不当解雇の裁判(訴訟)とは?企業が負けるとどうなるかと勝率や費用

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著者情報 弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属 
取扱分野は、人事労務、一般企業法務、紛争解決等。
WEBサイト制作等を行うリバティ・ベル株式会社の代表取締役も務める。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン[連載]不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日

不当解雇の裁判(訴訟)とは?企業が負けるとどうなるかと勝率や費用

悩み

不当解雇の裁判がどのようなものか知りたいと悩んでいませんか

従業員を解雇した後に突然、内容証明郵便や訴状が届くと驚いてしまいますよね。

不当解雇の裁判とは、従業員から解雇が無効であると主張されて、労働者としての地位の確認と解雇後の賃金に関する訴訟のことです

不当解雇の裁判は以下の流れで進んでいきます。

不当解雇裁判の流れ

不当解雇の裁判で負けると、従業員が復職することになり、解雇日から判決が確定する日までの間の賃金を遡って支払うことになります

不当解雇の裁判中に従業員の就職が発覚したら、仮に解雇が無効となった場合でも、別の企業から支払われていた賃金相当額については、当該従業員の賃金の6割を超える部分から控除してもらうことになります。

不当解雇裁判における企業の勝率は、決して高いとは言えませんが、十分に準備をして事実関係を主張立証することで、企業側が勝利できることもあります。

不当解雇裁判(訴訟)の費用の相場は、弁護士費用は着手金と報酬金を併せて100万円程度、その他和解で支払う際の解決金は賃金3か月分~賃金1年6か月分程度です。

不当解雇裁判を起こされた場合には、弁護士に依頼したうえで、方針を決めて、答弁書を提出し、解雇理由を基礎づける事実や証拠を整理することになります。

実は、不当解雇の裁判は対応次第で結果や解決金が大きく変わってきますので、訴訟を提起されたら見通しやリスクを踏まえた適切な方針を立てる必要があります

この記事をとおして、企業の経営者や人事担当者の方に不当解雇の裁判についての正しい知識を知っていただければ幸いです。

今回は、不当解雇の裁判(訴訟)とは何か、その意味を説明したうえで、企業が負けるとどうなるかと勝率や費用を解説していきます。

具体的には以下の流れで説明しています。

この記事で分かること

この記事を読めば、不当解雇の裁判(訴訟)への企業としての向き合い方がよくわかるはずです。

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1章 不当解雇の裁判(訴訟)とは?

不当解雇の裁判(訴訟)とは?

不当解雇の裁判とは、従業員から解雇が無効であると主張されて、労働者としての地位の確認と解雇後の賃金に関する訴訟のことです

つまり、解雇が条件を満たしておらず効力が生じていないため、私はまだ従業員であり、働けなかった期間の賃金も含めて支払ってほしいと請求されるのです

企業が従業員に対して、解雇を言い渡した後、従業員がこれに納得しないと、紛争化することになります。

通常は、まず従業員から内容証明郵便が届き、解雇の撤回と業務指示を求められることになります。

この内容証明郵便を無視した場合、要求を拒否した場合、交渉が決裂した場合には、訴訟を提起され裁判となります。

裁判は、最終的に判決を目指す手続きであり、判決に向けて、法的な主張や必要な事実関係、証拠を整理していくことになるのです。


2章 不当解雇の裁判(訴訟)の流れ

不当解雇の裁判については以下のよう流れで進んでいきます。

流れ1:訴状と呼出状が届く
流れ2:答弁書の提出
流れ3:口頭弁論期日・弁論準備手続期日
流れ4:尋問期日
流れ5:判決

不当解雇裁判の流れ

それでは、各手続きについて順番に説明していきます。

2-1 流れ1:訴状と呼出状が届く

不当解雇の裁判の流れの1つ目は、訴状と呼出状が届くことです。

通常、不当解雇の裁判については、従業員から提起されることになります。

訴訟が提起されると被告である会社に、訴状や証拠一式と併せて、以下のような呼出状が送られてくることになります。

不当解雇の裁判|呼出状

呼出状には第1回期日の日程や法廷、答弁書の提出期限が記載されています。

2-2 流れ2:答弁書の提出

不当解雇の裁判の流れの2つ目は、答弁書の提出をすることです。

解雇が正当なものであったとしても、答弁書を提出しないと労働者の主張が認められてしまうことになります。

例えば、答弁書の提出が間に合わない場合には以下のような記載をした答弁書を提出します。

訴訟の答弁書のテンプレート

答弁書①

答弁書②

 

答弁書のテンプレートの
ダウンロードはこちら

2-3 流れ3:口頭弁論期日・弁論準備手続期日

不当解雇の裁判の流れの3つ目は、口頭弁論期日・弁論準備手続期日です。

訴状と答弁書が提出されると、裁判所の指揮に従い、争点を整理して、主張や証拠を整理していくことになります。

月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、原告と被告が交互に準備書面を出していくことが通常です。

この手続きに時間を要することが多く、9か月~1年6か月程度かかります。

2-4 流れ4:尋問期日

不当解雇の裁判の流れの4つ目は、尋問期日です。

争点が整理されたら、判決の前に証人尋問が行われることになります。

不当解雇の裁判の証人尋問については、そこまで大人数になることは多くなく、通常1日で終了します。

2-5 流れ5:判決

不当解雇の裁判の流れの5つ目は、判決です。

尋問まで終わると、弁論が集結され、裁判所の判決を待つことになります。

尋問から裁判所の判決までの期間は、事件の内容や時期によっても異なりますが、2か月程度のことが多いです。

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3章 不当解雇の裁判(訴訟)に負けるとどうなる?

不当解雇の裁判で負けると、従業員が復職することになり、解雇日から判決が確定する日までの間の賃金を遡って支払うことになります

解雇が無効となると解雇の効力が生じていなかったことになりますので、従業員は退職していないことになります

そのため、復職日や復職後の業務内容などを従業員と調整することになります。

また、解雇日から判決が確定するまでの間、その従業員が働けなかったのは企業側の減員ということになりますので、その期間の賃金の支払いを命じられます。

これをバックペイと言います。

例えば、令和6年1月31日付で行った解雇が無効であるとの判決が令和7年1月31日に確定した場合には、1年分の賃金の支払いをしなければいけないことになります。

そして、判決には強制力がありますので、企業が支払いをしないでいると、従業員から会社財産の差し押さえをされることになります

例えば、預金口座や取引先への債権、企業が所有している不動産などを差し押さえられます。

そのため、企業は不当解雇の裁判で敗訴してしまうと、大きな損害を被ってしまうことになります。


4章 不当解雇の裁判(訴訟)中に就職が発覚したら?

不当解雇の裁判中に従業員の就職が発覚したら、仮に解雇が無効となった場合でも、別の企業から支払われていた賃金相当額を控除するように反論をすることになります

解雇後に別の企業で働いて得た賃金は、解雇されたからこそ得ることができた利益であり、このような利益を得ながら、解雇した企業にも全額の賃金を請求することは不公平とされるためです。

これを中間収入の控除と言います。

ただし、別の企業から得た賃金全額を控除できるわけではなく、控除の対象となるのは請求されている当該従業員の賃金の6割を超える部分のみです

例えば、令和6年1月31日に解雇した従業員(賃金月額30万円)が令和6年3月1日から別の企業から月額25万円の賃金を得ていた場合を想定します。

この場合には、当該従業員から請求されている令和6年3月分以降の賃金月額30万円のうち18万円を超える部分は、中間収入の控除により、認められないことになります。

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5章 不当解雇裁判(訴訟)の企業の勝率

不当解雇裁判における企業の勝率は、決して高いとは言えませんが、十分に準備をして事実関係を主張立証することで、企業側が勝利できることもあります

確かに、解雇が正当とされるための条件は、厳格であり、簡単にこれを満たすことはできません。

しかし、どのような場合であっても解雇が認められないということではありません

雇用を継続できないことを具体的な事実やエピソードに基づいて主張立証していくことにより解雇が有効とされることもあるのです。

例えば、抽象的にパフォーマンスが不足していた、コミュニケーションが不足していたと足りるだけでは、全く足りません。

これに対して、何月何日のどのような業務をしていた際のどのような出来事からパフォーマンスが不足していたのか、コミュニケーションが不足していたのかなどを説明できれば、解雇が有効となることもあります。

ただし、解雇を有効とするためには、解雇前から十分に証拠を集めておく必要がありますし、裁判になった後も事実関係を丁寧に整理し説明しなければならないことに注意が必要です。


6章 不当解雇の裁判(訴訟)費用や相場

不当解雇の裁判費用の相場は、弁護士費用や和解金として労働者に支払う金額を合計すると、およそ190万円~640万円程度となります。

弁護士費用と和解金をそれぞれ整理すると以下のとおりです。

不当解雇裁判における相場金額

弁護士費用については、交渉や労働審判に比べて、裁判の方が高くなります。

不当解雇の裁判だと着手金と報酬金を合計して100万円程度となります。

和解金については、裁判所が解雇無効との心証の場合には3か月分前後、解雇が有効の心証の場合には賃金の9か月分~1年6か月分程度です。

交渉や労働審判に比べて、時間がかかるため、その分解雇後の賃金の金額が増えてしまい、解雇が有効との心証になった場合の和解金額は高額となります。

不当解雇の裁判の費用をおさえたい場合には、適切に見通しを立てたうえで交渉や労働審判の段階で早期解決を目指した方が合理的なことが多いです。

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7章 不当解雇裁判(訴訟)への対処手順

不当解雇の裁判を提起された場合には、適切に対処していく必要があります

対応しないでいたり、不十分な対応しかしなかったりすると、リスクはより大きなものとなってしまいます。

具体的には、不当解雇裁判への対処手順は以下のとおりです。

対処手順1:弁護士に依頼する
対処手順2:方針を決める
対処手順3:答弁書を出す
対処手順4:事実や証拠を整理する

不当解雇裁判(訴訟)への対処手順

それでは、各対処手順について順番に説明していきます。

7-1 対処手順1:弁護士に依頼する

不当解雇裁判への対処手順の1つ目は、弁護士に依頼することです。

裁判は専門的な手続きです。

例えば、準備書面の記載方法や提出すべき証拠、反論すべきポイント、引用すべき判例などについては、不当解雇に精通した弁護士でないと対応が難しい部分です。

そのため、不当解雇の裁判については、まず弁護士に依頼すべきです。

7-2 対処手順2:方針を決める

不当解雇裁判への対処手順の2つ目は、方針を決めることです。

訴状を確認して、企業側の認識を踏まえて、見通し分析したうえで、方針を立てることになります。

解雇の正当性を主張していくにしても、解雇理由につきどのように主張を校正していくのかということを証拠に照らして整理する必要があります。

これに対して、解雇が明らかに正当となる可能性がない場合には、早々に撤回することを検討すべき場合もあります。

解雇の撤回については、以下の記事で詳しく解説しています。

7-3 対処手順3:答弁書を出す

不当解雇裁判への対処手順の3つ目は、答弁書を出すことです。

解雇が正当な場合でも、何ら答弁をしないでいると解雇は不当とされてしまうのです

そのため、訴訟を提起されたら無視はせずに、答弁書を提出する必要があります。

弁護士に依頼した場合には、弁護士が答弁書を提出して、裁判所に提出することになります。

7-4 対処手順4:事実や証拠を整理する

不当解雇裁判への対処手順の4つ目は、事実や証拠を整理することです。

解雇が正当とされるためには、客観的に合理的である必要があるので、事実を具体的に説明しなければなりませんし、これを客観的な証拠で根拠づけなければなりません。

また、和解の話し合いをする場合であっても、企業側が十分に解雇の理由を出張立証しないでいると、労働者は敗訴リスクがないものと判断し、高額な解決金を支払わないと和解できなくなってしまいます。

そのため、不当解雇の裁判になったら事実や証拠を整理して主張することになるのです。


8章 解雇の相談はリバティ・ベル法律事務所へ!

解雇の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。

解雇問題は専門性の高い分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません

解雇を争われた場合の見通しを分析したうえで、事前に準備を行い、極力リスクを減らしたうえで、紛争が顕在化した場合には適切に対処していく必要があります。

リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨をはじめとした人事労務に力を入れており、圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています

リバティ・ベル法律事務所は、全国対応・オンライン相談可能で、最短即日でこの分野に注力している弁護士と相談することが可能です。

相談料は1時間まで1万円(消費税別)となっておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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9章 まとめ

以上のとおり、今回は、不当解雇の裁判(訴訟)とは何か、その意味を説明したうえで、企業が負けるとどうなるかと勝率や費用を解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・不当解雇の裁判とは、従業員から解雇が無効であると主張されて、労働者としての地位の確認と解雇後の賃金に関する訴訟のことです。

・不当解雇の裁判については以下のよう流れで進んでいきます。
流れ1:訴状と呼出状が届く
流れ2:答弁書の提出
流れ3:口頭弁論期日・弁論準備手続期日
流れ4:尋問期日
流れ5:判決

・不当解雇の裁判で負けると、従業員が復職することになり、解雇日から判決が確定する日までの間の賃金を遡って支払うことになります。

・不当解雇の裁判中に従業員の就職が発覚したら、仮に解雇が無効となった場合でも、別の企業から支払われていた賃金相当額を控除するように反論をすることになります。

・不当解雇裁判における企業の勝率は、決して高いとは言えませんが、十分に準備をして事実関係を主張立証することで、企業側が勝利できることもあります。

・不当解雇の裁判費用の相場は、弁護士費用や和解金として労働者に支払う金額を合計すると、およそ190万円~640万円程度となります。

・不当解雇裁判への対処手順は以下のとおりです。
対処手順1:弁護士に依頼する
対処手順2:方針を決める
対処手順3:答弁書を出す
対処手順4:事実や証拠を整理する

この記事が不当解雇の裁判に悩んでいる企業の経営者や人事担当者の方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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