すぐに解雇をしたいものの、突然の解雇として違法になってしまうのではないかと悩んでいませんか?
従業員を解雇する機会はあまり多くないため、人事担当者であっても、いきなりすぎるのではないかと不安に感じてしまうこともありますよね。
突然の解雇が違法になるのは、以下の4つのようなケースです。
ケース2:業務改善の機会を与えないケース
ケース3:配置転換等の解雇回避措置を取らないケース
ケース4:懲戒解雇で弁明の機会の付与等を欠くケース
突然の解雇が違法になった場合には、一度解雇した従業員が戻ってくるだけではなく、解雇してから復職までの賃金を後から遡って請求されてしまうリスクがあります。
企業が突然の解雇を検討せざる得ない場合として、「試用期間の満了が迫っている事例」や「企業の信頼が毀損されている事例」、「社内秩序が乱され自宅待機命令も拒否される事例」などがあります。
違法な突然の解雇と言われないためには、定期的なミーティングで指導したり、別のポジションを提案したりしておくこと大切です。
また、退職勧奨や解雇予告手当の支払い、予備的な普通解雇を行うことも対策になります。
もしも、違法な突然の解雇であるとして争われた場合には、適切に対処していく必要があります。
実は、何も準備をせずにいきなり解雇を言い渡して、紛争化してしまう企業が後を絶ちません。
この記事をとおして、企業の経営者や人事担当者に突然の解雇と言われないためにはどうすればいいのかを知っていただければと思います。
今回は、突然の解雇が違法となるケースを4つ説明したうえで、いきなり解雇と言われないための対策5つと突然の解雇の違法性を争われた場合の対処法を解説しています。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、すぐに解雇をしなければいけない場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
1章 突然の解雇(いきなり解雇)が違法になる4つのケース
企業が従業員を突然解雇してしまうと違法になることがあります。
解雇は最終手段とされており、また、解雇に必要な手続きがあるためです。
例えば、突然の解雇が違法になるケースを4つ挙げると以下のとおりです。
ケース2:業務改善の機会を与えないケース
ケース3:配置転換等の解雇回避措置を取らないケース
ケース4:懲戒解雇で弁明の機会の付与等を欠くケース
それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
1-1 ケース1:解雇の予告を欠くケース
突然の解雇が違法になるケースの1つ目は、解雇の予告を欠くケースです。
労働基準法上、解雇をする場合には、30日前までに予告をしなければならないとされています。
原則として、このような予告をせずに突然解雇することは、違法となります。
ただし、4-1で後述するとおり、解雇予告手当を支払った場合には、解雇予告義務に反しません。
1-2 ケース2:業務改善の機会を与えないケース
突然の解雇が違法になるケースの2つ目は、業務改善の機会を与えないケースです。
企業は従業員を解雇する前にまずは業務改善の機会を与えなければならないとされています。
従業員が将来にわたり雇用を継続することが困難である場合に解雇が可能となるのです。
例えば、具体的な業務中のエピソードなどを指摘したうえで業務のやり方をどのように変えるべきか指導したり、目標などを設定したうえで一定期間ごとにフィードバックを行ったりする必要があります。
1-3 ケース3:配置転換等の解雇回避措置を取らないケース
突然の解雇が違法になるケースの3つ目は、配置転換等の解雇回避措置を取らないケースです。
企業は従業員を解雇する前に解雇以外の手段により雇用を継続することができないかを検討しなければなりません。
異動や降格、ポジションの変更などを行うことができない場合に解雇が可能となるのです。
例えば、他に空いているポジションがないか、従業員に対して他に貢献できると思う業務はあるかを確認します。
1-4 ケース4:懲戒解雇で弁明の機会の付与等を欠くケース
突然の解雇が違法になるケースの4つ目は、懲戒解雇で弁明の機会を欠くケースです。
企業は、従業員を懲戒解雇する前に弁明の機会を付与しなければなりません。
また、就業規則に賞罰委員会に付議することを規定している場合には、懲戒解雇の前に賞罰委員会を行う必要があります。
そのため、懲戒解雇の場合には、弁明の機会等の手続きを怠ると違法となります。
2章 突然の解雇(いきなり解雇)が違法になった場合の企業のリスク
企業としては、突然の解雇が違法になった場合には、リスクがあります。
なぜなら、一度解雇した従業員が戻ってくるだけではなく、解雇してから復職までの賃金を後から遡って請求されてしまうためです。
まず、解雇が違法若しくは濫用となると無効になってしまい当該従業員が退職しておらず、現在も従業員であるということになります。
そのため、当該従業員に退職してもらうことができなくなってしまいます。
また、解雇が無効であった以上、紛争期間中も引き続きその者は従業員であったことになり、その期間出勤できなかったのは不当解雇に原因があることになります。
そのため、解雇が無効とされてしまった場合には、紛争期間中の賃金を後から遡って支払わなければいけなくなってしまうのです。
例えば、令和6年1月に解雇して、解雇を無効とする判決が令和7年6月に確定した場合には、1年半分もの賃金を後から支払わなければいけなくなってしまうリスクがあるのです。
このように突然の解雇をして違法になった場合の企業のリスクは決して小さいものではありません。
3章 企業が突然の解雇(いきなり解雇)を検討せざるを得ない事例3つ
企業としては、突然の解雇を検討せざるを得ない場合もあります。
確かに突然の解雇が違法になった場合にはリスクがありますが、それ以上に解雇を先延ばしすることによるリスクの方が大きい場合もあるためです。
例えば、企業が突然の解雇を検討せざるを得ない事例としては以下の3つがあります。
事例2:企業の信頼が棄損されている事例
事例3:社内秩序が乱され自宅待機命令も拒否される事例
それでは、各事例について順番に説明していきます。
3-1 事例1:試用期間の満了が迫っている事例
突然の解雇を検討せざるを得ない事例の1つ目は、試用期間の満了が迫っている事例です。
試用期間解雇とは、試用期間中又は試用期間満了日をもって本採用をしないことを言い渡すことです。
試用期間満了日を過ぎてしまうと本採用をしたことになり、それ以降は解雇をするハードルが上がってしまいます。
そのため、試用期間の満了日が迫っているよう事例で、本採用できないとの判断になった場合には、満了日をもって解雇を行うべき場合があります。
試用期間の解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
3-2 事例2:企業の信頼が棄損されている事例
突然の解雇を検討せざるを得ない事例の2つ目は、企業の信頼が毀損されている事例です。
従業員が会社の内部情報や悪評を取引先や他の従業員に流布して回っているということがあります。
また、当該従業員が犯罪行為を行い、メディアなどで大々的に報道されてしまっているという場合もあります。
このような場合には、放置しておくと企業の信頼が害されてしまうので、早い段階で解雇を行い、当該従業員行動が企業とは無関係であることを明確にすることが考えられます。
3-3 事例3:社内秩序が乱され自宅待機命令も拒否される事例
突然の解雇を検討せざるを得ない事例の3つ目は、社内秩序が乱され自宅待機命令も拒否される事例です。
当該従業員がいることにより、他の従業員が畏怖してしまい仕事に手がつかなくなってしまっているようなことがあります。
そのような場合には、自宅待機を命じて出勤しないような措置をとることが考えられます。
しかし、そのような措置にも応じてもらえず、出社を強行するような場合には、業務に支障ができることを避けるために、すぐに解雇を行うことを検討する必要があります。
4章 違法な突然の解雇(いきなり解雇)と言われないための対策5つ
違法な突然の解雇と言われないためには対策を講じておくべきです。
突然の解雇と言われてしまうかどうかは、しっかりと手順を踏んでいるかという問題であり、対策のしやすい部分となります。
例えば、違法な突然の解雇と言われないための対策は以下の5つです。
対策2:他のポジションも提案する
対策3:退職勧奨を行う
対策4:解雇予告手当を支払う
対策5:予備的に普通解雇も行う
それでは、各対策を順番に説明していきます。
4-1 対策1:定期的にミーティングで指導を行う
違法な突然の解雇と言われないための対策の1つ目は、定期的にミーティングで指導を行うことです。
業務遂行能力や業務態度に問題がある従業員に対して1週間ごとにミーティングを行い問題点の指摘をしたうえで、目標を設定し、改善状況のフィードバックを行いましょう。
証拠に残すことができるようにミーティングの内容については、議事録に残しておくといいでしょう。
解雇の前に定期的に指導を行っておくことで、従業員が業務を改善する機会にもなりますし、改善ができない場合には雇用の継続が難しいとの認識も共有しやすくなります。
そのため、突然解雇されたと言われることを防ぐことができます。
4-2 対策2:他のポジションも提案する
違法な突然の解雇と言われないための対策の2つ目は、他のポジションを提案することです。
解雇を言い渡す前に、現在のポジションや業務内容のままでは雇用を継続することが難しいと伝えたうえで、空いているポジションを提示して意向を確認する事が考えられます。
また、空いているポジションがないようであれば、当該従業員に対してどのような業務であれば行うことができるのかを確認してみる方法もあります。
このように解雇以外の手段を検討することにより、突然解雇されたと言われることを防ぐことができます。
4-3 対策3:退職勧奨を行う
違法な突然の解雇と言われないための対策の3つ目は、退職勧奨を行うことです。
退職勧奨とは、従業員に対して自主退職を促すことを言います。
退職勧奨の場合には解雇と異なり、従業員も納得して退職することになるため紛争となるリスクを格段に下げることができます。
また、退職勧奨を断り続ければ解雇になることがわかるため、従業員としても突然解雇されたとの印象はもちにくいです。
そのため、解雇を行う前に退職勧奨を行うことにより、突然解雇されたと言われることを防ぐことができます。
退職勧奨の言い方については、以下の記事で詳しく解説しています。
4-4 対策4:解雇予告手当を支払う
違法な突然の解雇と言われないための対策の4つ目は、解雇予告手当を支払うことです。
労働基準法上、原則として、解雇の際には30日以上前に予告をしなければならないとされています。
しかし、例外的に、30日分の解雇予告手当を支払えば、予告をすることなく即日解雇することも可能となります。
そのため、予告せずに解雇する場合には、解雇予告手当を支払うことで突然解雇されたと言われることを防ぐことができます。
4-5 対策5:予備的に普通解雇も行う
違法な突然の解雇と言われないための対策の5つ目は、予備的に普通解雇も行うことです。
懲戒解雇を行う場合には、弁明の機会の付与や規定により懲罰委員会への付議が必要となります。
これに対して、普通解雇であれば、このような懲戒手続きを行う必要がなくなります。
そのため、懲戒手続を争われるリスクがある場合には、予備的に普通解雇も行うことが考えられます。
5章 突然の解雇(いきなり解雇)の違法性を争われた場合の対処法3つ
従業員から違法な突然の解雇であるとして争われた場合には、適切に対処していく必要があります。
対処を誤ると企業として高額な負担を強いられる可能性があり、中小企業では事業の継続自体難しくなってしまうこともあります。
具体的には、突然の解雇の違法性が争われた場合の対処法としては、以下の3つがあります。
対処法2:解雇を撤回し復職を求める
対処法3:退職前提の金銭和解の交渉をする
それでは、各対処法につき順番に説明していきます。
5-1 対処法1:解雇は有効との回答のみをする
突然の解雇の違法性を争われた場合の対処法の1つ目は、解雇は有効との回答のみをするという対処です。
解雇が違法となる可能性が低く、有効であることが明らかであるような場合には、解雇は有効とのみ回答して、交渉には応じないとの態度をとることが考えられます。
毅然とした態度により、不当な請求には応じない方針であることを明らかにしていきます。
5-2 対処法2:解雇を撤回し復職を求める
突然の解雇の違法性を争われた場合の対処法の2つ目は、解雇を撤回し復職を求めることです。
解雇が無効となる可能性が高い場合には、解雇を撤回して、復職してもらうことを検討することになります。
早い段階で撤回を行うことにより、当該従業員が働いていない期間について、後から遡って高額の支払いをしなければいけないという事態を避けることができます。
そのため、解雇の撤回が可能なのであれば、速やかに撤回することを検討します。
5-3 対処法3:退職前提の金銭和解の交渉をする
突然の解雇の違法性を争われた場合の対処法の3つ目は、退職前提の金銭和解の交渉をすることです。
紛争になった場合には解雇が有効とされてしまうリスクがあるものの、解雇の撤回も難しいという場合には、退職を前提とした金銭和解の交渉を行います。
賃金の数か月分程度の支払いを行うことを条件に退職に合意してもらうことを目指すことになります。
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解雇の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
解雇問題は専門性の高い分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇を争われた場合の見通しを分析したうえで、事前に準備を行い、極力リスクを減らしたうえで、紛争が顕在化した場合には適切に対処していく必要があります。
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7章 まとめ
以上のとおり、今回は、突然の解雇が違法となるケースを4つ説明したうえで、いきなり解雇と言われないための対策5つと突然の解雇の違法性を争われた場合の対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・突然の解雇が違法になるケースを4つ挙げると以下のとおりです。
ケース1:解雇の予告を欠くケース
ケース2:業務改善の機会を与えないケース
ケース3:配置転換等の解雇回避措置を取らないケース
ケース4:懲戒解雇で弁明の機会の付与等を欠くケース
・突然の解雇が違法になった場合には、一度解雇した従業員が戻ってくるだけではなく、解雇してから復職までの賃金を後から遡って請求されてしまうリスクがあります。
・企業が突然の解雇を検討せざるを得ない事例としては以下の3つがあります。
事例1:試用期間の満了が迫っている事例
事例2:企業の信頼が棄損されている事例
事例3:社内秩序が乱され自宅待機命令も拒否される事例
・違法な突然の解雇と言われないための対策は以下の5つです。
対策1:定期的にミーティングで指導を行う
対策2:他のポジションも提案する
対策3:退職勧奨を行う
対策4:解雇予告手当を支払う
対策5:予備的に普通解雇も行う
・突然の解雇の違法性が争われた場合の対処法としては、以下の3つがあります。
対処法1:解雇は有効との回答のみをする
対処法2:解雇を撤回し復職を求める
対処法3:退職前提の金銭和解の交渉をする
この記事がすぐに解雇をしたいものの、突然の解雇として違法になってしまうのではないかと悩んでいる経営者や人事担当者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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