熟年離婚の生活費はどうするべき?生活費で困らないための対処法4つ

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弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

熟年離婚の生活費はどうするべき?生活費で困らないための対処法4つ

熟年離婚後の生活費をどうすべきか悩んでいませんか

長期にわたり配偶者の収入により生計を立てていた場合には、離婚による生活への打撃は深刻ですよね。

熟年離婚するまでの生活費は、婚姻費用を請求することにより確保することが一般的です

これに対して、熟年離婚した後は、婚姻費用が支払われないため、就職するなどの他の方法によって生活費を確保する必要があります。

一人暮らしにおける生活費の月平均支出は16万円程度とされており、慎重にシミュレーションを重ねたうえで準備していくこと大切です。

安心して生活をするためにも、自分にどのような法的権利があるかを理解したうえで、適切に対処していきましょう。

実は、配偶者に言われるままの条件で離婚してしまい、後から、生活できずに困ってしまうという事例が後を絶たないのです

この記事をとおして、熟年離婚の際にどのようにして生活を守っていけばいいのかということを知っていただければと思います。

今回は、熟年離婚の生活費がもらえるケースを説明した上で、離婚前に準備すべき事項と生活費を請求する際の交渉術について解説していきます。

具体的には以下の流れで解説してきます。

この記事を読めば、熟年離婚をする際に生活を守る方法がよくわかるはずです。


1章 熟年離婚の生活費とは?

熟年離婚の生活費とは、一般的に婚姻費用に含まれるものをいいます

婚姻費用とは、夫婦の共同生活を維持するために必要な一切の費用をいいます。

例えば、別居中の水道光熱費や子どもの養育費などが婚姻費用にあたります。

ただし、婚姻費用はあくまでも離婚前に解決すべき問題なので注意が必要です

つまり、ここでいう婚姻費用は「離婚するまでの生活費」であり「離婚後の生活費」については婚姻費用とは別に就職するなどして確保する必要があります。


2章 熟年離婚までの生活費(婚姻費用)の請求

離婚するまでの生活費を確保するには、配偶者に生活費を請求することになります

生活費は、一般的に別居中などに収入の高い配偶者から、もう一方の配偶者へと支払われることになります。

生活費の金額は、裁判所が公表している算定票を状況に合わせて利用することになります

熟年離婚までの生活費(婚姻費用)の算定表
※当該算定票は子どもがいない場合のものとなります。
※出典:裁判所‐平成30年度司法研究の報告について

令和4年度では、婚姻費用の月額と件数は以下のようになっています。

婚姻費用の月額と割合
※出典:裁判所‐令和4年度司法統計年報(家事編)

このように、15万円以下が最も多くなっていますが、具体的な金額は夫婦の収入や子どもの有無によって変動するため注意すべきです


3章 熟年離婚後の生活費を確保する方法4つ

熟年離婚後の生活費を確保するには適切な方法を押さえておく必要があります

例えば、熟年離婚後の生活費を確保する方法には以下の4つがあります。

方法1:財産分与
方法2:年金分割
方法3:アルバイト/パート
方法4:生活保護

ただし、熟年離婚後の生活費に不安のある方は、生活を維持するためにも離婚に応じないことが良い場面もあることに留意すべきです

それでは各方法について順番に説明していきます。

3-1 方法1:財産分与

熟年離婚後の生活費を確保する方法1つ目は、財産分与です

財産分与とは、夫婦の共有財産を原則として2分の1の割合で分け合うことをいいます。

ここでいう共有財産は夫婦が婚姻中に築いた財産をいい、例えば婚姻中に購入した家や預金等がこれにあたります。

他にも、婚姻中に積み立てた保険の解約返戻金も分与の対象となるため、事前にどのような財産があるのか調査しておくことが重要です

ただし、財産分与には以下の2つの例外があります。

・2分の1にならないことがある(特殊な才能、浪費癖等)
・特有財産は財産分与の対象にならない(婚姻前から有していた財産等)

3-2 方法2:年金分割

熟年離婚後の生活費を確保する方法2つ目は、年金分割です

年金分割とは、婚姻期間中に納付した厚生年金を夫婦で分け合うことをいいます。

専業主婦など共働きでない場合、厚生年金は納付しないためこれは受け取れないのが通常です。

しかし、年金分割によって保険料納付額を分け合うため、分割を受けた部分については厚生年金を受け取ることができるのです

年金分割の方法には合意分割と3号分割がありますが、いずれの方法でも2分の1の割合となることがほとんどです。

3-3 方法3:アルバイト/パート

熟年離婚後の生活費を確保する方法3つ目は、アルバイト/パートです

熟年離婚の場合、年齢的に正規職員としての就職が難しい場合も少なくありません。

そのため、アルバイトの収入で生活費を賄うことが考えられます

また、以下の2つの条件を満たしているときは、雇用保険を受給することができます。

・ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること
・離職前2年間に、被保険者期間が12か月以上であること

※出典:厚生労働省‐Q&A労働者の皆様へ

65歳以上の方の場合には、高年齢求職者給付金を受給できる可能性があります。

・離職し、就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態「失業の状態」にあること
・離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上であること

※出典:厚生労働省‐高年齢求職者給付金のご案内

3-4 方法4:生活保護

熟年離婚後の生活費を確保する方法4つ目は、生活保護です

生活に困窮している場合は、生活保護によって支援を受けることも考えられます。

生活保護を受けるためには、以下の4つの条件を満たした上で、世帯収入が最低生活費を下回っていることが必要になります。

・公的制度を可能な限り利用していること
・家族や親戚から支援を受けられないこと
・病気や怪我によって働けないこと
・資産を持っていないこと

厚生労働省‐生活保護を受けるための要件及び生活保護の内容

なお、最低生活費は地域ごとに異なり、東京では13万円程度とされています


4章 熟年離婚後の生活費シミュレーション|一人暮らしの場合

熟年離婚後の生活を具体的にイメージするために、一人暮らしの場合を想定して生活費をシミュレーションしていきます

具体的には以下の条件を前提に計算していきます。

・一人暮らしの月平均支出額:16万円
・寿命(男性の平均寿命:81歳、女性の平均寿命87歳)
・60歳で熟年離婚

※出典:厚生労働省‐令和4年度平均寿命

まず、男性の場合には平均寿命が81歳であり、生活費を単純計算すると以下のようになります。

16万円×12か月×21年=4032万円

女性の場合には平均寿命が87歳のため、同条件で計算すると以下のようになります。

16万円×12か月×27年=5184万円

この他、高齢であることを踏まえると介護費用なども上乗せされてくるため、必要な生活費はもっと増えることになります


5章 熟年離婚後の生活費で困らないための対処法4つ

熟年離婚後に十分な生活費を確保するためには、離婚前から対処していく必要があります

熟年離婚後の生活費で困らないための対処法は以下の4つです。

対処法1:生活費をシミュレーションしておく
対処法2:離婚前から仕事を探しておく
対処法3:離婚後の住居を確保しておく
対処法4:離婚条件の交渉を弁護士に依頼する

熟年離婚後の生活費で困らないための対処法4つ

それでは各対処法について順番に説明していきます。

5-1 準備1:生活費をシミュレーションしておく

熟年離婚後の生活費で困らないための対処法1つ目は、生活費をシミュレーションしておくことです

なぜなら、熟年離婚後の生活費がわからなければ、具体的な計画が立てられないためです。

見切り発車で熟年離婚すると、離婚後の生活が自分のイメージと異なり後悔するおそれがあります。

そのため、離婚後にどれだけ生活費が必要なのか、熟年離婚でもらえる金額はいくらなのかシミュレーションしておくといいでしょう

なお、受け取れる年金額について知りたい場合は、年金相談センターに問い合わせることで確認できます。

5-2 準備2:離婚前から仕事を探しておく

熟年離婚後の生活費で困らないための対処法2つ目は、離婚前から仕事をしておくことです

配偶者の収入に依存していた場合、熟年離婚によって収入が途絶えてしまうため生活に支障を生じやすいです。

そのため、生活費で困らないよう離婚前から仕事を探しておくといいでしょう

特に、高齢になると就職先が見つからないケースもあるため、離婚前から行動することが重要となります。

5-3 準備3:離婚後の住居を確保しておく

熟年離婚後の生活費で困らないための対処法3つ目は、離婚後の住居を確保しておくことです

熟年離婚後も一緒に住み続けるという夫婦は多くないため、住居を確保しておく必要があります。

住居確保の方法としては以下の3つの方法があります。

・財産分与で自宅をもらう
・実家に帰る
・賃貸を借りる

高齢になってくると賃貸物件で契約を拒否されるケースも少なくないため、熟年離婚前から住居をどうすべきか考えておくといいでしょう

5-4 準備4:離婚条件の交渉を弁護士に依頼する

熟年離婚後の生活費で困らないための対処法4つ目は、離婚条件の交渉を弁護士に依頼することです

熟年離婚後は多額の生活費が必要となるため、離婚条件は適正なものにしておきたいところです。

しかし、離婚交渉において対等な立場で交渉するには、法的な知識やノウハウが不可欠となります

実際、法的知識が乏しいと不利な条件で押し切られてしまうケースが少なくないのです。

そのため、熟年離婚後の生活で困らないためにも、離婚交渉に不安のある方は弁護士に依頼してみるといいでしょう。


6章 生活費の分担請求を含む熟年離婚の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ

熟年離婚後の生活費に不安がある方は、ぜひ、リバティ・ベル法律事務所にご相談ください

婚姻費用の請求の方法等については、予め弁護士に相談しておくと安心です。

特に婚姻費用分担調停を申し立てる場合には、別居と合わせて婚姻費用分担調停を申し立てられるように、予め弁護士に相談するようにしましょう

リバティ・ベル法律事務所では、離婚分野に注力しており、婚姻費用分担調停の進め方や内容について十分なノウハウを有しております。

初回相談は無料なので、お気軽にご相談ください。


7章 まとめ

今回は、熟年離婚の生活費がもらえるケースを説明した上で、離婚前に準備すべき事項と生活費を請求する際の交渉術について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・熟年離婚の生活費とは、法的には「離婚するまでの生活費」をいいます。

・離婚するまでの生活費を確保するには、配偶者に生活費を請求することになり、別居中などに収入の高い方がもう一方へと支払うことになります。

・熟年離婚後の生活費を確保する方法は以下の4つです。
方法1:財産分与
方法2:年金分割
方法3:アルバイト/パート
方法4:生活保護

・熟年離婚後の生活費をシミュレーションすると、必要な生活費は以下とおりです。
男性:4032万円
女性:5184万円

・熟年離婚後の生活費で困らないための対処法は以下の4つです。
対処法1:生活費をシミュレーションしておく
対処法2:離婚前から仕事を探しておく
対処法3:離婚後の住居を確保しておく
対処法4:離婚条件の交渉を弁護士に依頼する
この記事が、熟年離婚後の生活費をどうすべきか悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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