「離婚の時に条件を取り決めたけど、相手が守ってくれるか心配」
「離婚協議書はどうやって作ったらいいの?」
「離婚協議書はどういう内容を書くものなの?」
離婚協議書の作成について悩んでいませんか?
離婚協議書を作ろうと考えても、具体的な形式や内容についてイメージしにくいものです。
さらに、親権・養育費について取り決める必要のあるケースや慰謝料について取り決める必要のあるケース、財産分与について取り決める必要のあるケース等、離婚にも様々なケースがあります。
そのため、それぞれのケースにあった適切な内容にする必要があります。
夫婦の話し合いで離婚をした場合、相手が離婚後に話し合いで取り決めた事項を守らず、トラブルになってしまうことも少なくありません。
特に、養育費や慰謝料のような金銭が関わる取り決めがある場合には、適切な対応をしなければ支払いが得られなくなってしまう可能性があります。
そのため、この記事をとおして少しでも多くの方に離婚協議書の作成方法や、取り決めを守ってもらうために必要な対応等を知っていただければと思います。
今回は、離婚協議書の形式やケース別の内容等を説明したうえで、取り決めを守ってもらうために必要な対応についても解説していきます。
また、すぐに使える離婚協議書のサンプルも紹介します。
具体的には以下の流れで説明していきます。
目次
1 離婚協議書とは|なぜ作るのか
離婚協議書とは、夫婦が離婚時に取り決めた条件を記載した書面のことをいいます。
具体的には、夫婦のどちらを子どもの親権者にするのか・月々に支払う養育費の金額・面会交流・慰謝料の金額・財産分与・年金分割等の取り決めを記載した書面のことをいいます。
離婚協議書を作ることで、夫婦がどのような離婚条件を取り決めたのかということが書面で残るため、離婚後のトラブルを防ぐことができる場合があります。
図で示すと下記の通りです。
離婚協議書と離婚届の違いは、離婚協議書はあくまで夫婦間の取り決めを記載したものにすぎないため、作成したことで法的に離婚が成立するわけではありません。
そのため、離婚に合意するという内容の離婚協議書を作成した場合であっても、別途離婚届を提出するがあります。
2 離婚協議書の書き方・内容【テンプレート(雛型)・サンプル付き】
ここでは離婚協議書に記載する内容について説明します。
なお、離婚協議書のテンプレートはこちらからダウンロードできます。
※適切な離婚協議書については事案により異なりますので、適宜ご修正下さい。ひな形の利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねますので、自己責任でお願いいたします。
※記載している内容は一般的に取り決められることが多い内容です。必要に応じて条項を追加・削除してご利用ください。
※養育費・財産分与・慰謝料等の金銭の支払いについて合意した場合には、離婚公正証書を作成してください。
記載する内容は、主に下記のものが挙げられます。
1 離婚協議書のタイトル
2 離婚に合意した旨・離婚届けの提出者
3 子どもがいる場合に必要になる内容
4 慰謝料の支払
5 財産分与
6 年金分割
7 清算条項
8 その他の内容
9 離婚協議書の作成日
10 離婚する者の名前
2-1 離婚協議書のタイトル
離婚協議書を作成する際には、タイトルとして「離婚協議書」と記載して、どのような目的で作成した書面なのかを明確にするようにしましょう。
2-2 離婚に合意した旨・離婚届の提出者
離婚協議書を作成する際には、まずは夫婦が離婚に合意したことを記載しましょう。また、夫婦のどちらかが離婚届を提出することを取り決めた場合には、そのことも記載しましょう。
内容としては以下のようなものになります。
「〇及び●は、令和□年□月□日、協議離婚すること及び〇が離婚届を提出することに合意した。」
一般的には、離婚協議書では、婚姻により改姓した側が離婚届を提出する旨を合意することが多い傾向にあります。
例えば、婚姻により妻が夫の姓となった場合には、離婚する際には、妻が離婚届を提出する合意をします。
なぜなら、離婚届を提出する際に併せて、改姓後の姓に関する手続きも行うことが一般的であるためです。
2-3 子どもがいる場合に必要になる内容について
子どもがいる場合には、少なくとも親権者を取り決める必要があります。
また、親権者を取り決めた場合には、養育費の支払いも合わせて取り決めることが望ましいです。
2-3-1 親権者について
子どもがいる場合に必須になる内容は、子どもの親権者を定める内容です。
離婚届にも親権者を記載する欄が存在するため、子どもの親権者は離婚時に必ず取り決める必要があります。
内容としては以下のようなものになります。
「〇●間の(長男・長女)△(令和□年□月□日生)の親権者を(母・父)である〇と定め、〇において(長男・長女)を監護養育する。」
2-3-2 養育費について
養育費とは、子どもを養育していない親が子どもを養育している親に対して支払う子どもの監護や教育のために必要な費用をいいます。
養育費は、夫婦の収入を元に、裁判所が作成した養育費算定表を使用して算定した金額を、子が20歳になる月まで支払うことが一般的です。
内容としては以下のようなものになります。
【子が1人の場合】
「●は、〇に対し、前項記載の子の養育費として、月額×万円を、令和□年□月□日から同人が満20歳に達する日が属する月までの間、毎月×日限り、〇名義の×銀行×支店の普通預金口座(口座番号×)に振り込む方法により支払う。振込手数料は●の負担とする。」
【子が2人の場合】
「●は、〇に対し、前項記載の子の養育費として、1人あたり月額×万円を、令和□年□月□日から同人が満20歳に達する日が属する月までの間、毎月×日限り、〇名義の×銀行×支店の普通預金口座(口座番号×)に振り込む方法により支払う。振込手数料は●の負担とする。」
なお、子どもが大学に進学した場合に、支払い時期の終期を大学卒業まで延長することを合意した場合には以下のようなものになります。
「前項記載の子が大学またはこれに準ずる高等教育機関(以下「大学等」)に進学した場合には、前項の養育費の支払いの終期を子が大学等を卒業する日の属する月とする。」
さらに、子どもの入学・進学・事故・病気で大きな出費が発生した場合に、その負担について双方で相談することを合意した場合には以下のようなものになります。
「●と〇は、前項記載の子の入学・進学・事故・病気等の特別な出費を要する場合には、その負担につき互いに協議して定める。」
2-3-3 面会交流について
面会交流とは、子どもと離れて暮らしている親が、子どもと定期的・継続的に、直接会う形で交流をしたり、電話や手紙などの間接的な形で交流したりすることをいいます。
双方で面会交流の実施について合意した場合には、その旨を記載します。
具体的には、実施頻度を定めた上で日時・場所等を双方で話し合う内容や、実施頻度・日時・場所等を厳格に定める内容、子どもを監護・養育している親が、子どもを監護・養育していない親と子どもが連絡することや会うことを妨げないと定める内容等があり、子どもの年齢・発達等を踏まえて取り決めることが多いです。
内容としては以下のようになります。
「〇は、●が前項記載の子と月に×回、面会交流を実施することを認め、その日時・場所・方法等については、子どもの福祉に配慮して、〇と●が協議して定める。」
2-4 慰謝料の支払いついて
双方で不貞慰謝料等の慰謝料の支払いを合意した場合には、誰から誰に対して慰謝料を支払うのか・支払う慰謝料の金額・支払い時期・支払いの方法等を記載します。
内容としては以下のようになります。
「●は、〇に対し、慰謝料として金×万円の支払義務があることを認め、これを令和□年□月から令和□年□月まで、毎月×日限り金×万円ずつ、〇名義の×銀行×支店の普通預金口座(口座番号×)へ振り込む方法により支払う。振込み手数料は●の負担とする。」
分割払いにした場合には、相手が支払いをしなかった場合の取り決めもする場合が多いです。内容としては以下のようになります。
「●が前項の分割金の支払いを×回分以上怠たり、かつ、その額が×万円に達した時は、当然に期限の利益を喪失し、前項の金員から既払分を除いた残金及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払い済みまで年×分の割合による遅延損害金を付加して即時に支払う。」
2-5 財産分与について
双方で財産分与に関する合意をした場合には、誰から誰に対してどの程度の金額を支払うのか・支払い金額・支払い時期等を記載します。
なお、財産分与は、金銭を支払う形で行い、個別の家財に関する取り決めまではしないことが一般的です。ただし、双方で合意をした場合には記載することも可能です。
2-5-1 現金・預金
現金・預金を財産分与することに合意した場合、内容としては以下のようになります。
「●は、〇に対し、本件離婚に伴う財産分与として金×万円の支払義務があることを認め、これを、令和□年□月□日限り、〇名義の×銀行×支店の普通預金口座(口座番号×)に振り込む方法により支払う。振込み手数料は●の負担とする。」
2-5-2 持ち家
持ち家が存在する場合、持ち家の名義を夫婦のどちらにするのかということを合意する必要があります。
さらに、夫婦が名義の移転手続きに協力することも合意する必要があります。
内容としては以下のようなものになります。
なお、この条項を定めた場合には、離婚協議書に不動産に関する内容(不動産登記簿に記載の不動産の表示・土地の表示)を記載します。下記の文例では省略してあります。
「●は、〇に対して、本件離婚に伴う財産分与として、下記不動産(以下「本件不動産」)を分与する。」
「●は、〇に対して、本件不動産について、令和□年□月□日付財産分与を原因とする所有権移転登記手続をする。登記手続費用は●の負担とする。」
離婚時に住宅ローンが残っている場合、住宅ローンの名義人が支払いを継続します。
自宅の持ち分を相手方に分与したにも関わらず住宅ローンの連帯債務人になっている場合には、離婚後に支払いをしなくていいように合意する必要があります。
ただし、この条項はあくまで夫婦が互いに約束をする条項にすぎず、住宅ローンに関する契約をしている金融機関を拘束しません。
金融機関との間の契約内容によっては、住宅ローンの残っている家の所有権移転登記をした場合にローンの一括弁済を求められる可能性もあります。
そのため、金融機関との間の契約内容にも注意しましょう。
内容としては以下のようなものになります。
「本件不動産の購入資金として、××銀行××支店が、令和×年×月×日に貸し付けた金×万円の債務は、●が責任をもって返済する。」
2-6-3 年金分割
年金分割とは、夫婦が離婚する際に年金記録を分割する制度のことです。
分割の対象になるのは、婚姻期間中の厚生年金と共済年金の年金記録のみです。
内容としては以下のようなものになります。
ただし、この条項はあくまで夫婦が互いに約束をする条項にすぎず、この合意をしたことで自動的に年金の金額が変わるわけではありません。
離婚をした日の翌日から起算して2年を経過するまでの間に年金事務所で年金分割の手続きをする必要があります。
「●と〇は、本日、日本年金機構理事長に対し対象期間にかかる被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を0.5とする旨合意した。」
2-6-4 退職金
退職金も財産分与の対象になることが一般的です。
ただし、退職金は金額が大きいため、現実に退職金の支払いを受けるまでは退職金の財産分与が難しい場合が多いです。
そのため、退職金の支払いを受けた後に分与を受ける内容にすることもあります。
内容としては以下のようなものになります。
「●は、〇に対し、離婚に伴う財産分与として、●の将来の退職金請求権のうち、金×万円の支払い義務があることを認める。」
「●は、前項の金員を退職金受給日から×日以内に、〇名義の×銀行×支店の普通預金口座(口座番号×)に振り込む方法により支払う。振込み手数料は●の負担とする。」
2-7 清算条項について
清算条項とは、取り決めをした後のトラブルを防止するために取り決める条項のことです。
具体的には、互いに条項に定めた義務以外の義務を負わないとするものです。
例えば、この条項を取り決めることで、慰謝料を支払った後に、「やっぱり慰謝料が足りなかったので×万円支払ってほしい。」といった請求や、「婚姻中にあった××に関する慰謝料を別に支払ってほしい。」という請求ができなくなります。
ただし、自分からも請求できなくなる点には注意が必要です。
内容としては以下のようなものになります。
「〇及び●は、本件に関し、本条項に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する。」
なお、上記の条項は「本件に関し」という留保が入っているため、離婚に伴う法律関係(財産分与・慰謝料・親権等)を対象にしています。
このような留保をなくす場合には、「本件に関し」という文言を入れない条項にします。ただ、この場合は互いに一切の請求ができなくなるため注意が必要です。
2-8 その他の内容について
金銭の支払いを含む条項にした場合には、相手が支払いを怠った場合に備え、相手の住所・連絡先・勤務先が変わった場合には知らせるよう約束する合意をする場合があります。
内容としては以下のようなものになります。
「●は、〇に対して、●が住所・連絡先・勤務先を変更した場合は、〇に通知をすることを約する。」
2-9 離婚協議書の作成日
離婚協議書をいつ作成したのかということも離婚協議書に記載するようにしましょう。
具体的には、必ず作成した日の年月日を記載するようにしましょう。
離婚協議書は、作成した日付の記載がなければ、互いが合意をしたという事実を証明する力を持たないため注意しましょう。
2-10 離婚する者の名前
離婚協議書には、離婚する者の名前を記載するようにしましょう。
具体的には、双方の署名と押印をするようにしましょう。
離婚協議書は、双方の自署による署名押印がなければ、互いが合意をしたという事実を証明する力を持たないため注意しましょう。
3 離婚協議書を作成する流れ
離婚協議書を作成する際の一般的な流れは、以下の通りです。
具体的な流れを知ることで、離婚協議書の作成がしやすくなります。
3-1 流れ1:大まかな離婚条件を話し合う
離婚協議書を作成する際には、大まかな離婚条件を話し合うようにしましょう。
具体的には、下記の内容が挙げられます。
1 親権者の指定
2 養育費
3 面会交流
4 慰謝料
5 財産分与
6 年金分割
離婚をする時には、子どものいる夫婦の場合には、すでに説明した通り、親権者を取り決めることが必須です。
そのため、少なくとも子どもの親権者をどちらにするのかということを取り決める必要があります。
さらに、財産分与は離婚後に請求することも可能ですが、離婚が成立して2年以内でなければ請求ができないので、財産分与に関する取り決めは離婚に合わせてすることが確実です。
そのため、離婚協議書を作成する際には、まずは大まかな離婚条件を話し合うようにしましょう。
なお、そもそも離婚条件に関して話し合いをすること自体が難しい場合には、離婚調停といった手続きの利用や、弁護士に相談するといった対応も検討しましょう。
3-2 流れ2:離婚協議書の案文を作成する
離婚条件を話し合い、ある程度離婚条件が固まってきたら、離婚協議書の案文を作成してみましょう。
なぜなら、案文を作ることで、具体的な離婚条件が取り決めやすくなるためです。
そのため、話し合いを行ったら、離婚協議書の案文を作成してみましょう。
3-3 流れ3:離婚協議書の案文に加筆・修正を行う
離婚協議書の案文を作成したら、双方で離婚協議書の案文の内容を確認し、不十分な点があれば加筆・修正を行いましょう。
案文を作成したものの、案文に問題がないか不安になる場合もあるかもしれません。
そのような場合には、案文を持参した上で、弁護士に相談してみましょう。
3-4 流れ4:署名押印をする
離婚協議書を作成し、内容に問題がなければ、離婚協議書に署名押印をしましょう。
具体的には、条項の末尾に双方の名前を自著し、自分の印鑑を押すようにしましょう。
なお、署名押印をした後に、離婚協議書の内容を変更することは容易ではありません。
そのため、離婚協議書の内容に誤りがないか、十分に確認した上で署名押印をするようにしましょう。
4 離婚公正証書にするのがおすすめ
養育費や慰謝料といった金銭の支払いを含む内容にする場合には、必ず離婚公正証書にするようにしましょう。
なぜなら、特に金銭の支払いについては、十分に話し合いをした上で取り決めをした場合であっても、離婚後に相手の意思が変わり、取り決めを守らなくなってしまう可能性が存在するためです。
そのため、金銭の支払いを含む内容について合意をした場合には、必ず離婚公正証書にするようにしましょう。
4-1 離婚公正証書とは|離婚協議書との違い
離婚公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が、法律に基づいて作成する公文書です。
離婚協議書と離婚公正証書は、どちらも夫婦が取り決めた離婚条件を記載したものです。
それぞれの大きな違いは、以下の3つの点です。
1 作成者
2 強制執行のための手続き
3 作成のための費用
順番に解説していきます。
4-1-1 作成者について
離婚公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が、法律に基づいて作成する公文書です。
これに対して、離婚協議書は、夫婦が自ら作成するものです。
4-1-2 強制執行のための手続き
離婚公正証書を作成することで、相手が離婚後に金銭の支払いに関する合意を守らなかった場合に、裁判所に強制執行を申し立てることができる場合があります。
強制執行とは、支払いを受ける側が裁判所に申し立てをすることで、相手に支払いをさせる手段のことをいいます。
具体的には、公正証書に、公正証書に記載した支払いをしなかった場合には強制執行に応じる旨を記載していた場合(強制執行認諾条項)には、強制執行を行うことで、相手の給与や財産等から支払いを受けることが可能な場合があります。
これに対して、離婚協議書は、相手が離婚後に金銭の支払いに関する合意を守らなかった場合には、別途養育費請求調停や慰謝料を請求する裁判を行い、その結果が記載された書面(調停調書や判決書等)を利用して強制執行を行う必要があります。
養育費請求調停や慰謝料を請求する裁判は半年から1年程度の期間が必要になることが一般的であるため、支払いを受けられるようになるまで期間が必要になってしまいます。
また、養育費請求調停や裁判をした場合でも、ご自身の希望と異なる結果(支払い金額が少ない・支払い金額がもらえない)となってしまうリスクもあります。
4-1-3 作成のための費用
離婚公正証書は、公証人に作成を依頼するために費用が必要になります。
条項の内容により異なりますが、数万円の手数料が必要になることが一般的です。
離婚協議書は、夫婦が自ら作成する場合には費用は必要ありません。
4-2 離婚公正証書の書き方【テンプレート(雛型)・サンプル付き】
金銭に関する取り決めを含む内容の離婚公正証書を作成する場合には、相手が支払いに関する取り決めを守らなかった場合には強制執行に応じるという条項(強制執行認諾条項)を必ず入れるようにしましょう。
離婚公正証書のテンプレートはこちらからダウンロード可能です。
離婚公正証書【サンプル】word
※適切な離婚公正証書については事案により異なりますので、適宜ご修正下さい。ひな形の利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねますので、自己責任でお願いいたします。
※記載している内容は一般的に取り決められることが多い内容です。必要に応じて条項を追加・削除してご利用ください。
4-3 離婚公正証書を作成する流れ
離婚公正証書を作成する流れは、以下の通りです。
流れとしては、離婚協議書を作成するときの流れと概ね共通します。
ただし、公証役場を利用する点が異なります。
順番に解説していきます。
4-3-1 大まかな離婚条件を話し合う
離婚公正証書を作成する際にも、大まかな離婚条件を話し合うようにしましょう。
具体的には、下記の内容が挙げられます。
1 親権者の指定
2 養育費
3 面会交流
4 慰謝料
5 財産分与
6 年金分割
7 公正証書の作成費用の負担
離婚協議書と異なる点は、離婚公正証書の作成の際に費用が必要になる点です。
離婚公正証書を作成する際の費用については、互いに折半することが多いです。
4-3-2 離婚公正証書の案文を作成する
離婚条件を話し合い、ある程度離婚条件が固まってきたら、離婚公正証書の案文を作成してみましょう。
案文を作ることで、具体的な離婚条件が取り決めやすくなる点は離婚協議書と同じです。
4-3-3 離婚公正証書の案文に加筆・修正を行う
離婚公正証書の案文を作成したら、双方で離婚公正証書の案文の内容を確認し、不十分な点があれば加筆・修正を行いましょう。
案文は、最終的には公証人に提出する必要があるため、内容は十分確認するようにしましょう。
4-3-4 公証役場に電話して予約を入れる
離婚公正証書を作成したら、お近くの公証役場に電話して、離婚公正証書を作成したい旨を伝え、作成の予約を入れるようにしましょう。
4-3-5 公証役場に案文を送付する
離婚公正証書から、担当となる公証人に関する案内を受けたら、公証人に案文を送付しましょう。
なお、もしも案文に不備がある場合には、公証人から修正を提案されることがあります。
ただし、公証人は離婚公正証書の案文の形式については確認をすることが多いものの、条項の内容自体について公証人から意見が伝えられることは少ないです。
そのため、作成した案文が、実は一方にとって非常に不利な内容となっている場合もあるので注意しましょう。
不安がある場合には、案文を持参した上で、弁護士に相談してみましょう。
また、公証役場からは、作成のために必要な資料(本人確認のための免許証・パスポート等の資料及び認印や、不動産登記簿謄本、年金分割のための情報通知書等)を用意するよう指示されます。
そのため、必要資料を確認した上で、準備するようにしましょう。
4-3-6 公証役場で意思確認を行う
離婚公正証書作成の日になったら、夫婦で公証役場に行きましょう。
公証人は、夫婦の面前で離婚公正証書を読み上げます。
夫婦が離婚公正証書の内容に問題がないと判断したら、夫婦と公証人が離婚公正証書に署名押印します。
その後、完成した離婚公正証書謄本を受領します。
離婚公正証書に金銭の支払いに関する内容を含む場合には、送達申請を行った上で、送達証明書を受け取るようにしましょう。
なぜなら、強制執行の際に必要になるためです。
5 有利な離婚協議書を作成する4つの方法
ここでは、ご自身にとって有利な内容の離婚協議書を作成するために必要不可欠なことを説明します。
5-1 方法1:交渉可能な部分を知る
離婚協議書を作成する際には、どういった部分で交渉が可能か知って交渉しましょう。
具体的には、養育費の金額や終期・財産分与の金額と支払い方法・慰謝料の金額と支払い方法等については交渉する余地があります。
そのため、交渉可能な部分はどのような部分かということを確認しましょう。
5-2 方法2:条項ごとの交渉方法を知る
離婚協議書を作成する際には、条項ごとの交渉方法を知りましょう。
具体的には、不貞があることが判明していて、不貞を直接示す資料がある場合にはそのことを伝えるといった対応や、財産分与を求める場合には、互いに財産に関する資料を開示して適正な金額を計算するという対応が考えられます。
また、特定の条件については有利な条件を求める代わりに、別の条件で譲歩するといった対応も考えられます。
5-3 方法3:相場観を知る
離婚協議書に記載する条件について交渉する場合には、相場観を知ることが必要不可欠です。
なぜなら、相場観を知らずに離婚条件について合意してしまうと、本来得られたはずの利益を得られなくなってしまう可能性があるためです。
例えば、条項ごとの相場観を表にすると以下のとおりです。
条項 |
相場観 |
離婚届を提出する者 |
婚姻により改姓した側が提出することが多い。 |
親権 |
子どもが複数人の場合には分離しない(兄弟不分離の原則) |
裁判では妻側が親権を獲得しやすい傾向(母性優先の原則) |
|
養育費 |
金額は養育費算定表に従う |
期間は子が20歳になる月まで |
|
財産分与 |
2分の1ずつ |
面会交流 |
月1回 |
慰謝料 |
0円~300万円 |
そのため、離婚協議書に記載する条件について交渉する場合には、相場観を知ることが必要不可欠です。
5-4 方法4:弁護士に交渉・作成を依頼する
弁護士に依頼することで、離婚条件の交渉や離婚協議書・離婚公正証書の作成が可能です。
さらに、弁護士は、交渉可能な部分を知り、交渉のノウハウを有しています。
また、裁判になった場合に得られる見込みのある結果を踏まえ、相場観を持った交渉が可能です。
加えて、離婚公正証書を作成する場合には、弁護士が公証人とやり取りをしたり、弁護士が公証役場で離婚公正証書を作成したりすることが可能です。
そのため、ご自身で離婚協議書・離婚公正証書を作成することが難しい場合には、弁護士に作成を依頼することも検討してみましょう。
6 離婚協議書の作成についてよくある悩み8つ
離婚協議書の作成について、よくある悩みを8つ紹介します。
6-1 離婚協議書を作らないと離婚できない?
離婚協議書を作らなくても離婚をすること自体は可能です。
なぜなら、離婚をする場合には、互いに離婚について合意した上で、役所に離婚届を提出することで戸籍に反映されるためです。
そのため、離婚協議書を作らなくても離婚をすること自体は可能です。
ただし、離婚協議書を作成せずに離婚をした場合、離婚後に慰謝料の支払いや財産分与を求められる等、トラブルが生じるリスクが残ります。
6-2 離婚協議書と離婚公正証書は両方作るの?
離婚協議書と離婚公正証書は、どちらか一方のみを作成すれば十分です。
ただし、夫婦で合意した事項に慰謝料・養育費・財産分与等の金銭の支払いに関する内容が含まれる場合には、必ず離婚公正証書を作成するようにしましょう。
なぜなら、相手が支払いをせず、強制執行が必要になる可能性があるためです。
6-3 離婚協議書は手書きでいいの?
離婚協議書は手書きで作成しても問題はありません。
ただし、後に紛争になった場合に備え、判読しやすい文字で記載しましょう。
さらに、ボールペン等の消すことができない筆記用具を用いて作成するようにしましょう。
なぜなら、後から書き換えたという主張がされてしまう可能性があるからです。
6-4 離婚協議書に記入する日付はいつにすればいい?
離婚協議書に記載する日付は、夫婦が離婚協議書を作成し、内容に合意した日付にしましょう。
離婚協議書を有効なものとするため、日付を書くことは必須です。
6-5 押印する印鑑は三文判でいい?
離婚協議書への押印は市区町村の役場に登録されている実印(印鑑登録をしている印鑑)で押印しましょう。
なぜなら、実印で押印することにより、離婚後のトラブルになった際に、夫婦の間でたしかに離婚に関する合意が存在していたという事実を示す証拠として扱いやすくなるためです。
6-6 離婚協議書は何部作ればいい?
離婚協議書は、同じ書面を2部作成するようにしましょう。
離婚協議書の条項が記載されている部分は印刷することが可能ですが、署名と押印部分は、印刷をしないで両方の離婚協議書に自著をするようにします。
2部作成した離婚協議書は、重ねて夫婦双方の実印で割印をするようにしましょう。
具体的には、下記のようにします。
6-7 離婚協議書が複数ページになる場合はどうすればいい?
離婚協議書が複数のページにまたがる場合、ホチキスで閉じた上で、ページの間に割印を行いましょう。
なぜなら、どちらか一方が特定のページを抜き取って差し替えてしまうリスクが残るため、そういったことを防ぐためです。
具体的には、下記のようにします。
6-8 離婚協議書は何年間とっておけばいい?
離婚協議書は、トラブルを避ける観点からは、可能な限り保管しておく必要があります。
少なくとも3年以上、養育費の支払いがある場合には、支払いが完了するまで保管する必要があります。
なぜなら、離婚後に財産分与を請求可能なのは離婚後2年間であり、また、不倫・浮気(不貞行為)が存在していた場合には、慰謝料の請求権は離婚した日から3年が経過したら時効になります。
つまり、その間は紛争になる可能性が残るためです。
なお、離婚公正証書の形にした場合には、公証役場が20年間保管してくれるため、安心です。
6-9 離婚した後でも離婚協議書は作れる?
離婚協議書は、離婚した後にも作成することができます。
これは、離婚公正証書も同様です。
7 離婚の交渉はリバティ・ベル法律事務所へ
離婚協議書・離婚公正証書の作成について不安があるという方は、ぜひ、リバティ・ベル法律事務所にご相談ください。
離婚協議書・離婚公正証書の内容について、予め弁護士に相談しておくと安心です。
リバティ・ベル法律事務所では、離婚分野に注力しており、離婚協議書・離婚公正証書の作成について十分なノウハウを有しております。
初回相談は無料なので、お気軽にご相談ください。
8 まとめ
以上のとおり、今回は、離婚協議書を作成するために取り決める事項等をわかりやすく説明したうえで、離婚協議書でなく離婚公正証書を作成することが適切な場面やその内容等について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・離婚協議書を作成する際に取り決める内容や、記載する内容は下記の通りです。
1 書面の題名(離婚協議書という記載)
2 親権者の指定
3 養育費
4 面会交流
5 慰謝料
6 財産分与
7 年金分割
8 清算条項
9 夫婦の署名・押印・作成日(押印は「実印」で行いましょう。)
・離婚協議書の作成の流れは下記の通りです。
1 大まかな離婚条件を話し合う
2 離婚協議書の案文を作成する
3 離婚協議書の案文に加筆・修正を行う
4 署名押印をする(押印は「実印」で行いましょう。)
・夫婦が合意した離婚条件の中に養育費・財産分与・慰謝料の支払いといった金銭の支払いに関する条件が含まれる場合には、必ず離婚公正証書を作成し、送達証明書を受け取るようにしましょう。
・離婚公正証書の作成の流れは下記の通りです。
1 大まかな離婚条件を話し合う
2 離婚協議書の案文を作成する
3 離婚協議書の案文に加筆・修正を行う
4 公証役場に電話して予約を入れる
5 公証役場に案文を送付する
6 公証役場で意思確認を行う
・離婚協議書や離婚公正証書は、一度作成した場合に内容を変更することは困難です。そのため、作成をする前に案文を持参して弁護士に相談しておくことが望ましいです。
この記事が、離婚協議書・離婚公正証書を作成する方の助けになれば幸いです。
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