、ご依頼者様の負担を軽減するために初回相談無料にて対応しておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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9章 まとめ

以上のとおり、今回は、離婚財産分与における通帳開示の必要性について説明した上で、分与の対象となる預貯金や財産隠しと開示拒否への対処法について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・離婚の財産分与では、適正な条件で分与するためにも通帳開示の必要性が高いです。

・離婚で財産分与の対象となる通帳の預貯金は以下の3つです。
預貯金1:結婚生活で貯めた預貯金
預貯金2:単に名義を変更したにすぎない預貯金
預貯金3:共有財産から第三者の通帳に入れていた預貯金

・離婚で財産分与の対象にならない通帳の預貯金は以下の2つです。
預貯金1;婚姻前から有していた預貯金
預貯金2:親から相続した/贈与を受けた預貯金

・離婚の財産分与における財産隠しの手口は以下の5つです。
手口1:ネット銀行や地方銀行への預金
手口2:親族や子ども名義の口座への預金
手口3:貸金庫
手口4:タンス預金
手口5:浪費や借入金の返済

・離婚の財産分与前に通帳を調査する方法は以下の6つです。
方法1:銀行・支店名・口座種類・口座番号・口座名義を確認する
方法2:別居日の残高を確認する
方法3:婚姻日の残高を確認する
方法4:保険に入ってないか確認する
方法5:使途不明の高額取引がないか確認する
方法6:他に口座がないか確認する

・離婚の財産分与で通帳開示を拒否された場合の対処法は以下の2つです。
対処法1:弁護士会照会
対処法2:調査嘱託

・離婚の財産分与で通帳開示を弁護士に相談すべきケースは以下の3つです。
ケース1:通帳開示を拒否された場合
ケース2:通帳に使途不明金がある
ケース3:財産隠しの疑いがある場合

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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