離婚成立に必要な別居期間がどれくらいか知りたいと悩んでいませんか?
ネットで調べても多くの数字が目に入るので、本当に必要な別居期間がどの程度かよくわかりませんよね。
一般的に離婚が成立しやすいとされる別居期間は3~5年以上とされています。
離婚には大きく分けて協議離婚と裁判離婚があり、裁判離婚の場合には以下の離婚事由が必要となります。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき
③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
別居期間は、⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由」における夫婦関係破綻の事情として考慮されます。
そのため、3~5年以上の別居期間があれば、他の事由と同程度だとして離婚事由があると判断されやすいのです。
しかし、状況次第では別居期間という基準が大きな意味を持たないケースもあります。
実は、夫婦関係の破綻という事情は様々な事情を考慮するため、別居期間よりも「同居期間」や「有責性」などが重視されることもあるのです。
この記事をとおして、離婚事由と別居期間の関係について知っていただければと思います。
今回は、離婚成立に必要な別居期間を説明した上で、別居期間中の注意点について解説していきます。
具体的には以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、離婚成立に必要な別居期間がよくわかるはずです。
目次
1章 離婚成立に必要な別居期間は3~5年以上!
一般的に、裁判で離婚が認められるには3~5年程度の別居期間が必要になります。
なぜなら、夫婦関係の破綻が認められるには他の離婚事由と同程度といえるほどの別居期間が必要となるためです。
そのため、別居期間が3年未満だと別居期間として不十分だと考える傾向があります。
ただし、離婚の可否は別居期間以外の要素も考慮するため、他の事情次第では十分な別居期間があっても離婚が認められないことがあります。
2章 離婚が成立しやすい別居期間のケース3つ
別居期間が短い場合でも離婚が成立しやすい事情があります。
例えば、離婚が成立しやすい別居期間のケースは以下の3つです。
成立しやすいケース2:離婚の意思が強い場合
成立しやすいケース3:別居期間以外の離婚事由がある場合
それでは各ケースについて順番に説明していきます。
2-1 成立しやすいケース1:婚姻期間が短い場合
離婚が成立しやすい別居期間のケース1つ目は、婚姻期間が短い場合です。
なぜなら、別居期間の長さは婚姻期間との関係で判断されるためです。
例えば、婚姻期間が1年1か月の場合に別居期間が1年であるときは、婚姻期間の大半は別居しているため離婚が認められやすくなります。
そのため、婚姻期間が短い場合には別居期間が短い場合でも離婚が成立しやすくなります。
2-2 成立しやすいケース2:離婚の意思が強い場合
離婚が成立しやすい別居期間のケース2つ目は、離婚の意思が強い場合です。
なぜなら、離婚の意思が強い場合には裁判で争う必要がないためです。
つまり、別居期間に関係なく合意によって協議離婚しやすいのです。
なお、協議離婚する場合には後の争いを防ぐために公正証書を作成するようにしましょう。
2-3 成立しやすいケース3:別居期間以外の離婚事由がある場合
離婚が成立しやすい別居期間のケース3つ目は、別居期間以外の離婚事由がある場合です。
なぜなら、離婚の可否は別居期間以外の事情も考慮して判断するためです。
他の離婚事由としては以下の5つがあります。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき
③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
そのため、別居期間以外の離婚事由があるときは、別居期間が短くても離婚が認められることがあります。
3章 離婚が成立しにくい別居期間のケース3つ
別居期間が短いことで離婚が難しくなるケースがあります。
例えば、離婚が成立しにくい別居期間のケースは以下の3つです。
成立しにくいケース2:相手の同意がない場合
成立しにくいケース3:自身が有責配偶者の場合
それでは各ケースについて順番に説明していきます。
3-1 成立しにくいケース1:離婚事由がない場合
離婚が成立しにくい別居期間のケース1つ目は、離婚事由がない場合です。
なぜなら、離婚事由がなければ協議離婚によらなければならず、離婚について配偶者の同意を得る必要があるためです。
例えば、単なる性格の不一致などでは離婚事由がないとされる可能性が高く、相手に離婚する気がなければ離婚交渉は難航してしまうでしょう。
そのため、別居期間が短く離婚事由もなければ離婚は成立しにくいのです。
3-2 成立しにくいケース2:相手の同意がない場合
離婚が成立しにくい別居期間のケース2つ目は、相手の同意がない場合です。
なぜなら、相手の同意がなければ離婚の裁判を提起する必要があるためです。
たとえ離婚事由が認められる場合であっても、一般的な離婚裁判の期間は1~2年程度とされておりかなりの期間を要します。
そのため、相手が離婚に応じないとの姿勢を取っている場合、離婚の成立が遅くなってしまうこともあるのです。
3-3 成立しにくいケース3:自身が有責配偶者の場合
離婚が成立しにくい別居期間のケース3つ目は、自身が有責配偶者の場合です。
なぜなら、有責配偶者の場合には離婚について厳しい条件が課されているためです。
有責配偶者とは、自ら離婚の原因を作り夫婦関係を破綻させた配偶者をいいます。
有責配偶者からの離婚請求が認められるには、以下の3つの条件が必要になります。
・未成熟子の不存在
・相手配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に過酷な状態におかれないこと
そのため、有責配偶者の場合には通常よりも必要な別居期間が長くなることから、離婚が成立しにくいのです。
4章 離婚成立までの別居期間は何年?裁判例4つ
離婚成立に必要な別居期間が何年程度であるかは、裁判例が参考になります。
離婚成立までの別居期間について判断を示した裁判例として、例えば以下の4つがあります。
裁判例2:別居期間が3年5か月の事案(離婚請求認容)
裁判例3:別居期間が4年10カ月の事案(離婚請求認容)
裁判例4:別居期間が6年の事案(離婚請求棄却)
それでは各裁判例について一緒に確認していきましょう。
4-1 裁判例1:別居期間1年7か月の事案(離婚請求認容)
原告が、生活費についての不満から被告と別居し、その1年7か月後に離婚請求した事案について、
裁判所は、別居の原因は単なる性格の不一致であり、同居期間が7年であることを踏まえれば別居期間が短いため、未だ婚姻関係が破綻しているとはいえないとして原告の請求を棄却しています。
判例は以下のように説明しています。
「原告と被告とが別居に至った原因は、被告の給料から原告に渡す生活費についての口論が繰り返され、それに原告が不満を抱いたことにあるという双方の性格の不一致にあるといえ、それを超えて、別居の原因が、原告が主張する被告による一方的な暴言等によるものであるとまではいえない。
そして、別居の原因がそのような性格の不一致にとどまること、原告の離婚意思が強固であるのに対し、被告は子らを含めて原告との関係修復を望んでいること、別居までの婚姻期間が約7年であるのに対して、別居期間は約1年7か月と短いことなどの事情からすれば、原告と被告との婚姻関係は未だ修復の可能性がないものとはいえず、婚姻を継続し難い重大な事由があるとは認められないから、原告の離婚請求は理由がない。」
4-2 裁判例2:別居期間が3年5か月の事案(離婚請求認容)
原告が、被告が家事に全く協力せず精神的なDVをしていたことから、自立するために看護学校に通っていたところ、不在中に被告が子どもをきつくっていたため離婚請求した事案について、
裁判所は、原告の離婚意思が強く別居期間が3年5カ月以上の長期間に及び、別居期間中には復縁に向けた動きもないことからすれば、婚姻関係は破綻していたとして離婚請求を認容しています。
判例は以下のように説明しています。
「控訴人は、流産、長女及び長男の出生、2度目の流産を経験するなかで、被控訴人が家事や育児の辛さに対して共感を示さず、これを分担しないことなどに失望を深め、夫から自立したいという思いを強くしていった…控訴人はこのまま被控訴人との婚姻関係を継続しても、自らはもとより未成年者らにとっても良くないと離婚を決意するに至り、平成26年1月になって、未成年者らを連れて別居したという経緯が認められ、かかる経緯に加え、別居期間が3年5か月以上に及んでおり、しかも、この間、復縁に向けた具体的な動きが窺えないという事情をも加味すれば、控訴人・被控訴人のいずれかに一方的に非があるというわけではないが、控訴人と被控訴人の婚姻関係は既に復縁が不可能なまでに破綻しているといわざるを得ない。」
4-3 裁判例3:別居期間が4年10カ月の事案(離婚請求認容)
原告が、被告との言い争いが増えたことに加え長男が所在不明となったときの対応に失望し、長男を連れて別居した後に離婚請求した事案について、
裁判所は、原告は別居後において一貫して離婚を求め続け離婚の意思が強く、別居期間中も被告から修復に向けた動きがないことから、既に夫婦関係は破綻しているとして離婚請求を認容しています。
判例は以下のように説明しています。
「本件別居の期間は、現在まで4年10か月間余りと長期にわたっており、本件別居について被控訴人に一方的な責任があることを認めるに足りる的確な証拠はないものの、上記のとおりの別居期間の長さは、それ自体として、控訴人と被控訴人との婚姻関係の破綻を基礎づける事情といえる。
…以上のとおり、別居期間が長期に及んでおり、その間、被控訴人により修復に向けた具体的な働き掛けがあったことがうかがわれない上、控訴人の離婚意思は強固であり、被控訴人の修復意思が強いものであるとはいい難いことからすると、控訴人と被控訴人との婚姻関係は、既に破綻しており回復の見込みがない」。
4-4 裁判例4:別居期間が6年の事案(離婚請求棄却)
原告が、別居期間が6年以上にも及び婚姻関係が完全に破綻しているとして離婚請求した事案について、
裁判所は、離婚によって被告が困窮するのは明らかであり、未だ三女の介護について見解の相違はあるものの、話し合えば修復の可能性があることを踏まえれば、婚姻関係は破綻していないとして離婚請求を棄却しています。
判例は以下のように説明しています。
「婚姻関係破綻の有無を見る際には、別居期間の長さのみがその考慮要素となるものではない。
…三女の介護に関する考え方に原被告間で食い違う部分はあるが、過去平成17年から平成22年ころまで4年9か月間別居したことがあり、平成22年に再同居した際にしばらくは楽しい生活が続いていたと原告自身述べていたこと等が挙示され、きちんと話し合う努力をすれば、婚姻関係が修復する可能性はなお、残されている
…このまま原告が被告と離婚すれば、…被告は、身体的、経済的、精神的にさらに窮状に陥ることが明らかであり、同居期間が…およそ30年にわたること等をも勘案すると、別居期間が6年に及んでいることをもって、婚姻関係が破綻しているとは認められない。」
5章 離婚成立に向けた別居期間の注意点3つ
離婚を成立させるための別居の際には注意していただきたい点がいくつかあります。
例えば、離婚成立に向けた別居期間の注意点は以下の3つです。
注意点2:別居中は不倫しない
注意点3:婚姻費用を請求する
それでは各注意点について順番に説明していきます。
5-1 注意点1:無断で別居しない
離婚成立に向けた別居期間の注意点1つ目は、無断で別居しないことです。
なぜなら、夫婦は互いに同居義務を負っており、何も言わずに出ていくと「悪意の遺棄」にあたるおそれがあるためです。
「悪意の遺棄」は離婚事由の1つであり、これにあたると自身が有責配偶者として扱われてしまうおそれがあります。
有責配偶者からの離婚請求については厳しい条件が課されているため、離婚が不成立となるおそれがあるのです。
そのため、別居の際にはSNSや置手紙などで一言別居する旨を伝えておきましょう。
5-2 注意点2:別居中は不倫しない
離婚成立に向けた別居期間の注意点2つ目は、別居中は不倫しないことです。
なぜなら、別居期間中も夫婦関係は継続しているためです。
つまり、別居期間中に異性と肉体関係を持つと不倫にあたり、慰謝料を請求されるおそれがあるのです。
そのため、別居中は不倫しないようにしましょう。
5-3 注意点3:婚姻費用を請求する
離婚成立に向けた別居期間の注意点3つ目は、婚姻費用を請求することです。
婚姻費用とは、夫婦の共同生活維持に必要な一切の費用をいいます。
例えば、水道光熱費等の生活費や、子供の養育費などがこれに含まれます。
夫婦は互いに支え合う義務を負っており、別居中等には収入の高い配偶者はもう一方の配偶者に婚姻費用を支払う必要があるのです。
婚姻費用の額は申立て時点に大きく影響されるため、婚姻費用の分担請求は「別居の開始に合わせて」請求するようにしましょう。
6章 離婚交渉はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
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7章 まとめ
今回は、離婚成立に必要な別居期間を説明した上で、別居期間中の注意点について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・一般的に、裁判で離婚が認められるには3~5年程度の別居期間が必要になります。
・離婚が成立しやすい別居期間のケースは以下の3つです。
成立しやすいケース1:婚姻期間が短い場合
成立しやすいケース2:離婚の意思が強い場合
成立しやすいケース3:別居期間以外の離婚事由がある場合
・離婚が成立しにくい別居期間のケースは以下の3つです。
成立しにくいケース1:離婚事由がない場合
成立しにくいケース2:相手の同意がない場合
成立しにくいケース3:自身が有責配偶者の場合
・離婚成立に向けた別居期間の注意点は以下の3つです。
注意点1:無断で別居しない
注意点2:別居中は不倫しない
注意点3:婚姻費用を請求する
この記事が離婚成立に必要な別居期間が知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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