製造物責任法の損害賠償について知りたいと悩んでいませんか?
PL法という法律の名称は多くの経営者や法務部員も聞いたことはあるでしょうが、その損害賠償についての具体的な考え方までは理解できないない方が多いでしょう。
製造物責任法の損害賠償とは、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることをいいます。
製造物責任法の損害賠償の条件は、①被請求者が「製造業者等」であること、②「製造物」であること、③②を「引き渡した」こと、④②に「欠陥」があったこと、⑤請求者に拡大損害が発生したこと、⑥⑤が④により生じたこと(因果関係)等です。
製造物責任法の損害賠償の範囲は、製造物についてのみ生じた損害を除く拡大損害です。
ただし、欠陥によって通常生ずべき損害、又は、予見可能な特別損害であることが必要です。
製造物責任法の損害賠償について、上限はありません。また、懲罰的賠償(制裁的慰藉料)も認められていません。
被害者から製造物責任を追及された場合には、その額も高額になることが多いことに加えて、潜在的な被害者も想定されることから、慎重に対応をしていく必要があります。
また、製造物責任における損害賠償については、被害者から請求を受けた後には、製造業者間における内部的な求償が問題となります。企業間の取引基本契約書では、「製造物責任」に係る条項として、製造業者間の内部関係を規律しておくのが通常です。
実は、私が多くの企業の取引に関わる中でも、製造物責任への対応が不十分なのではないかと感じることが多くあります。
この記事をとおして、製造物責任法の損害賠償について、企業の経営者や法務担当者の方に正しい知識を知っていただければ幸いです。
今回は、製造物責任法(PL法)の損害賠償とはどのようなものかを説明した上で、上限や範囲と重要な事例3つを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、製造物責任法の損害賠償についてよくわかるはずです。
目次
1章 製造物責任法(PL法)の損害賠償とは?
製造物責任法の損害賠償とは、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることをいいます。
民法上の不法行為責任に基づいて損害賠償を追及しようとすると、被害者が製造者の過失を主張立証する必要があります。
しかし、被害者において製造者の過失を主張立証することは、非常に困難です。
そのため、製造物責任法の損害賠償は、製造物に欠陥があった場合には、過失の立証を不要とすることで、被害者の保護が図ったのです。
製造物責任法では損害賠償について、以下の規定がおかれています。
「製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。」
2章 製造物責任法(PL法)の損害賠償の条件
製造物責任法の損害賠償の条件は、以下のとおりです。
②「製造物」であること
③②を「引き渡した」こと
④②に「欠陥」があったこと
⑤請求者に拡大損害が発生したこと
⑥⑤が④により生じたこと(因果関係)
①の「製造業者等」とは、次のいずれかをいいます(製造物責任法2条3項)。
二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三 当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者
②の「製造物」とは、製造又は加工された動産をいいいます(製造物責任法2条1項)。
③の「引き渡した」とは、自らの意思に基づいて占有を移転させることを言います。製造物を盗まれたような場合には、「引き渡した」とはいえず製造物責任を負いません。
④の「欠陥」とは、、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます(製造物責任法2条2項)。
⑤の拡大損害と⑥因果関係については、次章の損害賠償の範囲で解説します。
3章 製造物責任法(PL法)の損害賠償の範囲
製造物責任法の損害賠償の範囲については、欠陥と因果関係のある拡大損害です。
以下、拡大損害と因果関係について、それぞれ説明します。
3-1 拡大損害
製造物責任法の損害賠償の対象となる損害とは、生命、身体または当該製造物以外の他の財産に生じた損害です。
製造物自体から拡大した損害であるため、これを拡大損害と呼びます
当該製造物自体の損害については、製造物責任法の対象外となります。
「製造物責任の対象となる拡大損害」と「製造物責任の対象とならない製造物自体の損害」の具体例は以下のとおりです。
〇製造物責任の対象となる拡大損害の例
例2:テレビが火を噴いてカーテンが燃えた
例3:走行中に自転車が突然壊れて転倒しケガをした
×製造物責任の対象とならない製造物自体の損害の例
例2:ラジオの音が出なくなった
例3:テレビから煙が出たが延焼しなかった
拡大損害とならない製造物自体の損害については、製造物責任法に基づいて損害賠償を請求することはできません。
しかし、拡大損害とならない製造物自体の損害も、民法上の不法行為責任の対象となります。
不法行為責任の損害範囲は拡大損害に限定されていないためです。
そのため、拡大損害とならない製造物自体の損害については、民法上の不法行為に基づいて損害賠償を請求していくことになります。
ただし、製造物責任ではなく、民法上の不法行為責任となるため、被害者において製造業者の過失を主張立証する必要があります。
3-2 因果関係
製造物責任の損害賠償が認められるために必要な因果関係とは、製造物の欠陥によって当該損害が生じたと言えることです。
より詳しく言うと民法416条に規定されている相当因果関係が認められることが必要です。
1「債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。」
2「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」
簡単に整理すると、拡大損害のうち因果関係が認められる損害は、欠陥によって通常生ずべき損害、及び、予見可能な特別の事情によって生じた損害となります。
通常生ずべき損害とは、欠陥によって通常生じる損害のことです。
特別の事情によって生じた損害とは、通常損害以外の損害のことです。
通常損害と特別損害の区別は困難なこともあります。
4章 製造物責任法(PL法)の損害賠償の上限
製造物責任法の損害賠償について、上限はありません。
製造物責任法には、損害賠償の上限を定める規定は置かれていないためです。
日本の製造物責任法において、上限額(責任限度額)が定められていない理由は以下の3つです。
製品により生じる被害の内容と程度は製品により千差万別であり、すべての製品のリスクに対応する限度額を統一的に設定することは事実上不可能であること
理由2:
最高額が法定されると、最初に賠償を受けた被害者は被害の賠償を受けることができるが、後の被害者は賠償を受けることができなくなるとの被害者間の不公平な問題が生じること
理由3:
我が刻では、ドイツのように過失を要件とせずに責任を課す場合には責任限度額を設けるという伝統がないこと等の問題があること
例えば、消費者庁が公開している「PL関連訴訟一覧(訴訟関係)」において公開されている473個の事例(令和6年1月21日時点)について、認容額が大きい事件を5つ挙げると以下のとおりです。
5章 製造物責任法(PL法)と懲罰的賠償(制裁的慰謝料)
製造物責任法では、懲罰的損害賠償(制裁的慰謝料)は認められていません。
懲罰的損害賠償とは、一定の要件の下で賠償義務者に対し、現実に生じた損害の範囲を超える金銭等の支払いを命ずることを認める制度です。
製造物責任法が制定される際には、このような懲罰的損害賠償を認めるべきではないかという議論もされていました。
しかし、製造物責任法の目的は、被害者に生じた損害を補填するという点にありますので、懲罰的損害賠償という法的な制裁を新たに設けることは目的に合致しません。
そのため、日本の製造物責任法では、懲罰的損害賠償の導入はされていません。
アメリカでは、懲罰的損害賠償が認められていますが、損害賠償額の高騰を招き、製造物責任危機を招来する一因になったと言われています。
6章 製造物責任法(PL法)の損害賠償の重要事例3つ
本章では、製造物責任法において損害賠償が問題となった重要事例を3つ厳選してご紹介します。
具体的には、是非、知っておいていただきたい製造物責任法の損害賠償に関する事例は以下の3つです。
事例2:東京高裁令和2年2月27日|エアコン室外機発火事件(控訴審)
事例3:横浜地裁平成18年4月18日|トレーラータイヤ直撃死亡事件
それでは、各事例について順番に説明していきます。
6-1 携帯電話低温やけど事件|仙台高裁平成22年4月22日
【事案】
携帯電話製造会社製造の携帯電話をズボン前面ポケット内に入れて使用していた男性が、同携帯電話機の欠陥により左大腿部に熱傷を負ったとして、携帯電話製造会社に対して製造物責任又は不法行為責任に基づき損害賠償を求めたことにつき、請求を棄却した第一審に対する控訴審の事案。
【争点】
①本件熱傷は本件携帯電話に起因するか否か。
②本件携帯電話の欠陥の有無。
【判決内容】
①本件男性はズボン前面左側ポケットに本件携帯電話を入れ、被害部位である左大腿部と接触する状況にあったこと、本件携帯電話の位置、形状と本件熱傷の位置、形状はほぼ一致すること、本件熱傷は低温熱傷であること、本件携帯電話が低温熱傷をもたらす程度に発熱する状態(異常発熱)になることは十分あり得ること、ほかに本件熱傷の原因となり得る事由は見当たらないことなどの諸事情を総合考慮すると、本件熱傷は、本件携帯電話が低温熱傷をもたらす程度に異常発熱したために生じたもの(本件熱傷が本件携帯電話に起因すること)と推認することができる。
②本件男性は本件携帯電話をズボンのポケット内に収納して携帯するという通常の方法で使用していたにもかかわらず、その温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し、それが相当時間持続する事象が発生して本件熱傷という被害を被ったのであるから、本件携帯電話は通常有すべき安全性を欠いているといわざるを得ず、本件携帯電話には設計上又は製造上の欠陥があると認められる。
【請求額】
一審請求額:545万7370円
【判決結果】
原判決変更
認容額:221万2370円
(一審認容額:0)
6-2 エアコン室外機発火事件(控訴審)|東京高裁令和2年2月27日
【事案】
本件建物を本拠地ないし居住地としていた者らが、本件建物の2階ベランダに設置していたエアコン室外機の発火に起因する火災により損害を被ったとして、エアコン室外機の製造業者に対し、製造物責任に基づき損害賠償を求めたことにつき、請求を一部認容した第一審に対する控訴審の事案。
【争点】
①製造物責任法第3条に基づく損害賠償請求における主張立証責任の枠組み
②本件室外機が本件火災の発生源であると認定し又は推認することの可否
③本件室外機が本件火災の発火源であるとの推認を妨げ又は覆す事情の存否
④製造物責任に基づく損害賠償責任の成否
【判決内容】
①製造物の欠陥による発火に起因して発生した火災により損害を被ったと主張して製造業者等に対し損害賠償を請求する製造物の利用者は、製造物責任法第3条の規定の趣旨及び文言に照らせば、一般の民事訴訟における主張立証の構造に従い、(1)利用者の側の立証によって認定される諸事実に照らして欠陥及び火災との因果関係の存在が推認される場合には、(2)製造業者等の側でその推認(事実上の推定)を覆すに足りる立証(間接反証)をしない限り、製造業者らは損害賠償責任を免れない。そして、上記の事実上の推定は、社会通念に照らして当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることを推認するに足りる諸事実が立証されていれば足り、欠陥の存在について必ずしもその部位・態様や技術的原因等の詳細まで立証を要するものではなく、また、因果関係の存在についても、必ずしも当該危険事象の発生に至った科学的機序の詳細まで立証を要するものではない。
②本件室外機の温度センサーに短絡痕が発見されたとの実況見分調書の記載等を直接証拠として、本件室外機が発火源であると認定することはできないものの、本件建物及び本件室外機周辺の焼損状況、本件火災の発生初期の燃焼状況及び本件建物の延焼・消火活動の経過等、本件室外機の物理的・工学的な観点からみた発火可能性等の諸事情を総合すると、本件火災は、特段の事情が認められない限り、本件室外機を発火源として発生したものと推認される。
③本件室外機が発火源であるとの推認を妨げる事情(本件室外機が発火源となる余地のないことが明らかであるなどの特段の事情)や、その推認を覆す事情(他の箇所が発火源であることが明らかであるなどの特段の事情)も認められない。
④②③から、本件火災の発火源は本件室外機であったものと認めるのが相当であることに加え、本件室外機が設置されてから本件火災発生までの期間が2年にすぎないこと、本件火災発生時に本件エアコンは運転されておらず、居住者らにおいて本件室外機を通常と異なる方法により使用した形跡はないこと等からすれば、本件室外機には欠陥があったものと認められ、本件室外機の欠陥と本件火災の発生との因果関係も認めることができるから、本件室外機の製造業者は、製造物責任法第3条に基づく損害賠償責任を負う。
【請求額】
総額:14,76万0,000円
(一審請求額:総額50,745,409円)
【判決結果】
原判決一部変更、一部控訴棄却
総額:7,59万1,207円
(一審認容額:総額:4,968,407円)
6-3 トレーラータイヤ直撃死亡事件|横浜地裁 平成18年4月18日
【事案】
走行中の大型トラクタ(トレーラー)から脱落した車輪が歩行中の主婦にあたり死亡したため、主婦の母が、本件事故車両を製造した車両製造会社に対しては製造物責任、運輸行政を担う国に対しては国家賠償法第1条第1項に基づき、損害賠償を求めた事案。
【争点】
懲罰的賠償
【判決内容】
民事訴訟における損害賠償の目的は発生した損害の補償であり、事実上慰謝料の効果として制裁的機能や抑制的機能が認められることが否定されるわけではないにしても、処罰を目的とする制裁的慰謝料を認めることは我が国のそもそもの法制と調和しないし、現在において制裁的慰謝料の概念が成熟した裁判規範として受容されているとも認めがたい。したがって、制裁的慰謝料を課すことは認められない。
【請求額】
1億6550万0000円
【判決結果】
一部認容
認容額:550万0000円
7章 製造物責任法(PL法)の損害賠償請求への対処手順
被害者から製造物責任を追及された場合には、慎重に対応をしていく必要があります。
その額も高額になることが多いことに加えて、潜在的な被害者も想定されるためです。
具体的には、製造物責任法の損害賠償請求に対しては、以下の手順で対処していきましょう。
手順2:取引先との連携
手順3:交渉
手順4:訴訟
それでは、各手順について順番に説明していきます。
7-1 手順1:通知書の確認
製造物責任法の損害賠償への対処法の1つ目は、通知書の確認です。
被害者から損害賠償を請求する旨の内容証明郵便が届くことが通常ですので、通知書が届いたら、まずは内容をよく確認しましょう。
どのような製造物にいかなる欠陥があったと主張されていて、それよって、いくらの損害が生じたと主張されているのかを確かめることになります。
7-2 手順2:取引先との連携
製造物責任法の損害賠償への対処法の2つ目は、取引先との連携です。
製造物については、取引先から購入した部品を加工して制作しているような場合も多く、取引先の部品が原因で欠陥が生じていることがあります。
この場合には、被害者との法律関係を清算した後に、取引先との求償関係が問題となります。
被害者の請求に対応するためにも、取引先の意見を十分に確認しておくべきです。
取引先に何も伝えずに顧客に損害賠償の支払いを行ってしまうと、後になって求償をしようとしても、取引先から様々な反論がされることが想定されます。
7-3 手順3:交渉
製造物責任法の損害賠償への対処法の3つ目は、交渉です。
通知書と取引先の意見を確認して、方針が決まったら、折り合いをつけることが可能かどうか、被害者と交渉を行います。
製造物に欠陥があったことが事実である場合には、被害者の気持ちにも配慮し真摯な対応を行うことが求められるでしょう。
他方で、製造物に欠陥がない場合には、毅然とした態度で対応することが必要となります。
7-4 手順4:訴訟
製造物責任法の損害賠償への対処法の4つ目は、訴訟です。
話し合いによる解決が難しい場合には、裁判所を用いた手続きが行われることになります。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。
1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。
解決まで1年程度を要することもあります。
8章 製造業者間の製造物責任における損害賠償の負担範囲及び上限
製造物責任における損害賠償については、被害者から請求を受けた後には、製造業者間(部品売主と部品買主)における内部的な求償が問題となります。
例えば、ある取引先から部品を購入した業者が、当該部品を製造物に組み入れたところ、当該部品に欠陥があったような場合です。
このような場合には、欠陥のある部品を組み入れた製造物を第三者に販売することになり、これによって、第三者に拡大損害を与えた場合には、部品を購入した業者は第三者に製造物責任を負うことになります。
そうすると、当該部品を購入した業者は、製造物責任により負担した賠償金について、部品を売却した業者に求償したいと考えるでしょう。
しかし、製造業者間で事前に求償範囲を明確にしておかないと、話し合いは紛糾し、円滑な対応をすることが困難です。
そのため、製造業者間の取引基本契約書では、「製造物責任」に係る条項として、事前に製造業者間の内部関係を規律しておくのが通常です。
具体的には、製造業者間の取引契約書では、事前に求償範囲について、以下の点を合意しておくことが望ましいことになります。
部品の買主側の視点
一切の損害(第三者に支払った損害額、市場から回収するために要した費用、弁護士費用等)を部品売主が負担すること
部品の売主側の視点
①欠陥を直接の原因とする損害に限定すること、
②損害賠償額の上限
③故意又は過失がある場合に限定すること
それでは、各視点にについて順番に説明していきます。
8-1 部品の買主側の視点
部品の買主側の視点としては、一切の損害(第三者に支払った損害額、市場から回収するために要した費用、弁護士費用等)を部品売主が負担することを定めておくことが望ましいでしょう。
なぜなら、一切の損害を部品売主が負担する旨を合意しておかないと、部品の欠陥によって通常生ずべき損害、及び、予見可能な特別の事情によって生じた損害の範囲でしか求償ができないためです。
通常生ずべき損害か否か、予見可能であったか否かについては、話し合いで明確にすることが困難なことが多く、立証にも労力を要します。
また、市場に他にも欠陥のある製造物が流通してしまっている場合には、回収するために費用がかかることになるため、当該費用の取扱いも明確にしておきたいところです。
回収費用の負担について折り合いがつかず迅速に回収することができなければ、新たな被害が出てしまうリスクがあります。
8-2 部品の売主側の視点
部品の売主側の視点としては、①欠陥を直接の原因とする損害に限定すること、②損害賠償額の上限、③故意又は過失がある場合に限定することを定めておくことが望ましいでしょう。
売主側としては、損害の範囲が広がりすぎてしまうことを避けたいためです。
ただし、売主の立場ですと、どうしても強気に交渉できない場合もあるでしょうから、どこまで交渉するかは、交渉力次第です。
上記①~③については、交渉を求めても応じてもらえないことが多いでしょう。
そのような場合には、せめて「一切の損害」を負担するという条項は削除してもらうことを考えましょう。
つまり、民法の原則どおり、部品の欠陥によって通常生ずべき損害及び予見可能な特別の事情によって生じた損害に負担範囲を限定するのです。
また、「その損害の負担については、甲乙協議して決める」としておくことも考えられます。
この場合も、協議が整わなければ、原則どおり民法に従い処理されることになります。
9章 製造物責任法の損害賠償はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
製造物責任法の損害賠償の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
製造物責任法の損害賠償については、条文と判例についての正確な知識が必要となり、紛争が顕在化した場合には慎重に対処していく必要があります。
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10章 まとめ
以上のとおり、今回は、製造物責任法(PL法)の損害賠償とはどのようなものかを説明した上で、上限や範囲と重要な事例3つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・製造物責任法の損害賠償とは、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることをいいます。
・製造物責任法の損害賠償の条件は、①被請求者が「製造業者等」であること、②「製造物」であること、③②を「引き渡した」こと、④②に「欠陥」があったこと、⑤請求者に拡大損害が発生したこと、⑥⑤が④により生じたこと(因果関係)等です。
・製造物責任法の損害賠償の範囲は、製造物についてのみ生じた損害を除く拡大損害です。ただし、欠陥によって通常生ずべき損害、又は、予見可能な特別損害であることが必要です。
・製造物責任法の損害賠償について、上限はありません。
・製造物責任法では、懲罰的損害賠償(制裁的慰謝料)は認められていません。
・製造物責任法の損害賠償請求に対しては、以下の手順で対処していきましょう。
手順1:通知書の確認
手順2:取引先との連携
手順3:交渉
手順4:訴訟
・製造物責任における損害賠償については、被害者から請求を受けた後には、製造業者間(部品売主と部品買主)における内部的な求償が問題となります。そのため、製造業者間の取引基本契約書では、「製造物責任」に係る条項として、事前に製造業者間の内部関係を規律しておくのが通常です。
この記事が製造物責任法の損害賠償について知りたいと悩んでいる経営者や法務担当者の方の助けになれば幸いです。
[参考文献]
消費者庁:製造物責任(PL)法の逐条解説[第1条(目的)]
消費者庁:製造物責任(PL)法の逐条解説[第3条(製造物責任)]
消費者庁:製造物責任(PL)法の逐条解説[第4条(免責事由)]
消費者庁:製造物責任(PL)法の逐条解説[第5条(消滅時効)]
消費者庁:製造物責任(PL)法の逐条解説[第6条(民法の適用)]
消費者庁:PL法関連訴訟一覧(訴訟関係)
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