ダブル不倫の慰謝料について悩んでいませんか?
ダブル不倫では、法律関係が複雑に絡み合いますので、自分がどうすればいいのかわかりにくいですよね。
ダブル(W)不倫とは、既婚者同士の不倫のことをいいます。
ダブル不倫の慰謝料についても、個人の慰謝料自体の相場は、通常の事案と同じく、50万円~300万円程度です。
しかし、既婚者同士の不倫であるため、それぞれの配偶者が被害者となります。つまり、被害者が2名いるところが特徴です。
そのため、請求する側は、自分の配偶者が相手方の配偶者から慰謝料を請求されるリスクがあり、個人ではなく家庭単位でみると、獲得した慰謝料の金額が0円となったり、マイナスとなったりすることがあります。
これに対して、請求される側は、配偶者に不倫を知られてしまうことによる家庭崩壊のリスクがあります。
このようにダブル不倫は、通常の不倫事件に比べて、配慮しなければいけないポイントがいくつかありますので、事案の性質を理解した上で、正しく対処していくことが大切です。
今回は、ダブル(W)不倫における慰謝料の考え方や特徴を説明したうえで、5つのケースごとに慰謝料金額の傾向や対処法を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めばダブル不倫の慰謝料が問題になった際にどのように対処していけばいいかがわかるはずです。
目次
1章 ダブル(W)不倫とは|図で分かる4人の法律関係
ダブル(W)不倫とは、既婚者同士の不倫をいいます。
法律上の言葉ではなく、一般的に用いられている俗語です。
不倫の当事者がそれぞれ婚姻しており、不倫の被害者となる配偶者がそれぞれの家庭に1人ずつ、合計2人いるため、不倫に係る法律関係が二重に生じることになります。
例えば、A夫婦(A夫、A妻)とB夫婦(B夫、B妻)がいるとしましょう。
A妻とB夫が不倫している場合には、双方が既婚者であるため、A夫とB妻が被害者となり、いわゆるダブル(W)不倫と言われている状況となります。
法律関係を整理すると以下のとおりです。
以下では、この事案を具体例にして説明していきます。
2章 ダブル(W)不倫における判例の慰謝料相場は30万~300万円
ダブル(W)不倫における判例の慰謝料相場は、30万~300万円です。
具体的には、事案により以下のようになっております。
例えば、先ほどの事案ですと、A妻とB夫は、連帯してA夫に対して、30万円~300万円の慰謝料を支払う義務を負います。
また、A妻とB夫は、連帯してB妻に対しても、30万円~300万円の慰謝料を支払う義務を負います。
不倫慰謝料の相場については以下の記事で詳しく解説しています。
3章 ダブル(W)不倫の慰謝料請求の注意点
ダブル(W)不倫の慰謝料請求については、通常の慰謝料請求事案と異なる注意点がいくつかあります。
以下では、ダブル(W)不倫の事案における注意点について、「請求する側」と「請求される側」に分けて、それぞれ説明していきます。
3-1 請求する側:相手方配偶者からの逆慰謝料請求
ダブル不倫の慰謝料請求の事案において、請求する側の注意点は、相手方配偶者からの逆慰謝料請求です。
不倫慰謝料請求が行われたことにより、相手方配偶者にも不倫の事実が発覚するに至り、請求する側の配偶者に対しても、相手方配偶者が慰謝料を請求してくることがあります。
例えば、A夫がB夫に対して、慰謝料を請求したとしましょう。これにより、B妻がB夫とA妻の不倫に気が付く可能性があります。その場合、B妻からも、A妻に対して、慰謝料請求が行われるリスクがあります。
3-2 請求される側:配偶者に知られて家庭崩壊の危機
ダブル不倫の慰謝料請求の事案において、請求された側の注意点は、配偶者に知られて家庭崩壊の危機となることです。
不倫の慰謝料を請求される場合の多くは、最初に、内容証明郵便が自宅に届くことになります。
内容証明郵便については自宅で手渡しにより受け取ることになります。
あなたの配偶者が代わりに内容証明郵便を受け取り、これを開封してしまうと、不倫の内容が配偶者に知られることになります。
最悪の場合には、家庭崩壊に至る可能性があります。
4章 ダブル(W)不倫における慰謝料同士の相殺は原則不可
ダブル(W)不倫における慰謝料同士の相殺は、原則として行うことができません。
なぜなら、相殺を行うには、相対立する債権者と債務者であることが必要ですが、W不倫の事案では家族単位で見れば相対立しているように見えますが、個人単位で見ると相対立しているということはできないためです。
例えば、先ほどの事案では、A夫に対する債務者も、B妻に対する債務者も、いずれもA妻とB夫です。これに対して、A妻とB夫は、A夫に対しても、B妻に対しても、債権を持っていません。
そのため、A夫婦とB夫婦という単位では、損害賠償請求権同士が対立しているように見えるかもしれませんが、法的には債権同士が相対立しているとは言えないのです。
しかし、ダブル不倫の問題を解決するにあたり、4者間での和解をするような場合には、双方の夫婦において損害賠償請求権を有していることを考慮したうえで、損害賠償の金額を決めることがあります。
その際には、他方の損害賠償請求権や不倫当事者間の求償権の放棄も合意することで、事実上相殺したのと同じような、解決をすることがあります。
例えば、A夫がB夫に対して50万円の損害賠償を請求することを合意したうえで、B妻がA妻に対する損害賠償請求権を放棄、A妻B夫が双方の求償権を放棄するような方法です。
5章 ケース別!ダブル(W)不倫の慰謝料金額の傾向と最適対処法
ダブル不倫については、いくつかのケースに分けて考えることができますが、そのケースごとに取るべき対処法が異なってきます。
ダブル不倫のケースでは、配偶者が不倫の事実を知っているのか、配偶者と離婚するのかどうかにより、見通しに影響が生じるためです。
以下では、次の5つのケースにわけて、順番に説明していきます。
ケース2:一方の配偶者が不倫を知っている+いずれの夫婦も離婚しない
ケース3:両方の配偶者が不倫を知っている+いずれかの夫婦が離婚する
ケース4:一方の配偶者が不倫を知っている+一方の夫婦が離婚する
ケース5:両方の配偶者が不倫を知っている+いずれの夫婦も離婚する
5-1 ケース1:両方の配偶者が不倫を知っている+いずれの夫婦も離婚しない
ケース1では、いずれの不倫被害者からの慰謝料請求についても、0円での解決となる傾向にあります。
いずれの夫婦も離婚しないので、A夫婦、B夫婦いずれについても、経済的に一体となっているのが通常です。
そして、A夫、B妻、それぞれが慰謝料請求権を相互の配偶者に対して有しているので、それぞれの慰謝料請求権が行使されれば、経済状態としてはプラスマイナス0円となることが予測されます。
そのため、A夫、B妻、いずれについても相互の配偶者に対して、慰謝料請求権を有していないことを確認することによる解決となることが多いのです。
ただし、いずれかがA妻・B夫のいずれかが主導的な役割を果たしており責任割合が大きい場合、いずれかの夫婦が訴訟を強く回避したいと考えている場合には、数十万円程度の解決金が支払われることもあります。
【請求者側】
請求者側は、裁判になった場合には、長期化することに加えて、家族単位で見れば獲得金がマイナス又は0円、プラスになっても少額となる見通しとなります。
そのため、責任割合を強調したうえで、交渉による解決を目指していくことになるでしょう。
また、事案により、相手方配偶者からの自己の配偶者に対する慰謝料請求については別の事件であるとして、減額ないしは4者間での解決を拒否することを検討する場合もあります。
【被請求者側】
被請求者側は、150万円~300万円程度の慰謝料の請求をされた場合であっても、すぐに支払いには応じず、上記のような法律関係を踏まえて、「慰謝料の減額」及び「4者間での解決」を目指していくことになります。
5-2 ケース2:一方の配偶者が不倫を知っている+いずれの夫婦も離婚しない
ケース2では、不倫を知っている一方の配偶者に対して、15万~100万円程度の慰謝料が支払われることによる解決となる傾向にあります。
なぜなら、不倫を知らない他方の配偶者からの慰謝料請求については考慮せずに、慰謝料の金額が交渉されることになるためです。
もっとも、離婚には至っていないため慰謝料の金額は全体として30万円~200万円程度にとどまる傾向にあります。
そして、請求者側の配偶者が離婚していないため、夫婦間で経済的に一体となっているような場合には、被請求者側の求償権の放棄が議論されることになり、負担することとなる慰謝料金額が上記の1/2程度(15万円~100万円程度)となることが想定されます。
【請求者側】
請求者側は、請求相手の配偶者に不倫が知られないように配慮したうえで、事件を進めていくこととなります。
請求相手の配偶者に不倫が知られると、自己の配偶者に対して慰謝料を請求される可能性があるためです。
また、故意に請求相手の配偶者に不倫の事実を伝えることは名誉棄損となるリスクもあります。
【被請求者側】
被請求者側は、自分の配偶者に不倫の事実を明らかにするかどうかを検討することになります。
自分の配偶者に不倫の事実を打ち明けることにより、請求者の配偶者への慰謝料請求との一括解決をできる可能性があります。
他方で夫婦関係が崩壊してしまうリスクもあります。
そのため、慎重に判断する必要があります。
5-3 ケース3:両方の配偶者が不倫を知っている+いずれかの夫婦が離婚する
ケース3では、離婚をする側の不倫加害者が、自分の配偶者と不倫相手の配偶者の双方から慰謝料を請求される傾向にあります。
離婚する側の不倫被害者は、離婚協議や離婚調停、離婚訴訟の中で、離婚慰謝料の一事情として不倫の事実を主張したうえで、離婚する側の不倫加害者に対して、慰謝料を請求していくのが通常です。
離婚しない側の不倫被害者は、離婚しない側の不倫加害者とは夫婦関係を継続するため、経済的に一体となっていることが多く、離婚しない側の不倫加害者ではなく、離婚する側の不倫加害者に対して、慰謝料を請求していきます。
そのため、離婚する側の不倫加害者が、自分の配偶者と不倫相手の配偶者の双方から慰謝料を請求されることになります。
ただし、離婚する側の不倫加害者は、離婚しない側の不倫加害者に対して、求償権を行使することができます。
【請求者側】
請求者側(離婚しない)は、離婚する側の不倫慰謝料金額が高額となる可能性があり、離婚する側の加害者から離婚しない側の加害者に対して求償権を行使された場合に、離婚しない側の被害者が獲得した慰謝料金額を上回る可能性があります。
【被請求者側】
被請求者側は、一時的に二重に慰謝料を負担することになり、求償権を行使することが大切となります。求償権の行使に失敗することを防ぐために、離婚しない側の加害者に対して、訴訟告知を行うことも検討します。
5-4 ケース4:一方の配偶者が不倫を知っている+一方の配偶者が離婚する
ケース4では、離婚する側の不倫加害者が自己の配偶者から慰謝料を請求される傾向にあります。
離婚する側の不倫被害者は、離婚協議や離婚調停、離婚訴訟の中で、離婚慰謝料の一事情として不倫の事実を主張したうえで、離婚する側の不倫加害者に対して、慰謝料を請求していくのが通常であるためです。
離婚する側の不倫加害者は、離婚しない側の不倫加害者に対して、求償権を行使することになります。
5-5 ケース5:両方の配偶者が不倫を知っている+いずれの夫婦も離婚する
ケース5では、不倫加害者双方が、それぞれ自分の配偶者から慰謝料請求をされる傾向にあります。
離婚をする以上、夫婦間の経済的一体性は解消されるため、離婚協議や離婚調停、離婚訴訟の中で離婚慰謝料として不倫の事実を主張していけば足りるためです。
6章 ダブル(W)不倫で示談する際の留意点
ダブル不倫で示談する際の留意点は、紛争の再燃を防止することです。
ダブル不倫では、法律関係が複雑に絡み合っていて、不倫加害者2名、不倫被害者2名の合計4名の法律関係が問題となります。
不倫加害者1名と不倫被害者1名の間のみで法律関係を解決したとしても、残りの2名の間で紛争が継続していれば、解決した2名についても再度紛争に巻き込まれるリスクがあります。
例えば、A夫のB夫に対する慰謝料請求については2当事者間で和解が成立し、B夫がA妻に対する求償権を放棄したとしましょう。A夫もB夫も、これで問題は解決したものと安心していたとします。
しかし、その後、B妻がA妻に対して、慰謝料請求をする可能性があります。A夫としては、未だA妻と夫婦関係にあるような場合には、経済的な影響を受けることになります。
また、A妻がB妻に対して、慰謝料を支払った場合には、A妻からB夫に対して求償権が行使される可能性があります。B夫は、再度紛争に巻き込まれることになります。
ダブル不倫では、このようにして紛争が再燃するリスクがあるため、示談の際には可能な限りこのようなリスクを未然に防ぐように工夫することが大切です。
例えば、示談書を2者間ではなく、4者間で作成するというのも一つの方法です。
ダブル不倫の際に4者間で慰謝料を作成する場合には、以下のように作成します。
不倫(不貞)の示談書については、以下の記事で詳しく解説しています。
7章 ダブル(W)不倫事案は弁護士に相談するべき
ダブル不倫事案は弁護士に相談することを、強くおすすめします。
ダブル不倫事案を弁護士におすすめした方がいい理由としては、以下の3つがあります。
理由2:紛争の再燃防止
理由3:配偶者に知られるリスク
それでは、順番に説明していきます。
7-1 理由1:法律関係が複雑
ダブル不倫事案を弁護士に相談した方がいい理由の1つ目は、法律関係が複雑であることです。
複数の慰謝料請求権と求償権が絡でくるため、交渉についても、通常の不倫事件に比べて難易度が高くなります。
そのため、自分だけで解決しようとせずに法律の専門家である弁護士に相談することが安心です。
7-2 理由2:紛争の再燃防止
ダブル不倫事案を弁護士に相談した方がいい理由の2つ目は、紛争の再燃防止です。
ダブル不倫事案については、示談の際に十分に気をつけておかないと、解決したと考えていた紛争が再燃してしまうリスクがあります。
そのため、示談書作成の際には、事案に応じたリスクを適切に分析したうえで条項を作成する必要があります。
ダブル不倫の事案を解決した経験が多い弁護士であれば、想定されるリスクや入れておいた方がいい条項につき、助言してもらうことができます。
7-3 理由3:配偶者に知られるリスク
ダブル不倫事案を弁護士に相談した方がいい理由の3つ目は、配偶者に知られるリスクがあるためです。
被請求者側であれば、請求者からの通知書や連絡書面が自宅に届くことにより、家族や配偶者に中身を見られてしまうリスクがあります。
しかし、弁護士に依頼することにより、以後は直接本人には送付せずに代理人弁護士に送付するようにと相手方に伝えてもらえるため、配偶者に知られるリスクを低減することができます。
請求者側であっても、被請求者の配偶者に不倫の事実が知られてしまうと、自分の配偶者が慰謝料請求をされるリスクが生じることになります。
しかし、弁護士に依頼することにより、被請求者の配偶者に知られないように、これまでの経験を踏まえて、郵送の方法などを工夫してもらうことができます。
8章 ダブル不倫事件の慰謝料交渉はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
ダブル不倫事件の慰謝料の交渉は、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
不倫慰謝料については、交渉力や知識の格差が金額に大きく影響する分野です。
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W(ダブル)不倫の事案において交渉のみで150万円の慰謝料の獲得に成功した事例
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9章 まとめ
以上のとおり、今回は、ダブル(W)不倫における慰謝料の考え方や特徴を説明したうえで、5つのケースごとに慰謝料金額の傾向や対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・ダブル(W)不倫とは、既婚者同士の不倫をいいます。
・ダブル(W)不倫における判例の慰謝料相場は、30万~300万円です。
・ダブル不倫の慰謝料請求の事案において、請求する側の注意点は、相手方配偶者からの逆慰謝料請求です。
・ダブル不倫の慰謝料請求の事案において、請求された側の注意点は、配偶者に知られて家庭崩壊の危機となることです。
・ダブル不倫で示談する際の留意点は、紛争の再燃を防止することです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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