部下やパート社員からの逆パワハラに困っていませんか?
反抗的な態度や非協力的な態度をとられてしまうと社内の規律が乱れてしまい、業務効率が下がるだけではなく、上司や社長の精神衛生上も悪影響となってしまいます。
逆パワハラとは、部下が上司に対して、業務上必要な範囲を超えて、優越的な関係を背景とした言動を行い、職場環境を害することです。
優越的な地位にあるのは必ずしも上司とは限らず、部下が上司よりも優位な関係にあるような場合には、部下が上司に対してパワハラを行うこともあり得るのです。
例えば、指示をするとため息や反発をしたり、無視をしたり、非難や罵倒を行ったりするようなケースです。
逆パワハラを行う社員には特徴があり、また、このような逆パワハラが起こることには原因があります。
企業は、このような逆パワハラを放置していると、安全配慮義務違反を問われる可能性があり、また、生産性の低下にも繋がります。
もっとも、逆パワハラに対して、いきなり当該社員を解雇する等の過激な対応は悪手であり、手順を踏んで正しく対応していく必要があります。
実は、近年パワハラについての社会的関心が高まるとともに、逆パワハラに関する報道を目にする機会も多くなってきています。
この記事をとおして、パワハラは必ずしも上司から部下に対してだけ行われるものではないということを知っていただき、働きやすい職場づくりに生かしていただければ幸いです。
今回は、モンスター社員(部下)の逆パワハラとは何かを説明しうえで、5つの事例と判例や対処法を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば逆パワハラに対して企業がどのように対応していけばいいのかがよくわかるはずです。
目次
1章 逆パワハラとは|厚生労働省の定義との関係
逆パワハラとは、部下が上司に対して、業務上必要な範囲を超えて、優越的な関係を背景とした言動を行い、職場環境を害することです。
職場におけるパワーハラスメントとは、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをいいます。
そして、優越的な地位にあるのは必ずしも上司とは限らず、部下が上司よりも優位な関係にあるような場合には、部下が上司に対してパワハラを行うこともあり得るのです。
例えば、厚生労働省の指針は、「優越的な地位を背景とした」言動について、以下のものが含まれるとして例を挙げています。
例2:部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
(出典:厚生労働省告示第5号労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
つまり、厚生労働省も、パワハラは、必ずしも上司から部下に対するものではなく、部下から上司に対する言動がパワハラに該当することを認めています。
パワハラの種類については、以下の記事で詳しく解説しています。
2章 逆パワハラとなる事例5つ
逆パワハラとなる事例としては、例えば以下の5つが挙げられます。
事例2:上司を無視する
事例3:上司に対する非難や罵倒等の暴言
事例4:上司に対する暴力
事例5:パワハラで訴える等の威嚇
以下ではこれらの事例について順番に解説していきます。
2-1 事例1:指示をするとため息や反発をする
逆パワハラとなる事例の1つ目は、指示をするとため息や反発をするケースです。
例えば、上司が部下に対して業務の指示をすると部下があからさまに大きなため息をつく場合があります。部下がこのような態度を繰り返すことにより上司の心理的な負担となります。
他にも、上司が部下に対して業務の指示をすると、「それ本当にやる必要ありますか?」、「意味が分からないんですけど?」、「自分でやった方がいいんじゃないですか?」などとの発言がされることがあります。
文脈や言い方によっては業務上必要な発言とされることもありますが、けんか腰であったり、馬鹿にしたような態度であったり、言い方によってはパワハラとなり得ます。
2-2 事例2:上司を無視する
逆パワハラとなる事例の2つ目は、上司を無視するケースです。
例えば、上司が部下に対して業務を指示しても、部下が聞こえないふりをするケースです。
また、部下が気に食わない上司に対して、集団であいさつをしなかったり、話をしないようにしたりするようなケースです。
2-3 事例3:上司に対する非難や罵倒等の暴言
逆パワハラとなる事例の3つ目は、上司に対する非難や罵倒等の暴言です。
例えば、「そんなこともわからないのか」、「無能な上司だ」、「あなたのような頭が悪い上司の下では働きたくない」などと言うようなケースです。
とくに、ITの発達に伴い、若者が高齢の上司がPCやスマートフォン等についての知識がないことを馬鹿にするような発言をする例もあります。
2-4 事例4:上司に対する暴力
逆パワハラとなる事例の4つ目は、上司に対する暴力です。
上司が部下を指導したら、部下から胸倉を掴まれたり、頭突きをされたりするようなケースです。
2-5 事例5:パワハラで訴える等の威嚇
逆パワハラとなる事例の5つ目は、パワハラで訴える等の威嚇です。
業務上必要な範囲で指導を行ったら、ハラスメントに該当する、訴える、上司に言って懲戒してもらうなどと言われるような場合です。
上司が部下に対してパワハラを行ったらいけないのは当然のことですが、間違ったやり方を正したり、ミスを注意したりしただけで、訴えると言われることも増えています。
業務中のやり取りを録音されるなどにより疑心暗鬼になってしまい、業務に集中できなくなってしまったり、コミュニケーションに支障が生じてしまうこともあります。
3 逆パワハラをするモンスター社員の特徴
逆パワハラをするモンスター社員には特徴があります。
逆パワハラの問題が生じやすい社員の特徴を挙げると、以下のとおりです。
特徴2:自信家の勘違い社員
特徴3:柔軟性に乏しい中途社員
それでは各特長について順番に説明していきます。
3-1 特徴1:年上部下やお局社員
逆パワハラをする社員の特徴の1つ目は、年上部下やお局社員です。
自分よりも年上の部下をもつと、パワーバランスが逆転してしまいがちです。
とくに、定年後の嘱託社員など、従前自分よりも上の立場にあった者が部下となるケースもあり、手に余るケースも見られます。
また、お局社員は、ときに社長でもコントロールが難しいことがあり、上司であっても嫌味を言われたり、嫌がらせをされたりなどの問題が生じがちです。
3-2 特徴2:自信家の勘違い若手社員
逆パワハラをする社員の特徴の2つ目は、自信家の勘違い若手社員です。
自信家の若手社員は、上司を馬鹿にしたような態度をとることがあります。
素直に上司の指示を聞けず、「無能上司」と言ったり、「要領が悪い」と言ったり、「そのような業務はやる必要がない」と言ったりしがちです。
このような社員は、自分は正しい・自分の方が有能だと思っている一方で、頭ごなしに批判しているだけであったり、なぜそのような指示がされているのか理解していなかったりするケースがあります。
また、攻撃的な物言いから人間関係も悪くなり、周囲の人間も気を使うことに負担を感じてしまいます。
3-3 特徴3:柔軟性に乏しい中途社員
逆パワハラをする社員の特徴の3つ目は、柔軟性に乏しい中途社員です。
前職で大企業などに勤めていた従業員の方などは、「前の会社とやり方が違う」「前の会社ではこうだった」などと、ルールの違いや考え方の違いを非難することがあります。
効率化できる部分についてはやり方を変えていくことが合理的な場合もありますが、会社ごとのルールもありますので柔軟性がない方だと上司と対立してしまうこともあります。
4章 逆パワハラに関する報道がされた職業
近年パワハラについての社会的関心が高まるとともに、逆パワハラに関する報道を目にする機会も多くなってきています。
逆パワハラに関する報道がされた職業の一例を挙げると4つがあります。
・警察官
・消防士
・公務員
それでは順番に説明していきます。
4-1 海上自衛隊
逆パワハラに関する報道がされた職業の1つ目は、自衛隊です。
海上自衛隊は、令和3年12月15日、神奈川県の厚木航空基地において、パワハラ案件があったと公表しました。
具体的には、厚木基地に所属する50代の女性自衛隊員が「上司5人に暴言」などの逆パワハラを働き懲戒免職になったというものです。
出典:上司への“逆パワハラ”でクビになった元女性自衛隊員の告白 「納得がいきません」 | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)
4-2 警察官
逆パワハラに関する報道がされた職業の2つ目は、警察官です。
兵庫県警は、阪神方面の警察署に勤務する30~40代の男性巡査部長2人が、上司に対して嫌がらせや無視をする逆パワハラを繰り返したとして、を警務部長訓戒などの処分にしていたと報じられました(報道日は令和3年9月27日)。
出典:上司だけ隔離した座席表、アクリル板に目隠し…警察官が逆パワハラ:朝日新聞デジタル (asahi.com)
4-3 消防士
逆パワハラに関する報道がされた職業の3つ目は、消防士です。
愛媛県の八幡浜地区施設事務組合の30代の消防職員が、50代の上司へのパワーハラスメント行為により懲戒処分を受けたと報じられました(報道日は令和5年3月23日)。
パワーハラスメントの概要は以下のとおりと報じられています。
・机を叩きいら立ちを表現をした
・この上司が交替時の申し送りで言葉を詰まらせた際に「舌打ち」をした
出典:30代消防職員が50代上司に“逆パワハラ” 舌打ち、机たたく… 戒告の懲戒処分に | 愛媛のニュース – Nスタえひめ|あいテレビは6チャンネル (tbs.co.jp)
4-4 公務員
逆パワハラに関する報道がされた職業の4つ目は、公務員です。
静岡市の50代の男性職員が2014年12月に自殺したのは、部下からのパワーハラスメントなどが原因だとして、職員の遺族が市に約6200万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こすと報道されました(報道日は令和2年1月9日)。
出典:「自殺は部下からの逆パワハラ」 静岡市職員の遺族が損賠提訴へ | 毎日新聞 (mainichi.jp)
5章 逆パワハラの法律・判例
逆パワハラについては、労働施策総合推進法により、事業主は雇用管理上の措置が義務付けられています。
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
そして、逆パワハラについて適切な対応を怠ると安全配慮義務違反を理由とする債務不履行や不法行為として使用者責任を問われるなど損害賠償の問題となります。
1「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」
1「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」
これに対して、安易に逆パワハラを行う社員を解雇すると、解雇権濫用を理由として訴えられることがあります。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
以下では、逆パワハラに関して実際に裁判で争われた判例を紹介していきます。
・東京地判平成27年3月27日[アンシス・ジャパン事件]
・東京地判平成22年11月26日[アクティス事件]
・東京高判平成30年1月25日[社会福祉法人蓬莱の会事件]
5-1 労災不支給の取り消しに関する判例|東京地判平成21年5月20日[小田急レストランシステム事件]
この判例は会社が訴えられたものではなく、労災の不支給を不服として、国が訴えられたものです。
株式会社小田急レストランシステムに雇用されていた社員が、精神障害(うつ病)を発症して自殺したのは、業務に起因するものであるとして、同社員の子である原告らが、渋谷労働基準監督署長に対し、労働者災害補償保険法による遺族補償給付の支給を請求したところ、いずれも支給しない旨の処分を受けたことから、その取消しを求めた事案です。
当該社員の部下が、自分の処遇に不満を感じ、当該社員を含む上司らに関して、売上金の着服や窃盗、女性職員に対するセクハラなどの訴えを行いました。
その結果、当該社員、聴取や始末書作成等に忙殺され、精神的に追い詰められてしまいました。
当該判例は、このような点を考慮し不支給決定を取り消すとの判断をしています。
5-2 安全配慮義務違反に関する判例|東京地判平成27年3月27日[アンシス・ジャパン事件]
この判例は、従業員が逆パワハラの被害を受けたことを会社に申告していたのに、適切な対応を行われなかったため、退職を余儀なくされたとするものです。
コンピュータのソフトウェアに関する業務を目的とする会社の従業員(A)が、当該会社の技術部で、他の従業員(B)との2人体制でインストールサポートに従事していました。
そうしたところ、Aは、Bのインストールサポートでの顧客に対する対応に問題があると感じたため、これを指摘、批判しました。
これに対しては、Bは、Aの当該指摘がパワーハラスメントに当たる行為であると訴えました。
そのため、Aは、技術部部長に対し、Bと共同して業務を遂行することは不可能であると繰り返し訴えましたが、適切な対応がされませんでした。
その結果、Aは、当該会社を退職しました。
これについて、当該判例は、AがBからパワハラで訴えられるなど関係が悪化したことにより精神的損害を被り退職したことにつき、本件労働者の業務負担の状況やBとの関係に関して精神的にも苦痛を感じていること等を認識しながら、他部署への配転やサポート体制の変更等の対応をとらなかったこと等につき過失があるとして、会社の損害賠償責任を認めました。
5-3 解雇の有効性に関する判例|東京地判平成22年11月26日[アクティス事件]
逆パワハラ(感情的な暴言、誹謗中傷等)を理由の一つとして解雇したところ、当該従業員が解雇の正当性を争った事案です。
当該判例は、会社からの派遣命令につき、当該従業員が「MKに派遣するのは厄介払いですか。」、「昨年のセクハラ騒動への嫌がらせか?と勘ぐってしまってもおかしくない状態だと思います。」などとクレームを付けたうえで拒絶する構えを示したこと等を理由に解雇を有効としています。
5-4 解雇の有効性に関する判例|東京高判平成30年1月25日[社会福祉法人蓬莱の会事件]
当該判例は、社会福祉法人の男性社員の女性上司に対する逆パワハラ等を理由に解雇したところ、その有効性を争われたものです。
具体的には、当該男性社員は、女性上司に対して、会議での書記をやるように指示したり、度々「やってられるか。」などと他の職員の面前で大声を張り上げ、恫喝・威嚇したりしていたこと等が解雇理由とされています。
第1審は、解雇を有効と判断しています。他の若い職員には、当該男性社員に同調する者が出るなど、職場環境が異常な事態になっていたことなどが認定されています。
控訴審は、解雇を無効と判断しました。男性社員の態度が重大な服務規律違反であるものの、これは年下の女性主任への反発等に起因するものであるため解雇前に配置転換して他の上司の下で就業する機会を与えるべきであったなどとしています。
6章 逆パワハラの原因
逆パワハラが生じるには原因があります。
逆パワハラへの対処や対策を考えるにあたっては、逆パワハラの原因を知ることが先決です。
例えば、逆パワハラの原因としては以下の3つが挙げられます。
原因2:会社風土・カルチャー・雰囲気
原因3:従業員の人間性
それでは各原因について順番に説明していきます。
6-1 原因1:部下が上司に不満を抱えている
逆パワハラの原因の1つ目は、部下が不満を抱えていることです。
上司への不満が態度や言葉に出てしまうことによりハラスメントになるのです。
例えば、上司と方針があわない、上司が高圧的である、上司が話を聞いてくれないなど、部下側にも言い分がある場合があります。
6-2 原因2:会社風土・カルチャー・雰囲気
逆パワハラの原因の2つ目は、会社風土・カルチャー・雰囲気です。
部下から上司へのパワハラについては十分に認識されていない部分もあり、パワハラは上司が部下に対して行うものという固定観念に囚われている職場もあります。
上司があたかも敵であるかのような雰囲気の職場もあり、このような職場でも上司に反抗すると、「よく言ってくれた」などと同調する方々が現れることもあります。
このような風土の会社では、逆パワハラが生じやすくなります。
6-3 原因3:従業員の人間性
逆パワハラの原因の3つ目は、従業員の人間性です。
その従業員の元来の性質として、攻撃的であったり、自分絶対に正しいと信じていたり、柔軟な考え方が出来なかったりといった場合です。
成人になると人間性を変えようとすることは容易ではありませんので、業務指導などをしても功を奏しないこともあります。
採用の段階で当該従業員のパーソナリティを見極められないと、入社後に逆パワハラの問題が生じることになります。
7章 逆パワハラへの対処法
逆パワハラが生じた場合には適切に対処していくことが必要となります。
逆パワハラを放置していると、安全配慮義務違反を問われる可能性があり、また、生産性の低下にも繋がります。
具体的には、逆パワハラへの対処法は以下のとおりであり、上から順番に実行していくといいでしょう。
対処法2:業務改善指導(口頭→書面)
対処法3:懲戒処分や配置転換の検討
対処法4:退職勧奨
対処法5:解雇(クビ)
それでは各対処法について順番に説明していきます。
7-1 対処法1:事実関係の調査
逆パワハラへの対処法の1つ目は、事実関係の調査です。
社員から逆パワハラの申告や相談があった場合には、まずはその申告が真実であるのか等を確認する必要があります。
事実関係を確認しなければ対処方針を決めることもできないためです。
具体的には、ヒアリングや客観的な証拠の収集などを行い、時系列ごとに具体的な事実関係を整理していきます。
7-2 対処法2:業務改善指導(口頭→書面)
逆パワハラへの対処法の2つ目は、業務改善指導です。
調査の結果、逆パワハラが認定された場合には、当該加害社員に対して、業務改善指導を行います。
まずは反発を招いたり、禍根を残したりしないように、口頭で注意し改善を促すのがいいでしょう。
もしも、上記口頭注意でも改善が見られないような場合には、書面により改善指導を行います。
当該改善指導を行う際には、指導の原因となる具体的な事実を指摘したうえで、何をどのように改善するべきなのかを記載しましょう。
7-3 対処法3:懲戒処分や配置転換の検討
逆パワハラへの対処法の3つ目は、懲戒処分や配置転換の検討です。
業務改善指導を行っても改善が見られない場合には、懲戒処分や配置転換を検討しましょう。
懲戒処分については、戒告や譴責、減給、降格などが考えられます。軽いものから行っていき、それでも改善が見られない場合には重い処分を行いましょう。
また、配置転換により問題を解消することも考えられます。加害社員が特定の上司に対してのみ逆パワハラを行っているようなケースでは、配置転換により当該上司と離れることにより問題が解決することがあります。
7-4 対処法4:退職勧奨
逆パワハラへの対処法の4つ目は、退職勧奨です。
上記のような手段を尽くしても問題を解決できない場合には、加害社員に退職してもらうことを検討することになります。
具体的には、逆パワハラの調査結果や業務改善指導、懲戒処分、配置転換などを尽くしても、問題が解消されなかったため雇用を継続することが難しい旨を伝えたうえで、任意で退職してほしい旨を伝えます。
加害社員の名誉を害さぬよう面談室などの他の従業員の目につかないような場所で行い、退職の強要にならないように気を付けましょう。
7-5 対処法5:解雇(クビ)
逆パワハラへの対処法の5つ目は、解雇(クビ)です。
上記の手段を尽くして、退職勧奨にも応じてもらえない場合には、やむを得ないため、解雇(クビ)を行うことを検討します。
普通解雇と懲戒解雇のいずれかが考えられます。
規律の維持の観点から重罰をもって臨むという意味において懲戒解雇も考えられますが、普通解雇よりも有効性のハードルが高いので注意が必要です。
逆パワハラを理由とするクビ(解雇)は、最終手段となります。
逆パワハラの事実自体が認定されて、それが服務規律違反として非難されるものであったとしても、他の手段を経ることなく解雇を行うと争われて無効となるリスクが高いです。
仮に、解雇をして争われ無効となってしまった場合には、高額のバックペイを支払うことになるリスクに加えて、当該社員が従業員として戻ってきて逆パワハラが再発するリスクがあります。
そのため、解雇を行う際には、業務改善指導、懲戒処分や配置転換、退職勧奨等の段階を踏んで行うことが大切なのです。
8章 逆パワハラが生じない対策
逆パワハラの問題に対処したら、今後同様の問題が生じないように対策しましょう。
逆パワハラが生じないようにする対策としては、例えば以下の方法が考えられます。
対策2:相談窓口の設置
対策3:規則類の整備
それではこれらの対策について順番に説明していきます。
8-1 対策1:逆パワハラ禁止の宣言
逆パワハラが生じないようにする対策の1つ目は、逆パワハラの禁止を宣言することです。
企業のトップが逆パワハラを許さないことを明言することにより、社員の意識も高まることになります。
上司から部下へのパワハラだけではなく、部下から上司へのパワハラも許されないことも明確にしましょう。
8-2 対策2:相談窓口の設置
逆パワハラが生じないようにする対策の2つ目は、相談窓口の設置です。
ハラスメント窓口を設置し、逆パワハラについての相談もできることを明示しておきましょう。
単に設置するだけではなく、相談窓口の連絡先や担当者をカードなどに記入しておくことで、相談の実効性が高まります。
8-3 対策3:規則類の整備
逆パワハラが生じないようにする対策の3つ目は、規則類の整備です。
ハラスメント防止規程を整備し、禁止されるハラスメントの態様を明記し、当該態様ごとの懲戒処分を規定しておきます。
逆パワハラの態様も規定しておくことで、逆パワハラをすると懲戒されることが明確になり、規律の維持に繋がります。
パワハラ対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
9章 逆パワハラへの仕返しは要注意
逆パワハラの被害者や会社担当者の中には、加害者に対して仕返しをしたいと思っている方もいるでしょう。
実際、相談をお受けする中では、直接的ではないにしても、同趣旨のお話をされることがあります。
しかし、逆パワハラへの仕返しという発想には注意が必要です。
企業が行うべきは、逆パワハラを解消するために必要な措置を講じることであり、これを超えて、仕返しを行うということになれば、それは新たにパワハラの問題を生じかねません。
企業の経営者、担当者として冷静な対処を行いましょう。
10章 パワハラ対策はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
パワハラ対策については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
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11章 まとめ
以上のとおり、今回は、モンスター社員(部下)の逆パワハラとは何かを説明しうえで、5つの事例と判例や対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・逆パワハラとは、部下が上司に対して、業務上必要な範囲を超えて、優越的な関係を背景とした言動を行い、職場環境を害することです。
・逆パワハラとなる事例としては、例えば以下の5つが挙げられます。
事例1:指示をするとため息や反発をする
事例2:上司を無視する
事例3:上司に対する非難や罵倒等の暴言
事例4:上司に対する暴力
事例5:パワハラで訴える等の威嚇
・逆パワハラの問題が生じやすい社員の特徴を挙げると以下のとおりです。
特徴1:年上部下やお局社員
特徴2:自信家の勘違い社員
特徴3:柔軟性に乏しい中途社員
・逆パワハラの原因としては以下の3つが挙げられます。
原因1:部下が上司に不満を抱えている
原因2:会社風土・カルチャー・雰囲気
原因3:従業員の人間性
・逆パワハラへの対処法は以下のとおりであり、上から順番に実行していくといいでしょう。
対処法1:事実関係の調査
対処法2:業務改善指導(口頭→書面)
対処法3:懲戒処分や配置転換の検討
対処法4:退職勧奨
対処法5:解雇(クビ)
・逆パワハラが生じないようにする対策としては、例えば以下の方法が考えられます。
対策1:逆パワハラ禁止の宣言
対策2:相談窓口の設置
対策3:規則類の整備
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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