中途解約条項をどのように定めればいいのか知りたいと悩んでいませんか?
中途解約条項といっても、契約の内容によって定めるべき事項は変わってくるので、どういった内容にすればよいのか判断に迷うといった会社もあるのではないのでしょうか。
中途解約条項は契約書において以下のように定められることがあります。
1 甲および乙は、契約の期間満了前において、相手方に対して○ヶ月前に書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。
2 前項に基づく中途解約権を行使した当事者は、相手方に対して違約金○万円を支払うものとする。
中途解約条項とは、継続的な契約において、契約期間が満了する前に契約を終了させることができることを内容とする条項をいいます。
中途解約条項を定める目的としては、主に契約関係からの早期離脱をするために設けられることが多い傾向にあります。
というのも、継続的な契約においては、契約当時は利益が予想されていたものの、事後的な事情の変更によって契約を継続する必要がなくなるといったこともあり得るためです。
例えば、長期の売買契約などでは、契約期間内に目的物が不要となり契約を継続させる意味がなくなってしまった場合に、中途解約権が行使されることがあります。
ただし、定めた内容によっては、中途解約権が制限されてしまうなど不都合が生じることも考えられます。
実は、私が契約書作成の相談を受ける中でも中途解約条項に関する相談は増えていますが、後から条項の内容を変更することはできないので、紛争に発展してしまうケースも珍しくありません。
そのため、この記事を読んで中途解約条項とは何かを理解したうえで、具体的な場面でどのような内容を定めるべきかを知って頂ければと思います。
今回は、中途解約条項について解説したうえで、契約書に定める際のレビューポイントについて解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、中途解約条項をどのように契約書に定めるべきかよくわかるはずです。
目次
1章 中途解約条項とは?中途解約条項の例文を紹介(英語対応)
中途解約条項とは、継続的な契約において、契約期間が満了する前に契約を終了させることができることを内容とする条項をいいます。
実際の契約書には以下のように中途解約条項を定めることがあります。
1 甲および乙は、契約の期間満了前において、相手方に対して○ヶ月前に書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。
2 前項に基づく中途解約権を行使した当事者は、相手方に対して違約金○万円を支払うものとする。
また、海外の企業と継続的な契約を締結する場合には、英語で契約書を作成することもあり、中途解約条項は以下のように定められることがあります。
1 Both Party A and Party B may terminate all or part of this contract before the expiration of the contract term by providing a written notice to the other party ○ months in advance.
2 The party that exercises the right to terminate the contract midway based on the preceding paragraph shall pay a penalty of ○ ten thousand yen to the other party.
(訳)
1 甲および乙は、契約期間が満了する前に、○ヶ月前までに相手方に書面で通知することにより、本契約の全部または一部を終了することができる。
2 前項に基づき契約を中途解除する権利を行使した当事者は、相手方に対して○万円の違約金を支払うものとする。
2章 中途解約条項なしだとどうなる?中途解約条項の法的意味
中途解約条項を入れる目的は、あらかじめ中途解約権を留保しておくためです。
長期的な契約においては、契約期間中に契約を継続する必要がなくなることもあります。
この場合に中途解約条項がないと、不必要となった契約関係を継続しなければならず、不利益となるおそれがあります。
というのも、契約を一方的に解約すると、時期によっては相手方に大きな損害を与えることとなり、損害賠償請求など法的責任を問われることがあるためです。
例えば、中途解約条項を入れておけば、契約の解除事由がないようなケースでも、事前に予告するなどして、契約関係を解消することができます。
そのため、中途解約条項の目的は、予測することが難しい将来における事情の変動に備え、契約関係から早期に離脱するため中途解約権を留保しておくことにあるといえるでしょう。
ただし、中途解約条項を定める場合には、一般的に違約金や報酬の支払なども併せて規定される傾向にあり、中途解約権を行使するか否かは慎重に判断することが望ましいです。
中途解約権は、契約の履行が完了するまではいつでも、その理由を問わず当事者が任意に解約することができます。
具体例としては、請負契約における注文者の任意解除権などが挙げられます。
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
他方で、契約解除は債務不履行等があった場合に、当事者が契約を解除することができます。
そのため、両者の違いは権利行使可能な時期と解除理由の有無にあるといえるでしょう。
3章 中途解約条項が定められやすい契約類型
中途解約条項は継続的な契約で定められることが多い条項になります。
例えば、中途解約条項は以下のような契約類型で定められることがあります。
業務委託契約
委託者が受託者間における業務の委託と業務遂行に関する契約
請負契約書のひな形については、以下の記事で詳しく解説しています。
賃貸借契約
目的物の使用とそれに対する賃料の支払に関する当事者の契約
定期または長期の売買契約
目的物の売買を継続的に行う契約
通信サービス契約
携帯電話やスマートフォン等の月々の通信料金が発生する契約
会員契約(スポーツジム等)
特定のサービスを利用するためにサービス提供者と結ぶ契約
サブスクリプション契約
利用者が定期料金を支払うことでサービスの利用権を得る契約
これらはいずれも継続的な契約であり、当事者の状況やニーズの変化に伴い契約継続の必要性にも変化が生じます。
そのため、これらの契約に該当する場合、中途解約条項を入れるべきかを検討しておくことが重要といえます。
中途解約条項を定めた場合、賃貸人と賃借人のいずれもが中途解約権を行使することができるようになります。
しかし、借地借家法は賃貸人からの解約申入れについて制限を設けており、中途解約が認められるには正当な事由が必要となります。
建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは…正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
そのため、賃貸借契約においては、中途解約条項を定めたとしてもその権利を行使するには一定の制約があるので注意しなければなりません。
賃貸借契約に限らず、中途解約を制限する旨の規定は他にもあるので、契約の性質に照らして権利を行使できるのか慎重な判断が求められます。
4章 中途解約条項に定めるべき事項とレビューポイント4つ
中途解約条項は解約する場合のルールを定めるもので、中途解約による紛争の拡大を防ぐことができます。
そのため、中途解約条項には必要な事項を定めておくことが重要といえます。
中途解約条項に定めるべき事項は以下のとおりです。
定めるべき事項2:解約の条件・方法
定めるべき事項3:違約金や損害賠償
定めるべき事項4:報酬の金額
それでは定めるべき事項について順番に解説していきます。
4-1 定めるべき事項1:権利の帰属先
中途解約条項に定めるべき事項の1個目は、権利の帰属先です。
1 甲および乙は、契約の期間満了前において、相手方に対して○ヶ月前に書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。
2 (略)
第○条(中途解約条項)
1 甲は、契約の期間満了前において、相手方に対して○ヶ月前に書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。
2 (略)
中途解約条項を定めた場合、当事者の一方または双方に中途解約権が認められることになります。
しかし、中途解約条項は中途解約権を留保するものなので、その権利の帰属先が不明確だと契約関係からの早期離脱を図ることが難しくなります。
例えば、中途解約権を行使した際に、解約権の有無を争われ紛争が長期化してしまうおそれがあるのです。
また、中途解約権を行使する側であれば、中途解約条項の存在が有利に働く場合もあります。
他方で、相手方も中途解約権の行使が可能な場合があり、突然の解約によって不測の損害を被ることも考えられます。
そのため、メリットのみならず相手方が解約権を有することによるリスクも踏まえ、中途解約権の帰属先について判断することが望ましいです。
4-2 定めるべき事項2:解約の条件・方法
中途解約条項に定めるべき事項の2個目は、解約の条件と方法です。
1 甲および乙は、契約の期間満了前において、相手方に対して○ヶ月前に書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。
2 (略)
第○条(中途解約条項)
1 甲および乙は、契約の期間満了前において、相手方に対して中途解約権行使の1ヶ月前までに書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。
2 (略)
第○条(中途解約条項)
1 甲および乙は、契約の期間満了前において、相手方に対して○ヶ月前に書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。ただし、契約の締結から○ヶ月を経過するまでは、中途解約権を行使することはできない。
2 (略)
中途解約権を行使した場合、当事者の一方的な理由によって契約を終了させることになります。
この場合、相手方は契約の終了を予測することができず、不測の損害を被るおそれがあります。
相手方の予測可能性を担保するため、中途解約権行使の条件として、事前の通知や書面による通知を求められることが多い傾向にあります。
事前の通知は、相手方に予測可能性を与えるために1月以上前として長めの期間を設定することが一般的とされています。
書面による通知は、曖昧な解約権の行使を避け、その意思を明らかにするために求められることがあります。
他にも、契約の安定性や予測可能性を確保するために、中途解約権行使の禁止期間が設けられることがあります。
中途解約禁止期間の長さは契約の内容によって異なるので、具体的な契約内容に照らして判断することが重要となります。
4-3 定めるべき事項3:違約金や損害賠償
中途解約条項に定めるべき事項の3個目は、違約金や損害賠償です。
1 (略)
2 前項に基づく中途解約権を行使した当事者は、相手方に対して違約金○万円を支払うものとする。
第○条(中途解約条項)
1 (略)
2 前項に基づく中途解約権を行使した場合であっても、中途解約権を行使した当事者は、当該中途解約権の行使によって発生する損害賠償責任または違約金を負担しないものとする。
相手方は契約の継続を期待しているのが通常なので、中途解約権の行使によって損害を被ることがあります。
また、中途解約権を行使する側も、違約金を定めておくことで解約の結果について予測することができ、中途解約権行使の有無を判断しやすくなります。
そのため、中途解約権の規定に併せて、違約金や損害賠償請求ができる旨を規定することが多い傾向にあります。
具体的な違約金額の定めは紛争の拡大を予防することにも繋がるので、あらかじめ定めておくことが重要となります。
他方で、契約関係から離脱する際のリスクを減らしたい場合には、違約金や損害賠償責任を負担しない旨を定めることが考えられます。
4-4 定めるべき事項4:報酬の金額(業務委託契約・請負契約・賃貸借契約等)
中途解約条項に定めるべき事項の4個目は、報酬の金額です。
1 甲および乙は、契約の期間満了前において、相手方に対して○ヶ月前に書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。
2 前項に基づく中途解約権を行使した当事者は、相手方に対して違約金○万円を支払うものとする。
第○条(中途解約条項)
1 (略)
2 (略)
3 第1項の中途解約権の行使によって契約が終了した場合、中途解約が行われた月の報酬は、中途解約権を行使した当事者が全額負担するものとする。
第○条(中途解約条項)
1 (略)
2 (略)
3 第1項の中途解約権の行使によって契約が終了した場合でも、中途解約が行われた月の報酬は、中途解約権を行使した当事者は一切負担しないものとする。
第○条(中途解約条項)
1 (略)
2 (略)
3 第1項の中途解約権の行使によって契約が終了した場合、中途解約が行われた月の報酬は、日割によって算定する。
業務委託契約などでは、中途解約した場合に報酬を請求できることがあります。
例えば、履行の一部が完了していたため、その部分について報酬請求権が発生していた場合が挙げられます。
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 (略)
二 (略)
このような場合に報酬に関する定めがないと、報酬金額について争いとなるおそれがあります。
事前に紛争を回避するためにも、報酬の具体的な金額や算定方法について定めておくことが望ましいです。
しかし、報酬の算定方法は具体的な契約の内容や目的などによって異なります。
例えば、契約の拘束力を強めて契約の安定性を上げたい場合には、報酬を全額負担させることが考えられます。
他方で、契約の拘束力を弱めて契約から離脱する際のリスクを減らしたい場合には、報酬の負担しない旨を定めることもできます。
他にも、中途解約した月の報酬は日割計算を行うことで、当事者間の公平を図るといったことも考えられます。
いずれを定めるにしても、当事者の利害が大きく関わってくる事項なので、その基準を明確にしておくことが紛争予防の観点からも重要となります。
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6章 まとめ
以上のとおり、今回は、中途解約条項とは何かを説明したうえで、中途解約条項のレビューポイントについて解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・中途解約条項とは、継続的な契約において、契約期間が満了する前に契約を終了させることができることを内容とする条項をいいます。
・中途解約条項の例文は以下のとおりです。
第○条(中途解約条項)
1 甲および乙は、契約の期間満了前において、相手方に対して○ヶ月前に書面で予告することにより、本契約の全部または一部を中途解約することができる。
2 前項に基づく中途解約権を行使した当事者は、相手方に対して違約金○万円を支払うものとする。
・中途解約条項なしだと不利益を被るおそれがあるので、中途解約条項はリスクを緩和し契約関係から早期に離脱するために設けられます。
・中途解約条項が定められやすい契約類型は以下のとおりです。
業務委託契約
賃貸借契約
請負契約
定期または長期の売買契約
通信サービス契約(携帯電話等)
会員契約(スポーツジム等)
サブスクリプション契約
・中途解約条項に定めるべき事項とレビューポイントは以下の4つです。
定めるべき事項1:権利の帰属先
定めるべき事項2:解約の条件・方法
定めるべき事項3:違約金や損害賠償
定めるべき事項4:報酬の金額
この記事が中途解約条項について知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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