代物弁済契約書とは?入れるべき条項4つとレビューポイント解説【word形式・ひな形付き】

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著者情報 弁護士 籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所|神奈川県弁護士会所属 
取扱分野は、人事労務、一般企業法務、紛争解決等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン[連載]不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

悩み

 

代物弁済契約書の内容をどのようにすべきか知りたいと悩んでいませんか

代物弁済契約にも種類があるので、どれを選べばいいのかハッキリせず困りますよね。

代物弁済契約書とは、本来の給付に代えて、他の給付によって債務を消滅させる旨の合意を書面にしたものです

代物弁済契約書に入れられることが多い条項としては、以下の4つがあります。

条項1:債務の確認
条項2:代物弁済の合意
条項3:登記手続
条項4:清算

他にも、代物弁済契約は「停止条件付」や「予約」といった形で締結されることもあります。

なぜなら、金銭消費貸借契約等の場合には、他の給付が担保としての役割を果たすためです

この場合には、条項に記載すべき内容も異なるため、契約形式の違いを意識することが重要になります。

実は、違いを意識している契約書とそうでない契約書とでは、債権の回収可能性に大きな違いを生じることもあるのです

この記事を通して、状況に適した代物弁済契約書の定め方を知っていただければと思います。

今回は、代物弁済契約とは何かを説明した上で、適切な条項の定め方を解説していきます。

具体的には、以下の流れで解説していきます。

この記事を読めば、代物弁済契約書の書き方がよくわかるはずです。

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1章 代物弁済契約書のひな形【無償・word形式】

代物弁済契約書のテンプレート

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2章 代物弁済契約書とは?停止条件付/代物弁済予約

代物弁済契約書とは、本来の給付に代えて、他の給付によって債務を消滅させる旨の合意を書面にしたものです。

主に、金銭消費貸借等の金銭債務を負う場面で利用されやすい契約です。

他にも、代物弁済契約は「停止条件」や「予約」といった内容で締結することもできます。

停止条件や予約とすることで、給付物が担保としての意味を持つため、債権回収への期待を高められるのです

これらの具体的な内容は、以下のようになります。

代物弁済契約の具体的な内容

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3章 代物弁済契約書に必要な条項4つ|各レビューポイント

代物弁済契約書を有効に機能させるためには、条項を適切に定める必要があります

代物弁済契約書に必要な条項は状況により異なりますが、例えば以下の4つがあります。

条項1:債務の確認
条項2:代物弁済の合意
条項3:登記手続
条項4:清算

それでは、各条項について順番に解説していきます。

3-1 条項1:債務の確認

代物弁済契約書に必要な条項1つ目は、債務の確認です

第1条(債務の確認)
 甲及び乙は、乙が、甲に対し、令和●年●月●日付の●●契約に基づき、金●●円の債務(以下、「本件債務」とする。)を負担していることを相互に確認する。

代物弁済契約が成立するには、元となる債務が必要になります

そのため、代物弁済の前提として、債務が存在していることを確認することになります。

具体的には、以下の事項から債務を特定し確認することになります。

・契約当事者
・契約締結日
・目的物
・契約の種類(売買契約等)
・債務内容

3-2 条項2:代物弁済の合意

代物弁済契約書に必要な条項2つ目は、代物弁済の合意です

第2条(代物弁済の合意)
 甲及び乙は、本件債務全額の給付に代えて、乙が甲に対し、乙所有の不動産(以下、「本件不動産」という。)の所有権を移転し、その登記手続を完了することにより、本件債務の代物弁済とすることを合意する。
【修正例‐停止条件付代物弁済契約の場合】
1 乙は、本件債務について不履行があったときは、甲に対し、乙所有の不動産(以下、「本件不動産」という。)の所有権を移転し、その登記手続を完了することにより、本件債務の代物弁済とすることを合意する。
2 甲は、乙が本件債務の履行を怠ったときは、乙に対し、次の事項を通知するものとする。
(1)本件不動産の見積額、債権額
(2)乙が負担すべき費用
(3)甲が乙に代わり負担した費用
(4)甲が支払う清算金の見積額
【修正例‐代物弁済予約の場合】
1 甲及び乙は、本件債務全額の給付に代えて、乙が甲に対し、乙所有の不動産(以下、「本件不動産」という。)の所有権を移転し、その登記手続を完了することにより、本件債務の代物弁済とすることを予約する。
2 甲は、本契約に基づき予約完結権を行使することができる。この場合、甲は、乙に対し、次の事項を通知するものとする。
(1)本件不動産の見積額、債権額
(2)乙が負担すべき費用
(3)甲が乙に代わり負担した費用
(4)甲が支払う清算金の見積額

代物弁済契約は、次の事項を合意することが必要になります。

・本来の給付に代えて他の給付をすること
・他の給付により債務を消滅させること

これに加え、停止条件であれば「条件」について、予約であれば「予約」についての合意が必要となります

また、停止条件や予約の場合に、他の給付の内容が、土地や建物の所有権の移転であれば仮登記担保法が適用されます。

仮登記担保法2条は、必要な事項を通知してから2ヶ月が経過しなければ、土地建物の所有権移転の効力は生じないとしているため、これらを記載しておくといいでしょう。

通知に必要な事項としては、以下の事項が挙げられています。

・本件不動産の見積額、債権額
・乙が負担すべき費用
・甲が乙に代わり負担した費用
・甲が支払う清算金の見積額

3-3 条項3:登記手続

代物弁済契約書に必要な条項3つ目は、登記手続です

第3条(登記手続)
乙は、本契約締結後直ちに、本件不動産の所有権移転登記手続を行うものとする。なお、登記手続の費用は乙が負担するものとする。
【修正例‐停止条件付、予約の場合】
1 乙は、本契約に基づき、本件不動産の所有権移転請求権保全の仮登記手続の申請を行うものとする。なお、仮登記手続の費用は、乙の負担とする。
2 乙は、第2条の通知が到達してから2ヶ月経過後、直ちに本件不動産を甲に引渡所有権移転登記手続を行うものとする。
※第2条の通知=仮登記担保法2条所定の通知

不動産の登記は、原則として当事者双方が共同で申請する必要があります

そのため、登記義務者(債務者側)の不協力に備え、登記手続に関する規定を定めることが一般的とされています。

停止条件や予約の場合、まだ代物弁済の効力は生じていないため、仮登記をすることになります

仮登記についても同様に共同で申請する必要があるため、登記義務者が仮登記手続に協力する旨を定めることが多いです。

また、仮登記の場合には、条件成就または予約完結権が行使され、その通知が到達してから2ヶ月後に効力が生じるため、この時点で所有権移転登記手続(いわゆる本登記)をすることになります。

3-4 条項4:清算

代物弁済契約書に必要な条項4つ目は、清算です

第4条(清算)
1 乙は、本件不動産の価格が明らかでないときは、自らの負担において、本件不動産の価格を調査するために、鑑定等を行うものとする。
2 甲は、乙に対し、本件不動産の価格が甲の債権額を超えるときは、超過額を清算金として支払うものとする。
3 乙は、甲に対し、本件不動産の価格が甲の債権額に不足するときは、不足額を清算金として支払うものとする。

譲渡される不動産の金額が、債権額を上回る場合、超過した分については不当利得として返還請求の対象になることがあります

また、仮登記についても、土地等の金額が債権額を超えるときは、債権者は清算金を支払う必要があるとしています(仮登記担保法3条)。

そのため、後の争いを防ぐためにも、超過分の支払義務については予め明らかにしておくことが望ましいでしょう

他方、代物弁済では他の給付がされたら、一部についての代物弁済であることが表示された場合を除き、債権全額が消滅することになります。

そのため、債権を十分に回収したい場合には、不足分の支払義務を定めることがあります

また、こうした過不足を生じさせないためにも、不動産の価格が明らかになるよう鑑定等を求めることがあります。


4章 代物弁済契約書作成の注意点2つ

代物弁済契約書作成の際には、十分に債権を回収するためにも、注意していただきたい点があります

代物弁済契約書作成の注意点は、以下の2つです。

注意点1:状況に適した内容にすること
注意点2:債務の消滅時期を明確にする

それでは、各注意点について順番に解説していきます。

4-1 注意点1:状況に適した内容にすること

代物弁済契約書作成の注意点1つ目は、状況に適した内容にすることです

債務者は、代物弁済契約を締結した後でも、第三者に同一の物を譲渡できるとされています。

つまり、債権の回収可能性を高めるためには、第三者への譲渡を防ぐことが重要となるのです

例えば、債務の履行期が到来している場合には、代物弁済契約を締結して直ちに移転登記手続等の対抗要件を備えることになります。

他方で、履行期が到来していなければ、停止条件や予約によって仮登記等の対抗要件を具備し、第三者への譲渡を防ぐことになるでしょう。

4-2 注意点2:債務の消滅時期を明確にする

代物弁済契約書作成の注意点2つ目は、債務の消滅時期を明確にすることです

代物弁済では、単に所有権を移転する場合と、債務を消滅させる場合とで必要な手続が異なります。

具体的には、以下のように異なります。

代物弁済の消滅時期

このように、債務を消滅させるためには、所有権移転登記まで行う必要があるため注意が必要です

もっとも、債務の消滅時期は、当事者の特約で自由に定めることができるとされています。

そのため、契約の効力を明らかにするため、債務の消滅時期をいつにするのか契約書に明記しておくといいでしょう

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5章 代物弁済契約書に必要な印紙税

代物弁済契約書に必要な印紙税は、付される対象によって異なります

例えば、代物弁済として不動産を譲渡する場合には、「不動産…の譲渡に関する文書」として1号文書に該当します(国税庁‐印紙税額の一覧表)。

そのため、印紙税が必要になるかは、給付対象が何かを確認することが重要です。


6章 契約書の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ

契約書の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください

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7章 まとめ

以上のとおり、今回は、代物弁済契約とは何かを説明した上で、適切な条項の定め方を解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・代物弁済契約書とは、本来の給付に代えて、他の物の給付によって債務を消滅させる旨の合意を書面にしたものです。

・代物弁済契約書に必要な条項は以下の4つです。
条項1:債務の確認
条項2:代物弁済の合意
条項3:登記手続
条項4:清算

・代物弁済契約書作成の注意点は以下の2つです。
注意点1:状況に適した内容にすること
注意点2:債務の消滅時期を明確にする

・代物弁済契約書に必要な印紙税は、給付される対象によって異なります。
この記事が、代物弁済契約書について知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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