従業人による通勤手当(交通費)の不正受給と企業がすべき調査や処分

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著者情報 弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属 
取扱分野は、人事労務、一般企業法務、紛争解決等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン[連載]不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

従業人による通勤手当(交通費)の不正受給と企業がすべき調査や処分

悩み

従業員による通勤手当の不正受給が発覚し、企業としてどのように対処すべきか悩んでいませんか

規律を維持するためにも毅然とした態度で臨みたいものの、いきなり処分を行うのではなく適切なプロセスを踏みたいものです。

通勤手当の不正受給とは、従業員が実際に必要な交通費よりも多い金額を受け取り、その差額を自分のものにしてしまうことをいいます。

通勤手当の不正受給となるケースとしては以下の4つがあります。

ケース1:通勤経路の変更の未申告
ケース2:徒歩や自転車による交通費の節約
ケース3:異なる通勤経路の申告
ケース4:申告より安い定期を購入し差額を領得

通勤手当の不正受給に対しては、懲戒処分をもって対処することが多いですが、下した処分によっては重すぎると判断されることもあります

判例では、不正受給の金額が100万円を超える場合には懲戒解雇を有効とするものもありますが、35万円未満のものについては無効とされる傾向にあります。

企業としては、従業員による通勤手当の不正受給が発覚した場合には、調査、ヒアリングを行ったうえで、返還の合意書の取得し、適切な処分を下すという手順で進めていくことになります。

更に、事案によっては、横領や詐欺等の刑事犯罪として対応すべき場合もあります

また、通勤手当(交通費)の不正受給に関して時効の問題もありますので、発覚した場合には放置するのではなく速やかに対応しましょう。

実は、通勤手当の不正受給については甘く考えている従業員が多くいます。企業として、通勤手当の不正受給は許されないと示していかなければ、不正受給が相次いでしまうことになります

この記事をとおして、企業の経営者や人事担当者の方に通勤手当の不正受給についてどのように対処すべきかを知っていただけましたら幸いです。

今回は、従業人による通勤手当(交通費)の不正受給と企業がすべき調査や処分について解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事で分かること

この記事を読めば、従業員による通勤手当の不正受給が発覚した場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。

目次

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1章 通勤手当(交通費)の不正受給とは?

通勤手当の不正受給

通勤手当の不正受給とは、従業員が実際に必要な交通費よりも多い金額を受け取り、その差額を自分のものにしてしまうことをいいます。

企業は、従業員に対して、交通費として使用する目的、又は、交通費を補填する目的で手当てを支給しています。

実際の交通費が支給金額よりも少ないのであれば、当該差額については支給しなかったというのが企業の意図となります。

そのため、差額部分については、企業の意図に反して従業員が受け取っている状況になるため、これを返却せずに領得すれば不正受給となります

例えば、交通費の実費を通勤手当として補てんしている企業の従業員が、実際には交通費は1日600円なのに、1日800円と申告し差額を領得すれば、通勤手当の不正受給となります。


2章 通勤手当(交通費)の不正受給となるケース4つ

通勤手当の不正受給となるケースには、いくつかの類型があります

従業員としては、悪気なく行っているものもありますし、悪意を持って行っているものもあります。

例えば、通勤手当の不正受給の典型的なケースを4つ挙げると以下のとおりです。

ケース1:通勤経路の変更の未申告
ケース2:徒歩や自転車による交通費の節約
ケース3:異なる通勤経路の申告
ケース4:定期券を解約した上での払戻金の領得

通勤手当の不正受給となるケース4つ

通勤手当(交通費)の不正受給となるケース4つ

それでは各ケースについて順番に説明していきます。

2-1 ケース1:通勤経路の変更の未申告

通勤手当の不正受給となるケースの1つ目は、通勤経路の変更の未申告です。

従業員は、当初、企業に届け出ていた通勤経路とは異なる経路に変更して通勤を行う場合があります。

引っ越しにより住居が変わる場合、より合理的な通勤経路ができた場合などです。

変更後の経路の方が従前よりも交通費が安くなる場合には、通勤手当を必要以上に受け取ることになるため不正受給となります

数日~数週間程度変更の申請をすることを失念していたにすぎないような場合には、故意に不正を働こうとしたわけではなく悪質性は低いでしょう。

他方で、通勤手当の金額が過大であることを認識しながら、数か月~数年にわたり申請を放置する場合には、異なる通勤経路を申請した場合と同様、悪質性は高いと言えます

2-2 ケース2:徒歩や自転車による交通費の節約

通勤手当の不正受給となるケースの2つ目は、徒歩や自転車による交通費の節約です。

企業から交通費をもらいながら、公共交通機関を使わずに交通費を節約する従業員がいます。

例えば、電車で通勤していると申請しているのに自転車や徒歩で通勤している場合、申請している駅とは異なる駅で乗車又は下車し途中まで又は途中から徒歩で通勤する場合などです。

この方法については、従業員としても自助努力により交通費を節約しているという気持ちを持っていることが多く、企業に損害を与える意図は有していないことが多いです

そのため、当初から過大請求しようという詐欺的な場合に比べると、動機が悪質とまでいうことはできません

2-3 ケース3:異なる通勤経路の申告

通勤手当の不正受給となるケースの3つ目は、異なる通勤経路の深刻です。

従業員が、実際に利用している通勤経路よりも交通費が高い通勤経路を企業に申告することによって、その差額を領得している場合です。

例えば、企業までの通勤時間が短いものの交通費が高い通勤経路と、企業までの通勤時間が長いものの交通費が安い通勤経路があったとします。

この場合に従業員が前者の通勤経路で企業に申請して、これにより算定した通勤手当を受け取っているにもかかわらず、実際には後者の経路で通勤することがあります。

この場合には従業員には利得が発生し不正受給となります

異なる通勤経路であることを認識しながら申請している点において、悪質性は高いものと言えます

2-4 ケース4:定期券を解約した上での払戻金の領得

通勤手当の不正受給となるケースの4つ目は、定期券を解約した上での払戻金の領得です。

企業の負担で購入した定期券を解約して、払い戻された代金を自分のものにしてしまうと、不正受給となります

例えば、定期券を購入し、その領収書を会社に見せて、定期代の支給を受けた後に、定期券を解約して、自転車や徒歩で通勤するような場合です。

解約する意図を秘して領収書を企業に見せて定期代を詐取する点、払い戻しという手続きを積極的に行い現金へ換価している点において、悪質性は高いでしょう

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3章 通勤手当(交通費)の不正受給と懲戒処分|懲戒解雇は妥当?

従業員が通勤手当を不正受給した場合には、懲戒処分を検討することになります

企業秩序を害する非違行為となり得るためです。

懲戒解雇が妥当か否かについては、以下のような要素を考慮して判断されます。

通勤手当の不正受給を理由とする解雇が合理性・相当性を満たすかは、以下の要素を考慮し判断します。

・態様の悪質性(故意か過失か等)
・不正に受給した通勤手当の金額
・不正受給の期間
・返金の有無
・反省の有無
・調査への協力の有無
・従前の勤務態度や懲戒歴

通勤手当の不正受給の態様につき故意によるなど悪質性が高く、かつ、不正受給の金額が100万円を超えている場合には、懲戒解雇により対応するのが妥当でしょう。

これに対して、態様が悪質とまでは言えない場合、又は、不正受給の金額が100万円下回る場合には、他の要素を考慮したうえで軽い処分にとどめることも検討すべきです


4章 通勤手当(交通費)の不正受給の判例(事例)4つ

通勤手当(交通費)の不正受給への処分を判断するにあたっては、判例が参考になります

通勤手当(交通費)の不正受給に関しては判例が一定程度蓄積されています。

例えば、通勤手当(交通費)の不正受給に関して以下の4つの判例があります。

アール企画事件|東京地判平成15年3月28日労判850号48頁
かどや製油事件|東京地判平成11年11月30日労判777号36頁
光輪モータース事件|東京地判平成18年2月7日労経速1929号35頁
全国建設厚生年金基金事件|東京地判平成25年1月25日労判1070号72頁

通勤手当(交通費)の不正受給の判例(事例)4つ

4-1 アール企画事件|東京地判平成15年3月28日労判850号48頁

美容室に副店長として勤務する従業員が遠方の虚偽の住所を申告し、約3年間にわたり計約102万円の通勤手当を詐取した事案です。

企業が当該従業員を横領背任を理由に懲戒解雇したところ、当該従業員は企業に対して解雇予告手当の請求を行いました。

上記判例は、上記不正受給は、刑法に該当する犯罪行為であって,即時解雇されてもやむを得ないと認められるほど重大、悪質な背信行為であるとして、解雇予告手当は不要としました。

即時解雇されてもやむを得ないとの判示からも、仮に懲戒解雇の有効性が争われていたとしても、懲戒解雇は有効と判断されることがわかります

4-2 かどや製油事件|東京地判平成11年11月30日労判777号36頁

ごま油を主とした食用油の製造販売をおこなう企業の従業員が勤務時間の多くを自席から離れ業務を放棄し、かつ、虚偽の住所を届け出て実費を約231万円上回る通勤手当を受給した事案です。

企業が当該従業員を不誠実な勤務態度や過大な通勤手当の受領を理由に懲戒解雇したところ、当該従業員は企業に対して懲戒解雇は無効であると主張しました。

上記判例は、懲戒解雇を行うに足りる十分な根拠があるとして、懲戒解雇を有効としました。

4-3 光輪モータース事件|東京地判平成18年2月7日労経速1929号35頁

オートバイの販売等を業とする会社において接客販売等に従事する従業員が通勤経路の変更を届け出ず、従前の通勤経路に基づき通勤手当(差額:月約6600円・合計約35万円)を約4年半にわたり受領し続けた事案です。

企業が当該従業員を虚偽の請求により不正に定期代を受給したことを理由に懲戒解雇したところ、当該従業員は企業に対して懲戒解雇は無効であると主張しました。

上記判例は以下の点を考慮して懲戒解雇は無効としました。

・時間および距離的には従前の通勤経路が最も合理的な通勤経路ということができ、本人の負担によってより時間のかかる経路を選択して交通費を節約しようとしたものであって、当初から過大請求しようとした詐欺的な場合と比べると、本件不正受給の動機自体は悪質ということはできない
・差額は1カ月約6600円、合計約35万円と会社の経済的な損害は大きいとはいえない
・従業員が直ちに金員を返還する準備をしている

4-4 全国建設厚生年金基金事件|東京地判平成25年1月25日労判1070号72頁

厚生年金基金の従業員が会社に申請していた通勤経路を変更したものの、それを会社に届け出ずに、申請していた経路に係るものよりも安価な定期券(差額:6か月2万5330円、合計約15万円)を購入していた事案です。

企業が当該従業員を就業上必要な届出事項について偽ったこと、職務に関し不当な利益を得たことを理由に諭旨退職としたところ、当該従業員は企業に対して諭旨退職は無効であると主張しました。

上記判例は以下の点を考慮して諭旨退職処分は無効としました。

・企業は、当該従業員の自宅から企業までの通勤方法として従前申告された経路に記載された通勤方法及びこれに基づく所要額(定期代)を合理的なものと認定した上で同額の通勤手当を支給していたものであり、本件不正受給により当該従業員が受給してきた通勤手当額は、その範囲内に収まっていること
・支給継続に当たって特段の審査がされることがなかったことなどからすれば、企業においては、本件不正受給当時、通勤のために真に合理的かつ必要な限度でのみ通勤手当を認めた上で、その支給の合理性の維持につきこれを厳守するという企業秩序が十分に形成されていたとは言い難いこと、
・企業の主張を前提としても、本件不正受給による差額は、6か月当たり2万5330円、定期券購入時期につき平成21年4月から平成23年10月までととらえると合計15万1980円に過ぎないこと
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5章 通勤手当(交通費)の不正受給が発覚後の企業としての対処手順

通勤手当(交通費)の不正受給が発覚した場合には、企業としては正しい手順で対処していかなければなりません

なぜなら、正しい手順を踏まずに懲戒処分を行うと、無効となってしまうリスクが生じるためです。

具体的には、従業員による通勤手当(交通費)の不正受給が発覚した場合には、以下の手順で対処していくことになります。

手順1:通勤手当(交通費)の不正受給の調査
手順2:本人からのヒアリング・弁明の機会の付与
手順3:返金の誓約書・合意書を取得
手順4:退職勧奨(自主退職を求める)又は懲戒処分

通勤手当(交通費)の不正受給が発覚後の企業としての対処手順

それでは、各手順について順番に説明していきます。

5-1 手順1:通勤手当(交通費)の不正受給の調査

通勤手当(交通費)の不正受給が発覚した場合の手順の1つ目は、調査を行うことです。

当該従業員を疑うに足りる証拠を集めましょう。

証拠もなしに、従業員にヒアリングをしようとしても、不正受給などしていないと言われて終わってしまう可能性があります

通勤経路の申請書、当該従業員の住所、定期券購入の領収書、通勤に係る目撃情報などを調査しておきます。

また、従業員へ一斉に定期券を所持しているかの確認を行うことも考えられます。

ただし、本人に気付かれた後は、反論の準備をされたり、証拠を隠滅されたりしてしまうことがありますので注意しましょう

5-2 手順2:本人からのヒアリング・弁明の機会の付与

通勤手当(交通費)の不正受給が発覚した場合の手順の2つ目は、本人からのヒアリング・弁明の機会の付与を行うことです。

通勤手当(交通費)の不正受給による懲戒処分を行う際に最重要となるのが従業員本人からの自白です。

自白を獲得できれば不正受給の立証は容易になりますし、客観的な証拠も集めやすくなります。

どのように質問していくか、どの段階で企業側が把握している事情や証拠を示すかなど、十分に計画を立てたうえでヒアリングを行っていきます。

何も準備をせずに臨んでも言い逃れされてしまい、証拠を隠滅されてしまうリスクが生じることになるので注意しましょう

また、当該従業員の弁解に怪しいところがある場合、又は、定期券の私的な不正利用等も疑われる場合には、SUICAやPASMOの利用履歴の取得に協力を求めることも考えられます

5-3 手順3:返金の誓約書・合意書を取得

通勤手当(交通費)の不正受給が発覚した場合の手順の3つ目は、本人からのヒアリング・弁明の機会の付与を行うことです。

不正受給の重要な証拠になりますし、損害金額等の立証も容易になります。

また、従業員側も自ら約束した以上は返金できるよう努力しますので、回収確率も上がります

例えば、以下のような誓約書を作成します。ご自由にご活用ください。

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5-4 手順4:退職勧奨(自主退職を求める)又は懲戒処分

通勤手当(交通費)の不正受給が発覚した場合の手順の4つ目は、退職勧奨(自主退職を求める)又は懲戒処分です。

情状酌量の余地があるような場合には、戒告、譴責、減給、降格、出勤停止等の懲戒処分、若しくは、懲戒解雇の前に自主退職を促しましょう。

他方で、態様として悪質性が高く、不正受給の金額も大きいような場合には、規律の維持を重視して、退職勧奨などは行わずに懲戒解雇を行うことも考えられます

退職勧奨の言い方は、以下の記事で詳しく解説しています。

懲戒解雇の会社側のデメリットは、以下の記事で詳しく解説しています。


6章 通勤手当(交通費)の不正受給と詐欺罪

通勤手当(交通費)の不正受給については、詐欺罪となることもあります

通勤手当の不正受給は、実際には交通費がかかっていないにもかかわらず、これがかかっていると企業を欺く行為なので、詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性があります。

刑法246条(詐欺)
1「人を欺いて財物を交付させたものは、10年以下の懲役に処する。」
2「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」

「従業員が返金に応じない場合」や「不正受給の金額が高額である場合」など悪質なケースでは、刑事告訴についても検討することになります。

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7章 通勤手当(交通費)の不正受給と時効

通勤手当の不正受給に関して問題となりうる時効は、以下のとおりです。

・懲戒処分|時効なし
・返金請求|5年~10年
・詐欺罪の公訴|7年

通勤手当(交通費)の不正受給と時効

それでは順番に説明していきます。

7-1 懲戒処分|時効なし

まず、企業が懲戒処分をする場合については、時効はありません

ただし、通勤手当の不正受給から長期間が経過している場合には、懲戒権の濫用に該当するかを考慮する際の事情となります(最判平18.10.6労判925号11頁[ネスレ日本事件])。

長期間経過していることのみをもって直ちに懲戒権の濫用とされるわけではなく以下のような事情を考慮し濫用か判断されます。

・長期の経過に至った理由
・その間に不正受給が問題とされることはあったのか
・長期間の経過により企業秩序や事実関係の把握にどのような影響が生じているのか

7-2 返金請求|5年~10年

次に、不正受給された金額の返金を請求する場合の時効は、以下のいずれか早い方です。

権利を行使することができることを知った時から5年
権利を行使することができる時から10年
民法第166条(債権等の消滅時効)
1「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。」
一「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。」
二「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。」

7-3 詐欺罪の公訴|7年

最後に、詐欺罪の公訴時効は、犯罪行為終わった時から7年です。

刑事訴訟法250条2項(公訴時効期間)
「時効は人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによって完成する。」
四「長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年」

8章 通勤手当の不正受給への対応はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!

通勤手当の不正受給への対応の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください

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9章 まとめ

以上のとおり、今回は、従業人による通勤手当(交通費)の不正受給と企業がすべき調査や処分について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・通勤手当の不正受給とは、従業員が実際に必要な交通費よりも多い金額を受け取り、その差額を自分のものにしてしまうことをいいます。

・通勤手当の不正受給の典型的なケースを4つ挙げると以下のとおりです。
ケース1:通勤経路の変更の未申告
ケース2:徒歩や自転車による交通費の節約
ケース3:異なる通勤経路の申告
ケース4:定期券を解約した上での払戻金の領得

・通勤手当の不正受給の態様につき故意によるなど悪質性が高く、かつ、不正受給の金額が100万円を超えている場合には、懲戒解雇により対応するのが妥当でしょう。

・従業員による通勤手当(交通費)の不正受給が発覚した場合には、以下の手順で対処していくことになります。
手順1:通勤手当(交通費)の不正受給の調査
手順2:本人からのヒアリング・弁明の機会の付与
手順3:返金の誓約書・合意書を取得
手順4:退職勧奨(自主退職を求める)又は懲戒処分

・通勤手当(交通費)の不正受給については、詐欺罪となることもあります。

・通勤手当の不正受給に関して問題となりうる時効は、以下のとおりです。
懲戒処分|時効なし
返金請求|5年~10年
詐欺罪の公訴|7年

この記事が従業員による通勤手当(交通費)の不正受給が発覚しどのように対応すればいいか悩んでいる経営者や人事担当者の方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

また、労働者側の視点からの通勤手当の不正受給に関する解説としては、以下の記事が参考になります。

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