慰謝料請求による差押えについて知りたいと悩んでいませんか?
高額な慰謝料が払えない場合、大切な財産を失ってしまいそうで不安ですよね。
慰謝料を支払うことができない場合、裁判で敗訴判決が確定してしまうと、財産を差押さえられてしまうリスクがあります。
具体的には、以下のような財産が差押さえの対象となります。
・不動産(家や土地など)
・債権(給料、預金など)
給料などの債権も差押えの対象なので、債権者はあなたの勤務先を特定し、給料を差押えたりすることもあるでしょう。
給料を差押さえられてしまった場合、不倫したことが会社にバレてしまったり、不倫を理由にクビを宣告されてしまうこともあります。
また、動産の執行となると、家に執行官が来てしまうこともあり、家族にも不倫が知られてしまうことがあります。
そのため、将来の生活のためにも、できることなら慰謝料による差押さえは避けたいものです。
しかし、あなたのもとに慰謝料の請求通知が届いたのにこれを無視していると、差押さえに向けて手続きは進められていってしまいます。
財産の差押えを避けるためには、あなたが適切な対処法を講じる必要があるのです。
今回は、慰謝料の差押えについて詳しく解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、慰謝料の差押えについてよくわかるはずです。
目次
1章 慰謝料請求によって差押えされるケース3つ
慰謝料請求がされた場合、請求に理由がある又は合意をしたような場合には、差押えられるリスクを生じることがあります。
ここでは、慰謝料請求によって財産が差押えられてしまうケースを解説していきます。
ケース2:裁判上の和解をしたのに支払を怠ったケース
ケース3:公正証書があるケース
それでは各ケースについて順番に説明していきます。
1-1 ケース1:敗訴判決が確定したケース
慰謝料請求によって差押えされるケースの1つ目は、敗訴判決が確定したケースです。
裁判で敗訴判決が確定した場合、強制執行の申立てに必要な債務名義が債権者に与えられます(民事執行法22条1号)。
債権者は、この債務名義に基づいて裁判所に対して執行文付与の申立てを行い、これが認められて送達証明申請を行うと、財産の差押えができる状態となるのです(※参考:民事執行手続 | 裁判所 、強制執行の概要| 裁判所 )。
申立てが認められた後は、おおよそ1か月以内には差押えが開始してしまうでしょう。
不貞裁判で敗訴した場合の末路については以下の記事で詳しく解説しています。
1-2 ケース2:裁判上の和解をしたのに支払を怠ったケース
慰謝料請求によって差し押えされるケースの2つ目は、裁判上の和解をしたのに支払を怠ったケースです。
裁判上の和解があった場合、和解調書という合意内容を記録する文書が作成されます。
和解調書は、判決と同様の効力を有しているので、内容通りに当事者を拘束するうえ、債務名義としての役割を併せもっています(民事執行法22条7号)。
そのため、和解調書に記載された慰謝料の支払を怠ると、債権者は和解調書を債務名義として、強制執行手続を経ることで差押えがされてしまうのです。
1-3 ケース3:公正証書があるケース
慰謝料請求によって差し押えされるケースの3つ目は、公正証書があるケースです。
公正証書とは、ある事項について公証人が書証として作成し、内容を証明する書類をいいます。
公正証書が作成される場合、執行力を確保するために、ほとんどの場合は強制執行認諾文言が付されることになるでしょう。
強制執行認諾文言が付されている場合、この文言は債務名義としての役割を果たします(民事執行法22条5号)。
そのため、公正証書内に強制執行認諾文言が付されている場合に慰謝料の支払を怠ると、公正証書の債務名義に基づいて差押えがされてしまうのです。
2章 慰謝料請求による差押えの対象となる財産
差押えの対象となるのは、財産的価値のある重要な物ばかりです。
具体的には、以下のような財産が差押えの対象となります。
・不動産(家や土地など)
・債権(給料、預金など)
給料については、債務者の生活保護の観点から、最低限生活に必要な部分は差押えの対象になりません(民事執行法152条1項、民事執行法施行令2条)。
例えば、月あたりの手取りが44万円以下の場合、4分の1までしか差押えの対象にならないのです。
他にも、給料を差押えられた場合には、会社からクビを宣告されるなど、様々なリスクが挙げられます。
給料の差押えによる解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
もっとも、注意が必要なのは、差押えられたくないからといって財産を隠してはいけないことでしょう。
差押えの対象物を隠してしまうと、刑罰の対象となってしまうのです(刑法96条の2第1号)。
そのため、差押えを避けたい場合には、適切な対処法を講じる必要があるといえます。
手渡しの給料も差押えの対象になる?
手渡しの給料であっても、差押えの対象となります。
給料が差押えられる場合、あなたを雇用している使用者が第三債務者として扱われます。
債権者は、第三債務者に対して差押えを申立てることができるのです。
そのため、使用者からあなたに給料が支払われる前に、すでに給料が差押えられた状態となっているので、差引かれた分しか給料は手渡されないでしょう。
無職でも差押さえられる?
無職でも財産は差押えられます。
強制執行は債権者に満足を得させることを目的としているので、債務者の職業は問われないためです。
例えば、無職でも家や自動車などの財産を持っていると、差押えの対象となってしまうでしょう。
しかし、財産を持っていない場合にも注意が必要です。
財産がなくて強制執行が空振りとなった場合、債権の消滅時効が更新されます(民法148条2項)。
そのため、消滅時効が完成しない内に再度働き始めると、再就職先での給料が差押えの対象とるおそれがあるのです。
給与の差押え中に転職したらどうなるの?
給与の差押え中に転職した場合、退職金や転職先の給料が差押えの対象となることがあります。
転職する場合、前職を退職することになりますが、退職によって退職金や失業保険等が支払われることになります。
退職金は支払の前後によって扱いが異なり、支払前の差押えでは手取り額の4分の3は差押えの対象にはなりませんが(民事執行法152条2項)、支払後の差押えでは現金や預金等と同じように扱われます。
他方で、失業保険は原則として差押えできませんが、支払後は預金として扱われるので差押えの対象となってしまいます。
また、転職先から受け取る給料も、差押え対象物としての給料にあたるので、差押えられてしまう可能性があります。
そのため、転職したからといって差押えられないというわけではないのです。
3章 財産は把握される?差押え前にされる調査3つ
財産を差押さえるには、債務者の財産を把握する必要があります。
ここでは、差押え前にされる調査をご紹介します。
調査2:弁護士会照会
調査3:探偵
それでは順番に説明していきます。
3-1 調査1:民事執行法に基づく照会
差押え前にされる調査の1つ目は、民事執行法に基づく照会です。
債権者は、債務名義があれば財産開示手続の申立てを行うことができます(民事執行法197条1項)。
申立てを受けて裁判所が財産開示手続実施の決定をした場合、債務者が裁判所に呼び出され(民事執行法198条)、財産開示手続が開始されます。
財産開示手続では、債務者は自己の有する財産について陳述しなければなりません。
不出頭や虚偽の陳述には厳しい罰則が科されているので(民事執行法213条)、陳述によって財産の情報が正確に把握されてしまうでしょう。
また、令和元年に民事執行法が改正されたことで、債務者への通知を条件に、債務者以外の第三者から情報を取得することができるようになりました(民事執行法204条以下)。
これにより、債権者は債務者の陳述に頼る財産開示手続ではなく、一定の条件の下で第三者からも財産に関する情報を得られるようになったのです。
3-2 調査2:弁護士会照会
差押え前にされる調査の2つ目は、弁護士会照会です。
弁護士会照会とは、弁護士が受任している事件について弁護士会に対して調査の申出をし、弁護士会が調査の結果を報告するものをいいます。(弁護士法23条の2)。
申出を受けた弁護士会は、事件について調査の必要性があるか審査します、
必要性があると判断された場合に照会が実施され、勤務先の会社などに照会をすることになるでしょう。
明文の規定はありませんが、照会を受けた者は回答義務があると解釈されており、合理的な理由なく拒否した場合には違法となる場合があります。
そのため、照会がされると一定の場合を除いて、強制執行に必要な財産を把握されてしまうでしょう。
3-3 調査3:探偵
差押え前にされる調査の3つ目は、探偵です。
個人情報が強く保護される現代では、個人による財産調査は非常に難しくなっています。
探偵は、公的機関とは異なる独自の調査手法で調査を行い、債務者の財産を把握します。
例えば、給料の調査であれば、身辺調査によって勤務先を特定し、勤務先の役職などから具体的な給料を概算することが考えられるでしょう。
そのため、専門的な調査が可能なことから、差押え前にされる調査として探偵が利用されることもあるのです。
調査費用を安く抑えるポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。
4章 財産を差押えられる場合の流れ
財産の差押えは個人の権利の干渉することから、適正な手続を経る必要があります。
ここでは、財産を差押えられる場合の流れをご紹介します。
流れ2:差押えの申立て
流れ3:申立てが受理された場合に強制執行
それでは順番に見ていきましょう。
4-1 流れ1:和解または判決
財産を差押さえられる場合の流れ1つ目は、和解または判決です。
不貞慰謝料の事件では、多くは示談で解決しますが、中には裁判にまで至ってしまうことがあります。
裁判では、裁判官から和解を持ちかけられることもあるでしょう。
双方が和解に合意すれば裁判は終了し、和解調書が作成されます。
他方で、和解に合意しない場合は、裁判所が判決を下すことになるでしょう。
和解調書と敗訴判決は、いずれも債務名義にあたるので、これに基づいて強制執行の申立てをしていくことになります。
4-2 流れ2:差押えの申立て
財産を差押さえられる場合の流れ2つ目は、差押えの申立てです。
債権者が債務名義を得た後は、裁判所に執行文付与を申立てる必要があります。
債務名義は権利関係の記載しかないので、強制執行できるかどうかを公的に証明する必要があるためです。
執行文付与がされた後は、差押えのために債務者の財産を調査することになるでしょう。
財産を特定しなければ、どの範囲で差押えをすればいいのかがわからないためです。
これらの手続を経て、ようやく差押えの申立てとなります。
4-3 流れ3:申立てが受理された場合に強制執行
財産を差押さえられる場合の流れ3つ目は、申立てが受理された場合には強制執行されることとなります。
差押えの申立て後は、裁判所が申立てを認められると債務者の財産が差押えられることになるでしょう。
申立て前に強制執行に必要な手続は大体終わっているので、この後は実際に取立が行われることとなります。
差押えは、申立てが認められた時点からおおよそ1ヶ月以内には始まってしまうのです。
取立が完了した後は、裁判所に取立完了届を提出し、差押え手続は終了します。
5章 慰謝料請求による差押えを回避するための対処法3つ
差押えを回避するには、適切な行動を取る必要があります。
ここでは、慰謝料請求による差押さえを回避するための対処法を解説していきます。
対処法2:分割払いの交渉をする(事前・事後的方法)
対処法3:求償権を行使する(事後的方法)
それでは各対処法について順番に説明していきます。
5-1 対処法1:慰謝料の減額交渉をする(事前的方法)
慰謝料請求による差押えを回避するための対処法1つ目は、慰謝料の減額交渉をすることです。
財産の差押えは、慰謝料を支払きれない場合にされます。
事前に慰謝料の金額を減らすことができれば、慰謝料を全額支払える可能性が出てくるのです。
また、慰謝料の請求は相場よりも高い金額でされることが多く、適正な金額へと減額する必要があります。
減額交渉をすることは決して悪いことではないのです。
そのため、慰謝料の減額交渉はあなたの財産を差押えの危険から守ることにも繋がるでしょう。
上手な減額交渉の方法については以下の記事で詳しく解説しています。
5-2 対処法2:分割払いの交渉をする(事前・事後的方法)
慰謝料請求による差押えを回避するための対処法2つ目は、分割払いの交渉をすることです。
慰謝料を一括で支払うことが難しい場合、分割払いにできる場合があります。
分割払いが認められるには、あなたが債権者に対して分割払いの申出をし、債権者に認めてもらわなければなりません。
注意が必要なのは、分割払いが認められた後です。
分割払いが認められると、期限の利益喪失条項が付されることが通常です。
例えば、支払いを怠った金額が一定以上になった場合などには、将来分も含めてすべて支払日が到来したものと扱われてしまうことがあります。
そうすると、結局、財産を差し押さえられてしまうことになりかねません。。
5-3 対処法3:求償権を行使する(事後的方法)
慰謝料請求による差押えを回避するための対処法3つ目は、求償権を行使することです。
不倫は、一方の配偶者と不倫相手とでする共同不法行為にあたります(民法719条1項)。
不倫された一方の配偶者は、もう一方の配偶者と不利相手に対して慰謝料を請求できるのです。
慰謝料を弁済した後は、他の債務者に対して求償権を行使することができます。
これは、全額でなくとも一部だけ弁済すれば行使することができるのです。
例えば、300万円の慰謝料をAとBが等しい割合で負担していたとしましょう。
Aが200万円を弁済すれば、Bの負担分である100万円を請求することができることになります。
他にも、求償権を放棄する代わりに慰謝料を減額してもらうといったこともあるようです。
慰謝料請求と求償権の関係については以下の記事で詳しく解説しています。
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7章 まとめ
今回は、慰謝料請求による差押えについて解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・慰謝料請求によって差押えされるケース3つ
ケース1:敗訴判決が確定したケース
ケース2:裁判上の和解をしたのに支払を怠ったケース
ケース3:公正証書があるケース
・慰謝料請求による差押えの対象となる財産
動産(自動車、貴金属など)
不動産(家や土地など)
債権(給料、預金など)
・給料の支払方法を問わず、支払われる前に差押えられてしまう。
・無職でも財産を差押さえられてしまう。
・給与の差押え中に転職した場合、退職金や転職先での給料が差押さえられることがある。
・財産は把握される?差押え前にされる調査3つ
調査1:民事執行法に基づく照会
調査2:弁護士会照会
調査3:探偵
・財産を差押えられる場合の流れ
流れ1:和解または判決
流れ2:差押えの申立て
流れ3:申立てが受理された場合に強制執行
・慰謝料請求による差押えを回避するための対処法3つ
対処法1:慰謝料の減額交渉をする(事前的方法)
対処法2:分割払いの交渉をする(事前・事後的方法)
対処法3:求償権を行使する(事後的方法)
この記事が、慰謝料請求による差押えについて知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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