契約解除書面のテンプレートについて知りたいと悩んでいませんか?
安全に契約関係から離脱するためにも、契約解除書面の作り方は押さえておきたいところです。
契約解除書面とは、解除の意思を相手方に伝えるための書面をいいます。
解除の意思表示は口頭でもできますが、トラブルを避けるために書面を作成することが一般的とされています。
契約解除書面には、以下のように定められることがあります。
ただし、契約解除書面に記載すべき内容は状況によって異なるため、どのような事項を定めるべきか慎重に判断する必要があります。
例えば、催告が必要な場合に無催告で解除の意思表示をすると、解除の効力についてトラブルとなるおそれがあるのです。
実は、契約解除書面の作成において場面選択を間違えると、トラブルによって解除時期が遅れて大きな損害を被ってしまうといったこともあります。
この記事を通して、状況に合った契約解除書面の書き方を知っていただければと思います。
今回は、契約解除書面が問題となるケースを説明した上で、各ケースにおけるレビューポイントを解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、契約解除書面の適切な書き方がよくわかるはずです。
目次
1章 契約解除書面とは?契約解除通知書と契約解除合意書の違い
契約解除書面とは、解除の意思を相手方に伝えるための書面をいいます。
民法上は口頭でも解除できるとされていますが、解除の意思表示がされたことを明らかにするため、書面を作成して内容証明郵便で送付することが一般的です。
契約解除書面には、大きく分けて以下のような種類があります。
・契約解除合意書
契約解除通知書は、債務不履行などの場合に一方的な意思表示によって契約を解除するための書面をいいます。
実務上は、以下のようなケースで契約解除通知書を作成することが多いです。
・賃貸借契約
・請負契約
他方で、契約解除合意書は、双方の合意の下で契約を解除するための書面をいいます。
解除と解約は、法的には違う意味のものとして区別されています。
契約の解除は、一方的な意思表示によって、遡及的に効力を消滅させることをいいます。
例えば、売買契約で債務不履行となった場合の契約解除などがこれにあたります。
他方で、解約は、継続的な契約において、将来に向かって効力を消滅させることをいいます。
例えば、賃貸借契約における解約の申込みなどがこれにあたります。
そのため、両者の区別は、契約の効力をどのように消滅させるのかによって判断することになります。
2章 ケース別!契約解除書面のテンプレート6つ
契約解除と一口に言っても、具体的な状況によって記載すべき内容は異なります。
状況に合った解除書面を作成するためにも、まずはケース毎のテンプレートを一緒に確認していきましょう。
契約解除書面のテンプレートをケース別に分けると、以下のようになります。
ケース2:催告後の解除
ケース3:無催告解除
ケース4:不完全履行
ケース5:約定解除
ケース6:合意解除
それでは、各ケースについて順番に解説していきます。
2-1 ケース1:履行の催告のみ
契約解除書面のテンプレート1つ目は、履行の催告のみの場合です。
契約解除書面のテンプレート【履行の催告のみ】の |
履行の催告とは、債権者の債務者に対する債務の履行を求める意思の通知をいいます。
契約を解除するには、例えば以下のような場合を除いて、催告をする必要があります。
・無催告解除の約定をした場合
・合意解除の場合
そのため、これらのケースに該当しない場合には、催告書面を作成することになります。
ただし、催告だけでは解除の効力は生じないため、催告から相当期間経過後に解除の意思表示をする必要があります。
2-2 ケース2:催告後の解除
契約解除書面のテンプレート2つ目は、催告後の解除です。
契約解除書面のテンプレート【催告後の解除】の |
催告を行った場合、解除の効力を発生させるには、解除の意思表示をする必要があります。
そのため、催告をした後は、相当期間内に履行がなければ解除書面を作成することになります。
2-3 ケース3:無催告解除
契約解除書面のテンプレート3つ目は、無催告解除です。
契約解除書面のテンプレート【無催告解除】の |
無催告解除は、その言葉のとおり、催告を必要とせずに解除することができるものをいいます。
民法では、無催告解除事由を以下のように定めています(民法542条)。
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
(1)債務の全部の履行が不能であるとき。
(2)債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
(3)債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
(4)契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
(5)前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
そのため、履行不能などの場合には、無催告解除の書面を作成することになります。
しかし、無催告解除事由は、民法に規定するものの他に、当事者の合意によって自由に定めることができます。
例えば、無催告解除事由として以下のものが定められやすい傾向にあります。
・監督官庁より営業許可の取消し等の行政処分を受けたとき
・支払停止もしくは支払不能の状態に陥ったとき
・差押え、仮差押え、仮処分若しくは競売の申立て、公租公課の滞納処分、その他公権力による処分を受けたとき
・破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算手続開始の申立てを受け、又は自ら申立てを行ったとき
・会社の解散、合併、分割、事業の全部若しくは重要な一部の譲渡の決議をしたとき
・その他、前各号に準じる事由が生じたとき
当事者が定めた解除事由に該当する場合、約定解除書面で無催告解除する旨を記載することになります。
2-4 ケース4:不完全履行
契約解除書面のテンプレート4つ目は、不完全履行です。
契約解除書面のテンプレート【不完全履行】の |
不完全履行とは、債務の履行がされたものの、その履行が不十分な場合をいいます。
不完全履行で解除する場合に催告が必要かどうかは、以下のように、完全な履行(追完)が可能か否かによって異なります。
そのため、追完が可能であれば催告をしてから解除をし、不可能であれば無催告で解除をするということになります。
2-5 ケース5:約定解除
契約解除書面のテンプレート5つ目は、約定解除です。
契約解除書面のテンプレート【約定解除】の |
約定解除とは、当事者の合意によって定められた解除権をいいます。
他方で、民法などの法律で定められた解除権を法定解除権といいます。
そのため、当事者が定めた解除事由に該当する場合には、約定解除書面を作成することになります。
2-6 ケース6:合意解除
契約解除書面のテンプレート6つ目は、合意解除です。
契約解除書面のテンプレート【合意解除】の |
合意解除は、当事者双方の合意によって契約を解除することをいいます。
そのため、解除について合意がある場合には、合意解除書面を作成することになります。
3章 契約解除書面のケース別レビューポイント6つ
テンプレートは一般的な事項を定めたものにすぎず、より実践的な内容にするためには、ケース毎のポイントを押さえておく必要があります。
契約解除書面のケース別レビューポイントは、以下の順番で解説していきます。
レビューポイント2:催告後の解除
レビューポイント3:無催告解除
レビューポイント4:不完全履行
レビューポイント5:約定解除
レビューポイント6:合意解除
3-1 レビューポイント1: 履行の催告のみ
契約解除書面のケース別レビューポイント1つ目は、履行の催告のみの場合です。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしました。貴社は、この契約により、当社に対して令和●年●月●日までに●●を履行すべき債務を負っておりますところ、右期日を経過しても●●が履行されておりません。つきましては、令和●年●月●日までに、前期債務を履行してくださるよう催告いたします。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしました。貴社は、この契約により、当社に対して令和●年●月●日までに●●を履行すべき債務を負っておりますところ、右期日を経過しても●●が履行されておりません。つきましては、令和●年●月●日までに、前期債務を履行してくださるよう催告すると共に、前期期日までに債務の履行がないときは、改めて契約解除の通知をすることなく、本契約を解除いたしますので予めご了承ください。
履行の催告では、催告を行う債務を特定した上で、相当期間を記載する必要があります。
債務の特定については、例えば以下の事項によって特定することがあります。
・契約締結日
・目的物
・契約の種類(売買契約等)
・債務内容
相当期間については、債務の性質によるものの、2週間程度とされることが多い傾向にあります。
また、催告を兼ねた解除の意思表示も有効とされているため、催告に加えて解除の意思表示も記載することがあります。
3-2 レビューポイント2:催告後の解除
契約解除書面のケース別レビューポイント2つ目は、催告後の解除です。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしました。貴社は、この契約により、当社に対して令和●年●月●日までに●●を履行すべき債務を負っておりますところ、右期日を経過しても●●が履行されておりません。そこで、当社は、貴社に対し、令和●年●月●日到達の内容証明郵便をもって令和●年●月●日までに前記債務を履行していただくよう催告いたしましたが、この期日を経過してもなお前期債務の履行がありませんでした。
つきましては、前期契約を解除することを通知いたします。
●●の債務について、催告した期間を経過してもなお債務の履行がなかったため、契約を解除いたします。
催告後における解除権の行使では、解除の意思表示を行えば足ります。
そのため、テンプレートのように詳細に記載しなくとも、「契約を解除する」ということが伝われば、解除の意思表示として有効に扱われることがあります。
3-3 レビューポイント3:無催告解除
契約解除書面のケース別レビューポイント3つ目は、無催告解除です。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしました。貴社は、この契約により、当社に対して令和●年●月●日までに●●を履行すべき債務を負っていたところ、令和●年●月●日の●●により、前期債務の履行ができなくなりました。
つきましては、前期契約を解除することを通知いたします。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしました。貴社は、この契約により、当社に対して令和●年●月●日までに●●を履行すべき債務を負っていたところ、再三の催告にも関わらず、履行を拒絶する意思を明確にしており、令和●年●月●日を経過しても、一向に履行がされておりません。
つきましては、前期契約を解除することを通知いたします。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしました。貴社は、この契約により、当社に対して令和●年●月●日までに●●を履行すべき債務を負っていたところ、令和●年●月●日の●●により、前期債務の履行ができなくなりました。
つきましては、前期契約を解除することを通知いたします。当社が、貴社に対して引き渡していた●●については至急ご返還ください。
無催告解除をする場合、どの解除事由にあたるのかを明らかにする必要があります。
ただし、履行拒絶については、本当に履行拒絶していたのかが争点になりやすく、事実関係を詳細に記載すべき場合があるため注意が必要です。
また、契約に基づいて引き渡した物がある場合には、併せて原状回復請求しておくことで、別口で請求する手間を省けることもあります。
3-4 レビューポイント4:不完全履行
契約解除書面のケース別レビューポイント4つ目は、不完全履行です。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしました。貴社は、この契約により、当社に対して令和●年●月●日までに●●を履行すべき債務を負っておりますところ、履行を受けた●●は不完全であり、契約の本旨に沿った履行が行われておりません。●●契約にもあるように、債務の履行は令和●年●月●日まででなければならず、●●日までに●●を履行することはできないと思われますので、前期契約を解除することを通知いたします。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしました。貴社は、この契約により、当社に対して令和●年●月●日までに●●を履行すべき債務を負っておりますところ、履行を受けた●●は不完全であり、契約の本旨に沿った履行が行われておりません。つきましては、不足分である●●を令和●年●月●日までに履行してくださるよう催告すると共に、前期期日までに債務の履行がないときは、改めて契約解除の通知をすることなく、本契約を解除いたしますので予めご了承ください。
不完全履行で解除する場合には、追完が可能か否かによって記載する内容が異なります。
追完が不可能な場合には、以下の事項を記載することになります。
・追完が不可能であること
・解除すること
他方で、追完が可能な場合には、以下の事項を記載することになります。
・追完を求める旨の催告
(・追完がなければ解除すること)
3-5 レビューポイント5:約定解除
契約解除書面のケース別レビューポイント5つ目は、約定解除です。
当社と貴社は、令和●年●月●日付で、●●契約を締結いたしましたところ、●●契約では、●●したときには、催告をすることなく解除することができる旨を定めておりますが(同契約書●条)、貴社は、令和●年●月●日に●●をしています。
つきましては、前期約定に基づき●●契約を解除することを通知いたします。
約定解除では、以下の事項を記載することになります。
・解除すること
細かな記載内容などは約定解除事由によって異なるため、契約解除条項に定められた内容に合わせて記載することが重要です。
3-6 レビューポイント6:合意解除
契約解除書面のケース別レビューポイント6つ目は、合意解除です。
甲と乙は、令和●年●月●日付の●●契約を、令和●年●月●日付で、合意により解除する。
【修正例‐解除後の措置を定める場合】
第1条(契約の合意解除)
甲と乙は、令和●年●月●日付の●●契約を、令和●年●月●日付で、合意により解除する。
第2条(解除後の措置)
1 甲は、乙に対し、令和●年●月●日に引き渡しを受けた●●について、本契約終了後直ちに、現状に復して返還しなければならない。
2 前項の返還に要する費用は、甲の負担とする。
3 乙は、甲が第1項に定める原状回復を行わないときは、何らの催告を行うことなく本合意を解除し、●●契約に基づく●●を請求できるものとする。
合意解除をする場合、解除する契約と「合意により」解除することを明らかにする必要があります。
なぜなら、合意解除は新たな契約なので、どのような効果を持たせるのかを明確にすることが重要なためです。
なお、既に履行された部分があるときは、解除に加えて解除後の措置について定めることもあります。
例えば、解除後の措置としては以下の事項が挙げられます。
・原状回復の費用負担
・合意に違反した場合の法律関係
4章 契約解除書面を作成する際の注意点3つ
契約解除書面を実効的なものにするためには、注意すべき点がいくつかあります。
契約解除書面作成の注意点は以下のとおりです。
注意点2:解除する契約を特定する
注意点3:解除の理由を明らかにする
それでは、各注意点について順番に解説していきます。
4-1 注意点1:作成する解除通知書を見極める
契約解除書面を作成する際の注意点1つ目は、作成する解除通知書を見極めることです。
解除と一口に言っても、作成すべき解除通知書は状況によって異なります。
作成した解除通知書が状況に合っていない場合、解除の効力でトラブルになるリスクが高まります。
例えば、催告が必要な場合に、無催告解除の書面を作成しても有効に機能させることは難しいです。
そのため、解除通知書を作成する際は、まずどのような状況にあるのかを確認することが重要です。
解除通知書の作成場面を状況別で見ると、例えば以下のように区別することがあります。
4-2 注意点2:解除する契約を特定する
契約解除書面を作成する際の注意点2つ目は、解除する契約を特定することです。
契約を解除する場合、解除したい契約を具体的に特定することが重要になります。
なぜなら、同一の企業と複数の契約を締結することもあるため、契約を特定しておかないと、どの契約を解除するのかが不明確になるためです。
例えば、契約は以下の事項から特定することがあります。
・契約の種類(売買契約等)
4-3 注意点3:解除の理由を明らかにする
契約解除書面を作成する際の注意点3つ目は、解除の理由を明らかにすることです。
解除の理由を明らかにすることは、契約解除書面を作成する上で重要になります。
なぜなら、解除理由によって解除手続が異なるので、理由を明らかにすることで適切な手続が何であるか判断しやすくなるためです。
特に、催告解除の場合には、催告手続の有無が解除の効力に影響を及ぼすおそれがあります。
そのため、安全に解除するためにも、契約解除書面を作成する際には、解除の理由を明らかにすることが重要です。
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6章 まとめ
以上のとおり、今回は、契約解除書面が問題となるケースを説明した上で、各ケースにおけるレビューポイントを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・契約解除書面とは、解除の意思を相手方に伝えるための書面をいいます。
・契約解除書面のテンプレートは以下の6つです。
ケース1:履行の催告のみ
ケース2:催告後の解除
ケース3:無催告解除
ケース4:不完全履行
ケース5:約定解除
ケース6:合意解除
・契約解除書面を作成する際の注意点は以下の3つです。
注意点1:作成する解除通知書を見極める
注意点2:解除する契約を特定する
注意点3:解除の理由を明らかにする
この記事が、契約解除書面のテンプレートについて知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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