モンスターペイシェントについて知りたいと悩んでいませんか?
実際にモンスターペイシェントを前にすると、どのように対応すべきか困ってしまいますよね。
モンスターペイシェントとは、医師や看護師等の医療機関に対し、不当な要求や暴言等を用いて業務を妨害する患者をいいます。
モンスターペイシェントの行動には以下のような特徴があります。
特徴2:要求内容が不当
特徴3:言動が攻撃的
特徴4:セクハラをしてくる
特徴5:治療費を支払わない
これらの行動は、対応者に悪影響を与えるだけでなく、業務が遅れて他の患者に対応できる時間も減ってしまいます。
そのため、モンスターペイシェントによる被害を抑えるには、迅速かつ適切に対応しなければいけません。
しかし、医師は応召義務を負っていることから、正当な事由なく患者の診療を拒否することはできません。
実は、応召義務における正当な事由は、その場で判断することが難しいこともあり、どのように対応すべきか決めかねてしまうことも少なくないのです。
この記事を通して、モンスターペイシェントへの適切な対応方法を知っていただければと思います。
今回は、モンスターペイシェントとは何かを説明したうえで、モンスターペイシェントへの対応方法を解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、モンスターペイシェントとは何かよくわかるはずです。
目次
1章 モンスターペイシェントとは?
モンスターペイシェントとは、医師や看護師等の医療機関に対し、不当な要求や暴言等を用いて業務を妨害する患者をいいます。
モンスターペイシェントがする不当な要求や暴言等には、例えば以下のものがあります。
・診察内容に納得せず居座る
・待ち時間が長いと怒鳴る
・医師や看護師に対しセクハラをする
・医療費を支払わない
このような行動の背景には、医師の応召義務によって診療を拒否しづらいという側面が影響しているとされています。
2章 モンスターペイシェントの特徴5つ
適切な対応方法を検討するため、どのような患者がモンスターペイシェントにあたるのか、その特徴を押さえておきましょう。
モンスターペイシェントの特徴は以下の5つです。
特徴2:要求内容が不当
特徴3:言動が攻撃的
特徴4:セクハラをしてくる
特徴5:医療費を支払わない
それでは、各特徴を順番に解説していきます。
2-1 特徴1:クレームの内容が理不尽
モンスターペイシェントの特徴1つ目は、クレームの内容が理不尽であることです。
医療機関側にミスがあれば、これに対するクレームには正当性があります。
しかし、特にミスがないにもかかわらず、医療機関に対してされるクレームは不当なものといえます。
例えば、「もう待てない!」「そんなルール知るか!」「ヤブ医者!」といったクレームは不当な場合がほとんどです。
そのため、正当性のない理不尽なクレームは、モンスターペイシェントの特徴といえます。
2-2 特徴2:要求内容が不当
モンスターペイシェントの特徴2つ目は、要求内容が不当であることです。
要求の内容が不当なことも、モンスターペイシェントの特徴にあたります。
例えば、「薬だけ欲しい!」「優先して診てくれ!」といった内容は不当な要求といえます。
なぜなら、診察しないで処方箋を交付することは禁止されていますし、診察の順番は病院の方針等によって決められるためです。
2-3 特徴3:言動が攻撃的
モンスターペイシェントの特徴3つ目は、言動が攻撃的であることです。
要求を断った途端に言動が攻撃的になることは、モンスターペイシェントの特徴にあたります。
なぜなら、攻撃的な言動によって医師や看護師等だけでなく、周囲の患者にも悪影響を与えるためです。
例えば、「院長に訴えるぞ!」「SNSに投稿するぞ!」といった脅迫にも近い発言をすることがあります。
2-4 特徴4:セクハラをしてくる
モンスターペイシェントの特徴4つ目は、セクハラをしてくることです。
医師や看護師等に対してセクハラをすることは、モンスターペイシェントの特徴にあたります。
なぜなら、セクハラは違法行為であり、不当な要求にあたるためです。
例えば、性的な発言や要求、身体的接触をしてくることがあります。
2-5 特徴5:医療費を支払わない
モンスターペイシェントの特徴5つ目は、医療費を支払わないことです。
医療費の支払を拒否することは、モンスターペイシェントの特徴にあたります。
なぜなら、医療費の不払いは医療機関の経済的基盤を危うくするためです。
例えば、「要求を断られたから」「対応が気に食わなかったから」等、何かと理由をつけて医療費の支払を拒否してきます。
3章 モンスターペイシェントへの効果的な対応方法4つ
モンスターペイシェントへの対応は、できる限り効果的なものを選択する必要があります。
モンスターペイシェントへの効果的な対応方法は以下の4つです。
対応2:主張の内容を正確に理解する
対応3:対応マニュアルを作成する
対応4:警察や弁護士に相談する
それでは、各対応について順番に解説していきます。
3-1 対応1:複数人で対応する
モンスターペイシェントへの効果的な対応方法1つ目は、複数人で対応することです。
トラブルの拡大を防ぐには、複数人で対応をすることが重要です。
なぜなら、複数人であれば回答内容が統一しやすいことに加え、精神的負担が軽くなり適切な対応が期待しやすくなるためです。
そのため、複数人で対応することは、モンスターペイシェントへの効果的な対応方法といえるでしょう。
ただし、回答内容にズレが生じないよう、対応窓口は一本化しておくことが重要です。
3-2 対応2:主張の内容を正確に理解する
モンスターペイシェントへの効果的な対応方法2つ目は、主張の内容を正確に理解することです。
問題の早期解決には、主張内容を正確に理解することが重要です。
なぜなら、モンスターペイシェントの要求の根拠を理解することで、対応方針を検討しやすくなるためです。
例えば、待ち時間に不満があるとわかれば、混雑状況や待ち時間を説明することで、患者の理解を促しやすくなります。
そのため、主張内容を正確に理解することは、モンスターペイシェントへの効果的な対応方法といえます。
3-3 対応3:対応マニュアルを作成する
モンスターペイシェントへの効果的な対応方法3つ目は、対応マニュアルを作成することです。
適切に対応するためには、対応マニュアルを作成しておくことが重要です。
なぜなら、事前に必要な知識を押さえておくことで、対応時の混乱を減らすことができるためです。
例えば、患者の過度な要求に対しては、マニュアルに従い段階的な対応を行い、必要に応じて相談をするなど、適切な対応をすることが期待できます。
そのため、対応マニュアルを作成しておくことは、モンスターペイシェントへの効果的な対応方法といえます。
3-4 対応4:警察や弁護士に相談する
モンスターペイシェントへの効果的な対応方法4つ目は、警察や弁護士に相談することです。
被害を抑えるためには、警察や弁護士に相談すべき場合もあります。
なぜなら、暴力や脅迫が絡む場合には犯罪行為にあたり、安全に解決するには警察の介入が必要となるためです。
他方、法的問題が絡む場合、例えば名誉棄損やセクハラ等の場合には、法的に適切な対応をするには弁護士による法的アドバイスが必要となるためです。
4章 事例別!モンスターペイシェントの対応方法
モンスターペイシェントには様々な特徴があり、考えられる事例も多種多様です。
そのため、適切に対応するためには、事例に応じた対応方法を検討することが重要といえます。
モンスターペイシェントの事例は以下の2つです。
事例2:過度な要求をする患者
それでは、各事例について順番に解説していきます。
4-1 事例1:待ち時間の長さに怒鳴る患者
モンスターペイシェントの事例1つ目は、待ち時間の長さに怒鳴る患者です。
患者Aが病院に予約なしで訪れたところ、その日は患者が多くいたため予約患者と急患が優先的に診察を受けていました。
患者Aは、1時間待っても診察が受けられないことから、ついに大声で怒鳴り始めました。
「1時間も待たせるとは何事だ!他の患者よりも私の方が緊急だと言ってるだろ!」
看護師は患者Aを落ち着かせようとしましたが、患者Aはより一層声を荒げるばかりで、落ち着くまでに相当の時間を要しました。
例えば、混みやすい時間や診察の順番が前後することがあるとわかるように掲示しておくことが有効でしょう。また、受付の際に混雑状況とどれくらいの待ち時間があるのか等を伝えることも考えられます。
4-2 事例2:過度な要求をする患者
モンスターペイシェントの事例2つ目は、過度な要求をする患者です。
患者Bは、仕事が忙しく日中は受診する時間がないことから、診療時間外である夜間に診療を要求しました。
しかし、医師は診療時間外であり設備やスタッフが整っていないことに加え、患者Bの症状が非常に軽度であることを理由に診療を拒否しました。
そこで、患者Bは「他の病院なら夜間でも診てくれる、特別に診てくれないか」と執拗に食い下がりました。
結局、患者Bに納得してもらうまで相当の時間がかかり、他の業務にも遅れが出てしまいました。
事例のような所謂コンビニ受診とされる診療時間外における診療の要求は、応召義務との関係で拒否できるのか問題となりますが、症状の安定している患者については即座に対応する必要はなく、時間内の受診や診察可能な病院を紹介することが望ましいとされています(出典:厚生労働省‐医師法の応召義務に関する研究)。
5章 モンスターペイシェントを出入り禁止(診療拒否)にできる?
医師は、診療の要求があればこれに応じなければならないとする応召義務を負っているため、原則として診療を拒否できないとされています。
診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
しかし、正当な事由があれば診療を拒否できるため、どんな場合に拒否できるのか、拒否の方法として出入り禁止にすることが可能なのか問題となります。
「正当な事由」とは、原則として医師の不在または病気等により事実上診療が不可能である場合をいうとされています。
例外的に、以下のようなケースでは拒否できることがあるとされています。
・再三の注意や説得を聞かず、院内で医師や看護師等を委縮させるような暴言を吐く場合
・患者の迷惑行為により信頼関係が喪失した場合(診療と無関係なクレームを繰返す等)
・入院継続の必要性がない場合、必要性があっても他の診療機関に転院させる場合
・ベッドが満床で、医師または病院の人的・物的能力がなく、代替医療施設がある場合
・言葉が通じない場合や宗教上の理由で診療行為そのものが著しく困難な場合
ただし、正当な事由の有無は個別的に判断すべきであり、これらの場合でも病状の深刻な患者等については拒否できない場合があるため注意が必要です。
出入り禁止の方法としては、正当な事由がある場合に限り、立入禁止命令書を送付するか、裁判所に立入禁止の仮処分命令を出してもらうことが考えられます。
立入禁止命令書については、建造物侵入罪との関係で効果を持ち、許可なく院内に立ち入ることを禁止できます。
他方で、裁判所による立入禁止の仮処分命令については、強制力があるため警察の協力が期待できます。
6章 まとめ
以上の通り、今回は、モンスターペイシェントとは何かを説明したうえで、モンスターペイシェントへの対応方法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・モンスターペイシェントとは、医師や看護師等の医療機関に対し、不当な要求や暴言等を用いて業務を妨害する患者をいいます。
・モンスターペイシェントの特徴は以下の5つです。
特徴1:クレームの内容が理不尽
特徴2:要求内容が不当
特徴3:言動が攻撃的
特徴4:セクハラをしてくる
特徴5:医療費を支払わない
・モンスターペイシェントへの効果的な対応方法は以下の4つです。
対応1:複数人で対応する
対応2:主張の内容を正確に理解する
対応3:対応マニュアルを作成する
対応4:警察や弁護士に相談する
・事例別のモンスターペイシェントの対応方法は以下の2つです。
事例1:待ち時間の長さに怒鳴る患者には、怒鳴らないよう伝えて待ってもらうことになりますが、事前の対策も重要です。
事例2:過度な要求をする患者には、明確に対応できない旨を伝えることが重要です。
・モンスターペイシェントは正当な事由がある場合に限り、立入禁止命令書を送付するか、裁判所による立入禁止の仮処分命令によって出入り禁止にできる場合があります。
この記事がモンスターペイシェントの対応に悩んでいる医師や看護師等の医療機関の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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