働きやすい職場を作るためにパワハラ対策を行いたいものの何から手を付けていいのか分からないと悩んでいませんか?
研修や相談窓口の実施等行うべきことは多岐にわたりますので、混乱してしまいますよね。
結論としては、パワハラ対策として行うべきことは以下の7つです。
対策2:ルールを決める|ハラスメント防止規程の制定等
対策3:実態を把握する|アンケートの実施等
対策4:教育する|研修の実施等
対策5:周知する|相談窓口や取り組みを伝える
対策6:相談や解決の場を提供する|相談窓口等の設置
対策7:再発防止のため取り組む|再発防止研修の実施等
例えば、一から対策を構築していくような場合には、以下のようなスケジュールにより6か月程度かけて導入していくことが考えられます。
(出典:厚生労働省:パワーハラスメント対策導入マニュアル[第4版])
現在、パワハラに対する社会的な関心は高まっており、トラブルも増加傾向にあります。損害賠償や休職・退職などの問題に発展してしまうケースも珍しくありません。
令和2年6月1日には、改正された労働施策総合推進法が施行されました。この法律により、事業主は、パワハラにより就業環境が害されることのないように、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられています。
このような状況を受けて、多くの企業がパワハラ対策の導入を始めており、着実に成果が出てきています。
この記事をとおして、企業の経営者や人事担当者の方にパワハラ対策の方法や手順を知っていただければ幸いです。
今回は、企業にパワハラ対策7つを説明したうえで、導入スケジュール等を解説していきます。
具体的には以下の流れで説明します。
この記事を読めば、パワハラ対策の義務化にどのように対応していけばいいのかがわかるはずです。
目次
1章 働きやすい職場を作る企業のパワハラ対策7つ|文例・書式付き
企業がパワハラ対策として行うべきことは以下の7つです。
対策2:ルールを決める|ハラスメント防止規程の制定等
対策3:実態を把握する|アンケートの実施等
対策4:教育する|研修の実施等
対策5:周知する|相談窓口や取り組みを伝える
対策6:相談や解決の場を提供する|相談窓口等の設置
対策7:再発防止のため取り組む|再発防止研修の実施等
各対策について順番に説明していきます。
1-1 対策1:トップのメッセージを出す
企業がパワハラ対策として行うことの1つ目は、トップのメッセージを出すことです。
トップのメッセージを出すことにより、パワハラを受けた社員や周囲の社員が問題点の指摘や解消に関して発言しやすくなります。
トップのメッセージには次の要素を持たせることがよいとされています。
☑パワーハラスメント行為は許さない
☑パワーハラスメント行為は見過ごさない
☑パワーハラスメント行為をしない
☑パワーハラスメント行為をさせない/放置しない
☑会社として、パワーハラスメント対策に取り組む
☑トップ自らパワーハラスメント対策に取り組む
☑今年度、重点的にパワーハラスメント対策に取り組む
☑従業員の意識向上を求める
☑パワーハラスメントがあったら相談を
☑相談者等に不利益な取扱いをしない
☑相談者等のプライバシーは守る
☑人権等の尊重
例えば、トップのメッセージの一例としては以下のようなものが挙げられています。
1-2 対策2:ルールを決める|ハラスメント防止規程の制定等
企業がパワハラ対策として行うことの2つ目は、ルールを決めることです。
どのような行為を行うと懲戒処分の対象になるかを社員に認識してもらうことができ、パワハラが発生した後の対処も行いやすくなります。
例えば、「ハラスメント防止規程」として以下のような定めを行うことがあります。
パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、第○条(服務規律)及び第△条(懲戒)のほか、詳細は「職場におけるハラスメントの防止に関する規定」により別に定める。
1-3 対策3:実態を把握する|アンケートの実施等
企業がパワハラ対策として行うことの3つ目は、実態を把握することです。
実態を把握することによりパワハラ対策を効果的に進めることができます。
具体的には、アンケート調査によりパワハラの有無や社員の意識の調査を行います。
アンケート調査には、社員がパワハラについて職場で話題にしたり、働きやすい職場環境づくりについて考えたりする貴重な機会にもなります。
例えば、以下のようなアンケートを行うことが考えられます。
1-4 対策4:教育する|研修の実施等
企業がパワハラ対策として行うことの4つ目は、教育することです。
パワハラに関する研修等を行うことで、社員のパワハラに関する理解を高めることができます。
研修は、対象者全員に受講させ、定期的に繰り返し実施すると、より効果的です。
研修を行う際には、「管理監督者向け」と「一般従業員向け」に分けて行うといいでしょう。
ただし、企業規模が小さい場合には、区分けせずに研修を行ってもいいでしょう。
弁護士などの専門家に講師を依頼することも有用です。
1-5 対策5:周知する|相談窓口や取り組みを伝える
企業がパワハラ対策として行うことの5つ目は、周知することです。
相談窓口や取り組みを周知することで、より活用しやすくなり、各取り組みの効果が増大します。
例えば、以下のような方法で周知しましょう。
1―5-1 ポスター
周知方法の1つ目はポスターです。
同じポスターを貼り続けるのではなく、年に1回程度作り変えると効果が高まるとされています。
1-5-2 携帯用カード
周知方法の2つ目は携帯用カードです。
名刺大の携帯用カードに相談窓口の連絡先等を記載しておくことで、いざというときに相談しやすい環境を整えます。
1-5-3 説明会
周知方法の3つ目は説明会です。
周知は、より積極的、能動的に行うことが望ましいとされており、人事部門や組織長による説明会を設けることも効果的です。
1-6 対策6:相談や解決の場を提供する|相談窓口等の設置
企業がパワハラ対策として行うことの6つ目は、相談や解決の場を提供することです。
社員がパワハラに直面した場合に、早期に把握・解決することができるように、相談窓口を設置しましょう。
社内でハラスメント対応者を選任して内部相談窓口を設置したり、弁護士などの専門家に依頼して外部相談窓口を設置したりすることが考えられます。
とくに、相談窓口を設置する際には、相談者の秘密が守られること、不利益な取り扱いをしないこと、どのような対応するかを明確にしておくことが大切です。
1-7 対策7:再発防止のため取り組む|再発防止研修の実施等
企業がパワハラ対策として行うことの7つ目は、再発防止のため取り組むことです。
パワハラ問題が解決した後は、同様の問題がある生じることを防ぐために、取り組み内容の検証、見直しを行うことになります。
個別のパワハラ問題を解決することができたとしても、パワハラが生じやすい環境を放置すれば、同様の問題が再度生じかねないためです。
例えば、パワハラが生じた原因を分析して、現在行っている研修等の改善を行うことが考えられます。
また、例えば、パワハラの加害者の方に対して、再発防止のための外部のセミナーなどに参加してもらい、レポート提出をさせる方法が考えられます。
厚生労働省が「パワハラ対策導入マニュアル」を出しています。
個々の対策ごとに資料付きで解説されていますので、これを活用することで実践的な対策を行うことが可能です。
2章 企業のパワハラ対策の導入スケジュール例
企業のパワハラ対策の導入スケジュールについては、既に一定程度パワハラ対策を構築しているか否かにより異なってきます。
一例としてですが、以下の2とおりのスケジュールを紹介していきます。
・既にパワハラ対策を充実させていく場合のスケジュール
2-1 一からパワハラ対策を構築していく場合のスケジュール
(出典:厚生労働省:パワーハラスメント対策導入マニュアル[第4版])
一からパワハラ対策を構築していくような場合には、例えば6か月程度かけて実施していくことが考えられます。
まず、最初の1~2か月程度で、トップのメッセージ作成、ハラスメント防止規程の作成、実態把握のためのアンケートを行います。
3~4か月目で管理職向けの研修や社員向けの研修を行い、各社員の理解を深めます。
並行して、相談窓口の体制を整えて、4か月目が終了するあたりで設置を行えることを目指しましょう。
そして、ポスターや携帯用カードを用いつつ、相談窓口の設置や連絡先、会社のパワハラへの考え方などを周知していきます。
これらを一通り終えたら、再度、アンケートを行い社員の意識に変化が生じたかなどを確認するといいでしょう。
また、実際にパワハラ問題が発生していることを認識した場合には、これの解決と再発防止のための取り組みをしていきます。
2-2 既にパワハラ対策を充実させていく場合のスケジュール
(出典:厚生労働省:パワーハラスメント対策導入マニュアル[第4版])
既にパワハラ防止規程や相談窓口を設置しているような場合には、例えば4か月程度かけて対策を充実させていくことが考えられます。
まず、1か月目は実態把握のためのアンケートを行います。
2か月目以降、管理職向けの研修や社員向けの研修を行い、各社員の理解を深めます。
並行して、ポスターや携帯用カードを用いつつ、相談窓口の設置や連絡先、会社のパワハラへの考え方などを周知していきます。
これらを行った後、3か月目頃を目途にトップのメッセージを発信します。
そのうえで、改めて、アンケートを行い社員の意識に変化が生じたかなどを確認するといいでしょう。
3章 企業のパワハラ対策の法律上の義務化
令和2年6月1日以降は、企業のパワハラ対策は、法律上の義務となっています。
労働施策総合推進法が改正され、令和2年6月1日から施行されたためです。
労働施策総合推進法第30条の2(雇用管理上の措置等)
1「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」
ただし、中小企業については、令和4年3月31日までは努力義務とされています。
必要な措置の内容については、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)により告示されています。
同告示では、事業主は次の措置を講じなければならないとされています。
⑵ 相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
⑶ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑷ (1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置
※詳細は告示をご覧ください。
4章 企業がパワハラ対策を行うメリット3つ
パワハラ対策を行うことは社員だけではなく、企業にとってもメリットがあります。
働きやすい職場を作ることは、企業価値を向上させ、リスクを抑えることができるのです。
例えば、企業がパワハラ対策を行うメリットしては、以下の3つが挙げられます。
メリット2:社員が定着しやすくなる
メリット3:損害賠償等のリスクを防止できる
それでは、各メリットについて順番に説明していきます。
4-1 メリット1:社員の業務効率が上がる
企業がパワハラ対策を行うメリットの1つ目は、社員の業務効率が上がることです。
働きやすい職場を作ることにより、コミュニケーションが活性化し、集中力が高まり、生産性が高まります。
これに対して、パワハラが横行するような職場環境だと、報連相が不十分となりミスが生じたり、体調不良により社員が休みがちになったりすることもあります。
4-2 メリット2:社員が定着しやすくなる
企業がパワハラ対策を行うメリットの2つ目は、社員が定着しやすくなることです。
パワハラが生じがちな職場環境では、社員がすぐに退職してしまうという問題があります。
例えば、優秀な社員であっても、人間関係にストレスを感じ、転職を考えてしまうことがあります。
4-3 メリット3:損害賠償等のリスクを防止できる
企業がパワハラ対策を行うメリットの3つ目は、損害賠償等のリスクを防止できることです。
社内でパワハラが生じると被害者から、使用者の責任として、損害賠償を請求されることがあります。
例えば、最も多いのは慰謝料の請求ですが、精神疾患を発症してしまうようなケースでは休業損害や医療費等も含めて多額の請求をされる場合もあります。
5章 社員個人が行うパワハラ対策3つ
企業のパワハラ対策への取り組みが不十分だと社員個人がパワハラへの対策を行わざるを得なくなってしまいます。
社員個人がパワハラの状況を証拠化しようとすると、社員同士が疑心暗鬼になってしまいますし、業務中や業務後に余分な作業が入ることになるため作業能率も低下してしまいます。
例えば、社員個人が行うパワハラ対策としては、以下の3つがあります。
対策2:日記
対策3:メールやチャットの記録化
以下では、これらを順番に説明していきますが、企業としては社員個人がこのような対策を行う必要がない環境を整えることが理想となります。
5-1 対策1:ボイスレコーダーによる録音
社員個人が行うパワハラ対策の1つ目は、ボイスレコーダーによる録音です。
パワハラの被害にあって、その事実を相談してもヒアリングだけで、パワハラの事実があったと認定できることは多くありません。
例えば、上司との面談などで暴言を吐かれることが常態化しているような場合には、ボイスレコーダーなどにより録音することも考えられます。
客観的な証拠があれば、パワハラの被害を認定してもらいやすくなり、相談した際に具体的な対処をしてもらいやすくなるためです。
5-2 対策2:日記
社員個人が行うパワハラ対策の2つ目は、日記です。
日々の被害を日記などに書き留めておくことにより証拠化します。
いつ、どこで、誰から、どのようなことをされたのか、具体的に記載することが大切です。
どのような被害にあったのは時間の経過とともに記憶が薄れていってしまいますので、記憶の鮮明なうちに記録しておくことで迫真性に富んだ内容となります。
5-3 対策3:メールやチャットの記録化
社員個人が行うパワハラ対策の3つ目は、メールやチャットの記録化です。
上司からメールやチャットなどによりパワハラをされることもあり、このような場合には証拠化を行いやすいです。
メールやチャットを印刷したり、スクリーンショットにしたりすることにより保存しましょう。
なお、上司と個人のLINEなどによりやり取りしている際の暴言などについては、見たくないなどの理由で履歴を消してしまう方がいます。
しかし、一度、削除した履歴を復元することは難しいので、証拠化するまでは消さずにとっておきましょう。
6章 パワハラ発生後の対処法|調査・指導・懲戒処分・配置転換等
パワハラが発生してしまった場合には、被害者の職場環境に配慮するために適切に対処していかなければなりません。
まず、パワハラ被害を相談された場合には、当該パワハラ被害の事実の有無に関して調査を行うことになります。
必要に応じて加害者や第三者にヒアリングを行うことになりますが、被害者に説明して了解をとっておきましょう。
また、社内で奇異の目にさらされないようにヒアリング時には守秘義務について理解を求め、ヒアリングの対象とする人数についても可能な限り絞ります。
事実関係の調査を行ったら認定できた事実関係照らして、パワハラに該当するかどうか、どのような解決策が妥当かを検証します。
例えば、程度に応じて、加害者に対して、指導を行うか懲戒処分を行うか等を検討します。
また、同じ部署で働かせ続けることが不適切であると考えられるような場合には、異動についても検討します。
7章 パワハラ対策はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
パワハラ対策については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
近年、パワハラについて社会的にも大きな関心事項となっており、判例や法令、通達が日々アップデートされています。
パワハラ対策は企業にとって大きな課題1つとなっており、弁護士であれば誰でも良いというわけではなく、高い専門性が求められる分野となっているのです。
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、企業にパワハラ対策7つを説明したうえで、導入スケジュール等を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・企業がパワハラ対策として行うべきことは以下の7つです。
対策1:トップのメッセージを出す
対策2:ルールを決める|ハラスメント防止規程の制定等
対策3:実態を把握する|アンケートの実施等
対策4:教育する|研修の実施等
対策5:周知する|相談窓口や取り組みを伝える
対策6:相談や解決の場を提供する|相談窓口等の設置
対策7:再発防止のため取り組む|再発防止研修の実施等
・一からパワハラ対策を構築していくような場合には、例えば6か月程度かけて以下のスケジュールで実施していくことが考えられます(出典:厚生労働省:パワーハラスメント対策導入マニュアル[第4版])。
・令和2年6月1日以降は、企業のパワハラ対策は、法律上の義務となっています(ただし、中小企業は令和4年3月31日までは努力義務)。
・企業がパワハラ対策を行うメリットしては、以下の3つが挙げられます。
メリット1:社員の業務効率が上がる
メリット2:社員が定着しやすくなる
メリット3:損害賠償等のリスクを防止できる
・社員個人が行うパワハラ対策としては、以下の3つがあります。
対策1:ボイスレコーダーによる録音
対策2:日記
対策3:メールやチャットの記録化
この記事がパワハラ対策をしようとしている経営者の方や人事担当者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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